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管理監督者とは?|「管理職だから残業代なし」が違法になる基準

労務・法務

「店長は管理職だから残業代は出していない」——その扱い、危ないかもしれません

「うちの店長は管理職だから、残業代は払っていない」「主任以上は管理職扱いで、みなし残業もつけていない」——中小企業では、こうした運用がよく見られます。しかし、会社が“管理職”と呼んでいることと、法律上の「管理監督者」に当たることは別物です。

肩書きだけで残業代を払わない扱いは、いわゆる「名ばかり管理職」として、未払い残業代の請求リスクに直結します。退職者からまとめて請求され、数十万〜数百万円規模になることも珍しくありません。判断の軸は、名称ではなく“実態”です。

この記事では、管理監督者とは何か、どう判断されるのか、そして自社の管理職の扱いをどう点検すればよいかを、厚生労働省・労働基準法の情報をもとに整理します。押さえるべきは次の4点です。

💡 この記事でわかること:

  • 労働基準法の「管理監督者」は、労働時間・休憩・休日の規定が適用除外になる(=残業代・休日手当が不要)
  • ただし判断は肩書きではなく“実態”。役職名が管理職でも、法律上は該当しないことが多い
  • 判断基準は3つ:①経営者と一体的な立場 ②労働時間の裁量 ③地位にふさわしい待遇
  • 重要:管理監督者でも「深夜割増(22時〜5時)」と「年次有給休暇」は別途必要

そもそも「管理監督者」とは

労働基準法41条は、「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)について、労働時間・休憩・休日に関する規定を適用しないと定めています。これに当たる人には、時間外労働や休日労働の割増賃金(いわゆる残業代・休日手当)を支払う必要がありません。

ここで最も重要なのは、管理監督者かどうかは役職名ではなく、職務の実態で判断されるという点です。行政解釈でも、「管理職と呼ばれる地位に至った労働者が、直ちに管理監督者に該当するわけではない」とされています。「課長」「店長」「マネージャー」という肩書きがあっても、それだけでは管理監督者にはなりません。

⚠️ 注意

勘違いが多いのがここです。管理監督者でも、深夜割増賃金(22時〜翌5時の労働に対する割増)は支払う必要があります。適用が除外されるのは労働時間・休憩・休日の規定であって、深夜業の割増は別。また、年次有給休暇も通常どおり付与が必要です。「管理職だから一切の手当が不要」ではありません。

管理監督者かどうかの「3つの判断基準」

行政解釈では、次の3つの要素を実態に即して見て、管理監督者に当たるかを判断します。

判断基準 満たしている状態の例 名ばかりになりがちな例
① 経営者と一体的な立場
(職務・責任・権限)
採用・人事・予算など、経営に関わる重要な決定に関与している 肩書きはあるが、実際はシフトや発注の権限しかない
② 労働時間の裁量
(出退勤の自由)
自分の判断で出退勤を決められ、遅刻・早退で賃金を引かれない タイムカードで管理され、遅刻・欠勤が評価・賃金に響く
③ 地位にふさわしい待遇 一般社員より明確に高い基本給・手当が与えられている 残業代がなくなった分、一般社員より手取りが低いことがある

ポイントは、この3つをすべて満たして初めて管理監督者と言える、ということです。とくに②の労働時間の裁量と③の待遇は見落とされがちで、「タイムカードで時間管理され、残業代がなくなった分むしろ手取りが下がっている店長」は、①を仮に満たしても管理監督者とは認められにくくなります。

「名ばかり管理職」になっていないか

肩書きだけ与えて、残業代を止めていないか

最も多いのが、一般社員を「主任」「店長」などに昇格させ、その時点で残業代の支給を止めるパターンです。権限も待遇も実質的に変わっていないのに残業代だけ止めると、名ばかり管理職として、止めた分がまるごと未払いになりえます。

残業代がなくなって、部下より手取りが低くなっていないか

管理職にした結果、残業代がつく一般社員のほうが手取りが多い、という逆転が起きているなら要注意です。これは③の「地位にふさわしい待遇」を満たしていない典型で、管理監督者性を否定する大きな材料になります。

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自社の管理職の扱いを点検する4ステップ

STEP1:管理職として扱っている人を洗い出し、実態を確認する

まず、「管理職扱い(残業代なし)」にしている人を全員リストアップし、それぞれの職務内容・権限・出退勤の管理状況・待遇を書き出します。採用や予算にどこまで関与しているか、タイムカードで管理されているか、基本給・手当が一般社員とどれだけ違うか——実態を具体的に洗い出すのがこのステップの目的です。

