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中期経営計画の作り方|無料テンプレートと策定費用の2/3補助

経営戦略

「計画を作っても、どうせ計画倒れになる」——続く計画は“作り方”が違う

「経営計画を作ってみたことはあるが、結局は棚の中で眠っている」「立派な計画書より、目の前の仕事が優先になる」——中小企業の経営者から、私たちはよくこうした声を聞きます。中期経営計画に苦手意識を持つ会社は少なくありません。

でも、計画倒れになるのには理由があります。逆に言えば、その理由を避ける“作り方”をすれば、計画は日々の判断を助ける実用的な道具になります。中期経営計画は、資金調達の説明材料になり、社内の方向をそろえ、次の一手を明確にします。

この記事では、中期経営計画とは何か、なぜ計画倒れになるのか、そして“続く”計画の作り方を、中小機構などの情報をもとに整理します。押さえるべきは次の4点です。

💡 この記事でわかること:

  • 中期経営計画は、3〜5年後の「ありたい姿」と、そこへ至る道筋を示す計画
  • 基本の3要素は「現状把握」「目標設定(ありたい姿)」「アクションプラン」
  • 計画倒れの主因は、①社長の頭の中だけ ②数字止まりで行動に落ちていない ③作って棚に
  • 続く計画のコツは、アクションを「誰が・いつ・何を」まで具体化し、月次でふりかえること

そもそも中期経営計画とは

中期経営計画とは、おおむね3〜5年の期間で、会社が「どうなっていたいか(ありたい姿)」と、そこへ到達するための戦略・数値目標・行動計画をまとめたものです。1年ごとの単年度計画(予算)が“足元”を管理するものだとすれば、中期経営計画は“進む方向”を定める地図にあたります。

計画には、どんな種類でも共通する3つの要素があります。「現状把握」「目標設定」「アクションプラン」です。

計画の3要素 問い
① 現状把握 今、自社はどんな状態か(数字と事業の中身の両面で)
② 目標設定(ありたい姿) 3〜5年後、どうなっていたいか。それを数字で表すといくらか
③ アクションプラン そこへ行くために、誰が・いつ・何をするか

理想は、まず長期のビジョン(会社の夢・ありたい姿)を描き、それを3〜5年の中期計画に落とし、さらに単年度のアクションに分解するという流れです。大きな方向から、日々の行動へと橋を架けていくイメージです。

なぜ中小企業の計画は“計画倒れ”になるのか

① 計画が「社長の頭の中」だけにある

方向性は社長の中にあるのに、それが言葉や数字になっておらず、社員と共有されていない。これでは、社長がいちいち指示しないと物事が進まず、計画は“社長の記憶”のまま消えていきます。頭の中を、誰もが見られる形にすることが第一歩です。

② 数字は立てたが、「行動」に落ちていない

「3年で売上を1.5倍に」という数字はあるのに、そのために誰が何をするのかが決まっていない。数字は結果であって、行動ではありません。行動に翻訳されていない数字は、努力目標のまま終わります

③ 作って“棚に入れて終わり”になっている

計画を作ったこと自体に満足し、その後ふりかえる場がない。中小企業庁が用意している早期経営改善計画でも、計画を作ったあとに「進捗・取組状況の確認」「対応策の検討」「金融機関等への報告」を続けることが、支援の工程として定められています。計画は「立てるもの」ではなく「回すもの」です。進捗を見て、ズレたら直す——このサイクルがないと、計画はすぐに現実と乖離します。

“続く”中期経営計画の作り方|5ステップ

STEP1:現状を把握する(数字と事業の両面で)

まず、いまの自社の状態を正しくつかみます。財務の数字(売上・利益・資金繰り)に加えて、自社の強み・弱み、顧客・競合・市場の動きも見ます。ここで役立つのが、ローカルベンチマーク(ロカベン)のような健康診断ツールや、顧客・競合・自社を見る3C分析です。現状認識がずれていると、そこから立てる計画すべてがずれてしまうため、ここは丁寧に行います。

