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事業継続力強化計画の申請|補助金加点と最短で取得する手順
目次
「やらなあかん」とわかっていて、何年も先送りしていませんか
海沿いにある従業員20名規模の金属加工メーカーで、社長がぽつりとこぼした一言があります。「うち、津波が一番怖いんです。海が近いから、正直リスクは高い」。南海トラフの注意報が出たとき、社員が自主的に帰ろうとしたことがあったそうです。そのとき会社としてどう判断するのか、指針を出せなかった。頭の中には「こうしよう」という段取りがあっても、書類にはなっていない。安否確認のルールも、社長の頭の中だけにありました。
「BCP的なことは、やらなあかんとは思ってるんです。でも、どうしたらいいのかがわからんくて」。この「やりたい、でも何から手をつければいいかわからない」という感覚こそ、多くの中小製造業に共通する、事業継続力強化計画がずっと後回しになる正体です。
先に結論をお伝えします。事業継続力強化計画(国が認定するBCP制度)は、申請書とチェックシートを作って電子申請システムで提出するだけで、おおむね45日で認定が下ります。マニュアルを何十枚も作る必要はありません。しかも認定を取ると、ものづくり補助金や省力化補助金など複数の補助金で加点が得られます。社員を守る備えと、資金調達の後押しが、ひとつの手続きで同時に手に入る制度です。
💡 この記事でわかること:
- ●事業継続力強化計画(国のBCP認定)が「何十枚もの計画書」ではない理由
- ●申請書+チェックシート+電子申請という、実際の手続きの流れ
- ●BCPが複数の補助金で共通の加点項目になる仕組みと、自社でできる範囲
「BCPは大企業のもの」という誤解が、最初のブレーキになる
事業継続力強化計画は、中小企業や小規模事業者のための制度です。「大企業が分厚い計画書を作ってやるもの」という思い込みが、着手を止める最初のブレーキになります。
実際、この認定を取得している中小企業は、対象となる企業の2〜5%程度にとどまると言われています。裏を返せば、取っているだけでほとんどの会社と差がつくということです。しかも、従業員がアルバイトやパートだけの会社でも取得できます。「うちみたいな規模で、しかも正社員が少ない会社は対象外だろう」と思い込んでいる経営者は少なくありませんが、これは誤解です。規模や雇用形態で門前払いされる制度ではありません。
冒頭の社長も、最初は「マニュアルを何十枚も作らないといけないんじゃないか」と身構えていました。その誤解を解くところが、実は入り口として一番大事な部分です。制度の中身より先に、「思っているほど重くない」という手続きの実態を知ってもらうこと。ここでハードルが一気に下がります。
| 着手前のイメージ | 実際 | |
|---|---|---|
| 作るもの | 何十枚もの分厚いマニュアル | 申請書+チェックシート |
| 提出方法 | 紙で役所に持ち込み | 電子申請システムで提出 |
| 期間 | 何ヶ月もかかりそう | おおむね45日で認定 |
| 対象 | 大企業向け | 中小・小規模、パートのみでも可 |
手続きの実態:作るのは「申請書」と「チェックシート」だけ
事業継続力強化計画の申請でやることは、大きく分けて三つです。申請書を書く、チェックシートを埋める、電子申請システムで提出する。これだけです。
申請書には、自然災害などが起きたときに自社が何をするかを、難しい専門用語を使わずに計画として書きます。誰がどう安否を確認するのか、設備や在庫をどう守るのか、取引先にどう連絡するのか。冒頭の社長のように「頭の中にはある」段取りを、そのまま文章に落としていくイメージです。チェックシートは、その計画に必要な要素が揃っているかを確認していくためのもので、これも記入自体はそれほど重い作業ではありません。
唯一の関門と呼べるのが、電子申請の前提になる「GBizID」の登録です。これは行政の電子申請で共通して使うIDで、取得には少し日数がかかります。裏を返せば、ここさえ通してしまえば、あとの流れは想像よりずっとスムーズです。申請の型としては、自社だけで作る「単独型」と、取引先などと連携して作る「連携型」がありますが、まず自社の備えとして取り組むなら単独型から入るのが現実的です。
認定が下りるまでの期間は、おおむね1ヶ月から2ヶ月。目安として45日ほどと考えておけば大きくは外れません。「出すだけ」の申請で、会社の実務を大きく止めることなく進められる。これが手続きの実態です。
本当の価値は「補助金の加点」と重なるところにある
事業継続力強化計画が「一石二鳥」と言えるのは、社員を守る計画を作る過程が、そのまま補助金の加点につながるからです。ここを知らずにいる経営者が、とても多いのです。
この認定は、ものづくり補助金や省力化補助金、新事業進出の支援策など、複数の補助金で共通の加点項目になっています。補助金は限られた採択枠を多くの企業が奪い合うため、わずかな加点の差が採否を分けることがあります。工場の新設や機械の入れ替えで補助金を狙っている会社にとって、BCPの認定は「災害への備え」であると同時に「採択率を底上げする一手」でもある。ひとつの手続きで、守りと攻めの両方が前に進みます。
