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人事評価制度の導入費用|何にいくらかかり、助成金でいくら戻るか

目次

「評価制度、いくらかかりますか」——その相場表は、どこにも存在しません

人事評価制度の導入費用を調べても、公的な相場は出てきません。コンサルティング会社やクラウドサービスの価格は依頼する範囲でまったく変わりますし、行政が価格の目安を公表しているわけでもないからです。ですから最初に決めるのは金額ではなく、「どこまで自社でやり、どこから外に出すか」という範囲のほうになります。

一方で、公的にはっきりしている数字がひとつあります。厚生労働省の人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)では、人事評価制度を新たに導入すると40万円、賃金の引き上げ要件を満たせば50万円が支給されます(令和8年4月8日版のご案内による2026年8月時点の内容)。ただしこの助成金は予算の範囲内で支給されるもので、同じ取り組みについて他の助成金を受けている場合は原則として併給できません。

ただし、この助成金は順番に厳しい制度です。雇用管理制度等整備計画を労働局・ハローワークへ提出するより前に導入費用を払っていると、「新たに導入した」と認められません。支給申請ができるのも、制度づくりを始めてから2年以上あとになります。

そこでこの記事では、価格表は作りません。何にお金がかかるのかを3つに分けて整理したうえで、そのうち公的な助成でどこまで戻るのかを、一次情報で確認できる範囲だけ書きます。

この記事でわかること

  • 人事評価制度の導入費用が「設計」「賃金への反映」「評価者の訓練」の3つに分かれること
  • 自社で作るときに使える公的な道具(厚生労働省の職業能力評価基準)
  • 人材確保等支援助成金で戻る金額(人事評価制度の導入で40万円)と、対象になる制度の5要件
  • 順番を間違えると対象外になる条件と、支給申請までにかかる期間

そもそも人事評価制度の導入費用とは|3つの場面に分かれる

人事評価制度の導入費用は、ひとかたまりの金額ではありません。制度を設計する費用、評価結果を賃金へ反映させる仕組みを整える費用、そして運用する人を育てる費用の3つに分かれます。

見積書の総額が会社によって大きく違って見えるのは、この3つのうちどこまでを含んでいるかが揃っていないからです。まず、お金と時間がどこで発生するのかを並べます。

場面 具体的にやること 費用の形
① 設計 等級、評価項目、評価表、評価の段階を決める 自社の工数、または外部への設計委託費
② 賃金への反映 就業規則・賃金規定への反映、労働者代表との手続き、届出 社会保険労務士などへの依頼費、自社の工数
③ 運用の定着 評価者への研修、面談の型づくり、評価の実施と集計 研修費、毎期かかる運用工数

この3つのうち、外部の見積書で目に見えるのは①だけです。②と③は自社の工数として静かに発生するため、見積の総額が安く見えても、社内が負う負担は変わっていないことがあります。費用を比べるときは、①だけでなく②③まで揃えて比べる必要があります。

中小企業基盤整備機構は、人事評価制度の要点として「企業理念・事業計画と明確に結びついた人事評価であること」「明確な基準が示され、公平性・透明性をもって運用されること」「従業員へのフィードバックまでがセットになっていること」の3つを挙げています。3つ目のフィードバックまでが要点に入っているということは、③の運用は制度の付属品ではなく、制度そのものの一部だということです。

参考(中小企業基盤整備機構):経営ハンドブック「人事評価制度と賃金制度の改善」

費用を決めるのは金額表ではなく「どこまで自社でやるか」

費用の大小を決めているのは、単価ではなく範囲です。同じ「人事評価制度の導入」という言葉でも、評価表を1枚作るところまでの話と、等級・賃金・面談まで通す話とでは、必要な工数が何倍も変わります。

自社で作る場合|厚生労働省の職業能力評価基準が土台になる

自社で作るときにいちばん時間を食うのは、評価項目をゼロから言語化する作業です。ここは厚生労働省の職業能力評価基準を土台にすると短縮できます。仕事をこなすために必要な知識・技術・技能に加えて、成果につながる行動を職種別・レベル別に整理した公的な基準で、無料で公開されています。

