健康経営優良法人とは?採用に効く理由と2027年の申請要件
目次
健康経営優良法人とは|国が「働きやすさ」を認定する制度
求人票に「働きやすい職場です」と書く。面接でも同じことを話す。ところが応募者の側から見れば、どの会社の求人にも似た言葉が並んでいます。何をもって働きやすいのか、外から確かめる手立てがありません。
この記事が想定しているのは、従業員数十名規模で、採用に苦戦している会社です。待遇も職場の雰囲気も悪くない。それでも応募が集まらない。足りていないのは中身ではなく、それを外へ伝える手立てのほうです。
この制度が何であって、何でないかを先に書きます。健康経営優良法人は、その「働きやすさ」を第三者の認定という形に置き換えられる制度です。従業員の健康管理を経営的な視点で実践している法人を「見える化」する仕組みで、経済産業省が平成28年度に創設し、認定するのは日本健康会議。ただし採用の集客の主役にはなりません。効くのは、応募を迷っている人の最後のひと押しとしてです。そしてもう一点、申請の前提として保険者の健康宣言事業への参加が必要で、ここが最初の関門になります。
部門は2つに分かれています。中小企業が申請するのは中小規模法人部門です。株式会社などの会社法上の会社と士業法人は、業種ごとの従業員数か資本金・出資金額のどちらかに当てはまればこの部門に該当します。卸売業は100人以下または1億円以下、小売業は50人以下または5,000万円以下、サービス業は100人以下または5,000万円以下、製造業その他は300人以下または3億円以下です。それ以外の法人は、従業員数だけで区分されます。
| 部門 | 認定申請料 | 2027年認定の申請締切 |
|---|---|---|
| 中小規模法人部門 | 15,000円(税込16,500円)/件 | 2026年10月16日(金)17時 |
| 大規模法人部門 | 80,000円(税込88,000円)/件 | 2026年10月9日(金)17時 |
2027年認定の申請受付は2026年8月17日(月)から始まります。中小規模法人部門の締切は10月16日17時です。年に一度しかチャンスがないため、今期を逃すと次は1年後になります。
この記事では、健康経営優良法人とは何か、なぜ採用に効くのか、中小規模法人部門の認定要件、そして2027年認定の申請スケジュールと費用を、経済産業省と認定事務局の公表情報をもとに整理します。
この記事でわかること
- 健康経営優良法人が「採用に効く」と言われる理由と、その限界
- 認定で受けられるメリット(採用・補助金の加点・公的優遇)
- 中小規模法人部門の認定要件5つの大項目と、必須になっている項目
- 2027年認定の申請スケジュール・費用と、申請前に必要な前提条件
なぜ「採用に効く」と言われるのか
この制度に関心を持つ経営者の多くが、採用への効果を期待しています。実際、どう効くのかを整理します。
自社の主張が「国の認定」に置き換わる
求人票に「アットホームな職場です」「働きやすい環境です」と書いても、求職者はほとんど信用しません。自社が自社を評価しているだけだからです。健康経営優良法人は、経済産業省が創設した制度にもとづく日本健康会議の認定です。同じ「働きやすさ」の訴求でも、主張の出どころが自社から第三者に変わるという点が決定的に違います。
認定を受けた法人は、所定のルールのもとで認定ロゴマークを使用できます(使用規程は公式サイトでご確認ください)。求人票、採用サイト、会社案内に掲載できるため、求職者が最初に目にする場所で効きます。
採用全体の設計をどう組み立てるかは、中小企業の採用|何から始める?計画・募集・選考・受け入れの4段階で整理しています。認定はあくまで一要素で、求人票や選考設計と組み合わせて初めて効きます。
認定要件そのものが労働環境の整備になっている
もうひとつ見落とされがちなのがこちらです。認定要件には、長時間労働者への対応、心の健康保持・増進、受動喫煙対策といった項目が含まれます。要件を満たそうとすると、職場が実際に変わります。
つまり「ロゴをもらうために書類を整える」制度ではありません。取り組んだ結果として認定されるという順序です。定着率の改善を期待するなら、認定そのものよりも、この過程のほうが本体だと考えてください。
効果を過大に見積もらない
正直にお伝えすると、認定を取れば応募が増える、という単純な話ではありません。経済産業省が2026年7月5日に開いた学生座談会(24名)では、健康経営の認知度は低く、名称を知っている学生はほとんど見られなかったと報告されています。