ポイントは、良い面も悪い面も直視することです。「本当は資金繰りが厳しい」「特定の取引先に依存している」といった不都合な事実こそ、計画で手を打つべき対象になります。

STEP2:3〜5年後の「ありたい姿」を言葉にする

次に、3〜5年後にどうなっていたいかを描きます。売上規模だけでなく、どんな会社でありたいか、何で選ばれる会社になりたいかという質の面も言葉にします。ここは経営者の想い(ビジョン)を出す場面です。社員も巻き込んで対話すると、「自分たちの計画」という当事者意識が生まれ、後の実行力が変わります。

STEP3:ありたい姿を「数値目標」に翻訳する

描いた姿を、数字に落とします。売上高、粗利(付加価値)、必要な人員、そのための資金——これらを、3〜5年の数値計画として組み立てます。大切なのは、数字に根拠があること。「なんとなく1.5倍」ではなく、「新規顧客を年◯社増やし、単価を◯円上げると、こうなる」というように、行動と数字をつなげます。

STEP4:アクションプランに分解する(誰が・いつ・何を)

ここが“続く計画”の心臓部です。数値目標を達成するための取り組みを、「誰が・いつまでに・何を・どうやるか」まで具体化します。「新規開拓を強化」ではなく、「営業の◯◯さんが、今期中に、既存客への紹介依頼を月◯件行う」というレベルまで落とします。担当と期限が入って初めて、計画は実行できる形になります。

すべてを一度に詰め込まず、まずは効果の大きい数個に絞るのがコツです。あれもこれもと盛り込むと、結局どれも進まなくなります。重要な取り組みに力を集中させます。

STEP5:月次でふりかえり、計画を“回す”

計画は作った瞬間から古くなり始めます。だからこそ、月次で進捗をふりかえる場を設けます。アクションが進んだか、数字は計画どおりか、ズレているなら何が原因か——を短時間でも定期的に確認し、必要なら計画を修正します。この「立てる→やる→ふりかえる→直す」のサイクルが回り始めると、計画は棚の書類ではなく、経営の道具になります。

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計画書は白紙から作らない——公的なテンプレートがある

中期経営計画を作ろうとして、「どんな様式で書けばいいのか」で止まってしまうことがあります。ここは調べる必要がありません。中小企業庁が、計画書のテンプレートをExcelファイルでそのまま配っています(同庁の呼び方は「ひな形」です)。

正確に言うと、これは「早期経営改善計画」という別の制度の様式です。資金繰りや採算の管理を立て直したい会社が使う制度なので、前向きな中期経営計画とは目的が違います。ただし求められている中身はほとんど同じで、型として使う分に過不足はありません。

ひな形が求めるもの 何を書くか この記事のステップ
ビジネスモデル俯瞰図 収益の仕組みと商流を1枚で見えるようにする STEP1
経営課題の内容と解決に向けた基本方針 現状分析から課題を絞り、打ち手の方向を決める STEP1・STEP2
実施計画(アクションプラン)と伴走支援計画 誰が・いつ・何をするか。誰が進捗を見るか STEP4・STEP5
実態貸借対照表・損益計算書などの計数計画 ありたい姿を数字に翻訳する STEP3
資金繰表(実績・計画) 過去の資金の動きを分析し、将来の資金計画を作る 該当なし

最後の1行だけ、この記事の5ステップに対応するものがありません。売上と利益の計画を作っても、それを回すお金が続くかには答えていない——ここが、計画書として外に出すときにいちばん抜けやすい部分です。

現状把握には、ローカルベンチマークシートも使えます。中小企業庁は、ロカベンで作った「商流・業務フロー」をそのままビジネスモデル俯瞰図として提出してよいと案内しています。ロカベンの中身はローカルベンチマークとは?|中小企業の「健康診断」6指標で解説しています。