対象は56業種に加えて、業種を問わず使える経理・人事などの事務系9職種です。自社の業種が一覧になくても、事務系職種の基準はそのまま使えますし、近い業種の基準を自社の仕事に読み替える形でも叩き台になります。

もっとも、基準を借りてきても、5段階の点数をどこで区切るかは自社で決めるしかありません。この線引きは評価の納得感を左右する部分なので、評価基準の決め方|5段階評価の点数を”感覚”でなく行動で線引きで具体的な手順を解説しています。

参考(厚生労働省):職業能力評価基準について策定業種一覧(56業種・事務系9職種)職業能力評価基準導入マニュアル(令和3年)

外部に頼む場合|「設計だけ」か「運用の伴走まで」か

外部に依頼するときは、金額を比べる前に依頼範囲を揃えます。範囲は大きく2つに分かれ、どちらを想定しているかがずれたまま見積を取ると、金額だけが独り歩きします。

外部への依頼範囲は大きく2つに分かれる

設計だけを頼む

等級表・評価表・評価基準が成果物として納品される

制度を回す担い手は自社で用意する

2期目以降の見直しも自社で行う

運用の伴走まで頼む

評価者への研修や評価会議の運営まで含む

実際に回しながら基準のずれを直せる

関わる期間が長い分、総額は上がる

どちらが正しいということはありません。分かれ目は、社内に評価制度を回した経験のある人がいるかどうかです。いる会社は設計だけを買えば足りますし、いない会社が設計だけを買うと、納品された評価表が引き出しに眠ります。2社から見積を取るなら、この範囲を先に文章で揃えてから声をかけてください。

外部に出す前に、無料で相談できる先もあります。厚生労働省が委託する働き方改革推進支援センターは、社会保険労務士などの専門家が無料で訪問相談に応じる窓口です(1つのテーマにつき原則3回まで、賃金規程の見直しなどは最大6回)。掲げられている相談テーマは「就業規則を見直したい」「従業員が定着せず、人手不足で困っている」などで、評価制度そのものは項目に挙がっていないため、その他の相談として持ち込む形になります。兵庫県のセンターは神戸市中央区にあります。何をどこまで自社でやれるかの見立てを、費用をかけずに一度もらっておくと、外部への依頼範囲を決める判断が変わります。

そもそも制度の骨格が決まっていないと、範囲の線も引けません。等級と役割定義から順に決めていく全体像は、中小企業の評価制度の作り方でまとめています。

参考(厚生労働省):働き方改革推進支援センター(兵庫)

作ったあとにかかる費用|評価者への訓練を見落とさない

制度を作った時点では、費用はまだ終わっていません。同じ評価表を使っても、評価する人によって点の付け方はばらつくため、評価者の物差しをそろえる訓練が要ります。

中小企業基盤整備機構も、「事前に評価者に対する研修や説明会等を行い、人事評価の意義や評価者の役割、自社に求められる人材像、客観的な評価の重要性、評価面談の留意点などを伝えておくことが望ましい」としています。つまり評価者訓練は、制度が回り始めてからの追加費用ではなく、初年度の予算に最初から入れておく項目です。

訓練で何を扱うのか、評価のばらつきがどこで生まれるのかは、人事考課とは?|人事評価との違いと、考課者訓練が必要な理由で解説しています。

参考(中小企業基盤整備機構):経営ハンドブック「人事評価制度と賃金制度の改善」

この記事の内容を、社内で共有できる資料にまとめています。

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助成金でいくら戻るか|人事評価制度の導入で40万円

人事評価制度の導入に使える公的な助成が、厚生労働省の人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)です。新たに雇用管理制度等を導入し、適切な運用を経て従業員の離職率の低下が図られた場合に支給されます。