一方、日本経済新聞社が就活生600人・転職者300人に聞いた調査(2023年9月実施)では、健康経営の取り組みや認定の有無が就職先を決める決め手になると答えた人が60.4%(「最も重要な決め手になる」8.4%、「重要な決め手の一つになる」52.0%)でした。ただしこの設問は、健康経営とは何か、認定のロゴがどういうものかを提示したうえでの回答です。この2つは矛盾しません。
名前は知られていないが、中身を説明されれば効く、というのが実態に近いところです。だからロゴを置くだけでは足りず、給与、勤務地、仕事内容といった条件が先に見られたあとで、認定は「この会社は大丈夫そうか」を判断する材料として働きます。
最後のひと押しの材料であって、集客の主役ではない。この位置づけを間違えないことが、投資判断としては重要です。
この記事の内容を、社内で共有できる資料にまとめています。
数字で見ると|認定法人は離職率が低く、中小企業ではまだ珍しい
印象論だけでは判断できないので、経済産業省が2026年7月の健康経営推進検討会で示した数字を見ておきます。中小規模法人部門だけを取り出した離職率です。
| 区分 | 離職率 |
|---|---|
| ブライト500・ネクストブライト1000 | 9.0%(N=1,045) |
| 通常認定・小規模特例認定 | 10.1%(N=4,818) |
| 30〜99人企業の平均 | 13.6% |
上位認定を取っている会社は9.0%で、30〜99人企業の平均13.6%を4.6ポイント下回っています。ただし、この3つは出どころが同じではありません。9.0%と10.1%は健康経営優良法人2026の申請書に記載された内容を日本総合研究所が集計したもの、13.6%は厚生労働省の2024年度雇用動向調査(令和6年度離職率)の値です。そして相関であって、因果ではありません。認定を取ったから辞めなくなったのか、もともと人が辞めにくい会社が認定を取れているのかは、この数字だけでは分かりません。それでも「健康経営に取り組んでいる会社の群は、離職率が低い傾向にある」ところまでは言えます。
もうひとつ、採用の観点で効いてくるのが普及率です。同じ資料によると、2026年5月12日時点で認定を受けている割合は、大企業が10,364社中3,761社で36%、中小企業が3,364,891社中23,077社で0.69%でした。大企業では3社に1社が取っている一方、中小企業ではまだ100社に1社もありません。同じ規模の会社と並んだときに、認定の有無が目に留まりやすいということでもあります。
参考(経済産業省・健康経営優良法人認定事務局):第6回 健康経営推進検討会 事務局資料(2026年7月14日) / 健康経営のメリット
認定されると何が変わるか|採用以外のメリット
採用以外にも、実利のあるメリットがあります。
- 補助金の加点 … たとえば新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募(2026年10月30日締切)では、加点項目の一つとして「健康経営優良法人2026に認定されている事業者」が挙げられています。加点項目は申請締切日時点で満たしている必要があるため、補助金の公募が始まってから認定を取りにいっても間に合いません
- 公的機関・自治体の優遇 … 自治体や金融機関によっては、認定法人向けの優遇金利や表彰、入札の加点などを設けている場合があります
- 保険者との関係 … 申請の前提として保険者の健康宣言事業に参加するため、健診データの活用や保健指導の連携が進みます
補助金の加点については、認定の「年次」まで指定される点に注意してください。公募要領は加点の対象になる認定の年次を明示していて、それ以前の年次が加点されるとは書かれていません。毎年申請して認定を維持することに意味があるのはこのためです。加点項目の全体像は補助金の加点項目とは?2026年に取れる項目を一覧で解説にまとめています。
なお自治体・金融機関の優遇は地域ごとに内容が異なります。自社の所在地でどの優遇が使えるかは、所管の自治体や取引金融機関に直接ご確認ください。
日本政策金融公庫の低利融資が使える
自治体ごとに内容が変わる優遇とは別に、全国どこでも使える国の融資制度があります。日本政策金融公庫の中小企業事業が扱う「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」は、利用できる方の条件の一つに「健康経営優良法人の認定(効力を有する認定に限る)を受けている方」を挙げています。使いみちは、働き方改革実現計画を実施するための設備資金と長期運転資金です。融資限度額は7億2千万円(直接貸付)で、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内(いずれも据置2年以内)と長く取れるため、月々の返済負担を抑えながら投資できます。