✓ あわせて読みたいローカルベンチマークとは?|中小企業の「健康診断」6指標ローカルベンチマーク(ロカベン)は、経済産業省の無料ツール。財務6指標に業種・規模別で1〜5点が付き、30点満点でA〜Dに判定されます。評点…

資金繰りの見通しには「資金予定表かんたん作成ツール」(通常用・製造業用の2種類)が用意されていて、質問に数字を入れていくだけで資金予定表ができます。このテンプレートも資金予定表のツールも、中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」のページから無料でダウンロードできます。

参考(中小企業庁):早期経営改善計画策定支援経営改善計画策定支援

計画づくりの費用は、3分の2が補助される

専門家に手伝ってもらえば費用はかかりますが、この費用には国の補助があります。認定経営革新等支援機関(国が認定した税理士などの専門家)の支援を受けて計画を作る場合、支払った費用の3分の2を中小企業活性化協議会が負担します。

制度は、取引金融機関に返済条件の変更などの金融支援を求めるかどうかで分かれます。

制度 どんな会社向けか 補助対象と上限(補助率はいずれも3分の2)
早期経営改善計画策定支援 金融支援は求めない。資金繰りや採算の管理から立て直したい段階 計画策定 上限50万円/伴走支援 上限30万円。事業承継先探索の企業概要書作成と金融機関交渉は各10万円まで加算できる
経営改善計画策定支援(405事業)通常枠 返済条件の変更など、金融支援を伴う本格的な改善が必要 計画策定 上限200万円/伴走支援 上限100万円/金融機関交渉 上限10万円
同 中小版GL枠 中小企業の事業再生等に関するガイドラインに基づく再生・廃業 デューデリジェンス 上限300万円/計画策定 上限300万円/伴走支援 上限100万円

金融機関交渉の費用が対象になるのは、経営者保証の解除に向けた計画を作り、弁護士など認定経営革新等支援機関に交渉を任せる場合に限られます。社長個人の保証を外したい会社は、その狙いを最初から計画に組み込んでおくと、費用の面でも有利になります。

なお、ここで挙げた2つは「経営改善」の制度です。前向きな成長計画に公的な後ろ盾を付けたいなら、経営革新計画や経営力向上計画といった認定制度が別にあります。目的別の使い分けは中小企業の認定・計画制度を一覧比較|使い分けと補助金加点の取り方に整理しています。

✓ あわせて読みたい中小企業の認定・計画制度を一覧比較|使い分けと補助金加点の取り方経営革新計画・経営力向上計画・先端設備等導入計画・BCP・パートナーシップ構築宣言など、中小企業が使える認定・計画制度を1枚に整理。目的別の…

参考(中小企業庁):経営改善計画策定支援事業(早期経営改善計画策定支援)に関する手引き(令和8年3月31日改訂)経営改善計画策定支援に関する手引き(2026年5月1日改訂)

💬 実行まで一緒に動きます制度の当てはめから社内への落とし込みまで、右腕として伴走します。相談してみる

申請の前に知っておく5つの落とし穴

費用の補助を受けるつもりなら、先に条件を確かめてください。手引きに書かれている、実務でつまずきやすい5点です。

# 落とし穴 中身
自社だけで作った計画は対象外 どちらの制度も、認定経営革新等支援機関と連名で申請する。支援を受ける前に自分で作り上げてしまうと費用の対象にならない
金融機関を先に巻き込む 早期経営改善計画は、メイン行または準メイン行の事前相談書を申請書に添える(金融機関自身が支援機関として連名で申請する場合は不要)。405事業は、主要金融機関の連名がなければ金融支援を検討する旨の確認書面が要る
計画を金融機関へ出して初めて請求できる 早期経営改善計画は金融機関に提出した後、405事業は金融機関の同意を得た後に、費用の支払申請を行う。社内文書のままでは終われない
支援機関が従来から無償でやっている業務は対象外 顧問税理士がもともとサービスで行っている作業を、この制度の費用として計上することはできない
有効期限がある 早期経営改善計画は申請が受理された日から1年、405事業は2年(405事業は特段の理由が認められれば延長できる)。期限までに費用支払申請書を出さないと失効する

