405事業の流れ|リスケ継続の計画を求められた会社が動いた順番
目次
「ちゃんとした計画が欲しい」と言われた日
返済を待ってもらう話を続けたい、と取引金融機関に伝えたところ、返ってきたのは「ちゃんとした計画が欲しい」という一言でした。定例の面談でその話を切り出したのは、金属材料の加工と卸を手がけるM社の社長です。主要な仕入先が拠点を畳むという知らせを受けた時期でもあり、仕入れの7〜8割をその一社に頼ってきた会社にとっては、返済の話どころではない時期でもありました。
社長の口から続けて出たのは、質問でした。「うちがやろうとしているのは、405事業に当たるんですかね」。すでに地域の中小企業活性化協議会には話を持ち込んでいて、翌週から金融機関を交えた面談が始まる予定も入っている。それなのに、自分が申し込んだものが何という制度なのか、社内では誰も特定できていない。制度の名前が分からないまま、面談の日程だけが決まっていく——中小企業の現場では、珍しくない状態です。
リスケの継続に必要なのは、体裁の整った分厚い計画書ではありません。順番として先に来るのは、①過去に同じ支援を使っていないかを確かめること、②自社に合う入口を協議会へ相談すること、③いま目の前にあるリスクを計画の前提として書き込むこと——この3つです。M社との面談で決めたのは③で、①と②は同じ状況の会社に共通して必要になります。
この記事でわかること
- リスケの継続を求められた会社が、計画づくりの入口をどう選んだか
- 過去に一度使っている会社が、見積を頼む前に確かめること
- 仕入先の撤退リスクを、計画の前提としてどう扱ったか
- 融資の場面で「伴走支援を受けているか」が見られ始めていること
405事業とは?返済条件の変更を前提に計画をつくる制度
405事業は通称で、正式名称は経営改善計画策定支援事業です。財務上の問題を抱えていて、自ら計画をつくるのが難しく、取引金融機関から返済条件の変更などの支援を受けられる見込みがある中小企業が対象になります。認定経営革新等支援機関と連名で中小企業活性化協議会へ申請し、計画づくりを担う専門家の費用を、3分の2を上限に協議会が負担する仕組みです。
M社のように「返済を待ってもらっている状態を続けたい」会社には、この制度が正面から当てはまります。ただし2026年5月1日の改訂で、通常枠の計画が満たすべき数値基準が新しく設けられました。基準を満たさない計画は、原則として通常枠の対象になりません(例外と、小規模企業者向けの特例はあります)。リスケ中の会社にとっては、新しい関門が一つ増えたことになります。
制度そのものの中身——入口ごとの細かい違い、費用の上限、金融支援の定義、伴走支援の期間——は、405事業とは?リスケを続ける経営改善計画と活性化協議会の使い方で詳しく整理しています。この記事で追うのは制度の説明ではなく、実際にリスケの継続を求められた会社が、何から動いたのかという順番のほうです。
参考(中小企業庁):経営改善計画策定支援事業の手引き(令和8年5月1日改訂) / 経営改善計画策定支援事業(通常枠)マニュアル・FAQ(Ver.9.1)
「まず405」ではない——協議会の支援は5つある
中小企業活性化協議会に相談したからといって、自動的に405事業になるわけではありません。協議会の支援は全部で5つあり、そのうち計画をつくって金融機関に示す場面の選択肢が次の3つです(残る2つ、プレ再生支援・再生支援と再チャレンジ支援は、協議会自身が前に出ます)。どれを使うかで手続きも費用も変わります。M社の状況を当てはめると、次のように整理できます。
| 入口 | 返済条件の変更 | この入口を選ぶ場面 |
|---|---|---|
| 収益力改善支援 | 必須ではない | 協議会が自ら支援する。原則無料。ただし金融支援を伴う形で使うと405事業は使えなくなる |
| 早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業) | 計画に含められない | 返済条件はそのままで、計画をつくって金融機関に示したいとき |
| 経営改善計画策定支援事業(405事業) | 前提とする | リスケの継続など、条件変更の支援が見込まれるとき |