金利は、認定を受けていると2億7千万円までは特別利率①が適用され、うちホワイト500・ブライト500・ネクストブライト1000の認定を受けている場合は、さらに低い特別利率②になります。次は貸付期間5年以内の標準的な利率です(令和8年8月3日時点。信用リスク等に応じて実際の利率は変わります)。
| 区分 | 貸付期間5年以内の利率 |
|---|---|
| 基準利率(2億7千万円を超える部分) | 2.75% |
| 特別利率①(認定法人・2億7千万円まで) | 2.35% |
| 特別利率②(ホワイト500・ブライト500・ネクストブライト1000・2億7千万円まで) | 2.10% |
表のとおり、認定を受けているか、さらに上位認定かで、2億7千万円までの部分に適用される利率が変わります。設備投資や運転資金の調達を控えているなら、認定を受けるタイミングを資金計画と合わせておくと、調達コストをそのぶん下げられます。ただし利率は時点で改定されるため、実行前に公庫へ最新の適用利率を確認してください。
なお、この制度を使うには、社会保険および労働保険への加入義務がある法人は加入していることが必要です。認定を持っていても、ここが欠けていると対象になりません。また、上の内容は中小企業事業(直接貸付)のものです。
認定ロゴマークは名刺にも求人票にも使える
認定を受けると、その年の西暦が入ったロゴマークが付与されます。使い道は「従業員、求職者、取引先企業等のステークホルダーに対して企業情報を紹介する目的」に限られますが、その範囲は思っているより広く、経済産業省のFAQは求人広告や自社の採用ホームページへの掲載を明示的に認めています。名刺への使用も可能です。ハローワークインターネットサービスでは令和4年6月から表記できるようになり、求人票にロゴを載せられます。使用に申請は要らず、費用もかかりません。求職者が最初に目にする場所へ、そのまま置けるということです。
一方で、規約違反になる使い方も決まっています。次の表は、使える場面と、使うと規約違反になる場面を整理したものです。
| 使える | 規約違反になる |
|---|---|
| 名刺・自社サイト・チラシ・会社案内への掲載 | 西暦の記載がないロゴの使用(年度を消すなどの改変も不可) |
| 求人広告・自社の採用ホームページへの掲載 | 認定の有効期間を過ぎてからの使用 |
| ハローワークインターネットサービスでの表記 | 認定法人でない法人の使用(グループ会社は、認定法人一覧に社名がある法人だけ) |
| 認定法人IDを併記した使用(推奨されています) | 商品やサービスの品質を保証しているかのような使用 |
表の右側は、いずれも「認定されていない期間・会社まで、認定されているように見せる」使い方です。とくに気をつけたいのが期限で、使用できるのはロゴに書かれた西暦の年度末までです。健康経営優良法人2026のロゴなら2027年3月31日まで、という数え方になります。更新申請という仕組みはないため、翌年も使いたければ、毎年申請して認定を受け直すしかありません。
なお、すでに印刷してしまった名刺は、期限を過ぎても無くなるまで使ってかまいません。ただし期限前に大量に印刷して抱え込む行為は認められていないため、名刺の増刷は認定の更新と歩調を合わせるのが安全です。
参考(日本政策金融公庫・経済産業省・認定事務局):働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付) / 主要利率一覧表(令和8年8月3日実施) / 「健康経営優良法人」ロゴマーク使用規約 / ロゴマーク使用に関するFAQ / 認定ロゴマークについて / 認定ロゴの取り扱いについて
中小規模法人部門の認定要件|5つの大項目
認定要件は5つの大項目で構成されます。ただし2027年認定の要件は、本記事の更新時点(2026年8月12日)ではまだ公表されていません。認定事務局が公開しているのは健康経営優良法人2026(昨年度)の要件で、次の表もそれに基づいています。2027年版は申請受付の開始に合わせて公表される見込みです。
| 大項目 | 主な内容 | 扱い |
|---|---|---|
| 1. 経営理念・方針 | 健康宣言の社内外への発信、経営者自身の健診受診 | 必須 |
| 2. 組織体制 | 健康づくり担当者の設置、(求めに応じて)40歳以上の従業員の健診データ提供 | 必須 |
| 3. 制度・施策実行 | 健康課題の把握、具体的な推進計画、保健指導・食生活・運動・長時間労働対応・メンタルヘルス・感染症予防・喫煙対策など | 評価項目から一定数以上 |