対象になる雇用管理制度は5つあり、人事評価制度はそのひとつです。まず、どの制度が対象になるのかを並べます。

対象の雇用管理制度 内容
① 賃金規定制度 賃金規定と賃金表を整備する(定期昇給の仕組みが必要。中小企業事業主に限る)
② 諸手当等制度 諸手当などの制度を整備する
③ 人事評価制度 生産性向上に資する人事評価制度を導入する
④ 職場活性化制度 メンター制度、従業員調査、1on1ミーティング
⑤ 健康づくり制度 人間ドックを導入する(定期健康診断の項目に加えて所定の検診を含み、費用の半額以上を事業主が負担するもの)

この5つは組み合わせて導入できます。上限額そのものは固定で、変わるのは導入した制度を足し上げた合計額です。自社にとって無理のない範囲でどれを重ねるかが、受け取れる額に効いてきます。

そのうえで、支給額は次のとおりです。導入する内容ごとに、基本の額と、賃金要件(後述)を満たした場合の額が決まっています。

導入する内容 支給額 賃金要件を満たした場合
人事評価制度の導入 40万円 50万円
複数の雇用管理制度を導入した場合の助成上限 80万円 100万円

注意したいのは、80万円は人事評価制度ひとつでは届かない金額だという点です。ご案内では、賃金規定制度40万円と人事評価制度40万円を導入して合計80万円という形が例示されています。人事評価制度だけを整えるつもりなら、見込む額は40万円(賃金要件を満たして50万円)です。

括弧内の金額は、賃金要件を満たした場合の額です。ただしこの賃金要件は、人事評価制度にはそのまま当てはまりません。賃上げの幅は3%・5%・7%の3段階が用意されていますが、7%(助成額の50%加算)は業務負担軽減機器等を導入した場合に限られます。3%(25%加算)は、直近3年度で被保険者数が減っていること・賃金を3%以上上げられていないこと・労働局の相談を事前に受けていることの3つをすべて満たす場合だけです。

つまり人事評価制度だけを整える会社にとって、素直な道は「5%以上の賃上げで25%加算」の一択です。40万円が50万円になるところが天井で、7%上げても100万円にはなりません。しかも賃上げは制度の実施日から整備計画期間の末日までの間に行う必要があり、実施日より前に上げてしまうと加算の対象にならず、実施日以降にもう一度上げることになります。

なお助成金の内容は年度ごとに見直されるため、申請前に最新版のご案内を必ず確認してください。この記事は2026年8月時点の令和8年4月8日版にもとづいています。

参考(厚生労働省):人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)のご案内(令和8年4月8日版)雇用管理制度・雇用環境整備助成コース

もらうための条件|制度の中身と離職率の両方が問われる

この助成金は、制度を作れば出るというものではありません。制度の中身が定められた要件を満たしていることと、運用したあとに離職率の目標を満たしていることの、両方が必要です。

その前にひとつ、誤解されやすい点を潰しておきます。すでに評価制度がある会社も対象になり得ます。対象は「新たに導入」する制度ですが、対象の5制度のうち賃金規定制度・人事評価制度・健康づくり制度の3つに限っては、規定が無い状態から新しく作る「新設」だけでなく、必要な項目の一部または全部を満たさずに導入している状態から、全項目を満たしたうえで改めて規定し直す「改定」も認められます

人事評価制度についてはさらに踏み込んでいて、全項目を満たして一定期間運用している状態であっても、評価の対象と基準・評定と賃金の関係を「更なる生産性の向上に資するもの」となるよう改めて規定すれば、改定として扱われます。「うちにはもう評価制度があるから対象外だ」と読んで見送るのは、早すぎる判断です。

