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中小企業の採用|何から始める?計画・募集・選考・受け入れの4段階
目次
「求人は出しているのに、応募も定着もしない」——止まっているのは募集の前かもしれません
人が足りないのは、痛いほど分かっている。だから求人媒体に載せた。それでも応募は来ない。たまに来ても、入って数か月で辞めてしまう。何から手をつければいいのか順番が見えないまま、媒体費だけが毎月出ていく——。5〜50名規模の会社で、こうした状態にはまっている社長は少なくありません。
先に結論をお伝えします。中小企業の採用がうまく回らないとき、原因の多くは「募集のやり方」ではなく、募集の前後にある工程が抜けていることにあります。採用は「求人を出す」という一点の作業ではなく、①計画 → ②募集 → ③選考 → ④受け入れ・定着、という4つの段階がつながった一連の流れです。どこか一つが欠けると、そこから先がすべて空回りします。
たとえば、どんな人を何人・いつまでに・いくらで採るかという計画(①)が曖昧なまま媒体だけ選ぶと、求人票(②)の言葉もぼやけて応募が集まりません。逆に応募が来ても、見極めの基準(③)がなければ「なんとなく良さそう」で採ってしまい、受け入れの仕組み(④)がなければ早期離職につながります。
この記事では、採用を4段階に分けて全体像を示したうえで、「あなたの会社が今どこで止まっているか」を見つけ、そこから手をつけるための道筋を整理します。中小企業が大企業と同じ土俵(待遇の高さ)で戦わずに人を採る考え方も、あわせてお伝えします。
💡 この記事でわかること:
- ●採用を「募集」だけで捉えると、なぜ空回りするのか
- ●採用を成り立たせる4つの段階(計画・募集・選考・受け入れ)の全体像
- ●中小企業が待遇以外で勝負するための「自社の魅力の言語化」
- ●自社が今どこで止まっているかの見つけ方と、次の一手の決め方
そもそも「採用の進め方」とは
採用の進め方とは、「求人を出す」という一つの作業ではなく、必要な人材像を決めるところから、入社した人が戦力として定着するところまでの一連の流れを設計することを指します。募集はその流れの一部にすぎません。
具体的には、①計画(誰を・何人・いつまでに・いくらの予算で採るか)、②募集(求人票の作成と媒体の選定)、③選考(応募者を見極める基準と面接の設計)、④受け入れ・定着(入社後の立ち上がり支援)、の4段階に分かれます。
ここで大事なのは、採用は「募集の巧拙」だけで決まらない、という点です。求人票を上手に書いても、そもそも採るべき人物像が定まっていなければ言葉は刺さりません。逆に良い人が採れても、迎え入れる側の準備がなければ早期離職で振り出しに戻ります。つまり採用の成否は、4段階のうち一番弱い工程で決まるのです。
採用を成り立たせる4つの段階
採用は「募集」の一点ではなく、次の4段階が一本につながった流れとして捉え直すのが出発点です。まずは全体像を頭に入れてください。各段階には、それぞれ特有のつまずきポイントがあります。
①計画は、採用の土台です。「どんな仕事を任せたいから、どんな人を、何人、いつまでに、いくらの予算で採るのか」を言葉にする段階。ここが曖昧だと、以降のすべてがぼやけます。「とにかく人が欲しい」から一歩進めて、任せたい業務を具体的に書き出すことが第一歩です。
②募集は、決めた人物像に「見つけてもらう・応募してもらう」段階です。求人票の言葉と、載せる場所(媒体)の選定が中心。ここで中小企業がやりがちなのが、大企業と同じく待遇の高さで勝負しようとして埋もれてしまうこと。勝ち筋は後述する「自社の魅力の言語化」にあります。
③選考は、応募者が自社に合うかを見極める段階です。基準を決めずに面接に臨むと、話が上手い人や第一印象の良い人に引っ張られ、入社後のミスマッチにつながります。何を確認する場なのかを設計しておくことが要です。
④受け入れ・定着は、入社した人が戦力になるまで支える段階。「採って終わり」にせず、最初の数か月の立ち上がりを設計します。ここが弱いと、せっかく採った人が辞め、採用のやり直しになります。
中小企業がここで押さえておきたいのは、大企業と同じ土俵で戦わないという発想です。採用力は給与や福利厚生の高さだけで決まるわけではありません。「社長との距離が近く裁量が大きい」「任される範囲が広く成長が早い」「地域に根ざして腰を据えて働ける」——こうした自社ならではの魅力を言葉にできれば、待遇では測れない層に届きます。魅力は「ある/ない」ではなく、言語化できているかどうかの問題であることが多いのです。
