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電子帳簿保存法とは?|中小企業がやるべき対応をやさしく解説

「うちは関係ない」は危険——ほぼすべての会社に関わる法律

メールに添付されたPDFの請求書。それを印刷してファイルに綴じ、元のメールは受信箱に埋もれていく。この扱いは、令和4年(2022年)1月から、すでに要件を満たしていません。「電子帳簿保存法は令和6年からでは」と思われがちですが、その時期は準備が間に合わない会社向けの経過措置が終わった時点で、義務そのものは2年前に始まっています。

関係ないと思われがちな法律ですが、対象はメールでPDFの請求書を受け取ったことがある会社すべてです。従業員数十名規模で、経理を1〜2名が担っている会社も、当然その中に入ります。

先にはっきりさせておきます。3つの区分のうち、義務なのは③電子取引データ保存だけです。①電子帳簿等保存と②スキャナ保存は任意で、やらなくても違反にはなりません。そして③でやることも3つに絞られます。改ざん防止(事務処理規程を備えるなど)、画面と紙で確認できる状態にしておくこと、日付・金額・取引先で検索できるようにすること。国税庁がひな形を公開しているので、小さい会社なら費用をかけずに始められます。

この記事では、電子帳簿保存法とは何か、3つの区分、中小企業が最低限やるべきこと、そして進め方を、国税庁の情報をもとにやさしく整理します。

この記事でわかること

  • 電子帳簿保存法は、帳簿・書類を電子データで保存する際のルールを定めた法律
  • 3つの区分がある:①電子帳簿等保存、②スキャナ保存、③電子取引データ保存
  • 最重要:③電子取引データの保存は“義務”(令和4年1月以降)。①②は任意
  • 対象は、メール・Web等でデータでやりとりした請求書・領収書などのデータ

そもそも電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、税法上の保存義務がある帳簿や書類を、電子データで保存するときのルールを定めた法律です。これまで紙での保存が原則だった帳簿・書類について、一定の要件を満たせば電子データでの保存を認める——という趣旨で、たびたび改正されてきました。

ポイントは、大きく3つの区分があることです。区分によって「電子保存が任意か・義務か」が異なります。ここを混同すると、「全部を電子化しないといけないの?」と不安になったり、逆に「義務の部分」を見落としたりします。

義務は“③電子取引”だけ

  • よくある誤解が「紙の書類も全部スキャンして電子化しなければならない」というもの。そうではありません。義務なのは③電子取引データの保存だけで、①電子帳簿等保存・②スキャナ保存は“電子でもよい”という任意の制度です。まずは③への対応から考えれば十分です。

義務がかかるのは「所得税・法人税の保存義務者」

正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」(平成10年法律第25号)です。この法律の第7条は、電子取引データの保存義務を負う人を「所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者」と定めています。法人と個人事業者は、規模にかかわらずここに入ります。売上が小さいから対象外、という切り分けは条文上ありません。

一方で、消費税法令において保存することとされている電子データ(電子インボイスなど)は、保存の有無が税額計算に影響を及ぼすことなどを勘案して、令和4年1月1日以後も書面に出力して保存することが認められています(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」令和8年7月版 問29)。ただしこれは消費税側の取扱いです。同じデータに所得税・法人税の保存義務がかかっていれば、そちらはデータのまま残す必要があります。「消費税は書面でもよいのだから、全部紙で足りる」とは読み替えられません。

参考(国税庁):電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)電子帳簿保存法の概要

3つの区分

電子帳簿保存法は、大きく3つの区分に分かれます。それぞれ対象と対応が違うので、表で整理します。

3つの区分 対象 対応
①電子帳簿等保存 会計ソフト等で電子的に作成した帳簿・書類 電子のまま保存できる(任意)
②スキャナ保存 紙で受け取った請求書・領収書など。自社が作成して紙で渡した控えも対象(決算関係書類は除く) スキャンして電子保存できる(任意)
③電子取引データ保存 メール・Web等でデータでやりとりした請求書・領収書など 電子データのまま保存する(義務)