制度の中身に5つの要件がある

助成金の対象になる人事評価制度には、次の5つの要件があります。設計を始める前に、自社の案がこれを外していないか照らし合わせてください。

要件 内容
イ 合意 生産性向上に資すると見込まれる制度であることを、労働組合または労働者の過半数を代表する者と合意している
ロ 開示 評価の対象・基準・方法が明確で、労働者に開示されている
ハ 評価項目 年齢や勤続年数のみで一義的に決まらず、能力・技能・資格、行動・姿勢、成果・業績など、本人の意思で向上させられる項目を対象にしている
ニ 頻度 評価対象期間は1年以内で、評価は年1回以上行う
ホ 賃金反映 人事評価の結果が賃金(諸手当・賞与を含む)に反映される

この表から読み取れるのは、助成金が求めているのが「評価表があること」ではなく「評価が賃金を動かす仕組みになっていること」だという点です。実務でつまずくのも、いちばん下のホです。評価結果が賃金に直接反映され、平均的な評定を受ける場合に実施日以後の賃金が増える仕組みであることを、労働協約または就業規則(賃金規定・賃金表を含む)に明記しておく必要があります。「評価結果を参考に賃金を決定する」といった書きぶりでは足りません。

もうひとつ、賃金の引き下げや降級(降格)を行うなど、助成金の趣旨・目的に反する制度は対象外です。メリハリをつけるつもりで下げる仕組みを入れると、助成の対象から外れます。

制度以外の条件もあります。対象事業所ごとに雇用管理責任者を選任して労働者に周知していること、人事評価制度など同じ区分の制度で過去にこの種の助成金を受給している場合は、最後の支給決定日の翌日から3年が経過していることなどです(別の区分で受給していた場合は、この3年の縛りが掛からないことがあります)。

見落とすと取り返しがつかないのが解雇の要件で、計画開始日の前日から6か月前より計画期間の末日までの間に、雇用保険被保険者を事業主都合で解雇等していないことが求められます。これは同じ事業主のすべての適用事業所が対象です。あわせて、導入した制度は評価時離職率の算定期間の末日まで運用し続ける必要があり、対象労働者の2分の1以上に実施していることも条件になります。

なお、人事評価制度の導入そのものには企業規模の要件はありません(規模の要件が付くのは賃金規定制度です)。自社が該当しないか、計画を作る前に確認してください。

離職率の目標は人数規模で違う

見落とされやすいのが、離職率の目標が会社の人数によって違うことです。「1%ポイント低下」とだけ覚えていると足りません。ご案内の本体では、規模ごとに目標値が分かれています。

雇用保険の一般被保険者数 離職率の目標
1〜9人 現状維持(低下させる必要はない)
10人以上 1%ポイント以上の低下

つまり、9人以下の会社は離職率を下げなくても、上げなければ要件を満たします。10人以上の会社は1%ポイント以上下げる必要があり、いずれの場合も評価時離職率が30%以下であることが別途求められます。小規模の会社が「離職率を下げる自信がない」という理由で最初からあきらめるのは、もったいない読み違えです。

ただし「現状維持でよい」を安易に読まないでください。現状維持とは、計画時の離職率を上回らないという意味です。計画時の離職率が0%だった会社は、評価時も0%——つまり2年近い期間にひとりも辞めないことが条件になります。9人以下の会社では、ひとり辞めれば離職率は10%を超えます。人数が少ないことは、この要件では有利にも不利にも働きます。

同じ理由で、10人以上の会社でも計画時の離職率が1%を下回っていれば、目標は0%になります。さらに、この人数区分を判定するのは評価時離職率の算定期間の初日、つまり計画期間が終わった翌日です。計画を出した時点で9人でも、2年近く先に10人になっていれば1%ポイントの低下が課されます。採用を進めている会社ほど、ここは見ておく必要があります。離職率は事業所単位ではなく事業主単位——同じ会社のすべての雇用保険事業所を合算して計算する点にも注意してください。

離職率は2つの期間で測ります。計画時離職率は計画の認定申請日の12か月前の月の初日から申請日が属する月の前月末まで、評価時離職率は計画期間の末日の翌日から12か月です。離職率の計算では、算定に含めない離職の扱いが細かく定められています。自社の数字が要件に届くかどうかは、算定期間を決める前に労働局へ確認しておくと確実です。