「肩書きは店長だが、実際はシフト管理と発注くらいで、本部の指示どおり動いている」——こうした実態が見えてくると、管理監督者として扱うのが危ういことが分かります。ここを直視することが、リスクを早く小さくする第一歩です。

STEP2:3つの基準で、一人ひとりを判定する

洗い出した情報を、①経営者と一体的な立場、②労働時間の裁量、③地位にふさわしい待遇、の3基準に当てはめて判定します。3つすべてを満たす人は管理監督者として扱ってよく、1つでも欠ける人は、管理監督者とは言いにくい、と整理します。迷うケースは「該当しない側」で考えておくほうが安全です。

STEP3:該当しない人には、残業代・深夜割増を正しく支払う体制にする

管理監督者に当たらないと整理した人については、労働時間を適正に把握し、時間外・休日・深夜の割増賃金を支払う運用に切り替えます。まずは勤怠を正しく記録するところから。固定残業代を使う場合は、その設計(時間数・金額・差額精算)が有効要件を満たしているかもあわせて確認します。過去分の扱いが心配な場合は、社会保険労務士と対応範囲を相談します。

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STEP4:肩書きと処遇の整合を取り、就業規則に反映する

最後に、肩書き・権限・待遇の整合を取ります。本当に経営と一体の権限を持たせて管理監督者とするのか、それとも管理職手当+残業代の一般管理職とするのか——会社としての役職の定義を決め、就業規則や賃金規程に反映します。「どの役職から管理監督者か」を曖昧なままにしないことが、再発防止になります。

その反映先である就業規則を、何をどこまで書いてどう届け出るかは、就業規則の作り方で、記載が必要な項目から届出の手順まで通してまとめています。

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活用事例|自社の管理職の扱い、どう見直すか(ケース別)

ケース①:店長を管理職扱いにしている小売・飲食業

多店舗の店長は、名ばかり管理職の典型例として争われやすい立場です。まず店長の実際の権限(採用・予算・人事への関与)と待遇を確認し、3基準で判定。該当しないなら、労働時間の把握と残業代の支給に切り替えます。あわせて、店長手当と残業代の関係を整理し、手取りの逆転が起きない設計にします。

ケース②:主任以上を一律「管理職・残業代なし」にしている会社

「主任以上は管理職」という一律運用は危険度が高いパターンです。役職ごとに実態を見直し、本当に経営と一体の権限を持つ層と、そうでない層を切り分けます。多くの場合、課長級までは一般管理職として管理職手当+残業代とし、真に一体の層のみ管理監督者とするのが現実的です。

ケース③:これから管理職登用の基準を整えたい会社

昇格のたびに扱いがぶれてきた会社は、この機会に「どの役職から管理監督者か」「管理職手当と残業代の関係」を定義し、就業規則に落とします。入口の定義を整えておけば、登用のたびに判断に迷うことがなくなり、名ばかり管理職の発生を防げます。

【参照】
厚生労働省「『管理監督者』の範囲の適正化に関するQ&A」
厚生労働省「管理監督者(裁判例)」
労働基準法(第41条ほか・e-Gov法令検索)

まとめ

労働基準法の「管理監督者」は、労働時間・休憩・休日の規定が適用除外となり、残業代・休日手当が不要になります。しかしその判断は、役職名ではなく実態で行われ、①経営者と一体的な立場、②労働時間の裁量、③地位にふさわしい待遇、の3つをすべて満たす必要があります。

肩書きだけで残業代を止める「名ばかり管理職」は、未払い残業代の請求リスクに直結します。また、管理監督者であっても、深夜割増と年次有給休暇は別途必要です。

まずは管理職扱いにしている人の実態を洗い出し、3基準で判定するところから。該当しない人には正しく残業代を支払う体制へ切り替え、役職の定義を就業規則に落としておくことが、リスクを抑える確かな方法です。

最後に

管理監督者の問題は、「残業代を払うか払わないか」の話に見えて、実は「役職と権限と待遇が、ちゃんと噛み合っているか」という組織設計の話です。ここが整うと、管理職本人の納得感も高まります。

私たちは、管理職の実態確認から、3基準での判定、残業代・勤怠の運用整備、役職定義の就業規則への反映までをハンズオンで支援しています。「うちの管理職の扱いは大丈夫だろうか」という確認からで大丈夫です。まずはお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

金井 春樹(株式会社TRAVEL LIKE Talent Partner事業部 取締役COO / TAM)

前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。

現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。

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