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相談窓口が作れない小さな会社のカスハラ対応|最小限の体制
目次
やることは3つだけです|担当を決める、型を1枚にする、逃げ道を用意する
相談窓口を作る、と聞くと大ごとに思えますが、やることは3つだけです。①相談を持っていく相手を一人決めて全員に伝える、②相談を受けたあとの初動を1枚にまとめる、③現場で判断できないときの逃げ道(本部・警察・外部)を用意する。専任担当も専用部署も要りません。
厚生労働省が公表している資料でも、カスハラの相談窓口は他のハラスメント窓口と一体である必要はなく、上司にあたる管理監督者を相談担当に定めることも考えられるとされています。つまり「相談は誰に持っていけばいいか」を決めて全員に伝えれば、それで窓口の実体はできます。
「うちは従業員十数名。専任の相談担当も総務部もいない。店舗によっては社員が一人で店番をしている時間帯もある」——そういう会社を想定した答えが、ちゃんと用意されているということです。
大切なのは、器の立派さではなく、相談を受けたときに現場が迷わず動ける状態になっているかどうかです。誰に言えばいいのか分からないまま、店員が一人で怒鳴られ続ける——この状態を放置しないことが、まず求められています。
この記事では、専任担当がいない小さな会社が、無理なく回せる最小限の体制をどう作るかを、順を追って整理します。
💡 この記事でわかること:
- ●相談窓口は「担当を決めて伝える」ことから始められる理由
- ●相談を受けてからの初動を、聞く→記録する→守る→再発を防ぐの4ステップで整理する方法
- ●従業員が一人しかいない店舗で、その場でできる対処と、あとで会社がやるべき配慮
- ●取引先が事実確認に応じないときの相談先
そもそもカスハラの相談窓口とは
カスハラの相談窓口とは、顧客や取引先からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)を受けた、または見聞きした従業員が、その事実を会社に相談できる「決められた相談先」のことです。専用の部署や外部委託のホットラインを指す言葉ではありません。
ここで押さえておきたいのは、カスハラの窓口は、パワハラやセクハラなど他のハラスメントの相談窓口と一体で設ける必要はないという点です。カスハラは事案が起きたその場ですぐ相談したほうがよかったり、現場の状況をよく知る上司に相談するほうが適切だったりする場面が多いためです。そのため、労働者の上司にあたる管理監督者を相談担当に定めることも考えられます(他のハラスメント窓口と一体で設けても構いません)。これは厚生労働省が公表しているハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について(令和8年4月24日)の問12で示されている考え方です。
言い換えると、「専門の窓口を新設しなさい」という話ではなく、「誰に相談すればいいかを、会社としてはっきり決めて周知しなさい」ということです。小さな会社ほど、この整理が体制づくりの出発点になります。
窓口=立派な制度ではない|押さえる4つのポイント
小さな会社が体制を作るときは、次の4つを決めておけば、まず形になります。難しい制度設計は要りません。
1. 相談先を「誰」と決めて、全員に伝える。 社長本人でも、店長でも構いません。大事なのは、従業員が「困ったらこの人に言えばいい」と迷わない状態にすることです。2. 相談を受けたときの初動を1枚にする。 何を聞き、どう記録し、どうエスカレーションするかを、A4一枚程度にまとめておきます。担当者が変わっても同じ動きができるようにするためです。3. その場でできる対処を、あらかじめ決めておく。 十分に説明してもなお要求が繰り返される場合は、一定の時間が過ぎたら退店を求めたり電話を切ったりする。暴行・脅迫など犯罪に当たり得る言動は警察へ通報する。現場で対応しきれないときは本社・本部に情報を共有して指示を仰ぐ——こうした対処の目安を先に共有しておきます。4. あとから被害者を守る手当てを決めておく。 相談を受けてカスハラの事実が確認できたら、担当者の変更、シフトや配置の変更、話を聞く場を設けるなど、被害を受けた従業員を守る措置につなげます。
この4つは、相談を「受けてから」「終わったあと」までを一本の流れとして捉えると理解しやすくなります。
3つのやることを、「最小限これだけ」と「できればここまで」に分けて整理すると、着手のハードルが下がります。
| やること | 最小限これだけ | できればここまで |
|---|---|---|
| ①相談先を決める | 社長か管理職を一人指名し、全員に口頭+書面で伝える | 社内に一つ、社外(社労士等)に一つの二段構え |
| ②初動の型を作る | 聞く→記録する→守る→再発を防ぐ、をA4 1枚に | 記録の様式を決め、既存の日報や勤怠に乗せる |
| ③逃げ道を用意する | 本部への連絡先と、警察に通報する基準を明記 | 都道府県労働局など公的な相談先も一覧に載せる |
まずは左の列だけで構いません。空欄のまま施行日を迎えるより、最小限でも埋まっている状態のほうが、現場ははるかに動けます。
進め方|4ステップ
上の流れを、実際に会社で動く順番に落とし込みます。手を動かすのはこの順番です。
STEP1:相談先を一人決めて、全員に周知する
まず「相談は誰に持っていくか」を決めます。専任である必要はなく、社長や店長が兼ねて構いません。決めたら、朝礼・チャット・掲示など、その会社で必ず全員に届く方法で伝えます。「困ったら○○さんに」まで言い切ることが、窓口を機能させる第一歩です。
STEP2:初動の型を1枚にまとめる
相談を受けた担当者が、事実を落ち着いて聞き取り、記録し、必要に応じて社長へ共有する——この初動を一枚に整理します。聞くべき項目は「誰が・いつ・どこで・何をされたか」。担当者の記憶や気分に頼らず、同じ動きができる状態にしておきます。