参考(厚生労働省):人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)のご案内(令和8年4月8日版)

制度の当てはめから社内への落とし込みまで、右腕として伴走します。

相談してみる

進め方|実行手順

助成金を使って人事評価制度を導入する場合、動く順番が決まっています。全体は5つの段階で、どこかを飛ばすと支給を受けられません。

助成金を使う場合の進め方

骨格と依頼範囲を決める何を作り、どこを外に出すかを決める
整備計画を提出する労働局・ハローワークへ提出して認定を受ける
計画期間内に導入する就業規則・賃金規定を変更して届け出る
評価を実施し賃金へ反映する制度に基づく賃金を支払った日が実施日
離職率の算定後に支給申請する計画期間の末日の翌日から12か月を経て申請

STEP1:制度の骨格と依頼範囲を決める

社長と、人事や総務を見ている担当者の2〜3名で、等級をいくつ置くか、評価項目を何にするか、評価結果を賃金のどこに反映するかの3点を先に決めます。この段階で職業能力評価基準を開き、自社に近い職種の項目を叩き台にすると早く進みます。完了の目安は、評価表の項目名がひととおり紙に並び、外部に出す範囲と自社でやる範囲の線が引けている状態です。ここでの注意点はひとつだけ、この段階で導入費用を1円も支払わないこと。次のSTEP2より前に支払うと、助成の対象から外れます。

STEP2:雇用管理制度等整備計画を作り、労働局・ハローワークへ提出する

導入する雇用管理制度の内容と計画期間を記した整備計画を作り、管轄の労働局またはハローワークへ提出して認定を受けます。計画期間は3か月以上1年以内ですが、人事評価制度を導入する場合で、導入日から1年を超える日に制度に基づく賃金の支払日が来るときは1年3か月以内まで設定できます。

評価を1回まわして賃金へ反映するところまでを計画期間に収める必要があるため、この特例は実務でよく効きます。ここで併せて、対象事業所ごとの雇用管理責任者を選任し、従業員へ周知しておきます。

完了条件は計画の認定を受けたことで、外部への発注や費用の支払いが可能になるのはここからです。様式や添付書類は年度ごとに更新されるため、提出前に必ず最新版を取り直してください。

STEP3:計画期間内に人事評価制度を導入する

認定された計画期間の中で、就業規則や賃金規定を変更し、評価結果が賃金に反映されることを明記します。同時に、生産性向上に資する制度であることについて労働組合または労働者の過半数を代表する者と合意し、評価の対象・基準・方法を従業員へ開示します。導入日は、就業規則等を変更した際に定めた施行年月日(定めがなければ労働協約は締結日、就業規則は労働基準監督署等へ届け出た日)です。完了条件は、規定に賃金反映が書かれ、従業員が評価の中身を見られる状態になっていることです。

STEP4:評価を1回まわし、結果を賃金に反映して支払う

評価者向けの説明会や研修を先に行ったうえで、評価を実施し、面談で本人へ伝え、結果を賃金へ反映します。評価対象期間は1年以内、評価は年1回以上という要件をここで満たします。人事評価制度の実施日は、制度に基づく賃金を実際に支払った日です。評価をしただけ、規定を変えただけでは実施日になりません。完了条件は、評価結果を反映した賃金の支払い実績が給与明細と台帳で確認できることです。

STEP5:離職率の算定期間を経て支給申請する

計画期間の末日の翌日から12か月が、評価時離職率の算定期間になります。この期間が終わったあとに支給申請を行います。ご案内の例では、2026年6月10日に計画の認定を申請し、計画期間が2026年8月1日から2027年7月31日、制度の実施日が2026年12月20日、評価時離職率の算定期間が2027年8月1日から2028年7月31日で、支給申請は2028年8月1日から9月30日という流れが示されています。完了条件は申請期間内に書類を出し切ることで、この期間を過ぎると要件を満たしていても受け取れません。