中小企業がまず押さえるべきは、③電子取引データ保存です。メールに添付されたPDFの請求書、Web上でダウンロードした領収書、クラウドサービスの利用明細など、データで授受した書類は、データのまま保存するのが原則になります。①②は「電子化してもよい」という選択肢であり、急いで対応する必要はありません。ただし①には、要件を満たすと過少申告加算税が原則10%から5%に軽くなるという優遇があります。その要件と、対象になる帳簿の範囲は優良な電子帳簿とは?|過少申告加算税5%軽減の要件と対象の帳簿で整理しています。③の義務対応が一段落したら、次に検討する価値のある制度です。

この記事の内容を、社内で共有できる資料にまとめています。

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③電子取引データ保存でやること

義務である③について、求められる対応は3つです。国税庁が示す要件をやさしく言い換えると、①改ざんできないようにすること、②保存したデータを画面や紙で確認できるようにしておくこと、③あとで探せるようにすること、の3つになります。なお、自社でシステムを開発して使っている会社だけは、そのシステムの概要を記載した書類の備付けが4つ目として加わります。市販の会計ソフトやクラウドサービスを使っているなら、この4つ目は必要ありません。

柱①:改ざんできないようにする(真実性の確保)

受け取ったデータを、後から書き換えられない状態で保存します。国税庁が示している方法は次の4つのいずれかです。①タイムスタンプが付された後にデータを授受する、②受け取ったデータに自社でタイムスタンプを付ける、③訂正・削除の履歴が残る(または訂正・削除ができない)システムでデータをやりとりし、そのまま保存する、④改ざん防止のための事務処理規程を定めて運用し、備え付ける——の4つです。①から③まではシステム側の対応が要りますが、④は規程を作って運用するだけなので費用がかかりません。小規模な会社では、④の事務処理規程を整えて運用する方法が現実的な選択肢になります。

国税庁は、この事務処理規程のサンプル(ひな形)を公開しています。まずはそれを自社向けに整えるところから始めると、費用をかけずに対応の第一歩を踏み出せます。

紙で受け取った請求書まで含めて、社内の書類の流れごと変えていくなら、ペーパーレス化の進め方|紙業務をなくす手順とつまずき所で、どこから手をつけるかとつまずきどころを整理しています。義務対応と同じ設計で進めると、二度手間になりません。

柱②:画面と紙で確認できるようにする(見読可能装置の備付け)

保存したデータを確認するためのディスプレイやプリンタ等を備え付けておきます。国税庁は、ディスプレイやプリンタの性能や設置台数は要件にしていないと明示しています。手元のパソコンとプリンタで、税務調査のときに整った形で表示・印刷できれば足ります。

さらに、スマートフォンだけで取引をしている場合でも、保存に使っているスマートフォンがあれば、パソコン・プログラム・ディスプレイの備付けは満たしていることになります。

プリンタは本来その場所に備え付けておくものですが、税務調査等の時点で常設していなくても、近隣の有料プリンタ等で求めに応じて速やかに出力できれば、常設していないことだけを理由に要件違反として扱われることはありません。新しく設備を買うことを求める要件ではない、と理解してください。

柱③:あとで探せるようにする(検索性の確保)

保存したデータを、日付・金額・取引先で検索できるようにしておきます。専用システムを使えば自動で検索できますが、そうでない場合も、ファイル名に「日付_取引先_金額」を付けて規則的に保存し、表計算ソフトで索引をつくるといった工夫で対応できます。ただし、この3つで検索できるだけでは足りません。あわせて、日付または金額での範囲指定検索と、2つの要素を組み合わせた検索ができるようにするか、税務調査等のときに電子取引データのダウンロードの求めに応じられるようにするか、どちらかが必要です。ファイル名や索引簿で対応する場合は、後者(求めがあればデータを提出できる状態にしておくこと)が前提になります。

