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法人保険の損金算入割合|返戻率50%超で何割?節税にならない理由
目次
「節税できている」という手応えの正体
法人保険の節税は、決算書の見た目と、会社に残る現金の動きが一致しません。損金が落ちて利益が減るので「効いている」と感じますが、その裏で同じ額の現金が社外へ出ていきます。
地方で精密部品の加工を手がける、従業員10名ほどの製造業を営むK社長。そのケースで整理してみます。年間100万円を保険に払い、そのうち半分の50万円が損金になる半損タイプです。利益に対する法人の実効税率をおよそ30%とすると、50万円が損金になって浮く税金は約15万円。つまり、100万円のキャッシュを払って、安くなる税金は15万円ということです。
「100万かけても、税金は15万しか安くならへん。でも100万払っている以上、100万のキャッシュは吹っ飛んでるんですよね」——面談の場で私たちがそう伝えると、K社長は少し黙り込みました。決算書の上では確かに利益が圧縮されている。けれど手元の通帳からは、毎年100万円がまるごと消えている。この二つの事実が、頭の中でつながっていなかったのです。
あなたの会社の保険も、「決算書で損金が落ちている」ことだけを見て、「効いている」と感じていないでしょうか。まず見るべきは、決算書ではなく通帳の残高の動きです。
💡 この記事でわかること:
- ●法人保険の「節税」が、実は「課税の繰り延べ」にすぎない理由
- ●半損保険を10年続けたときの、税・返戻金・元本割れを通した「実質収支」
- ●「保障・積立・節税」の目的で保険を切り分ける判断軸
- ●8本の保険を見直し、年間200万円以上を会社に取り戻した実例
制度メモ:いまの「半損」は"解約返戻率"で決まる
かつて法人保険は「全額損金」「1/2損金(半損)」と商品ごとに損金割合が決まっていました。しかし2019年(令和元年)の税制改正で、この区分は「最高解約返戻率」に応じて損金に算入できる割合を決めるルールへ変わっています(解約返戻率が高い保険ほど、資産として計上する割合が大きくなる仕組み)。本記事で言う「半損(1/2損金)」も、現在は返戻率区分に沿った取り扱いになります。区分ごとの割合は下の「自社の保険は何割損金か」で表にしています。原典は国税庁 No.5364-2 定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合)の取扱い です。
半損保険で本当は何が起きているのか
半損保険の損金算入は「節税」ではなく「課税の繰り延べ」です。今払った分だけ税金が減っても、解約して返戻金を受け取ったときに、それまで資産として積み上げてきた分を超える利益へまとめて課税されます。得したように見えて、支払いのタイミングを後ろへずらしているだけなのです。
10年続けた場合を、K社長に見せた試算で追ってみます。
| 項目 | 10年間の合計 |
|---|---|
| 支払った掛け金 | 約1,000万円 |
| 損金による節税 | 約150万円 |
| 解約時の返戻金 | 約850万円 |
| 返戻金への課税(資産計上分を差し引いた約350万円が対象) | 約105万円 |
| 掛け金1,000万 − 返戻金850万(元本の目減り) | 約マイナス150万円 |
| 節税150万 + 課税105万 に元本割れ150万を通算 | 実質 約マイナス105万円 |
10年で1,000万円を払い込み、その間に積み上がった節税はおよそ150万円。ここで見落としがちなのが、半損タイプは払った保険料の半分が資産として積み上がっているため、解約時に課税されるのは返戻金の全額ではないという点です。850万円の返戻金のうち、資産計上してきた分(10年で約500万円)を差し引いた残りおよそ350万円が、雑収入として法人の益金に算入されます。そこにおよそ3割、105万円ほどの税金がかかります。
税金の損得だけを見れば、節税150万に対して課税は105万なので、わずかにプラスに見えます。ところが本当の落とし穴は税ではなく元本割れのほうです。1,000万円を払い込んで、戻ってくる返戻金は850万円。この150万円の目減りが、税のわずかなプラスを飲み込んでしまい、差し引きでは実質マイナスになるのです。