| 4. 評価・改善 | 健康経営の取り組みに対する評価・改善 | 必須 |
| 5. 法令遵守・リスクマネジメント | 定期健診の実施、50人以上の事業場でのストレスチェック実施、労働基準法・労働安全衛生法違反による送検がないこと 等 | 必須(自主申告) |
3の「制度・施策実行」は評価項目が①〜⑰まであり、グループごとに「◯項目以上」という形で必要数が決まっています。項目数とは別に、健康経営の具体的な推進計画を作ることも求められます。このうち受動喫煙対策は必須です。従業員数の少ない法人には、必要な項目数が緩和される小規模事業者向け特例があります。対象は、会社法上の会社等なら卸売業・小売業・サービス業が常時使用する従業員5人以下、製造業その他が20人以下、会社法上の会社等以外の法人(NPO法人・医療法人・社会福祉法人など)なら業種を問わず5人以下です。ただしこれは2025年の認定から始まった試験的な制度で、3年以内での見直しが想定されています。
長時間労働への対応は評価項目の一つですが、そもそも労働時間を正確に把握できていないと着手できません。勤怠管理が紙やエクセルのままなら、そこが先です。進め方は勤怠・給与計算のデジタル化|労務のムダをなくすにはで解説しています。
必要な項目数は年度ごとに見直されます。申請する年の認定要件を必ず公式資料でご確認ください。
参考(経済産業省・認定事務局):健康経営優良法人認定制度 / ACTION!健康経営(申請について)
制度の当てはめから社内への落とし込みまで、右腕として伴走します。
2027年認定の申請スケジュールと費用
健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)の流れ(認定事務局の予定)
費用は認定申請料15,000円(税込16,500円)/件です。大規模法人部門の80,000円(税込88,000円)と比べると、中小企業にとって取り組みやすい水準に設定されています。申請料は認定の発表より前に支払います。申請期間が終わった2026年11月上旬ごろに請求書が届き、振込の期限は12月31日です。
スケジュール上の注意点は2つあります。ひとつは年に一度しか申請できないこと。締切を過ぎると次は1年後です。もうひとつは、申請書の作成そのものより、要件を満たす取り組みの実施と記録に時間がかかることです。健診の受診率、ストレスチェックの実施、担当者の設置。これらは申請月に慌てて用意できるものではありません。
ブライト500・ネクストブライト1000とは
中小規模法人部門には、上位の認定区分があります。ブライト500とネクストブライト1000です。
通常の認定より、評価項目をより多く満たす必要があります。中小規模法人部門の通常の認定は、「制度・施策実行」の3つのグループでそれぞれ2項目以上・2項目以上・4項目以上を満たす形です。これに対してブライト500・ネクストブライト1000は、評価項目①〜⑰のうち16項目以上が求められます。
まず通常の認定を取り、翌年以降に上位を目指すという進め方が現実的です。初年度から上位を狙って要件を積み残すより、確実に認定を取って毎年更新するほうが、補助金の加点という観点でも合理的です。
呼び名の違い|ホワイト500・ブライト500・ネクストブライト1000
上位認定には、部門ごとに別々の呼び名があり、混同されやすいところです。次の表は、3つの呼称がどの部門の・どの位置づけの認定かを整理したものです。
| 呼称 | 部門 | 位置づけ |
|---|---|---|
| ホワイト500 | 大規模法人部門 | 上位500法人 |
| ブライト500 | 中小規模法人部門 | 上位500法人 |
| ネクストブライト1000 | 中小規模法人部門 | 501〜1500位 |
健康経営優良法人2026では、令和8年3月9日の発表時点で中小規模法人部門に23,085法人が認定され、そのうち上位500法人が「ブライト500」、501〜1500位が「ネクストブライト1000」でした。名刺やサイトでよく見る「ホワイト500」は大規模法人部門(同時点で3,765法人)の上位500法人の冠で、中小企業が申請する部門とは別枠です。中小企業が目指せる上位はブライト500・ネクストブライト1000で、ホワイト500ではありません。上位認定は「上位500法人」「501〜1500位」という順位で区切られる区分です。
ネクストブライト1000を狙うにも、ブライト500への申請が要る