注意

  • 電子帳簿保存法の要件・猶予措置の内容は、改正で変わります。また、売上規模等によって検索要件が緩和される場合や、相当の理由が認められる場合の猶予措置もあります。この記事は全体像をつかむための参考です。自社が具体的に何をどこまで対応すべきかは、必ず国税庁の最新情報を確認し、顧問税理士に相談してください。

柱③が不要になる会社|基準期間の売上高5,000万円以下

柱③(検索性の確保)は、すべての会社に課される要件ではありません。次のどちらかに当てはまり、かつ税務調査等でデータのダウンロードの求めに応じられるようにしている場合は、検索できる状態にしておく必要そのものがなくなります

ひとつは基準期間(2年(期)前)の売上高が5,000万円以下であること、もうひとつは、電子取引データを出力した書面を、整然とした形式かつ明瞭な状態で出力したうえで、取引年月日および取引先ごとに整理された状態で提示・提出できるようにしていることです。

整理の仕方は自由ではなく、取扱通達は課税期間ごとに、①日付順にまとめてから取引先ごとに整理する、②取引先ごとにまとめてから日付順に整理する、③書類の種類ごとに①または②と同じ方法で整理する、のいずれかを挙げています。令和5年12月31日までに行う電子取引では1,000万円以下でしたが、令和6年1月以降は5,000万円以下に広がりました。

自社が当てはまるかどうかは、次の4点で確認します。

確認すること 内容
いつの売上か 個人事業者はその年の前々年、法人はその事業年度の前々事業年度(基準期間)。基準期間が1年でない法人は、その売上高を基準期間の月数で割って12を掛けた金額で判定する
金額の見方 税抜。法人は営業外収益・特別利益を含まず、個人事業者は家事消費高・その他の収入を含まない(一時的に保有する資産の売却額も含まない)。一方、消費税法上の非課税売上額は含む
基準期間がない場合 新規開業・新設法人の初年(度)とその翌年(度)は、基準期間がないため検索要件は不要
共通の前提 どちらの入口でも、税務調査等でデータのダウンロードの求めに応じられるようにしておくことが条件

見落としやすいのは金額の見方です。免税事業者や簡易課税を選んでいる会社でも、非課税売上を足すと5,000万円を超えることがあります。また、書面で整理するほうの入口を選ぶなら、日頃から出力して整理しておくことが前提です。国税庁は、遅滞なく提示等ができるよう書面出力して整理しておく準備を事前にしていなかった場合には、検索機能の確保が不要となるための条件を満たしていないと判断される可能性がある、としています。税務調査の直前にまとめて印刷しても間に合わない、ということです。

参考(国税庁):電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について(令和6年11月)電子取引データ保存要件チェックシート(令和6年11月)

要件どおりに保存できないときの「猶予措置」

要件をそろえるのが間に合わない会社のために、猶予措置が用意されています。事前の届出は不要で、期限も定められていませんが、電子データそのものを保存しないでよい制度ではありません

「相当の理由」があれば、届出なしで使える

猶予措置の入口は2つあります。ひとつは、災害その他やむを得ない事情により保存できなかったことを証明したとき。もうひとつは、所轄税務署長が保存できなかったことについて「相当の理由」があると認め、かつ電子データと出力書面の提示・提出の求めに応じられるようにしているときです。中小企業に効くのは後者です。

「相当の理由」は事業者の実情に応じて判断されるもので、国税庁の取扱通達は、システム等や社内でのワークフローの整備が間に合わない場合等がこれに該当する、としています。国税庁のパンフレットとチェックシートは、これをさらに噛み砕いて、人手不足やシステム整備の資金不足なども相当の理由として認められると案内しています。適用にあたって税務署への事前申請は要りません。

ただし、その事情や理由がなかったとしても要件どおり保存できなかったと認められるときは、猶予措置は使えません。システムも社内のワークフローも整っていて、資金繰りや人手不足といった理由がないのに要件に従って保存していない場合は対象外です。要件どおり保存できていた会社が、特段の事情もなく保存スペースの都合で出力書面を破棄した、という事情も「相当の理由」には当たりません。ただしこの場合でも、書面を捨てる前に、日付・金額・取引先での検索、日付または金額の範囲指定検索、2つ以上の記録項目を組み合わせた検索の3つを備えておけば、検索要件を満たしていることになります。