4つの段階を、「症状」から逆に引けるようにしておくと、次の一手が決まります。
| いま出ている症状 | 弱っている段階 | まず手をつけること |
|---|---|---|
| なんとなく人が足りない気がする | ①計画 | 事業計画から必要人数を逆算する |
| 求人を出しても応募が来ない | ②募集 | 仕事内容の具体化と、媒体の選び直し |
| 応募は来るが、人物像と合わない | ②募集 | 誰に届けたいかを決めてから媒体を選ぶ |
| 採ったあとで「思っていたのと違う」 | ③選考 | 確認項目を先に決めてから面接する |
| 入社してもすぐ辞める | ④受け入れ | 最初の3か月を設計する |
症状から逆に引くのがコツです。「採用がうまくいかない」とひとくくりにすると打ち手が散りますが、症状を1つに絞れば、手をつける段階は1つに決まります。
進め方|4ステップ
全体像をつかんだら、実際に手を動かす順番で進めます。ポイントは、いきなり②募集から入らず、①計画から順に整えること。すでに走っている会社は、止まっている段階まで戻って立て直します。
STEP1:任せたい仕事と人物像を書き出す
まず「なぜ採るのか」を、業務レベルまで具体化します。「人が足りない」で止めず、任せたい仕事を箇条書きにし、そこから必要なスキル・経験・人柄を逆算します。あわせて、何人・いつまでに・採用にいくらまでかけられるか(媒体費だけでなく入社後の人件費まで)を数字で置きます。ここが定まると、この後の言葉がぶれなくなります。
必要人数を離職率から逆算し、採用単価で予算を置くところまでの手順は、採用計画の立て方|離職率で必要人数を逆算し採用単価で予算を決めるでまとめています。「何人ほしいか」ではなく「何人抜けるか」から入ると、数字が現実に近づきます。
STEP2:自社の魅力を言葉にし、求人票に落とす
次に、待遇以外の自社の魅力を言語化します。裁量の大きさ、任される範囲、社長や現場との距離、働く環境や地域性など、応募者が「ここで働く意味」を感じられる要素を具体的に書き出します。それをそのまま求人票の言葉に反映し、人物像に合った媒体を選びます。応募が来ない原因の多くは、条件そのものより「伝わり方」にあります。
言葉にした魅力を求人票のどの欄にどう落とすかは、求人票の書き方|応募が集まる中小企業の設計で、記載の順番まで含めて整理しています。
求人票には、伝わり方の工夫とは別に、法律で書かなければならない項目があります。募集の時点で明示すべき労働条件は職業安定法で定められていて、2024年4月には業務内容と就業場所の「変更の範囲」、有期契約の更新上限、無期転換の申込みに関する事項が追加されました。書き漏らすと、応募が来る来ない以前の問題になります。
求人票が整ったら、どこに出すかを決めます。ハローワーク・求人サイト・人材紹介は、費用のかかり方も届く層も違うため、同じ求人票でも結果が変わります。使い分けの考え方は求人媒体の選び方|ハローワーク・求人サイト・人材紹介の使い分けでまとめています。
何をどう書くかは、記載例つきで求人に応募が来ない中小企業の原因|まず整える採用ページにまとめていますので、求人票を書き直すときはあわせてご覧ください。
STEP3:見極める基準を決めてから面接する
応募が集まったら、面接の前に「何を確認する場か」を決めます。任せたい仕事(STEP1)に照らして、確認したい経験・行動・価値観を3〜4点に絞り、全員に同じ質問で聞くようにします。基準を先に決めておくことで、印象だけで判断してしまう事態を防げます。
確認項目を決めるときに、もう一つ気をつけることがあります。面接では、聞いてはいけない事項があります。本籍や出生地、家族の職業や収入、住宅の状況、思想や信条、支持政党といった、本人に責任のないことや本来自由であるべきことは、応募者の適性や能力とは関係がないため、把握しようとすること自体が就職差別につながるとされています。何気ない雑談のつもりでも同じです。
聞いてよいことと避けるべきことの線引きは、採用面接で聞いてはいけない質問14|見極めの設計と構造化面接で14の事項に沿って整理しています。面接の質問票を作る前に目を通してください。
STEP4:入社後の最初の数か月を設計する
