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中小企業が使える雇用関係助成金ガイド|補助金との違いと選び方
目次
「補助金と助成金って、何が違う?」——中小企業がまず押さえる基本
「補助金」と「助成金」、どちらもよく聞く言葉ですが、違いを説明できる経営者は意外と少ないものです。ざっくり言えば、助成金は“要件を満たせば原則もらえる”雇用系、補助金は“公募で審査があり採択されないこともある”投資系——という違いがあります。
とくに雇用関係助成金(厚生労働省の助成金)は、採用・育成・処遇改善・両立支援など、人に関する取り組みに幅広く使えて、要件を満たせば受給しやすいのが特徴です。人手不足のいま、知っているかどうかで、採用・育成にかけられる余力が変わります。
この記事は、中小企業が使える主な雇用関係助成金を俯瞰する“地図”です。補助金との違い、共通の鉄則、そして目的別の選び方を整理し、各助成金の詳しい解説への入口をまとめました。押さえるべきは次の4点です。
💡 この記事でわかること:
- ●助成金(雇用系)は要件を満たせば原則受給、補助金(投資系)は公募・審査があり採択制
- ●雇用関係助成金は、採用・育成・処遇・両立支援など“人”の取り組みに幅広く使える
- ●共通の鉄則:取り組みの“前”の手続き(計画届・紹介ルート・交付決定)を守ること
- ●就業規則などの土台整備と、記録・証憑の保存が、受給の前提になる
補助金と助成金の違い
まず、混同されがちな両者の違いを整理します。
| 助成金(雇用系) | 補助金(投資系) | |
|---|---|---|
| 主な所管 | 厚生労働省(労働局・ハローワーク等) | 経済産業省・自治体 など |
| 主な目的 | 雇用の維持・改善(採用・育成・処遇・両立など) | 設備投資・新事業・販路開拓 など |
| 受給のしやすさ | 要件を満たせば原則受給(予算の範囲内) | 公募・審査があり、採択されないこともある |
| 募集 | 通年で使えるものが多い | 公募期間が定められていることが多い |
中小企業がまず押さえたいのは、助成金は“準備と順番”を守れば受給しやすいという点です。補助金のように「採択されるかどうか」の不確実性が小さいぶん、要件と手続きを正確に踏むことが、そのまま受給につながります。
この“受けやすさ”の差は、財源の違いから来ています。雇用関係助成金の主な原資は、事業主が納めている雇用保険料です。自社も負担してきたお金が、雇用改善の取り組みを通じて戻ってくる仕組みのため、要件を満たせば原則受給できます。一方の補助金は国や自治体の予算が原資で、限られた枠を公募で配分するぶん、審査があります。この性格の差が、準備の進め方そのものを分けます。
雇用関係助成金の“共通の鉄則”
個々の助成金は目的も金額も違いますが、受給のための「守るべき型」は共通しています。ここを外すと、どの助成金でも受け取れません。
鉄則①:取り組みの“前”に、必要な手続きをする
ほとんどの雇用関係助成金は、取り組みを始める前の手続きが生命線です。研修や設備投資なら計画届の事前提出、採用系ならハローワーク等の紹介ルート、賃上げ+設備なら交付決定を待つこと——「先にやってから申請」では対象外になります。「まず手続き、それから実行」を徹底します。
鉄則②:就業規則などの“土台”を整える
正社員化なら転換制度、定年引上げなら定年規定、両立支援なら育児・介護休業規程——多くの助成金は、就業規則の整備が前提になります。土台が抜けていると、いくら取り組んでも要件を満たせません。
鉄則③:記録・証憑を残す
計画書、賃金台帳、出席簿、領収書、就業規則——申請では、取り組みの事実を書類で示す必要があります。「やったが記録がない」は、受給できない典型です。取り組みと同時に、証拠を残す意識を持ちます。
目的別・主な雇用関係助成金
次に、中小企業が使う代表的な雇用関係助成金を、目的で整理します。
| やりたいこと | 主に使える助成金 |
|---|---|
| 非正規を正社員にしたい | キャリアアップ助成金 |
| 社員を研修・育成したい | 人材開発支援助成金 |