大づかみに言えば、返済条件を変えるかどうかが405事業と早期経営改善計画策定支援の分かれ目です。ただし、この一点だけで決まるわけではありません。405事業でいう金融支援は「条件変更等」を指していて、借換融資や新規融資はそれ自体では含まれません。ただし、一部の債務を条件変更しながら別に借換や新規融資も受ける計画であれば、条件変更を受けた債務が全債務の50%以上になる場合は対象になります。似た資金の悩みでも、入口が別になることがあるということです。
だからこそ、専門家に見積を頼む前に、協議会へ「うちはどれに当たりますか」と聞くのがいちばん早い。M社の社長が面談で口にした「405に当たるんですかね」という疑問は、本来なら協議会の窓口に投げれば済む質問でした。会社側で当たりを付けてから動き出すと、判定が違ったときに戻る手間だけが増えます。
参考(中小企業庁):早期経営改善計画策定支援に関する手引き / 早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業)マニュアル・FAQ(Ver.8.1) / 収益力改善支援 / 経営改善計画策定支援事業(通常枠)マニュアル・FAQ(Ver.9.1)
3年前に一度使っていた——見積を頼む前に確かめること
面談の途中で、社長が思い出したように口にした一言がありました。3年ぐらい前に、別のところで一度やった、と。話を確かめると、外部の支援機関の力を借りて、経営改善計画策定支援事業を一度受けていることが分かりました。この日の面談で、いちばん重要な事実がここです。
というのも、この事業は複数回の利用が原則としてできません。マニュアル・FAQのQ1-1-5に明記されています。過去に利用したことを忘れたまま専門家に見積を依頼し、申請の直前になって対象外だと分かる——時間も費用も無駄になる、典型的なつまずき方です。しかも数年前の話なので、社内で覚えている人が誰もいない、ということが実際に起こります。
この場面で先に来るのは、計画の中身の話ではありません。過去に使っているなら、専門家に見積を頼む前に協議会へ事前相談する。順番はこれ以外にありません。制度の名前が分からないなら、当時の契約書や請求書を引っ張り出して、そのまま窓口に見せれば足ります。判定するのは会社ではなく協議会だからです。
参考(中小企業庁):経営改善計画策定支援事業(通常枠)マニュアル・FAQ(Ver.9.1)(対象となる事業者・複数回利用の取扱い)
仕入先の撤退を、計画の前提として書き込む
この会社には、もう一つ差し迫った問題がありました。仕入れの7〜8割を頼ってきた大手鋼材商社が、取引の拠点を畳むことになったのです。調達ルートが細れば、仕入価格も納期も変わります。月あたり1,000万円規模の運転資金が要る会社にとって、これは資金繰りの前提そのものが動く話でした。
社長からの依頼は、はっきりしていました。仕入先の撤退による影響を織り込んだうえで計画を作ってほしい、という趣旨です。私たちもその方針で合意しました。
ここは、計画づくりでいちばん判断が分かれるところです。まだ確定していない悪材料を計画に書けば、数字は当然悪く見えます。書かずに出せば、当面はきれいな計画になる。それでも分かっているリスクは、前提条件として先に書くほうがいい。理由は単純で、金融機関は計画を出した後もモニタリングを続けるからです。書かなかったリスクが半年後に数字として表れれば、それは「知っていて黙っていた計画」になってしまいます。最初から前提として置いてあれば、ずれたときの説明を「想定の範囲内で、対策はこう動かします」という話にできます。
計画は、自社を良く見せるための資料ではありません。この先どこがぶれるかを、金融機関と共有するための資料です。前提が決まれば、そのリスクに何をどう手当てするかの検討へ進めます。
計画づくりと並行して、返済額そのものや資金の入り繰りに手を入れる余地もあります。実際に返済額を動かした交渉の進め方は、中小企業の資金繰り改善で具体的に説明しています。
この記事の内容を、社内で共有できる資料にまとめています。
リスケ継続の計画づくりで、私たちが踏む順番
計画づくりを頼まれると、つい中身の話から始めたくなります。ですが、リスケの継続がかかっている場面では、着手の順番のほうが結果を左右します。判定の前に契約してしまえば費用が無駄になり、前提を決めずに数字を作れば作り直しになる。どちらも、順番を変えるだけで避けられる失敗です。