参考(厚生労働省):人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)のご案内(令和8年4月8日版)

順番を間違えると1円も戻らない|3つの落とし穴

要件を満たしていても、順番と日付の理解を誤ると支給されません。相談を受けていて実際につまずくのは、次の3か所です。

この3つを外すと支給されない

  • 整備計画を提出する前に費用を払っていないか
    預かり金を含め、先に払うと「新たな導入」と認められない
  • 導入日と実施日を取り違えていないか
    実施日は制度に基づく賃金を支払った日
  • 支給申請までの2年以上を見込んでいるか
    評価時離職率の算定だけで12か月かかる

落とし穴1:整備計画を出す前に費用を払ってしまう

助成の対象は「新たに導入」する制度に限られます。そして、雇用管理制度等整備計画を労働局・ハローワークへ提出するより前に、その制度の導入に係る費用の一部または全部を支払っていると、新たな導入と認められません。ここには名称を問わず、預かり金のような形で先に渡したお金も含まれます。外部に相談すること自体は問題ありませんが、契約と支払いは計画の提出後に回す。この一点を関係者全員で共有しておいてください。なお、過去に導入していた制度と同じものを入れ直す場合も「新たな導入」には当たりません。一度やめた評価制度を復活させる形では対象外になります。

その計画にも提出の期限があります。雇用管理制度等整備計画は、計画開始日からさかのぼって6か月前から1か月前までの間に提出します。計画開始日は、最初に制度を導入する月の初日です。さらに複数の計画を一度に提出することはできず、すでに計画を出している場合は、その支給決定または不支給決定の翌日まで新しい計画を出せません。人事評価制度と賃金規定制度を組み合わせて80万円を狙うなら、別々に出すのではなく1本の計画にまとめる必要があります。

落とし穴2:「導入日」と「実施日」を取り違える

導入日は、就業規則や労働協約を変更した際に定めた施行年月日です。ただし常時10人未満の労働者を使用する事業主が作る就業規則で、施行年月日を定めていない場合は、その就業規則を従業員全員へ書面で周知した日が導入日になります。一方の実施日は、制度の導入を経て制度に基づく賃金を支払った日を指します。規定を整えた日で数え始めると、計画期間や賃金要件の起算がずれます。とくに賃金の引き上げは実施日から整備計画期間の末日までに行う必要があるため、賞与や昇給のタイミングと計画期間が噛み合っているかを、計画を作る段階で確かめておきます。

落とし穴3:支給申請は2年以上先だと知らずに動く

計画の認定申請から支給申請まで、ご案内の例では2年を超えます。資金繰りの計画に「今年度中に40万円が入る」と書き込むと、必ずずれます。

支給申請までの流れ(厚生労働省のご案内の例)

12026年6月10日計画の認定申請
22026年8月1日〜2027年7月31日計画期間
32026年12月20日制度の実施日(制度に基づく賃金の支払い)
42027年8月1日〜2028年7月31日評価時離職率の算定期間
52028年8月1日〜9月30日支給申請

この長さを前提にすると、助成金は「評価制度の費用を立て替えてくれる制度」ではなく、「自社で決めた制度を2年きちんと運用できたことへの後払い」だと分かります。制度を作る意思が先にあり、助成金はあとから乗せるものという順番でなければ、途中で運用が止まって申請にたどり着きません。

参考(厚生労働省):人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)のご案内(令和8年4月8日版)

活用事例|規模と体制で変わる進め方(ケース別)

同じ「評価制度を作りたい」でも、人数と社内の体制によって、お金と時間をかける場所が変わります。条件の違う3つのケースで、費用の配分がどう変わるかを見てみます。以下の3つは、実在の企業の事例ではなく、規模と体制ごとに整理した想定例です。

ケース1|従業員8名・製造業(評価制度がまだない)

雇用保険の一般被保険者が9人以下なので、離職率は現状維持で要件を満たします。等級を3段階、評価項目を5つ程度に絞り、職業能力評価基準の項目を叩き台にして自社で設計する形が現実的です。外部に出すのは就業規則・賃金規定への反映と届出だけにすれば、外部費用は最小限で済みます。