冒頭の会社も、まさに工場の新設や大型機械の購入を検討している最中でした。だからこそ、この加点効果を知ったときの反応は早かった。災害対策としてだけなら「いつかやろう」で終わっていたかもしれません。けれど「補助金の採択にも効く」とわかった瞬間、優先順位が一気に上がったのです。中小企業が使える補助金の加点を狙う準備として見ると、事業継続力強化計画は費用対効果の高い制度だと言えます。
「申請書は出したことにしておこう」では、意味がない
ここで、冒頭の社長自身が口にした、核心を突く言葉があります。「申請だけなら、うちでもできるかもしれん。でも、肝心の中身がわからへんまま書類だけ出して、『できたことにしとこう』ってなりそうやなと。それやったら、意味のない認定になってしまう」。
これは、私たちが第三者の視点で状況を整理したときにも、まさに同じ構造が見えてきた部分です。事業継続力強化計画は、書類を揃えて認定を取ること自体はそれほど難しくありません。難しいのは、いざ災害が起きたときに本当に機能する「中身」を作ることです。安否確認のルールが実態に合っているか、優先して守る設備の判断が現場感覚とずれていないか。ここがずれていると、認定という紙は手に入っても、本番で会社を守れません。
だからこそ、自社でできる部分と、手を借りたほうがいい部分を分けて考えることが大事です。
- ●自社でできること:GBizIDの登録、自社の現状(設備・人員・立地リスク)の洗い出し、日頃の段取りの言語化
- ●手を借りると早い・確実なこと:計画の「中身」が本番で機能する形になっているかの点検、補助金の加点まで見据えた書き方、電子申請の詰まりやすい箇所の補助
「難しそうだから丸ごと専門家に任せる」でも、「安いから全部自力で出す」でもありません。どこが自社でできて、どこは伴走してもらったほうが確実か。この線引きこそが、意味のある認定と、紙だけの認定を分けます。
アドバイスをして資料を置いていくだけでは、本当の備えは進みません。現場の実態に合わせて中身を一緒に組み立ててこそ、その計画は「いざ」というときに動く。私たちがこの制度の支援で大切にしているのも、まさにこの一点です。
長年の「先送り」に、初めて具体的な見通しが立った瞬間
画面共有で経済産業省のページを開き、申請フローを一つずつ追いながら説明していったとき、社長の表情が変わっていきました。「なんや、そんなもんでええんか」。何年も「やらなあかん」と思いながら手をつけられずにいたものが、45日という具体的な期間と、申請書とチェックシートという具体的な作業に姿を変えた瞬間でした。
「これは、ぜひやりたい。やりたい気持ちはずっとあったけど、どうしたらいいかわからんかっただけなんです」。この言葉に、この制度をめぐる中小企業の実像が凝縮されています。多くの経営者は、やる気がないのではありません。「何から、どう手をつければいいか」の地図がなかっただけなのです。
この会社では、事業継続力強化計画に加えて、他の認定もあわせて取得する方向で話がまとまりました。津波への切実な不安を抱えたまま何年も止まっていた課題に、ようやく最初の一歩目が刻まれた。安否確認の段取りが「社長の頭の中」から「会社の書類」に変わり、いざというときに社員が拠り所にできる形になっていく。その道筋が、初めてはっきりと見えたのです。
まとめ
① 事業継続力強化計画は「重い書類仕事」ではない
作るのは申請書とチェックシートで、電子申請システムから提出すれば、おおむね45日で認定が下ります。何十枚ものマニュアルは不要です。パートやアルバイトだけの会社でも取得でき、対象企業の2〜5%程度しか持っていないからこそ、取るだけで差がつきます。
② 社員を守る備えと、補助金の加点が同時に手に入る
この認定は、ものづくり補助金や省力化補助金など複数の補助金で共通の加点項目になります。災害対策と採択率の底上げが、ひとつの手続きで前に進む。工場の新設や設備投資を控えている会社ほど、費用対効果は大きくなります。
③ 「取ること」より「本番で機能すること」が本質
書類を揃えて認定を取るのは難しくありません。難しいのは、いざというとき現場で動く中身にすることです。GBizIDの登録や現状把握は自社で進め、中身の点検や補助金まで見据えた書き方は手を借りる。この線引きが、紙だけの認定と、会社を守る認定を分けます。
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最後に
「津波や地震が怖い」「BCPはやらなあかんと思っている」——そう感じながら、何から手をつければいいかわからず先送りにしている経営者の方は、決して少なくありません。特に沿岸部や、大型の設備投資を控えている製造業では、この一手が会社と社員を守る備えにも、補助金採択の後押しにもなります。
事業継続力強化計画は、思っているよりずっと現実的に取り組める制度です。自社でできる部分と、伴走したほうが確実な部分を一緒に整理するだけでも、長年止まっていた課題が動き出します。同じように「やりたいけれど、どう進めればいいかわからない」とお悩みでしたら、一度ご相談ください。御社の立地や事業計画に合わせて、無理のない進め方を一緒に描いていきます。
この記事を書いた人
前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。
現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。
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