| 賃上げ+設備投資をしたい | 業務改善助成金 |
| 育児・介護と両立できる職場にしたい | 両立支援等助成金 |
| シニアに長く働いてもらいたい | 65歳超雇用推進助成金 |
| まず“お試し”で採用したい | トライアル雇用助成金 |
| 就職が難しい人を継続雇用したい | 特定求職者雇用開発助成金 |
まず知っておきたいのが、どの助成金も基本は“後払い”だという点です。先にお金が振り込まれるのではなく、取り組みを実行し、要件を満たしたことを書類で示してから、あとで支給されます。費用はいったん自社が立て替える形になり、受給までには数か月かかるのが通常です。この時間差を頭に入れておくと、資金繰りと段取りがしやすくなります。その前提で、代表的な助成金が“そもそも何なのか”を一つずつ見ていきます。
- ●キャリアアップ助成金:有期・パートなどの非正規社員を正社員に転換した事業主に支給されます。転換して一定期間、雇用を続けることが軸です。
- ●人材開発支援助成金:社員に計画的な訓練(研修)を行うと、研修にかかった経費の一部と、訓練を受けている間の賃金の一部が戻ります。事前の訓練計画の届出が入口です。
- ●業務改善助成金:社内で最も低い賃金を引き上げ、あわせて生産性を上げる設備などに投資すると、その設備投資費用の一部が支給されます。賃上げが起点になる助成金です。
- ●両立支援等助成金:育休の取得・復帰や、休む人の代わりの体制づくりなど、仕事と育児・介護を両立できる取り組みに対して支給されます。
- ●65歳超雇用推進助成金:定年の引上げ・廃止や継続雇用制度の導入など、高齢の社員が長く働ける制度を整えると支給されます。制度の改定が起点です。
- ●トライアル雇用助成金:就労経験の少ない求職者などを、ハローワーク等の紹介で一定期間“お試し”雇用する間、その期間に応じて支給されます。
- ●特定求職者雇用開発助成金:就職が特に難しい人を、ハローワーク等の紹介で継続して雇い入れると、賃金の一部が一定期間支給されます。
目的から選ぶ|あなたの会社はどれ?
採用・戦力化に使う
非正規を正社員にするならキャリアアップ助成金、まずお試しで採るならトライアル雇用助成金、就職が難しい人を継続雇用するなら特定求職者雇用開発助成金、シニアに長く働いてもらうなら65歳超雇用推進助成金が候補です。
育成・処遇改善に使う
社員を研修・育成するなら人材開発支援助成金が使えます。賃上げと設備投資をセットで進めるコースは、公募のたびに要件が変わるため、着手前に厚生労働省の最新資料で確認してください。
働きやすさ・定着に使う
育児・介護と両立できる職場を整えるなら、両立支援等助成金が使えます。働きやすさは、離職防止と採用力に直結します。
選ぶときの、共通の勘所
どれを選ぶ場合も、分かれ目は「その取り組みが助成金抜きでも自社に必要か」です。もらえるからと不要な採用や研修を始めると、立て替えた費用と手間が助成額を上回り、かえって負担になります。ここが最大の落とし穴です。キャリアアップ助成金は正社員化の“あと”に定着してこそ効き、無理な登用は逆効果になります。人材開発支援助成金は、研修を回す体力(時間・指導役)がある会社向き。業務改善助成金は、賃上げの原資を設備投資で生み出したい会社に向きます。書類づくりや事前手続きに人手を割けないなら、社労士など外部の手を借りる前提で臨むのが安全です。
助成金活用の進め方|4ステップ
STEP1:やりたいこと(目的)を1つ決める
「正社員化したい」「研修を仕組みにしたい」「賃上げしたい」——いま最も進めたい目的を1つ決めます。目的が定まれば、使う助成金は自然と絞られます。あれもこれもと欲張らず、優先度の高いテーマから着手します。
助成金は“目的の手段”です。助成金ありきでなく、やりたいこと(経営課題)ありきで選ぶことが、形だけの取り組みを避けるコツです。
STEP2:就業規則などの土台を整える
選んだ助成金が前提とする土台(転換制度、定年規定、育児・介護休業規程など)を、就業規則に整えます。ここは助成金以前に、労務として整えておくべき部分でもあります。土台が固まっていれば、以降の手続きがスムーズになります。
STEP3:“順番”を確認し、事前手続きをする