私たちがこの場面で踏む順番は、次のとおりです。M社との面談で実際に決めたのはステップ3と4で、ステップ1・2・5は同じ状況の会社に共通して必要になる工程です。
リスケ継続のための計画づくり・着手の順番
ステップ1|過去の利用を、書類で確かめる
動くのは、経理担当者か、当時の資料を保管している人です。探すのは契約書・請求書・成果物として受け取った計画書の3点。確かめる範囲は405事業だけではありません。協議会の収益力改善支援(金融支援ありのもの)・再生支援・再チャレンジ支援も対象外の事由で、実施中のものも含みます。「たしか何年か前に何かやった」という記憶だけで判断しないことが大事で、記憶のままだと似た名前の別の支援と取り違えます。書類が見つからなければ、当時関わった支援機関に問い合わせて構いません。ここで確認した内容が、次のステップでそのまま協議会に渡す材料になります。
ステップ2|専門家に見積を頼む前に、協議会へ相談する
窓口は、都道府県ごとに置かれている中小企業活性化協議会です。伝えることは3つ——いま金融機関から何を求められているか、過去に同種の支援を受けているか、返済条件を変える必要があるか。この3点が揃えば、協議会側でどの入口に当たるかを判定できます。電話一本、あるいは窓口での一度の相談で足りる工程です。相談の段階で、書類を完璧に揃える必要もありません。
ステップ3|計画に書き込む「悪材料」を先に洗い出す
社長と支援機関で、向こう1年のうちに数字を動かしそうな事実を並べます。M社の面談で計画に織り込むと決めたのは、主要仕入先の撤退でした。会社によっては、退職による外注費の増加や、値上げ後の受注の動きもここに入ります。ここで必要なのは、確定していないことも「前提」として書くという割り切りです。悪材料を伏せた計画は、モニタリングの場で必ず崩れます。洗い出した項目は、想定と対策をセットにして計画の前提条件に残します。
ステップ4|金融機関を交えた面談に、支援機関も同席する
計画づくりの面談には、取引金融機関が入ります。ここに支援機関が同席するかどうかで、場の性質が変わります。社長ひとりで数字の説明まで背負うのではなく、前提の置き方や返済原資の考え方は支援機関が引き取り、社長は事業として何をどう変えるかを話す。役割を分けておくと、金融機関の質問にその場で答えられます。持ち帰って後日回答、を繰り返すほど面談の回数だけが増え、そのあいだも資金繰りは待ってくれません。
ステップ5|「作って終わり」にしない
計画は、提出したら完了ではありません。伴走支援は、倒産などの特段の事情がない限り、計画を策定した後の最初の決算時から3年間が必須です。決算期と中間決算期に年最低2回を実施し、その結果を協議会へ報告します。つまり計画書は、3年分の会話の土台になる資料です。「計画さえ出せば猶予が続く」と考えていると、最初の報告の時期に慌てることになります。報告の頻度や期間といった条件は、405事業の解説記事でまとめています。
融資の場面で増えている「コンサル、入ってますか」
面談の終盤で、私たちから社長に伝えた話があります。融資の可否を判断する場面で、金融機関が確認する項目に「コンサルタントの伴走支援を受けているか」が入ってくるようになった、という実感です。私たちが金融機関とやり取りをする中でも、融資のタイミングでその項目を見られる場面が増えています。
理由は想像がつきます。数字が厳しい会社ほど、金融機関が気にするのは「この計画を、誰が回すのか」です。社長ひとりで、日々の仕事をこなしながら月次の数字を締め、計画とのずれを検証し、報告書にまとめる。現実的にそれができる会社は多くありません。外部の支援者が入っていれば、計画が計画のまま放置されない見通しが立ちます。金融機関が見ているのは、計画の出来映えよりも、その後が続くかどうかです。
だから社長には、支援機関が入っていることを面談の場で自分から伝えてください、とお願いしました。黙っていても伝わりません。「認定経営革新等支援機関が入っている」と一言添えるだけで、相手の見立ては変わります。私たちは認定経営革新等支援機関として登録していて、405事業はもともと認定支援機関と連名で申請する制度です。面談に同席するのも、名前を出すのも、制度が想定しているとおりの動き方でしかありません。日ごろの資金繰りの改善と金融機関への説明を、こうした場面まで含めて引き受けるのが私たちの役割です。