見落とされやすいのが、上位認定の申し込み方です。ブライト500の認定では、経営者・役員の関与の度合い、健康経営の組織への浸透に向けた取り組み、健康経営のPDCAに関する取り組み状況、健康経営の推進による企業の健康風土の把握、自社からの発信状況、外部からの依頼による発信状況の6つを20:10:35:20:10:5のウエイトで配点し、上位法人を算出します。配点がいちばん重いのはPDCA(35)です。取り組みを並べるより、目標を立てて実行し、評価して次につなげているかが問われます。
そのうえで、上位501位から1500位がネクストブライト1000として認定されます。つまりネクストブライト1000は、ブライト500に申請した法人のなかから選ばれる仕組みです。申請書のQ33でブライト500への申請を選んでいなければ、そもそも順位付けの対象になりません。「ブライト500は難しそうだからネクストブライト1000を狙う」という申し込み方はできない、ということです。
もう一つ、同じくらい見落とされやすい設問があります。申請書のQ34は、評価結果を経済産業省のウェブサイト等で公表してよいかを尋ねるもので、ここで「開示不可」を選ぶと、評価結果が500位以内・1500位以内であっても上位認定はされません。投資家や求職者が参照するデータベースとして公表することが前提の認定だからです。なお、過去に何年連続で認定されてきたかは評価の対象になりません。前年までの実績があっても、その年の取り組みで評価されます。
上位を取るとフィードバックがもらえる
申請後に返ってくる情報にも差があります。中小規模法人部門では、ブライト500に申請した法人に、評価結果をまとめた「フィードバックシート」が個別に送付されます。届くのはブライト500申請法人全体のなかでの自社の偏差値等の情報で、担当者宛にメールで送られます。
認定されなくても、申請すれば受け取れます。自社の健康経営の水準を外部の物差しで測りたい、次の年に向けた改善点を具体的につかみたいという場合、ここが上位に申請する実利になります。
上位認定そのものは①〜⑰のうち16項目以上という高い要件があるので、初年度から認定を狙うより、まず通常の認定で足場を固め、フィードバックで現在地を測りながら翌年以降に上位を目指すほうが現実的です。
参考(経済産業省・認定事務局):健康経営優良法人認定制度 / 認定申請書サンプル(中小規模法人部門) / 中小規模法人部門の申請 / 申請関連資料
申請前に確認すること
申請の前に確認する項目
- ✓加入している保険者の健康宣言事業に参加しているか(保険者が実施していない場合は、自治体の事業または自社独自の宣言で代替できます)
- ✓経営者自身が健診を受けているか
- ✓健康づくり担当者を設置しているか
- ✓定期健診を実施し、50人以上の事業場でストレスチェックを実施しているか
- ✓受動喫煙対策を講じているか(必須項目)
最初の項目が最大の落とし穴です。中小規模法人部門の申請には、加入している保険者(協会けんぽの各都道府県支部、健康保険組合連合会の各都道府県連合会、国保組合等)が実施している健康宣言事業への参加が必須とされています。ただし、国民健康保険組合や共済組合などに加入していて、その保険者が健康宣言事業を実施していない場合は、各自治体が実施する健康宣言事業への参加、または自社独自の健康宣言の実施をもって代えることができます。
「申請しよう」と決めてから保険者の健康宣言に参加していないことに気づき、間に合わないというケースが起こり得ます。まず自社が加入している保険者に、健康宣言事業への参加状況を確認してください。これが出発点です。
申請書を書く段階の落とし穴
前提条件をクリアしても、申請書の書き方でつまずいて不認定になることがあります。事前準備とは別に、書類を作る段階で起きやすい失敗と、その理由を挙げます。
| つまずきやすい点 | なぜ不認定・不適合になるか |
|---|---|
| 「これから実施する予定」を書く | 回答できるのは申請日までに実施済みの取り組みだけ。申請日以降に実施する予定は、確定していても記載できない |
| セルフチェックでストレスチェックに代える | 50人未満の事業場を含む全事業場で、法令に沿った実施が必要。こころの耳などのWeb個別チェックは認められない |
| 自転車置き場の横・道路沿いに喫煙所を置く | 非喫煙者や外部の人が使う場所への設置は、受動喫煙対策を講じたと認められない |
| 推進計画にひな形を丸写しする | 他法人と著しく類似した記載は認定されない |
| 回答漏れのまま提出する | 回答漏れによる不認定では、再審査が行われない |
共通しているのは、実態が伴わない書類は通らないという点です。とくに「これから実施する予定」は書けないため、申請月に慌てて着手しても間に合いません。回答対象期間の起点は申請する年の要件で確認したうえで、健診・ストレスチェック・喫煙対策は前もって実施し、記録を残しておいてください。提出前に、各項目に根拠となる資料があるかを一つずつ確かめることが、不認定を避ける最後の関門になります。
