エコアクション21の取得|入札加点につながる環境目標の立て方
目次
「エコアクション21、取りたいんだけど数字が決まらない」——建設業の社長のつぶやき
「今後の入札で評価点をちゃんと上げるために、エコアクション21を取りたい。でも、この目標の数字をどう決めればいいのか、正直よく分からなくて」——ある地方の建設会社で、私たちがそう相談を受けたのは、ちょうど認証取得に向けて動き出そうとしていた時期でした。
この会社(ここではA社と呼びます)は、地域の下水道インフラを支える土木工事の会社です。事務所にいるのは5〜6名、あとは現場に出ている職人さんたち。社長は現場を知り尽くした叩き上げで、数字の話になると「うちの場合、本当にこの電気の量が使いすぎなのかどうかも分からないんだよね」と、率直に本音を口にする方でした。
エコアクション21は、電気・燃料・水・廃棄物・化学物質といったテーマごとに環境目標を立て、その達成に向けて社内で取り組む制度です。ところが社長は、5つのテーマそれぞれに目標値を決め、「そのために何をするか」まで書き出す作業を前に、「これ、1個1個考えるの、めんどくせえなあ」とこぼしました。多くの中小企業の社長が、認証取得の入り口でつまずくのは、まさにこの「目標をどう決めればいいか分からない」という一点です。
そこは、思っているほど厳密ではありません。エコアクション21で見られるのは「厳しい数値目標を達成したか」ではなく、「目標を立て、取り組み、振り返るという流れ(PDCA)を回したか」です。だから、目標は前年実績をもとに無理のない水準で置き、四半期ごとに小さく振り返る形にすれば十分に回せます。そして目標達成のカギは、社長ひとりで抱え込まず、現場の社員を巻き込むこと。この記事では、A社での実例をもとに、その具体的な進め方を解説します。
この記事でわかること
- エコアクション21とはどんな制度か(ISO14001との違い・入札加点との関係)
- 「未達でもいい」制度の本質と、無理のない環境目標の立て方
- 四半期PDCA・売上按分・生成AI活用という、現場が続けられる運用の型
エコアクション21とは?入札で評価される「中小企業向けの環境認証」
エコアクション21は、環境省が策定したガイドラインに基づく、中小企業でも取り組みやすい環境マネジメントの認証・登録制度です。「環境への取り組みを、決められた型で計画・実行・記録する」ことを、第三者が確認して認証してくれる仕組み、と考えると分かりやすいです。
よく比較されるのが、国際規格のISO14001です。両者は「環境マネジメントシステム」という点では同じ方向を向いていますが、中小企業にとっての重さがかなり違います。
| 比較の観点 | エコアクション21 | ISO14001 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 環境省策定の国内向け制度 | 国際規格 |
| 想定する規模 | 中小企業でも取り組める設計 | 大企業・輸出企業も含む |
| 数値の厳密さ | 実務で回せる範囲でよい | 精緻な管理が求められやすい |
| 取り組みの本質 | PDCAを回した「実践の記録」 | 同左(ただし要求水準が高い) |
A社の担当者が制度の事務局に「立てた目標は、絶対にクリアしないと駄目なんですか」と確認したところ、返ってきたのは「別に未達でもいいです」という答えでした。見られているのは達成そのものではなく、「目標を立てて取り組んだか」、そして「未達だったなら、なぜ届かなかったかを分析し、次にどう改善するかを考えたか」。この一点です。
では、なぜ中小の建設会社がわざわざ取得するのか。最大の動機は入札です。公共工事の入札では、環境や地域貢献への取り組みが評価点に加算される仕組みがあり、エコアクション21の認証がその加点対象になっているケースがあります。つまりこの認証は、環境対応であると同時に、将来の受注機会に直結する「営業上の投資」でもあるのです。加点の扱いは発注する自治体や工事の種類によって異なるため、狙う入札の要項で対象になっているかを必ず確認してください。
参考(一次情報):制度の詳細・分野・登録要件はエコアクション21 公式サイト、および環境省 総合環境政策「エコアクション21」の公表資料で確認できます。数値要件や加点の扱いは改定・自治体差があるため、最新の一次情報での確認をおすすめします。
「データはあるのに、使いすぎか分からない」——手探りだった現場
A社には、電気・燃料・水道の使用量データは1年分きちんと残っていました。ところが、そのデータをどう目標に落とし込めばいいのか、社内に「型」がありませんでした。
「先月より電気を使った月がある。でも、それが多いのか少ないのか、判断する基準がない」。これがA社の実情でした。使用量という事実はあっても、それを評価する物差しがない。だから社長も、数字を前にして「使いすぎなのかどうかも分からない」としか言えなかったのです。
あなたの会社でも、こういう状態になっていないでしょうか。電気代や燃料代の請求書は毎月届く。でも、それを「削減目標」という形に翻訳する作業は、誰も手をつけたことがない。認証を取るとなって初めて、その翻訳作業が必要になり、途端に手が止まる。ここでつまずいて、認証取得そのものが先延ばしになる会社は少なくありません。