採用は内定で終わりではありません。入社初日から最初の数か月で、誰が・何を・どの順で教えるかを決めておきます。任せる仕事の範囲を段階的に広げ、定期的に振り返る場を持つだけでも、早期離職は大きく減ります。ここまでを設計して、初めて採用が「投資」として回収できます。
この④を軽く見てはいけない理由は、統計にはっきり表れています。厚生労働省が令和7年10月24日に公表した「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」によると、就職後3年以内の離職率は高卒37.9%・大卒33.8%でした。ただし、これを事業所の規模別に見ると景色が変わります。
| 事業所規模 | 高卒 | 大卒 |
|---|---|---|
| 5人未満 | 63.2% | 57.5% |
| 5〜29人 | 54.6% | 52.0% |
| 30〜99人 | 45.2% | 41.9% |
| 100〜499人 | 36.7% | 33.9% |
| 1,000人以上 | 26.3% | 27.0% |
5〜29人の事業所では、高卒の半数以上が3年以内に辞めています。規模が小さいほど離職率が高いという傾向は、この記事が想定する5〜50名規模の会社に直接あてはまります。裏を返せば、④の受け入れを整えるだけで、同じ募集をしていても手元に残る人数が変わるということです。
入社直後の3か月に何をどの順で用意するかは、オンボーディングと研修の違い|入社3か月の受け入れ設計と定着対策で、初日の流れから1か月後の面談までまとめています。なぜ小さい会社ほど辞めやすいのか、その構造と業務の見える化での防ぎ方は新入社員が辞める割合は?|規模別の離職率と業務可視化での防ぎ方で扱っています。
参考(厚生労働省):新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者) / 新規学卒者の離職状況
参考(厚生労働省):募集時などに明示すべき労働条件が追加されます / 令和6年4月からの職業安定法施行規則の改正 / 公正な採用選考をめざして / 採用選考時に配慮すべき事項
活用事例|採用の進め方(ケース別)
進め方は会社の状況によって入り口が変わります。ここでは「今どこで止まっているか」の違いで、手のつけ方がどう変わるかを、一般化した4つの想定で見てみます(いずれも特定の会社ではなく、よくある型としての例です)。
多くは②募集より前の①計画が曖昧なままです。「経験者募集」とだけ書いた求人票では、どんな仕事を任せたいのかが応募者に伝わりません。この場合はSTEP1に戻り、任せる業務と人物像を具体化したうえで、STEP2で「未経験でも育てる体制がある」「一人ひとりの技術が会社を支える」といった自社の魅力を言葉にすることから始めます。入り口は募集の技術ではなく、計画の解像度です。
つまずきは③選考と④受け入れにあります。面接で見極めきれていない、あるいは入社後に放置してしまっている、のどちらか(または両方)です。STEP3で「自社で長く活躍している人の共通点」から確認項目を作り直し、STEP4で最初の3か月の受け入れ手順を決めます。募集を増やすより、採った人が辞めない仕組みを整えるほうが先です。
一件ごとの採用は成立しているのに、次に活かせていないタイプです。求人票も面接も毎回ゼロから作り直しているなら、①計画の精度に戻ってください。任せる仕事と人物像を1枚にして残せば、次の募集はその修正から始められます。採用を「その都度の作業」から「積み上がる仕組み」に変えるのがこの段階の主題です。
求人票づくりから面接、入社後のフォローまで社長一人が担っていると、本業が押されて選考が雑になり、それが早期離職を生む——という循環に入ります。4段階のうち1つだけでも人に渡すことから始めてください。渡しやすいのは④受け入れです。初日の流れと最初の1か月の手順を紙1枚にすれば、担当は社長でなくても務まります。
このように、同じ「採用がうまくいかない」でも、止まっている段階が違えば打つ手はまったく変わります。募集の前段で止まっているのか、選考で見極められていないのか、応募が来ない具体的な原因については求人に応募が来ない中小企業の原因|まず整える採用ページで、面接での見極めについては採用面接で聞いてはいけない質問14|見極めの設計と構造化面接で、それぞれ詳しく解説しています。
業種で勝ち筋が変わる|同じ求人票でも結果は同じにならない
4段階の順番はどの会社にも共通ですが、どこでつまずくかは業種によって偏ります。自社に近い型から読むと、手を付ける場所が絞れます。