廃止された宥恕措置との違い|出力書面だけでは足りない

令和5年12月31日までは、やむを得ない事情が認められれば、紙に出力して保存しておけばよいという宥恕措置がありました。これは適用期限の到来をもって廃止され、令和6年1月1日以後の電子取引には現行の猶予措置が適用されます。両者は名前が似ていますが、データ本体の扱いが決定的に違います。

宥恕措置(廃止)と猶予措置(現行)の違い

宥恕措置(〜令和5年12月31日・廃止)

やむを得ない事情
税務署長が認めるもの

出力書面だけの保存でよい
データを残していなくても認められた

適用期限あり
期限の到来をもって廃止された

猶予措置(令和6年1月1日〜・現行)

相当の理由
税務署長が認めるもの

データ本体の保存が必要
出力書面の保存のみでは保存を行ったと扱われない

期限の定めなし
要件に従って保存できる環境が整うまでの措置

猶予措置を使う場合でも、電子データは保存したうえで、そのデータと出力書面の両方を求めに応じて出せる状態にしておく必要があります。しかも国税庁の取扱通達は、「その要求に応じること」とは職員の求めの全てに応じた場合をいい、その求めに一部でも応じない場合は猶予措置の適用は受けられないと明記しています。提出は税務職員の求めた状態で行う必要があり、応じなかった場合、保存されている電磁的記録は国税関係書類以外の書類とみなされないことになります。「調査のときに出せばいい」と軽く構えられる制度ではない、と理解してください。

参考(国税庁):電子帳簿保存法取扱通達(令和7年6月27日付一部改正分まで)電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)

要件どおりに保存しなかったら、どうなるか

罰金が科される制度ではありませんが、不利益は2つの形で用意されています。重加算税の10%加重と、青色申告の承認取消しです。どちらも「保存が不十分だと即座に発動する」という性質のものではないため、正確に押さえておくと過剰な不安も油断も避けられます。

重加算税は10%加重される

電子帳簿保存法第8条第5項は、スキャナ保存の電磁的記録と電子取引の電磁的記録に記録された事項に関して期限後申告・修正申告・更正・決定等があり、国税通則法第68条第1項から第3項までの重加算税に該当するときは、重加算税の額に10%を上乗せすると定めています。上乗せの対象は重加算税の基礎となる税額の全部ではなく、その電子データに記録された事項に係る事実——つまり隠蔽または仮装された事実——に基づく税額の部分に限られます。国税庁は加重の理由を、電子取引データは紙の書類等を保存する場合に比べて複製・改ざん行為が容易で、その痕跡が残りにくいという特性があるからだと説明しています。

裏を返せば、これは隠蔽または仮装があって重加算税が課される場面の上乗せです。保存方法が要件に届いていないだけで自動的に発動するものではありません。ただし、データを差し替えて金額を操作するといった行為が絡めば、紙の時代より重い結果になります。

青色申告の承認取消しは、直ちに起きるものではない

条文上は、電子取引データを保存していないことが青色申告の承認取消し事由になりえます。第8条第3項が、所得税法第150条第1項第1号・法人税法第127条第1項第1号の適用について、第7条(電子取引データの保存)を含めて読み替える規定を置いているためです。

ただし国税庁は、一問一答で次のように明言しています。これは電子データの一部を保存せずに書面を保存していた、という場面についての説明です。その取引が正しく記帳されて申告にも反映されており、保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できるような場合には、それ以外の特段の事由が無いにもかかわらず、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものではない、というものです。ここには「正しく記帳され申告に反映されている」「内容が他から確認できる」「それ以外の特段の事由が無い」という3つの前提が付いている点を落とさないでください。