なぜ着手が止まるのか——「厳密にやらなきゃ」という思い込み
私たちが第三者の立場でA社の状況を整理すると、着手が止まる原因は「制度を厳密に捉えすぎている」ことにありました。
社長の頭の中では、「環境目標=ISOのように精緻な数値を、必ず達成しなければならないもの」という重いイメージができあがっていました。だから「1個1個考えるのが面倒」に感じ、「首を絞めるような数字は立てたくない」と身構える。ところが実際の制度は、前述のとおり「未達でもいい/取り組みと振り返りが本質」です。この認識のズレが、心理的なハードルを必要以上に高くしていました。
そしてもう一つ。この問題は環境の話だけにとどまりません。目標を立てても、達成には現場の社員一人ひとりの行動——こまめな消灯、アイドリングの見直し、分別の徹底——が欠かせません。つまり、環境目標(経営課題)を実現するには、社員をどう巻き込むかという労務・組織の課題を同時に解く必要がある。さらに、目標設定やデータ集計の作業負荷をどう軽くするかという業務効率化の問題も絡みます。ひとつの認証取得の裏で、経営・労務・業務効率が一本の線でつながっているのです。
環境目標は「経営・労務・業務効率」が連動して初めて回る
書類だけを整えても、この連動が抜けていると、認証は取れても「絵に描いた餅」になります。逆に言えば、ここを設計できれば、環境目標は社内をひとつにまとめる良い機会にもなります。
この記事の内容を、社内で共有できる資料にまとめています。
無理なく回る環境目標の立て方——四半期PDCAと売上按分
ここからが本題です。A社で実際に設計した、「厳密にやりすぎず、それでもきちんと回る」目標設定の型を、手順に沿って説明します。
ステップ1:前年実績を「基準値」に置く
まず、電気・燃料・水道について、直近1年間の使用量を集計します。A社では既にデータがあったので、これを月別・四半期別に整理し直しました。ここで大事なのは、ゼロから理想の数字を考えないこと。「前年これだけ使った」という実績を出発点(基準値)にすれば、目標は自然と「前年より少し減らす」という現実的な形になります。担当は経理や総務、方法は請求書や検針票の数字を表計算ソフトに転記するだけ。特別なツールは要りません。
ステップ2:四半期(3か月)ごとに区切る
年間目標を1つ立てて1年後に一発で答え合わせをする、という形にすると、途中で軌道修正ができません。そこでA社では、3か月ごとに区切って「立てる→取り組む→振り返る」を回すことにしました。四半期ごとなら、「この3か月は届かなかった、原因は現場が忙しくて消灯が徹底できなかったからだ」と早めに気づけて、次の3か月で手を打てます。これがまさに、制度が求めるPDCAそのものです。
ステップ3:売上で「按分」して、公平に評価する
ここが実務で一番つまずきやすいポイントです。建設業は、受注が増えれば現場が増え、電気も燃料も当然増えます。使用量の絶対値だけを見ると、「頑張って受注を伸ばした年ほど、環境目標を達成できていない」という逆さまの評価になってしまう。
そこでA社では、「売上高1億円あたりの使用量」という形に直して評価することにしました。これを按分(あんぶん=全体を一定の基準で割り振ること)と呼びます。売上が伸びて総使用量が増えても、「1億円あたり」で見れば効率が改善していれば前進と評価できる。事業の成長と環境目標が矛盾しない、この物差しが現場の納得感を生みました。
ステップ4:測りにくい項目は「単位を仮決め」して概算する
廃棄物のように、正確な計量が現実的に難しい項目もあります。産業廃棄物を1グラム単位で毎回量るのは、中小の現場では非現実的です。A社では「1袋=おおよそ30kg」と単位を仮決めし、袋の数で概算する方法をとりました。厳密な計量器を導入するのではなく、現場が毎日続けられる粗さで数えることを優先したのです。制度が「実践の記録」を重視する以上、続けられない精緻さより、続けられる概算のほうが価値があります。
無理なく回る環境目標づくりの4ステップ
この4つを押さえるだけで、「厳密でなければ」という思い込みは外れ、「これならうちでも回せる」という手応えに変わります。
生成AIで施策を出す——「何をするか」を社長が抱え込まない
目標値が決まったら、次は「その目標のために、具体的に何をするか(取り組み内容)」を決めます。実は、制度で一番大事なのはこの「取り組み内容」を決めることです。「電気を削減する」と書くだけでは足りず、「そのために何をするか」まで踏み込んで初めて、生きた計画になります。
とはいえ、削減アイデアを社長ひとりでゼロから絞り出すのは大変です。ここでA社が使ったのが、生成AI(ChatGPT)でした。社長が「AIくん」と親しみを込めて呼ぶほど、前向きに受け入れてくれたのが印象的でした。
進め方はこうです。
- 現場の写真を読み込ませる:資材置き場や廃棄物の分別状況を撮った写真をAIに見せ、「この現場で、廃棄物を減らすには何ができるか」と尋ねます。自社の実態を踏まえた提案が返ってくるので、一般論のリストより格段に使えます。