外部委託の扱いも制度で違います。早期経営改善計画は、計画書の作成と伴走支援が主たる業務であるため外部委託が認められていません。405事業は計画策定の主な部分を支援機関が自ら行うことが条件で、不動産鑑定業務などは外部委託できます。

手引きは早期経営改善計画が令和8年3月31日、405事業が2026年5月1日に改訂されています。上限額も様式も改訂で変わるため、申請の前に中小企業庁のページで最新版を見てください。どの制度が自社に合うかは会社ごとに事情が違うので、迷ったら都道府県の中小企業活性化協議会に相談するのが確実です(相談は無料で、秘密は厳守されます)。

参考(中小企業庁):中小企業活性化協議会

活用事例|中期経営計画、どう作るか(ケース別)

同じ「中期経営計画を作りたい」でも、つまずいている場所は会社ごとに違います。どのステップを厚くするかは、いま何に困っているかで決まります。よくある3つの状況で見ていきます。

ケース①:社長の頭の中を、社員と共有したい会社

方向性は社長にあるが、社員に伝わっていない会社。まずロカベン等で現状を可視化し、ありたい姿を幹部と対話しながら言葉にします。計画づくりのプロセス自体が共有の場になり、「社長がいないと動けない」状態からの脱却につながります。

ケース②:金融機関に将来性を示したい会社

決算書の数字だけでは評価されづらい会社にとって、中期経営計画は「これからどう伸びるか」を示す材料になります。数値目標とアクションプランをセットで示すことで、融資の判断材料になります。早期経営改善計画では、作った計画をメイン行または準メイン行へ提出することが手続きに組み込まれています。

ケース③:過去に計画倒れを経験した会社

「作ったが続かなかった」会社は、STEP4(誰が・いつ・何を)とSTEP5(月次ふりかえり)を特に厚くします。立派な計画書より、少数の重要アクションを確実に回す仕組みを優先。小さく始めて回し続けることが、計画倒れを防ぐ最短ルートです。

参考(中小機構):J-Net21「経営計画の策定」J-Net21「中期経営計画には何を盛り込めばよいか」

まとめ

中期経営計画は、3〜5年後のありたい姿と、そこへ至る道筋を示す計画です。基本は「現状把握」「目標設定」「アクションプラン」の3要素。長期ビジョンを中期に落とし、さらに単年度の行動へと分解していきます。

計画倒れの主因は、①社長の頭の中だけ、②数字止まりで行動に落ちていない、③作って棚に、の3つ。これを避けるには、アクションを「誰が・いつ・何を」まで具体化し、月次でふりかえって計画を“回す”ことです。

大切なのは、完璧な計画書を作ることではなく、続く計画にすること。小さく始めて回し続けることが、いちばんの近道です。

回し続けるには、その前に手元の資金が続く状態にしておく必要があります。返済条件の見直しと原資の作り方は、中小企業の資金繰り改善でまとめています。計画の初年度に資金が詰まると、そこで回すのをやめてしまうためです。

✓ あわせて読みたい中小企業の資金繰り改善|返済を半分にした交渉と原資の作り方中小企業の資金繰り改善は、打ち手の順番で結果が変わります。資金繰り表で3か月先を見る方法、借入の一本化と銀行交渉の進め方、単価と回収の見直し…

最後に

中期経営計画は、うまく回せば、資金調達・社内の方向づけ・次の一手を一度に前進させられる道具です。逆に、作って終わりにすると、時間をかけた割に何も変わりません。差を生むのは“作り方”と“回し方”です。

私たちは、現状把握から、ありたい姿の言語化、数値計画とアクションプランづくり、そして月次でのふりかえりの伴走まで、計画が“回る”ところまでハンズオンで支援します。「作っても続かなかった」という経験がある方こそ、お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

金井 春樹(株式会社TRAVEL LIKE Talent Partner事業部 取締役COO / TAM)

前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。

現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。

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