もっとも、災害その他やむを得ない事情や税務署長が認める相当の理由がないまま要件どおりに保存していない場合は、取消しの対象になり得ます。国税庁は、取消しは違反の程度等を総合勘案のうえ、真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められるかどうかを検討して判断する、としています(事務運営指針に基づく運用)。なお、要件を満たして保存できなかった場合は、その原因等をまとめておくほか、再発防止策等を講じることが望まれる、とも案内されています。

参考(国税庁):電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月) / 参考(e-Gov):電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 第8条

対応の進め方|4ステップ

STEP1:自社の電子取引を洗い出す

まず、自社が「データでやりとりしている書類」を洗い出します。メールで届く請求書、通販サイトの領収書、クラウド会計や決済サービスの明細、電子契約——意外と多いはずです。これらが③の対象になります。何が対象かを把握することが、対応の出発点です。

洗い出しの手がかりになるのが、国税庁の取扱通達が例示する4つの類型です。①いわゆるEDI取引、②インターネット等による取引、③電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルの場合を含む)、④インターネット上にサイトを設け、そのサイトを通じて取引情報を授受する取引。通達は「取引情報が電磁的記録の授受によって行われる取引は通信手段を問わず全て該当する」としたうえでこの4つを挙げているので、限定列挙ではありません。ここに書かれていない手段でも、データで受け渡ししていれば対象になります。

見落としが多いのは次の3つです。インターネットバンキングを利用した振込等、ネット上でしか確認できないクレジットカードや水道光熱費の明細、そして自社が発行して取引先へ送った請求書データです。3つ目は意外に思われますが、「取引情報」は受領するものだけでなく交付するものも含むため、送信側にも保存義務があります。

FAXも確認しておきます。紙で送受信する通常のFAXは書面による取引として扱われますが、複合機のFAX機能を使って電磁的記録により送受信し、その電磁的記録を保存する場合は電子取引に該当します。ペーパーレス化のつもりで複合機を受信データのPDF保存に切り替えた瞬間、そのやりとりが③の対象になる、ということです。

STEP2:保存のルール(事務処理規程)を決める

改ざん防止の方法として、まずは国税庁のひな形をもとにした事務処理規程を整えるのが、費用をかけない現実的な一手です。「誰が・どこに・どんなルールで保存するか」を社内で定め、文書化します。あわせて、検索できる保存方法(ファイル名の付け方や保存先フォルダ)も決めておきます。

国税庁が公開しているサンプルは、法人の例と個人事業者の例の2種類です(いずれもWord形式)。検索性の確保に使える索引簿の作成例(Excel)も同じページにあります。自社の形態に合うほうを選び、社名と実際の運用に合わせて直すのが出発点です。

規程に入れるべき中身は、取扱通達で示されています。自らの規程だけで訂正・削除を防止する場合は、①データの訂正削除を原則禁止すること、②業務処理上の都合で訂正・削除する場合の事務処理手続(訂正削除日、訂正削除理由、訂正削除内容、処理担当者の氏名の記録および保存)、③データ管理責任者および処理責任者の明確化、の3点を含む規程が例として挙げられています。ひな形を落として社名を入れただけで終わらせず、この3点が自社の実態に合った形で書かれているかを確認してください。

事務処理規程を用意するまでの流れ

様式を選ぶ国税庁のサンプルから、法人の例・個人事業者の例のうち自社の形態に合うほうを取る
自社の運用に直す社名と、実際のデータの受け取り方・保存先に合わせて書き換える
3点が入っているか確認訂正削除の原則禁止/訂正・削除時の事務処理手続/管理責任者・処理責任者の明確化
社内へ周知する電子取引情報を扱う従業員と、その管理者へ規程の内容を伝える

改ざん防止の4つの方法は、費用も向く会社も違います。選ぶときの比較軸を整理します。

改ざん防止の方法 費用・手間 向いている会社 落とし穴
①タイムスタンプが付された後に授受する 相手方の対応しだい 取引先が付与済みで送ってくる会社 自社では選べない。付いていないデータには別の方法が要る
②受け取ったデータに自社で付与する サービス利用料 受け取る枚数が多く、処理を標準化できる会社 「通常の期間を経過した後」の取扱いを使うには、授受から付与までの規程が別途必要
③訂正・削除の履歴が残るシステムで授受・保存 システム費用 クラウド会計や電子契約をすでに使っている会社 そのシステムを通っていないデータには効かない
④事務処理規程を定めて運用する 費用はかからない 費用をかけずに始めたい小規模な会社 作って終わりでは足りない。規程どおりの運用と社内への周知が要る