制度の当てはめから社内への落とし込みまで、右腕として伴走します。
同じことを、自社に当てはめるとしたら
M社と同じ状況にある会社は少なくありません。ただし、どの入口を使うかは置かれている状態で変わります。以下は想定例です。読者が自社を重ねやすいよう、2つの場面に分けて整理します。
返済条件をすでに変えていて、その継続について金融機関から相談されている状態です。405事業が正面から当てはまりますが、先に確認するのは過去の利用歴です。同じ支援を受けていれば、専門家との契約より前に、協議会への事前相談が要ります。
毎月の返済は約定どおりで、ただ手元資金が薄くなってきた、という段階です。返済条件を変えないのであれば、405事業ではなく早期経営改善計画策定支援や、協議会自身の収益力改善支援が視野に入ります。原則無料で相談できる入口があるので、そこから始めて構いません。ただし、収益力改善支援を金融支援ありの形で使うと、あとから405事業には進めません。
共通して言えるのは、入口を自分で決めないということです。会社側で「うちは405だろう」と当たりを付けて動き出すと、判定が違ったときに、専門家の選定からやり直すことになります。判断するのは協議会で、会社がやるべきなのは、判断に必要な材料を揃えて持ち込むことです。
面談の時点で、どこまで進んだか
面談の時点で、M社の計画づくりは「前提を固めて、面談に臨む」段階にありました。この面談を挟んで、会社の位置は明確に前へ動きました。
まず、地域の中小企業活性化協議会への申込みが済みました。相談すべき窓口が決まり、金融機関を交えた面談の日程も入っています。その面談には、私たちも支援機関として同席する予定です。社長がひとりで数字の説明を背負う場面を、そこでなくします。
次に、計画に書き込む前提が決まりました。仕入先の撤退という悪材料を隠さずに織り込む——この方針を社長と私たちのあいだで合意できたことは、小さくありません。前提が決まっていれば、計画づくりは数字を当てはめる作業になります。前提が曖昧なまま数字だけを先に作ると、面談のたびに土台から組み直すことになります。
そして、過去に同じ支援を受けているという事実が表に出ました。放っておけば、申請の直前で止まっていた可能性が高い論点です。早い段階で分かったので、協議会への事前相談という手順を、専門家の選定より前に置くことができました。
「返済を待ってもらえるか」が決まらないまま止まっていた会社が、「来週の面談で何を話すか」を考える段階へ移った。この差は、経営者の時間の使い方そのものを変えます。次に確かめるのは、協議会による入口の判定と、計画に織り込んだ前提を金融機関がどう受け止めるかです。
まとめ
- 入口を自分で決めず、協議会に判定してもらう
- 協議会の支援は5つ。計画をつくる場面の選択肢は3つで、返済条件を変えるかどうかが大きな分かれ目
- 会社側で当たりを付けず、状況を伝えて判定してもらうほうが早く進む
- 過去の利用歴を、見積を頼む前に確かめる
- この事業は複数回の利用が原則できない。数年前の支援は社内で忘れられがちなので、契約書と計画書を探して協議会へ事前相談する
- 悪材料は、前提として先に書く
- 確定していないリスクも、想定と対策をセットにして計画の前提に置く。策定後もモニタリングが続く以上、伏せた悪材料は必ず表に出てくる
最後に
取引金融機関から「計画を出してほしい」と言われて、何から手を付ければいいのか分からないまま日程だけが迫っている。もし同じ状況にあるなら、まずは自社がどの入口に当たるのかを整理するところから始めてください。制度の判定は協議会が行いますが、そこへ持ち込む材料を揃え、金融機関との面談で何をどう話すかを組み立てる作業は、社長ひとりで抱える必要のない仕事です。
私たちTalent Partner(社長の経営参謀®)は、認定経営革新等支援機関として、計画づくりから金融機関との面談への同席、策定後の報告までを一緒に進めています。返済の見通しが立たない状態は、それだけで経営者の判断力を削ります。ひとりで抱え込む前に、一度ご相談ください。