- アイデアを大量に出させる:まずは質より量で、削減の切り口をできるだけ多く挙げてもらいます。人間だけで考えると3つ4つで打ち止めになりがちな発想が、一気に十数個に広がります。
- 自社で回せるものを2〜3個に絞る:出てきた案の中から、「これはうちでもすぐできる」というものを社長が選びます。判断はあくまで現場を知る人間がする。AIは選択肢を広げる役、決めるのは社長、という役割分担です。
生成AIを「施策の壁打ち相手」にする流れ
この進め方なら、社長が「1個1個考えるのが面倒」だった作業が、「AIが出した案を選ぶだけ」に変わります。意思決定の負荷が大きく下がり、着手のハードルが一気に下がりました。生成AIをどう業務に組み込むかは、中小企業の業務効率化の進め方としても応用が効く考え方です。
活用事例|自社ならどう使うか
エコアクション21の目標設定は、会社の状況によって「効かせどころ」が変わります。読者の状況に近いものを重ねてみてください。
入札の評価点アップが主目的なら、まず狙う入札の要項で加点対象かを確認する。そのうえで、電気・燃料・水を前年実績ベースで無理なく目標化し、「取り組んだ記録」を残すことを最優先にする。達成の厳密さより、継続の仕組みを整えるのが近道。
毎月の請求書は残っているのに評価の物差しがない、という会社は多い。売上按分(1億円あたりの使用量)という基準を一つ入れるだけで、「多い・少ない」の判断ができるようになり、データが一気に生きてくる。
目標は立てたが現場が動かない、という段階なら、朝礼など既存の場を使って「なぜやるのか(入札で会社の受注が増える)」を自分の言葉で伝えるところから始める。社員に協力を「お願い」する形にすると、行動が定着しやすい。
共通して言えるのは、「厳密な数字を追う」より「現場が無理なく続けられる形にする」ほうが、結果的に制度が生きて回るということです。
制度の当てはめから社内への落とし込みまで、右腕として伴走します。
「首を絞めない目標」が、会社の共通目標に変わった
A社での取り組みは、目標設定と施策立案のセッションを終えたところで、はっきりとした前進を残しました。
これまで社長の頭の中だけにあった「環境目標」が、四半期PDCA・売上按分という具体的なロジックと、AIで練り上げた実行可能な施策として、目に見える形になりました。「1個1個考えるのが面倒」だった作業は、「これならうちでもできる」という手応えに変わっています。
そして何より、社長の口から出たのは「エコアクション21を取るためというより、これを機に、自社の取り組みとしてちゃんと環境のことを進めたい」という言葉でした。認証取得のための”やらされ作業”が、社内をひとつにまとめる自分たちの取り組みへと捉え直された瞬間です。翌日の朝礼で社員に協力を呼びかける段取りまで決まり、「みんなでやれば、できない話じゃない」という前向きな空気が生まれました。社長ひとりが抱えていた宿題が、会社全体の共通の目標に変わったのです。
数値としての削減効果は、これから四半期ごとのPDCAで積み上がっていきます。けれど、その土台となる「無理なく回る仕組み」と「社員を巻き込む段取り」は、この時点で確かに手に入りました。入札加点という当初の動機を超えて、A社は環境への取り組みを”自分ごと”にする一歩を踏み出しています。
まとめ
- 制度の本質は「達成」ではなく「PDCAを回した記録」
- エコアクション21で見られるのは、厳しい数値目標のクリアではなく、目標を立て・取り組み・振り返る流れを回したかどうか
- 「未達でもいい」という前提に立てば、着手のハードルは大きく下がる
- 無理なく回る目標設定には「型」がある
- 前年実績を基準値に置き、四半期ごとに区切り、売上按分で公平に評価し、測りにくい項目は単位を仮決めして概算する
- 生成AIと社員の巻き込みで「絵に描いた餅」にしない
- 施策のアイデア出しはAIを壁打ち相手に使って負荷を下げ、実行は現場の社員を巻き込む
環境の認証以外にも、入札や補助金で効く認定・計画制度があります。目的別の使い分けは、中小企業の認定・計画制度を一覧比較|使い分けと補助金加点の取り方でまとめています。
補助金の申請でも同じ認証が加点として効きます。どの項目をいくつ積めるかは、補助金の加点項目で、2026年に取れる項目を一覧で整理しています。
最後に
「入札のために環境認証を取りたいが、目標の数字がどうにも決まらない」「制度対応の作業を、社長ひとりで抱えて手が止まっている」——もし同じような状況でお困りなら、一度ご相談ください。
私たちTalent Partner(社長の経営参謀®)は、書類を整えて終わりにするのではなく、データの集計から目標設定のロジックづくり、生成AIを使った施策立案、そして社員への周知の段取りまで、現場の隣で一緒に手を動かします。認定経営革新等支援機関として、こうした認定・計画制度の取得支援にも数多く伴走してきました。制度対応を「やらされ仕事」で終わらせず、会社を前に進める機会に変えるお手伝いをします。無料相談も受け付けていますので、気軽にお声がけください。

