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決算前にやる節税チェックリスト|手元資金を残す打ち手と優先順位
目次
決算3か月前が勝負|「払う税金」はまだ変えられる
決算が締まってから「思ったより利益が出ていて、税金が高い」と気づく——中小企業でよくある光景です。しかし、決算日を迎える前なら、打てる手はまだあります。大事なのは、決算の2〜3か月前に着地を見込み、手を打っておくことです。
ただし、節税なら何でもよいわけではありません。「お金が出ていく節税」で会社の体力を削っては本末転倒です。この記事では、手元資金を残しながら税金を抑える決算前のチェックリストと、その優先順位を整理します。
💡 この記事でわかること:
- ●節税の「繰り延べ型」と「お金が出ていかない型」の違い
- ●決算前に確認したい節税の打ち手チェックリスト
- ●「キャッシュを減らさない」ものから手をつける優先順位
- ●ケース別|自社ならどの打ち手が効くか
決算日を過ぎてからできるのは、すでに起きた取引を正しく処理することだけです。設備を買う、決算賞与を通知する、共済に加入する——いずれも期末までに実行して初めて当期の損金になります。逆に言えば、残り2〜3か月あれば選べる打ち手はまだ複数あります。まずは直近の試算表から利益の着地を見込み、判断するための時間を確保してください。
節税には「お金が出ていく型」と「出ていかない型」がある
節税策は、大きく3種類に分けて考えると迷いません。
- ●お金が出ていかない節税:未払費用の計上、貸倒れ・不良在庫の処理など。現金を減らさずに費用を立てられる、最優先の打ち手。
- ●必要な支出を前倒しする節税:どうせ要る設備や採用・広告を、利益が出た期に前倒す。お金は出るが「使うべきもの」に使う。
- ●繰り延べ型の節税:共済や保険。今期は損金になるが、解約時に課税される。将来へ先送りしているだけと理解して使う。
「節税のためにお金を使う」は順番が逆です。まずお金が出ていかない節税を固め、次に必要な投資を前倒し、最後に繰り延べ、という順番が鉄則です。
もうひとつ押さえておきたいのは、費用を増やしても、軽くなるのは税率の分だけだということです。100万円を支出しても、減る税金は100万円ではなく、その一部にすぎません(税率は所得の区分によって変わるため、自社の実効税率は税理士に確認してください)。つまり「お金を使う節税」は、税金が減る額より出ていく額のほうが大きくなります。だからこそ、現金が出ていかない打ち手ほど価値が高く、支出をともなう打ち手は「その支出自体が会社にとって必要か」で判断することになります。
決算前の節税チェックリスト
決算前に確認したい代表的な打ち手です。自社に当てはまるものがないか、税理士と一つずつ点検してください。
| 打ち手 | 内容 | 型 |
|---|---|---|
| 未払費用・未払給与の計上 | 期末までに発生した費用を、支払前でも計上する | 出ていかない |
| 貸倒れ・不良在庫の処理 | 回収不能の債権や売れない在庫を損失計上する | 出ていかない |
| 決算賞与 | 期末までに支給額を通知し、要件を満たせば当期の損金に | 還元+損金 |
| 40万円未満の設備を購入 | 中小企業者等の特例で一括損金(年間合計300万円まで/令和8年4月1日以後の取得分。それ以前の取得は30万円未満) | 投資の前倒し |
| 経営セーフティ共済 | 掛金は全額損金(前納も可)。取引先倒産にも備える | 繰り延べ |
| 小規模企業共済 | 掛金は全額「個人の所得控除」。経営者の退職金づくり | 繰り延べ |
| 役員退職金 | 退任・分掌変更の期に、適正額を損金計上する | 出口設計 |
それぞれの打ち手は、そもそも何をしているのか
未払費用・未払給与は、支払いが翌期でも、労働やサービスをすでに受けているなら当期の費用として立てる処理です。現金は1円も減りません。貸倒れ・不良在庫の処理も発想は同じで、回収できない債権や値の付かない在庫は、帳簿の上だけ資産として残っています。実態に合わせて落とす作業です。
決算賞与は、期末までに各人へ支給額を書面で通知し、事業年度終了の日の翌日から1か月以内に実際に支払うなどの要件を満たすことで、当期の損金にできる仕組みです。要件は細かく定められているため、実行前に税理士へ確認してください。お金は出ていきますが、社外ではなく社員に還元されます。
40万円未満の設備は、本来なら数年かけて償却する資産を、買った期に一括で費用化する特例です。効くのは支出した期の1回で、翌期以降の償却費を先に使い切る形になります。
経営セーフティ共済は、掛金を積み立て、取引先が倒産したときに無担保で借入ができる制度です。掛金は会社の損金になり、解約時に戻るお金は会社の収入になります。小規模企業共済は、社長個人が掛金を払う退職金制度で、効くのは会社の税金ではなく社長個人の所得税・住民税です。
役員退職金は、退任や分掌変更の期に、会社から社長へ支払う大きな費用です。適正な範囲であれば当期の損金となり、受け取る側は退職所得として扱われます。
参考:国税庁 No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の特例 / 経営セーフティ共済の活用(当社記事) / 小規模企業共済(当社記事)
優先順位|「キャッシュを減らさない」ものから
チェックリストは、上から順に手をつけるのがコツです。
まず、お金が出ていかない節税(未払計上・貸倒れ・評価損)を固めます。ここは現金を減らさずに利益を圧縮できるので、やらない手はありません。次に、必要な投資の前倒し(設備・採用・広告)。どうせ要るものを、利益の出た期に持ってきます。最後に繰り延べ型(共済・保険)。将来課税を理解したうえで、出口とセットで使います。