その助成金の鉄則(計画届の事前提出、ハローワークの紹介ルート、交付決定を待つ、など)を確認し、取り組みの前に必要な手続きを済ませます。ここを飛ばすと、すべてが無駄になります。締切・申請期間もこの段階で押さえます。
STEP4:実行し、記録を残して支給申請する
計画にもとづいて取り組みを実行し、記録・証憑を残しながら進めます。所定の期間・要件を満たしたら、定められた申請期間内に支給申請します。「実行して終わり」ではなく、申請までを見据えてスケジュールを管理します。
活用事例|助成金の組み合わせ(ケース別)
まずトライアル雇用で見極めてから採用し、定着後にキャリアアップ助成金で正社員化、さらに人材開発支援助成金で育成——というように、採用から育成までを助成金でつなぐことができます。就業規則の転換制度など、土台の整備を先に済ませておくのがポイントです。
業務改善助成金で賃上げ+生産性向上を進めつつ、両立支援等助成金で働きやすさを整えるケース。「賃金」と「働きやすさ」の両面から、離職防止と採用力の底上げを図ります。
特定求職者雇用開発助成金や65歳超雇用推進助成金を活用し、これまで視野に入れていなかった層(シニア・就職困難者など)に採用の間口を広げます。人手不足を、多様な人材の受け入れで補います。
たとえば、こんな会社
ケース①のイメージは、従業員12名ほどの運送・倉庫業。繁忙期だけ来ていたパート2名を、まずトライアル雇用で見極め、続けられると判断してから正社員に登用しました。転換制度を就業規則に入れておいたので、キャリアアップ助成金の要件にもすんなり乗りました。ケース②は、社員20名前後の食品加工業。最低賃金の引上げが迫るなか、包装工程に小型の機械を入れて一人あたりの処理量を増やし、業務改善助成金で設備投資の一部をまかないました。あわせて育児中の社員が短時間でも働き続けられる制度を整え、退職を思いとどまってもらえました。ケース③は、社員8名の金属加工業。人が集まらず、思い切って60代の経験者とブランクのある求職者をハローワーク経由で採用し、特定求職者雇用開発助成金などを人手不足対策の一部として使いました。いずれも「助成金のために動いた」のではなく、必要な一手に助成金を重ねた点が共通しています。
【参照】
厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」
厚生労働省「雇用関係助成金一覧」
まとめ
助成金(雇用系)は要件を満たせば原則受給でき、補助金(投資系)は公募・審査があり採択制、という違いがあります。雇用関係助成金は、採用・育成・処遇・両立支援など“人”の取り組みに幅広く使えます。
受給の鍵は、共通の鉄則を守ること。①取り組みの前の手続き(計画届・紹介ルート・交付決定)、②就業規則などの土台整備、③記録・証憑の保存——この3つを外さなければ、多くの助成金は使えます。
助成金は“目的の手段”です。助成金ありきではなく、やりたいこと(経営課題)から選び、正しい順番で進めることが、成功の近道です。詳しくは、各助成金の解説記事をご覧ください。
助成金は採用の打ち手の一部で、効くのは前後の設計が整っている場合です。計画・募集・選考・受け入れの4段階は、中小企業の採用でまとめています。どこが弱いかを先に見つけてから、合う助成金を選ぶほうが無駄がありません。
最後に
雇用関係助成金は、種類が多く手続きも細かいぶん、「知っている会社」と「知らない会社」で差がつきます。順番と土台さえ押さえれば、採用・育成・定着にかけられる余力を、確実に増やせます。
私たちは、目的の整理から、就業規則などの土台整備、順番を外さない事前手続き、実行と支給申請までを、社会保険労務士と連携しながらハンズオンで支援します。「うちに合う助成金はどれか」という相談からで大丈夫です。まずはお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。
現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。
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