この4つは排他ではありません。授受の方法が複数あるなら、データの様態に応じて使い分けることが認められており、保存場所を複数に分けても差し支えないとされています。ただし、どのデータがどこにあるか分かるように管理する必要があり、合理的な理由なく規則性なく保存先を散逸させた場合は認められません。④を選ぶ会社は、規程の内容を、電子取引情報を扱う従業員とその管理者へ周知することまでを一連の作業と考えてください。

ケース|クラウド会計を入れたのに、経路の外にデータが残っている会社(想定例)

訂正・削除の履歴が残るクラウド会計を導入し、③の方法で改ざん防止は済んだと考えていた会社。ところが取引先からメールで届くPDFの請求書は、そのシステムを通さずに共有フォルダへ保存していました。国税庁は、③の方法をとるには保存だけでなくデータの授受もそのシステム内で行う必要があり、保存だけをそのシステムで行っている場合は改ざん防止の措置を講じたことにならない、としています。授受をシステムの外で行うことがあるなら、別途④の事務処理規程を定めて備え付け、規程どおりに運用する必要があります。どの方法をどのデータに使っているかを、STEP1で洗い出した一覧に書き添えておくと、保存先が散らばりません。なお改ざん防止の措置は、各税法で定められた保存期間にわたって講じ続ける必要があります。

STEP3:保存の仕組みを整え、運用する

決めたルールにもとづき、実際にデータを保存する場所(共有フォルダやクラウドストレージ、会計ソフトなど)を用意し、運用を始めます。担当者だけが分かる状態ではなく、社内で共通のルールとして回るようにします。手作業がつらければ、この段階で対応ツールの導入を検討します。

仕組みを作るときは、保存期間を先に決めてからフォルダの切り方を考えると迷いません。法人は帳簿・書類とも7年、青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度、または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度は10年(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年)です。起算日はその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日になります。

個人事業者(青色申告)は、帳簿・決算関係書類が7年です。現金預金取引等関係書類(領収証・小切手控・預金通帳・借用証など)も原則7年ですが、前々年分の事業所得および不動産所得の金額が300万円以下の方は5年になります。請求書や見積書、契約書、納品書などその他の書類は5年です。ただし消費税の課税事業者が仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等、および適格請求書発行事業者として交付した適格請求書の写し・提供した電磁的記録は、これにかかわらず7年間の保存が必要です。書類の保存期間は、その作成または受領の日の属する年の翌年3月15日の翌日から数えます。

年度をまたいでフォルダを切っておくと、期間が過ぎたものから整理でき、調査の際も探しやすくなります。なお、バックアップデータの保存は法令上の要件ではありませんが、保存期間を通じて適切に保存されるためには望ましい、と国税庁は案内しています。

STEP4:ペーパーレス化・効率化とセットで見直す

せっかく電子データを扱う体制を整えるなら、紙業務のペーパーレス化や、会計・請求のデジタル化とセットで見直すと、義務対応がそのまま効率化になります。「法律だから仕方なく」ではなく、この機会に経理まわりを楽にする——という前向きな捉え方が、投資対効果を高めます。

参考(国税庁):電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)参考資料(各種規程等のサンプル)電子帳簿保存法取扱通達

制度の当てはめから社内への落とし込みまで、右腕として伴走します。

相談してみる

活用事例|電子帳簿保存法への対応(ケース別)

自社がどのパターンに近いかで、やるべきことの量は大きく変わります。制度の当てはめでよく相談を受ける3つの状況を、想定例として整理します。

ケース①:メールのPDF請求書を印刷保存していた会社

取引先からメールで届くPDF請求書を、これまで印刷してファイリングしていた会社。③の対象と気づき、まず国税庁のひな形で事務処理規程を整備。データはフォルダに「日付_取引先_金額」で保存する運用に切り替え、費用をかけずに対応の形を整えました。