建設業は、そもそも母集団が集まりにくい業種です。若手だけを追いかけると空振りが続くため、シニアの活用や助成金と組み合わせて入口を広げる設計が要ります。この考え方は建設業の採用が難しい理由|人手不足をシニア活用と助成金で解くでまとめています。
製造業は、応募が来ないのではなく給与の見せ方で埋もれていることが多い業種です。地域の賃金相場に対して自社がどの位置にいるかを把握しないまま求人票を書くと、条件面だけで比較されて終わります。相場の調べ方と求人票の書き分けは製造業の採用は給与設計で決まる|賃金相場と求人票の分け方で扱っています。
パート・アルバイトが戦力の中心という会社では、4段階のうち④の比重がさらに大きくなります。シフトの組み方そのものが定着に直結するためです。採用と定着を一続きで設計する進め方は、パート・アルバイトの採用と定着|シフトと戦力化設計にまとめました。
採用にかかるお金と、助成金の使いどころ
採用は費用のかかる打ち手です。媒体費・人材紹介の成功報酬・面接にかかる社内の時間、そして入社後の教育。計画(①)の段階でこれらを合算しておかないと、「採れたけれど採算が合わない」という結果になります。
ここで検討したいのが助成金です。助成金は採用そのものではなく、「採用のしかた」や「採ったあとの処遇」に対して支給されるものが中心で、たとえば試用的な雇い方をした場合、就職が難しい人を雇い入れた場合、非正規から正社員に転換した場合、といった場面ごとにコースが分かれています。
注意したいのは、多くの助成金が「先に計画を出す」ことを条件にしている点です。採用してから申請しようとしても間に合わないケースがあります。計画(①)の段階で、使えそうな助成金があるかを一度確認しておくのが順番として正しくなります。
支給額や要件は年度ごとに改定されるため、この記事では金額に踏み込みません。どの場面でどのコースが候補になるか、補助金との違いを含めた全体像は、中小企業が使える雇用関係助成金ガイド|補助金との違いと選び方で整理しています。申請の前には必ず最新の公募要領を確認し、判断に迷うときは労働局や社会保険労務士に相談してください。
まとめ
最後に要点を3つに整理します。①採用は「募集」の一点ではなく、計画・募集・選考・受け入れの4段階がつながった流れであり、成否は一番弱い工程で決まります。②中小企業は大企業と同じ待遇の土俵で戦わず、裁量や距離の近さといった「自社の魅力の言語化」で勝負するのが現実的です。③手をつける順番は「今どこで止まっているか」で決まります。応募が来ないなら計画へ、辞めるなら受け入れへ——症状から逆算して、詰まっている段階から立て直してください。
最後に
ここまで読んで、「4段階に分けて考えるのは分かった。でも、自社が今どこで止まっているのか、正直はっきりしない」と感じた方もいるかもしれません。それはごく自然なことです。日々現場を回しながら、採用の全工程を客観的に見直すのは、社長一人ではなかなか難しいものです。
私たちTalent Partner(社長の経営参謀®)は、こうした場面で「隣に座る右腕」として動きます。きれいな提案書を置いて帰るのではなく、任せたい仕事の棚卸しから、求人票の言葉づくり、面接での確認項目の設計、入社後の受け入れ手順の整備まで、実際に手を動かすところまで一緒に伴走します。採用は人材の話に見えて、その裏では「今の人件費で本当に採れるのか」という財務や、「入った人が定着する評価・労務の仕組み」まで絡み合っています。人・お金・組織を横断して見られることが、私たちの立ち位置です。
とはいえ、いきなり何かを任せる必要はありません。まずは「うちはどの段階で止まっていそうか」を一緒に整理するだけでも、次の一手はぐっと見えやすくなります。採用にかけた費用が積み上がる前に、順番を確かめることをおすすめします。
採用の進め方で迷っている、何から手をつけるべきか相談したい——そんなときは、無料相談をご利用ください。自社の現状に合わせて、まず整えるべき一段階を一緒に見つけるところからお手伝いします。
この記事を書いた人
前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。
現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。
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