しかも見落としがちなのが、10年間ずっと1,000万円という現金が保険の中に固定され続けるという事実です。設備を新しくしたい、人を採りたい、そういう場面で自由に動かせるお金が、その分だけ手元から消えている。「節税って、正直みんな好きなんですよね。でも投資した結果が節税になるだけで、節税そのものを目的にした商品は、本来この世に存在しないはずなんです」。私たちがそう話すと、K社長は「究極的には、保険屋さんが喜ぶだけって感じですね」と、少し寂しそうに笑いました。
利益が1,000万円出た会社が、その1,000万円をまるごと保険で節税して赤字ぎりぎりまで落とす。これは節税ではなく、ただ会社の体力を落としているだけです。
自社の保険は何割損金か|4つの区分で確かめる
「うちの保険は半損だから」と聞いていても、いまの税制でどう扱われるかは、契約の最高解約返戻率で決まります。保険証券や設計書に載っている解約返戻率のうち、いちばん高い時点の数字がそれです。まず自社の契約がどの区分かを確かめてください。
| 最高解約返戻率 | 資産に計上する割合 | 損金になる割合 |
|---|---|---|
| 50%以下 | なし | 全額 |
| 50%超70%以下 | 40% | 60% |
| 70%超85%以下 | 60% | 40% |
| 85%超 | 最高解約返戻率×90%(開始から10年経過後は×70%) | 残りの部分 |
つまり、いま新しく契約する保険で「ちょうど半分が損金」になる区分はありません。60%か40%か、あるいは85%超の計算式か、のいずれかです。「半損」という呼び方は、2019年(令和元年)7月8日より前に契約した保険の名残です。古い契約を続けているなら1/2損金のままですが、これから入るものを同じ感覚で選ぶと、想定した損金が落ちません。
資産に計上した分は、後半で戻ってくる
資産計上は入りっぱなしではありません。保険期間の75%が経過した後から、満了までのあいだに均等に取り崩して損金にしていきます(85%超の区分は、解約返戻金がいちばん高くなる期間の経過後から)。前半に落ちなかった分が、後半で戻ってくる設計です。
ここが、解約のタイミングで結果が変わる理由です。保険期間の途中で解約すると、取り崩しの終わっていない資産計上額が残ったまま、返戻金との差額が一度に出ます。「いつ解約するか」を決めずに入ると、出口で想定外の数字に出会います。
💡 ポイント:
例外が2つあります。ひとつは、最高解約返戻率が70%以下で、かつ年換算保険料相当額(保険料の総額を保険期間の年数で割った額)が1人あたり合計30万円以下の場合。全額を損金にできます。もうひとつは、解約返戻金のない定期保険等で年30万円以下のもの。こちらも支払った事業年度の損金にできます。
70%以下で、年換算保険料相当額も30万円以下です。例外にあたるため、全額を損金にできます。保障として必要な契約なら、無理に見直す理由はありません。
70%超85%以下の区分です。損金になるのは40%の48万円だけで、残る72万円は資産に計上します。「120万円払って全部経費」という認識のままでいると、決算で想定が狂います。
85%超の区分です。開始から10年を経過する日までは、最高解約返戻率の90%にあたる割合を資産計上します。この例では保険料の81%が資産で、損金は19%だけ。節税を目的に入ったのなら、その目的はほとんど果たせていません。
参考(国税庁):No.5364-2 定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合)の取扱い / No.5364 同(含まれない場合)の取扱い
保険は「目的」で分けると迷わない
ここで大事なのは、保険を全否定することではありません。保険には保険の役割があります。迷わなくなるコツは、「何のために入るのか」という目的で切り分けて考えることです。
- ●保障が目的(社長に万一があったときの備え)なら、掛け金の安い「掛け捨て」で必要な保障だけを確保する
- ●積立が目的(退職金の準備や将来の資金づくり)なら、返戻率や運用性を正面から比較して選ぶ
- ●節税が目的なら、いったん立ち止まる。前の章で見たとおり、多くの場合それは繰り延べにすぎず、元本割れのリスクも抱える