この順番を守るだけで、「節税したのに資金繰りが苦しくなった」という失敗を避けられます。
3つの型は、痛みの出る場所が違う
お金が出ていかない節税のメリットは明快です。現金を1円も減らさずに利益を圧縮できるため、資金繰りを痛めません。ただし使えるのは、実態のある分だけです。回収できる売掛金を落とす、動いている在庫を評価減する——といった実態のない処理は税務調査で否認され、本税に加えて加算税まで払うことになります。落とし穴は、根拠資料が残っていないこと。取引先の状況、在庫の滞留期間、費用の発生を示す請求書や契約書。処理そのものより、この証拠の整備が結果を分けます。
支出の前倒しのメリットは、どうせ必要な設備や人材にお金を使いながら、利益の出た期に費用を持ってこられることです。デメリットは単純で、現金が減ること。向いているのは、来期以降に使う予定が固まっていて、手元資金に余裕がある会社です。向いていないのは、「節税になるから」という理由だけで買う会社。落とし穴は期末ぎりぎりの発注で、損金にできるのは取得して事業に使い始めたものです。納品や設置が期末を過ぎれば、当期には効きません。
繰り延べ型のメリットは、掛金がそのまま損金(小規模企業共済なら個人の所得控除)になり、同時に倒産への備えや退職金の原資が積み上がることです。デメリットは、現金が長く寝ること、そして出口で課税されること。早期に解約すると元本割れする仕組みもあります。向いているのは、毎年安定して利益が出て、その資金を当面使わずに済む会社。向いていないのは、利益が読めず資金繰りが薄い会社です。落とし穴は出口の設計で、業績のよい期にまとめて解約すれば、繰り延べた利益がそこで一気に表に出ます。役員退職金など大きな損金が立つ期に合わせて解約する——そこまで決めて初めて、繰り延べは節税になります。
活用事例|自社ならどの打ち手が効くか(ケース別)
よくあるケースで、打ち手の組み合わせを整理します。
まず未払費用・貸倒れ・不良在庫の処理でキャッシュを減らさず圧縮。そのうえで、来期どうせ買う40万円未満の備品を前倒しで購入します。
決算賞与を活用します。期末までに支給額を各人に通知し、要件を満たせば当期の損金に。従業員のモチベーションと節税を両立できます。
経営セーフティ共済(会社の損金)と小規模企業共済(社長個人の所得控除)を両建て。会社と個人の税金に同時に効かせ、退職金の原資も積み上がります。
役員退職金を大きな損金として使い、共済の解約益などとぶつけて出口の税金を抑えます。承継のタイミングと決算をそろえて設計します。
共通するのは、「お金を使う節税」に飛びつく前に、お金が出ていかない打ち手を先に固めることです。決算前の数か月を、税理士と一緒に点検する時間にあててください。
自社がどのケースに近いか、当てはめてみる
ケース1に近いのは、期末3か月前の試算表で、前期より利益が明らかに上振れしている会社です。社員10〜20名の建設業や製造業では、外注費の請求書が期をまたいで届いている、現場の工具や什器の入れ替えが先送りになっている、といった拾い漏れがよく眠っています。
ケース2は、利益が出て手元資金にも余裕があり、社員の頑張りに報いたい会社。ただし決算賞与は要件が厳格です。誰にいくら支給するかを期末までに書面で通知し、その控えを必ず残したうえで、事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払いを済ませてください。
ケース4は、社長が60代後半にさしかかり、承継が視野に入っている会社です。役員退職金の適正額は、実務では「最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率」で組み立てるのが一般的です(功績倍率に法律で決まった数値があるわけではなく、役職や会社への貢献度から判断します)。式の先頭に最終報酬月額が来る以上、役員報酬をいつ・いくらに設定するかが、退任時に損金にできる金額そのものを左右します。報酬を抑えすぎたまま退任を迎えると、退職金の枠も小さくなる——退任の数年前から逆算しておく必要があります。
まとめ
① 決算前2〜3か月が勝負
着地の利益を見込み、決算日を迎える前に手を打つ。締まってからでは打てる手がぐっと減ります。
② 「お金が出ていかない節税」から固める
未払計上・貸倒れ・評価損 → 必要な投資の前倒し → 繰り延べ(共済)の順。お金を使うだけの節税は本末転倒です。
手元資金を厚くする打ち手は、税金の側だけではありません。返済条件の見直しなど、支出そのものを軽くする方法は中小企業の資金繰り改善でまとめています。節税と並行して効かせると、効果が積み上がります。
③ 繰り延べ型は「出口」まで見て使う
共済・保険は将来課税されます。解約・受け取りの期まで設計して初めて、本当の節税になります。
最後に
決算前の節税や、共済・退職金とあわせた資金の設計について、「自社ならどの打ち手が効くか」とお悩みであれば、お気軽にご相談ください。決算の着地見込みから逆算し、手元資金を減らさずに税負担を抑える打ち手を、税理士とも連携しながらご一緒に整理します。
この記事を書いた人
前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。
現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。
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