STEP3:その場でできる対処の目安を共有する
時間で区切って退店を求める、電話を切る、犯罪に当たり得る言動は警察へ通報する、現場で対応できないときは本部へ連絡して指示を仰ぐ。こうした対処の目安を、現場の一人ひとりが事前に知っている状態にします。判断を現場だけに背負わせないことが目的です。
STEP4:被害者を守り、再発を防ぐ手当てを決める
事実が確認できたら、担当替えやシフト変更で行為者と引き離す、必要に応じて社内外の相談先でメンタル面のケアにつなぐ、といった配慮の措置をとります。あわせて、相談した人のプライバシーを守り、相談したことを理由に不利益な扱いをしないことを社内で明確にしておきます。
ここで社長がやりがちなのが、事実確認の途中で「たいしたことない」と判断を先に置いてしまうことです。相談を受けた側の動き方を、あらかじめ決めておいてください。
決めた動き方は、就業規則にも書き残しておきます。書かないまま運用すると、担当者が代わったときに根拠が消えるためです。どこまで記載し、どう届け出るかは、就業規則の作り方で、必要な項目と手順を通して整理しています。
活用事例|規模別の体制のつくり方(ケース別)
規模や拠点の状況によって、現実的な形は変わります。ここでは、たとえば次のような会社を想定して整理します(特定の企業の事例ではなく、一般化した想定です)。
その場での対処が中心になります。十分に説明してもなお要求が続く場合は時間で区切って退店を求める、犯罪に当たり得る言動は警察へ通報する、現場で判断しきれないときは本社・本部へ情報を共有して指示を仰ぐ——この3つを事前に決めておきます。後日その事実が確認できたら、一人の店舗であっても、担当者の変更や配置の見直し、話を聞く場を設けるといった被害者への配慮の措置につなげます。
社長か管理職の一人を相談担当と決め、初動の型を一枚にまとめて全員に配れば、それで最小限の窓口になります。厚生労働省の解釈事項(問12)も、相談窓口を他のハラスメントの窓口と一体にする必要はなく、上司にあたる管理監督者等を相談担当に定めることも考えられるとしています。立派な制度をゼロから作る話ではありません。
各拠点の店長を一次窓口、本社を二次窓口とし、現場で抱えきれないものは本社へ上げる二段構えにすると、現場の負担が偏りません。大事なのは「どこまでを現場で判断し、どこから本社に上げるか」の線を先に決めておくことです。ここが曖昧だと、現場は上げるべき事案を抱え込み、本社は把握できないまま時間が過ぎます。
最も設計が難しいケースです。社長が対応の当事者になっている事案を、その社長に相談させるのは無理があります。この場合は、外部の社会保険労務士や顧問先を「もう一つの相談先」として明示しておくのが現実的です。社内に一つ、社外に一つ。逃げ道を二つ用意しておくことが、実質的に窓口を機能させます。
なお、取引先が絡む事案で、相手方が事実確認への協力に応じてくれないこともあります。会社だけで抱え込まず、都道府県労働局などの公的な窓口に相談することもできます。公的な相談先があることも、知っておいてください。
参考(厚生労働省):ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について(令和8年4月24日・PDF)(問12・問15・問20) / 職場におけるハラスメントの防止のために
まとめ
小さな会社のカスハラ相談窓口づくりは、次の3点に集約できます。①相談窓口は他のハラスメント窓口と一体である必要はなく、管理監督者を担当に定めることも考えられる。だから担当を一人決めて全員に伝えることから始められます。②相談を受けてからは、聞く→記録する→守る→再発を防ぐの流れを型にしておく。③従業員が一人の店舗でも、その場でできる対処と、あとからの配慮の措置を事前に決めておく。器の立派さではなく、現場が迷わず動ける状態こそが窓口の実体です。
なお、制度の要件は改正されることがあります。個別の対応や具体的な運用を固める前には、公式情報の確認や専門家への相談をおすすめします。
最後に
「決めて伝えるだけでいい」とはいえ、いざ自社でやろうとすると、誰を担当にするか、初動の一枚に何を書くか、一人店番の店舗をどう守るか——迷いどころは意外と多いものです。ここで手が止まってしまい、「うちの規模では無理だ」と後回しになってしまう。それが、小さな会社でいちばん起きやすいつまずきです。
私たちTalent Partner(社長の経営参謀®)は、こうした場面で、方針を書いた紙を置いて帰るのではなく、隣に座って一緒に形にすることを大切にしています。相談担当を誰にするか、初動の型をどう一枚にまとめるか、現場が本当に回せる手順に落とし込むところまで、実務として一緒に動きます。高額なシステムを無理に入れるのではなく、いまある勤怠や日報の仕組みに記録を乗せるなど、その会社の身の丈に合った「ちょうどいい」形を一緒に探します。
カスハラ対応は、労務だけの話に見えて、記録の取り方や現場のシフト、従業員の定着や採用にまで地続きでつながっています。税理士は税金、社労士は労務、と領域が分かれがちなところを、人・お金・組織を横断して一つの流れとして整えられるのが、私たちの立ち位置です。労務・法務の最終的な判断には専門家の確認が必要ですが、その入り口を整え、実行まで伴走する役割を担います。
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「うちの規模でどう始めればいいか、一度整理したい」という段階でも構いません。まずは無料相談で、自社に合った最小限の体制を一緒に考えるところから始めてみませんか。
この記事を書いた人
前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。
現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。
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