K社長には、いま入っている保険のうち「保障として本当に必要な部分」と「節税目的で膨らんでいる部分」を分けて見てもらいました。保障が目的なら掛け捨てで足りる。そこで浮いた現金を、いま本当に困っている採用や、職場環境の整備に回したほうが、会社の未来にずっと効いてきます。実際、K社長の会社では人が定着しないことが長年の悩みで、そこにお金と手をかけられずにいたのです。
こうした資金の使い道の組み替えは、保険だけを見ていても答えが出ません。財務と人の問題は地続きだからです。中小企業の財務体質の立て直しは、税金の話だけで完結せず、「浮いたお金を何に投じるか」まで一本の線で考えて初めて意味を持ちます。
その投じ先を決める段になると、たいてい承継の話に行き着きます。退職金の原資と自社株の評価をどう組み合わせるかは、中小企業の事業承継で、4社の5年計画と株価対策の実際としてまとめています。
保険に頼る前に、決算前にできる節税の打ち手を押さえるのが先決です。決算前にやる節税チェックリスト|手元資金を残す打ち手で解説していますので、そちらもご覧ください。
8本の保険を見直し、年間200万円以上を会社に取り戻した
面談で突きつけられた数字は、K社長の判断を早めました。当時この会社は、大小あわせて8本もの保険に加入していました。そこで信頼できる保険代理店に間に入ってもらい、半損・4割損金といった「保障の機能があいまいなまま、節税目的で膨らんでいた保険」をすべて解約。社長に本当に必要な保障だけを残す形へと、思い切って整理し直したのです。その結果、年間の保険支払は200万円以上も軽くなりました。
背中を押したのは、決算書の損金と、通帳から消えていく現金が、ようやく一本につながった実感でした。「保険屋さんが喜ぶだけだったんですね」「節税より、会社の体力を残す方に舵を切りたい」——これまで誰も数字で示してくれなかった実態が、はじめて社長自身の判断基準になった瞬間です。
浮いた200万円あまりは、そのまま会社の体力に変わりました。これまで保険に固定されていた資金が解き放たれ、事業資金は大幅に改善。設備投資や修繕にも、ゆとりを持った予算を回せるようになりました。孤独に決算書とにらめっこして節税に神経をすり減らしていた会社が、数字を起点に「未来へお金を使える会社」へと舵を切った——これが、この見直しで生まれたいちばんの成果です。
退職金づくりとして保険を使うなら、共済・内部留保との比較が欠かせません。役員退職金は何で積む?|小規模共済・法人保険・内部留保を比較で比較していますので、ぜひご一読ください。
まとめ
① 「損金が落ちている」と「得している」は別物
半損保険の損金算入は、課税の繰り延べです。決算書の見た目ではなく、通帳から出ていく現金と、解約時に戻ってくる返戻金・税金までを通して見ないと、本当の損得は分かりません。
② 10年で見ると、実質はマイナスになりうる
1,000万円払って節税150万円、解約時の課税は約105万円。税だけ見ればわずかにプラスでも、戻ってくる返戻金は850万円で元本が150万円目減りし、差し引きでは実質マイナスです。加えて10年間まとまった現金が拘束され続けます。節税のために会社の体力を削っては、本末転倒です。
③ 保険は「保障・積立・節税」の目的で切り分ける
保障が目的なら掛け捨て、積立なら返戻率で比較、節税目的なら一度立ち止まる。目的で分ければ迷いません。そして浮いた資金は、採用や労務など会社の未来に効く場所へ回すのが筋です。
最後に
もし、あなたの会社でも「税理士や保険担当者に勧められるまま半損保険を続けているが、本当に得なのか分からない」という状態が続いているなら、一度、掛け金と解約時までを通した収支を数字で確かめてみてください。決算書だけを見ていては気づけない事実が、たいてい隠れています。
私たちは、保険証券をお預かりして全体の収支を試算し、浮いた資金をどこへ投じるかまで一緒に考えます。同じように節税と資金繰りの間で迷っている経営者の方は、ぜひ一度ご相談ください。
この記事を書いた人
前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。
現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。
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