健康宣言でつまずく3つのパターン
申請の前提になる健康宣言事業への参加は、「参加していればよい」という単純な話ではありません。申請書では加入している保険者の種類ごとに選ぶ選択肢が決まっていて、選び方を間違えると不適合になります。
| つまずくパターン | どうなるか |
|---|---|
| 協会けんぽ・健康保険組合に加入していて「自治体独自の健康宣言」「自社独自の健康宣言」を選ぶ | 協会けんぽは各支部が、健康保険組合は各都道府県連合会が健康宣言事業を実施しているため、不適合になる |
| 自治体と保険者が共同で実施している宣言事業に参加していて「自治体独自」を選ぶ | 共同実施は加入保険者の事業に参加している扱いになるため、不適合になる |
| 東京都で、銀の認定を要件としている保険者に加入している | 健康企業宣言東京都推進協議会の銀の認定を取得していないと不適合になる |
いずれも「参加していないから落ちる」のではなく、参加しているのに選択肢の選び方で落ちるという形です。自社が加入している保険者が健康宣言事業をやっているかどうかを、まず保険者に直接確認してください。代替の道(自治体の事業や自社独自の宣言)が使えるのは、加入している保険者が実施していない場合に限られます。
申請料は認定より先に払う|不認定でも返ってこない
費用の流れも押さえておきたいところです。申請料は申請時ではなく、申請期間が終わった後に請求書が届き、年内に振り込みます。認定の発表はその後です。つまり結果が分からない段階で支払うことになります。
そして認定事務局は「入金後に申請を取り下げた場合や不認定となった場合、返金は行いません」と明記しています。中小規模法人部門は税込16,500円なので金額としては大きくありませんが、要件を満たしていない状態で「とりあえず出してみる」と、費用だけが残ります。申請書に添付された自己チェック(認定基準適合書)で適合状況を確かめてから出す意味は、ここにもあります。
認定は取って終わりではない
認定された後にも、守るべきことがあります。申請書の誓約では、認定の根拠になった取り組み状況を維持または向上させるよう努めること、法人名や所在地が変わったら速やかに報告すること、そして認定基準を満たさなくなったら速やかに認定を返納することが求められます。
返納や取消が行われると、認定日に遡って認定がなかったものとして扱われます。事務局の指示に従わないまま2週間が経つと、事務局の判断で取り消されることもあります。さらに故意の場合や取消の場合は、ペナルティとして事実上申請できない期間に加え、もう1年間申請が認められません。健診の未実施、50人以上の事業場でのストレスチェック未実施、労基法・労働安全衛生法違反での送検などが、その対象として規約に並んでいます。認定を維持することと、労務管理を整え続けることは、同じ作業だということです。
参考(認定事務局・経済産業省):健康経営優良法人認定2026 申請のポイント(申請手引書) / 認定申請書サンプル(中小規模法人部門) / 中小規模法人部門の申請 / 「健康経営優良法人認定」変更・返納・取消規約
まとめ
- 健康経営優良法人は、経済産業省が創設し日本健康会議が認定する制度。中小企業は中小規模法人部門で申請する
- 2027年認定の申請受付は2026年8月17日〜10月16日17時(中小規模法人部門)。年1回のみ
- 認定申請料は15,000円(税込16,500円)/件
- 申請には保険者の健康宣言事業への参加が必須。ここが最初の関門
- 採用への効果は「自社の主張を第三者の認定に置き換えられる」こと。ただし集客の主役ではなく、最後のひと押しの材料
- 補助金の加点対象になるが、認定の年次まで指定されるため、毎年更新する意味がある
- 認定要件は5つの大項目。受動喫煙対策など必須項目がある
最後に
健康経営優良法人は、取ること自体が目的の制度ではありません。要件を満たす過程で、健診の受診率が上がり、長時間労働が可視化され、担当者が決まる。その結果として職場が変わり、採用でも語れる材料が増える、という順序です。
逆に言えば、書類だけ整えて認定を取っても、実態が伴わなければ入社した人がすぐに辞めていきます。それでは意味がありません。
私たちTalent Partner(社長の経営参謀®)は、労務体制の整備から認定の取得、それを採用にどう反映するかまでを一続きで支援しています。「自社は要件を満たせるのか」「今期の申請に間に合うか」といった見極めからご相談いただけます。
認定要件・申請期間・費用は年度ごとに変わります。申請前に必ず公式サイトの最新情報をご確認ください。

