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キャリアアップ助成金とは?|非正規の正社員化に使える申請条件
目次
「非正規のパートを正社員にしたい」——その一歩を後押しする助成金がある
「長く働いてくれているパートさんを、そろそろ正社員に」「有期契約の社員を、腰を据えて戦力にしたい」——そう考えたとき、後押しになるのがキャリアアップ助成金です。非正規雇用の労働者を正社員に転換した会社に、助成金が支給される制度です。
人手不足のいま、すでにいる非正規の人材を正社員化して定着させることは、新規採用と同じくらい重要な打ち手です。その一歩を、国が金銭面で支援してくれる。使わない手はありません。ただし、進め方の順番を間違えると、まったく受け取れなくなる制度でもあります。
この記事では、キャリアアップ助成金とは何か、代表的な正社員化コースの仕組み、受給の要件とつまずきポイント、そして申請の進め方を、厚生労働省の情報をもとに整理します。押さえるべきは次の4点です。
💡 この記事でわかること:
- ●キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者を正社員化・処遇改善した会社への助成金
- ●代表は「正社員化コース」——有期・無期の非正規を正社員に転換すると支給される
- ●最重要:取り組みの“前”に「キャリアアップ計画」を労働局へ提出する(順番が命)
- ●就業規則の転換制度・賃金増額など要件があり、金額は年度で改定される(最新は要確認)
そもそもキャリアアップ助成金とは
キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者(有期・パート・派遣)の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善に取り組んだ事業主に支給される、厚生労働省の助成金です。いくつかのコースがあり、なかでも中小企業がよく使うのが「正社員化コース」です。
正社員化コースは、有期契約や無期のパート・アルバイトなどを、正社員(多様な正社員=勤務地限定・職務限定・短時間正社員を含む)に転換した場合に支給されます。派遣労働者を正社員として直接雇用する場合も対象になり得ます。
💡 なぜ「定着」に効くのか
新しく人を採るには、求人費も、育てる時間もかかります。すでに仕事を覚えている非正規の人を正社員化するのは、採用コストをかけずに戦力を安定させる合理的な方法です。助成金は、その決断の後押しになります。
正社員化コースの仕組み
正社員化コースは、ざっくり言えば「非正規を正社員に転換し、一定期間(転換後6か月など)雇用し、賃金を上げたら、1人あたり一定額が支給される」という仕組みです。1年度に1事業所あたり申請できる人数には上限(例:20人)があります。
支給額は、有期からの転換か無期からの転換かなどで異なり、中小企業には手厚くなっています。金額の水準としては1人あたり数十万円規模ですが、金額・加算措置は年度ごとに改定されるため、実際の申請にあたっては最新のパンフレット・交付要綱で必ず確認してください。
⚠️ 注意
助成金は、対象者に支払った賃金の総額が上限になる場合があります。また、支給額・要件・加算は毎年度見直されます。この記事の内容は制度の全体像をつかむための参考であり、具体的な金額・要件は、必ず厚生労働省の最新版と管轄の労働局で確認してください。
受給の要件とつまずきポイント
正社員化コースは、要件を1つでも外すと支給されません。中小企業がつまずきやすいのは、次のような点です。
| よくあるつまずき | なぜダメか |
|---|---|
| 先に正社員にしてから申請しようとする | 取り組みの“前”にキャリアアップ計画の提出が必要。順番を誤ると対象外 |
| 就業規則に「転換制度」が定められていない | 非正規から正社員へ転換する規定が就業規則にないと要件を満たさない |
| 転換時に賃金がほとんど上がっていない | 転換前後で一定以上の賃金増額が要件。名ばかりの転換は対象外 |
| 正社員と非正規で就業規則が区分されていない | 両者が別々の規定で管理されていることが前提になる |
とくに多いのが、「先に正社員にしてしまった」というケースです。この助成金は、転換の前に「キャリアアップ計画」を提出しておくことが大前提。良かれと思って先に正社員化したら対象外だった、という取りこぼしが後を絶ちません。また、就業規則に“非正規から正社員への転換制度”が定められていることも必須で、ここが抜けている中小企業は少なくありません。
申請の進め方|4ステップ
STEP1:キャリアアップ計画を作成し、労働局へ提出する(取り組みの前)