ケース②:この機にペーパーレス化まで進めた会社

電帳法対応を機に、紙の請求・経費精算そのものを見直した会社。クラウド会計・経費精算ツールを導入し、データ保存・検索を自動化。義務対応と同時に、経理担当の月末業務を大きく圧縮できました。IT導入補助金でツール費の一部も軽減しています。

ケース③:まず顧問税理士に相談して整理した会社

「何をどこまでやればいいか分からない」という会社。自社の電子取引を洗い出したうえで顧問税理士に相談し、自社の規模に合った対応レベルを確認。過剰投資を避けつつ、必要な対応だけを的確に整えました。

ケース④|複合機のFAXをPDF保存に切り替えた会社(想定例)

FAXは紙だから電帳法とは無関係、と考えていた会社。複合機を受信データのPDF保存に切り替えたところ、そのやりとりは電子取引に該当することになります。設定を変えた時点で対象が増えるため、洗い出しは一度きりではなく、機器やサービスを入れ替えたタイミングで見直すのが安全です。

ケース⑤|基準期間の売上高が5,000万円以下の会社(想定例)

前々事業年度の売上高が5,000万円以下で、税務調査等でデータのダウンロードの求めに応じられる会社。この場合は検索できる状態にしておく要件そのものが不要になります。索引簿づくりに時間をかける前に、まず自社が該当するかどうかを確認したほうが、労力を無駄にしません。

ケース⑥|整備が間に合わず猶予措置で走る会社(想定例)

人手も資金も足りず、要件を満たす保存体制が期限までに整わない会社。猶予措置は事前の届出なしで使えますが、電子データは保存したうえで、データと出力書面の両方を求めに応じて出せる状態にしておく必要があります。書面だけを残してデータを捨てる運用は、猶予措置の下でも認められません。

参考(国税庁):電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?(令和8年6月)電子取引データ保存要件チェックシート(令和6年11月)

参考(国税庁):
電子帳簿等保存制度特設サイト
電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)

まとめ

  • 電子帳簿保存法は、帳簿・書類を電子データで保存する際のルールを定めた法律
  • 3区分がある。①電子帳簿等保存、②スキャナ保存、③電子取引データ保存
  • 中小企業がまず押さえるべきは、義務である③電子取引データ保存
  • ③でやることは3つ。改ざん防止(事務処理規程などで対応)、画面と紙で確認できるようにしておくこと、日付・金額・取引先での検索性の確保
  • 小規模な会社なら、国税庁のひな形を使えば費用をかけずに第一歩を踏み出せる
  • 要件や猶予措置は改正で変わるため、最新は国税庁・顧問税理士で確認する
  • せっかく対応するなら、ペーパーレス化や経理のデジタル化とセットで進めるのが得策。義務対応がそのまま業務効率化につながる

その効率化を社内のどこから広げるかは、中小企業の業務効率化で、なくす・まとめる・そろえる・まかせるの4つの切り口に分けて整理しています。義務対応を入口に、他の業務へ横展開するときの順番を決められます。

最後に

電子帳簿保存法は、「難しそう」「うちには関係ない」で後回しにされがちですが、義務の部分は限られており、押さえるべきポイントはシンプルです。正しく理解すれば、過剰な投資をせずに対応できます。

私たちは、自社の電子取引の洗い出しから、事務処理規程の整備、保存の仕組みづくり、ペーパーレス化・経理効率化まで、顧問税理士と連携しながらハンズオンで支援します。「何から手をつければ」という段階からで大丈夫です。まずはお気軽にご相談ください。

「自社の場合はどうなるか」を、御社の状況に当てはめて一緒に整理します。

ご相談は無料です。その場で売り込みはいたしません。

この記事を書いた人

金井 春樹株式会社TRAVEL LIKE Talent Partner事業部 取締役COO / TAM

前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。

現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。

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