ケース2|従業員25名・建設業(評価表はあるが賃金と切れている)

評価表が既にあっても、結果が賃金に反映されていなければ助成金の要件は満たしません。この場合にやるべきなのは評価表の作り直しではなく、平均的な評定で賃金が増える仕組みを賃金規定に書き込むことです。10人以上なので離職率を1%ポイント以上下げる必要があり、評価制度づくりと並行して、辞めている人がなぜ辞めているかを見ておく必要があります。

ケース3|従業員40名・サービス業(評価者が5人以上いる)

評価する人が増えるほど、点の付け方のばらつきが表に出ます。設計そのものより、評価者訓練と評価会議の運営に費用と時間を割く配分になります。外部に頼むなら「設計だけ」ではなく運用の伴走まで含めた範囲を想定しておくほうが、2期目での作り直しを避けられます。

3つに共通するのは、先に決めるのは金額ではなく「評価結果を賃金のどこに、どう反映するか」だという点です。ここが決まると、設計にどれだけ手をかけるかも、助成金の要件を満たすかどうかも、同時に決まります。

参考(厚生労働省):人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)のご案内(令和8年4月8日版)

まとめ

  • 人事評価制度の導入費用に公的な相場はない。費用は「設計」「賃金への反映」「評価者の訓練」の3つに分かれ、見積を比べるならこの範囲を揃えてから比べる
  • 自社で設計するなら、厚生労働省の職業能力評価基準(56業種+事務系9職種)を土台にできる。業種が一覧になくても事務系の基準は使える
  • 人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)では、人事評価制度の導入で40万円、賃金要件を満たせば50万円。80万円は複数の雇用管理制度を導入した場合の上限(2026年8月時点)
  • 対象になるのは、過半数代表との合意・基準の開示・年功のみで決めない評価項目・年1回以上の評価・賃金への反映という5要件を満たす制度。賃金の引き下げや降級を行う制度は対象外
  • 整備計画を提出する前に費用を払うと「新たな導入」と認められない。支給申請までは2年以上かかる
  • 離職率の目標は規模で違い、9人以下は現状維持、10人以上は1%ポイント以上の低下。評価時離職率30%以下も必要
  • 制度を作ったあとに評価者訓練の費用がかかる。初年度の予算に最初から入れておく

最後に

評価制度は、作った時点ではまだ動きません。評価者が同じ物差しで点を付け、面談でその理由が本人に伝わり、賃金として支払われて初めて、社員から見て「うちの会社は見てくれている」という実感になります。助成金の要件が「評価結果が賃金に反映されること」まで踏み込んでいるのも、そこまでやらないと制度が制度として機能しないからでしょう。

私たちTalent Partner(社長の経営参謀®)は、設計書を置いて帰るのではなく、評価会議に同席して点の付け方をそろえたり、就業規則・賃金規定への反映を整えたり、整備計画の中身を一緒に組み立てたりと、実行のところまで一緒に手を動かします。人事評価は労務・賃金・採用と地続きなので、そこをまとめて見られる立場のほうが、遠回りが少なくて済むと考えています。

なお、就業規則の変更手続きや助成金の申請可否は個別事情で判断が分かれます。最終的な判断は、管轄の労働局や社会保険労務士など専門家への確認とあわせて行ってください。「うちの規模で助成金は使えるのか」「どこまで自社でやれるのか」を整理するところからで構いません。まずは無料相談で、いまの評価の状態と使える制度を一緒に洗い出しましょう。

「自社の場合はどうなるか」を、御社の状況に当てはめて一緒に整理します。

ご相談は無料です。その場で売り込みはいたしません。

この記事を書いた人

金井 春樹株式会社TRAVEL LIKE Talent Partner事業部 取締役COO / TAM

前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。

現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。

【運営会社 取得認証・認定】
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