最初にやるのが、キャリアアップ計画の作成と提出です。これは「今後、非正規の人材をどうキャリアアップさせていくか」の全体計画で、正社員化などの取り組みを始める前日までに、管轄の労働局(またはハローワーク)へ提出しておく必要があります。この提出がないと、その後どれだけ正社員化しても助成の対象になりません。すべての出発点であり、いちばんの落とし穴でもあります。
「そのうち出そう」ではなく、正社員化を考え始めた時点で、まず計画を出す——この順番だけは、絶対に守ってください。
STEP2:就業規則に「転換制度」を整備する
次に、就業規則(または労働協約)に、非正規から正社員へ転換する制度を定めます。「有期契約労働者を、勤続◯年以上・人事評価などを条件に正社員に転換できる」といった規定です。この規定にもとづいて転換することが、受給の要件になります。あわせて、正社員と非正規で就業規則が区分されていることも確認します。
STEP3:規定にもとづいて転換し、6か月以上雇用して賃金を上げる
整えた転換制度にもとづいて、対象者を実際に正社員へ転換します。転換後、一定期間(例:6か月)以上、正社員として雇用し、その間の賃金が転換前より一定以上増えていることが求められます。ここで「肩書きだけ正社員にして、賃金はほぼ据え置き」だと要件を満たさないため、処遇の改善をセットで行います。
STEP4:支給申請を行う
転換後の一定期間の雇用を経て、定められた申請期間内(例:6か月経過後の2か月以内)に、管轄の労働局へ支給申請を行います。転換の事実、賃金の増額、雇用の継続などを示す書類を添えて提出します。申請期間を過ぎると受け取れないため、転換した日から逆算して、申請のスケジュールを管理しておきます。
活用事例|キャリアアップ助成金、どう使うか(ケース別)
戦力になっているパートを正社員にしたい会社。まずキャリアアップ計画を提出し、就業規則に転換制度を整えてから転換します。助成金で採用コストをかけずに定着を図りつつ、本人の処遇改善(賃金アップ)も実現。「辞められたら困る人」を腰を据えて戦力化できます。
有期契約を繰り返してきた社員を正社員化するケース。無期転換ルール(通算5年)への対応とあわせて、キャリアアップ助成金を活用します。計画提出→就業規則整備→転換の順番を守り、賃金増額の要件も満たすよう設計します。
非正規中心だった会社が、幹部候補を育てたい段階。キャリアアップ計画を軸に、「どの層を・いつ・どう正社員化するか」の道筋を描きます。助成金を“きっかけ”に、非正規のキャリアパスを社内に用意することが、採用力・定着力の底上げになります。
【参照】
厚生労働省「キャリアアップ助成金」
厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」
まとめ
キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者を正社員化・処遇改善した会社への助成金です。代表的な正社員化コースは、有期・無期の非正規を正社員に転換し、一定期間雇用して賃金を上げることで支給されます。
最重要は“順番”です。取り組みの前にキャリアアップ計画を提出し、就業規則に転換制度を整えてから転換する——この流れを守らないと、どれだけ正社員化しても対象外になります。金額・要件は年度で改定されるため、最新は厚生労働省で必ず確認しましょう。
正社員化のほかにも、採用・育成・処遇の場面ごとに使える助成金があります。違いと選び方は、中小企業が使える雇用関係助成金ガイド|補助金との違いと選び方でまとめています。
すでにいる人材を正社員化して定着させることは、採用と並ぶ人手不足対策です。助成金を後押しに、「辞められたら困る人」を戦力として腰を据えて迎える一歩を踏み出せます。
転換した人に長く働いてもらうには、迎え入れる側の設計も要ります。計画・募集・選考・受け入れの4段階は、中小企業の採用でまとめています。
最後に
助成金は、知って・順番どおりに動けば受け取れますが、知らずに動くと取りこぼす——その差が大きい制度です。キャリアアップ助成金は、非正規の戦力化という前向きな一手を、確実に後押ししてくれます。
私たちは、キャリアアップ計画の作成から、就業規則の転換制度の整備、転換の実務、支給申請までを、順番を外さないようハンズオンで支援します。「正社員化を考えているが、何から手をつければ」という段階からで大丈夫です。まずはお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。
現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。
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