Blog ブログ
求人に応募が来ない中小企業の原因|まず整える採用ページ
目次
求人に応募が来ない中小企業が、媒体の前に見落としている場所
「年間70万円かけたのに、1週間たっても応募がゼロなんです」。地方で精密部品の加工を手がける、従業員10名ほどのメーカー。総務をほぼ一人で切り盛りするOさんは、少し疲れた声でそう話し始めました。
この会社はいま、2名の欠員を抱えています。1名は傷病で長期休業、もう1名は21歳の若手が辞めてしまった。夜勤を止めて、日勤をフル稼働させてなんとか納期に間に合わせている状態です。ハローワークとIndeedでずっと募集をかけ、それでも思うような人が来ない。そこで意を決して、ダイレクトリクルーティング型の採用サービスにキャンペーン価格・年間70万円で申し込みました。登録から1週間、応募は一件も来ていません。
「お金かけても無駄やわ、こんなん」。中小企業の社長や採用担当から、私たちは同じ言葉を何度も聞いてきました。でも、たいていの場合、無駄なのは媒体そのものではありません。候補者が求人を見た”次”に必ず立ち寄る場所が、空っぽのまま放置されている——これが、応募が来ない中小企業に共通する本当の理由です。
この記事では、K社の実例をたどりながら、求人媒体にお金をかける前に整えるべき「採用の土台」を具体的に解説します。
💡 この記事でわかること:
- ●求人に応募が来ない中小企業が、媒体の前に見直すべき「候補者の動線」
- ●福利厚生を”採用の武器”に変える、具体的な数値の見せ方
- ●一つの媒体に頼らず、少額でリスクを分散する複数媒体の考え方
求人で「明示すべき労働条件」は法律で決まっている
応募が来ないと媒体を疑いがちですが、その前に土台の確認です。求人・募集を出すとき、職業安定法により明示しなければならない労働条件が定められています。業務内容・契約期間・就業場所・労働時間・賃金・加入する社会保険などが基本項目で、2024年4月からは「業務や就業場所の変更の範囲」「有期契約を更新する場合の上限」なども追加されました。
ただし、これはあくまで最低ラインです。候補者が本当に知りたいのはその先——どんな人と働くのか、職場の雰囲気はどうか、待遇は他社と比べてどうか、という"実感"の部分です。法定の明示事項を満たしたうえで、候補者が必ず立ち寄る「採用ページ」でこの情報を厚くする。これが、同じ媒体費でも応募が集まる会社と集まらない会社を分けます。
製造業などで応募を左右する給与・求人票の設計は、製造業の採用は給与設計で決まる|賃金相場と求人票で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
参考(厚生労働省):2024年4月からの募集時の労働条件明示ルール / 労働条件の明示(確かめよう労働条件)
「70万円かけて応募ゼロ」の現場で起きていること
まず押さえたいのは、K社が採用に手を抜いていたわけではない、という点です。むしろ逆で、Oさんは実務を一人で誠実にこなす実行者でした。ハローワークもIndeedも試し、効果が薄いと感じてからは、より踏み込んだ有料サービスに年間契約という決断までしています。
それでも応募が来ない。Oさんの話を聞いていくと、原因は媒体の外にありました。
Indeedやハローワークを使っていたときの実感を、Oさんはこう表現しました。「登録している人を見ると若い人も多いんですが、玉石混交という言葉がぴったりで」。誰でも気軽に応募できるぶん、狙った層に届いている手応えがない。そして今回申し込んだ有料サービスも、「若い人が多いらしいから、1名限定で試してみよう」という期待からのスタートでした。
つまりK社は、媒体を次々に乗り換えることで採用難を解決しようとしていたわけです。これは決して珍しい動きではありません。ただ、乗り換えても結果が変わらないとしたら、問題は媒体の選び方ではなく、その手前にあると考えたほうがいい。私たちが第三者の視点で状況を整理すると、K社には「候補者がどう動いて応募に至るか」という動線が抜け落ちている、という構造が見えてきました。
応募が来ない中小企業に共通する「候補者動線」の断絶
採用がうまくいかない会社の多くは、候補者が応募を決めるまでの流れを見ていません。求人媒体は入り口にすぎず、そこから先の動きがあります。
求職者は、気になる求人を見つけたあと、ほぼ間違いなくその会社のホームページを検索します。求人票に書かれた情報だけで応募を決める人は、実はほとんどいません。「どんな会社なんだろう」「働いている人はどんな雰囲気だろう」と、自分の目で確かめてから応募ボタンを押すかどうかを決めるのです。
この流れをK社に当てはめると、問題がくっきり見えてきます。求人媒体には70万円を投じた。ところが候補者が必ず立ち寄る採用ページは、事業内容が数行あるだけで、働く環境も、人も、待遇も、ほとんど伝わってこない状態でした。
私たちがOさんにお伝えしたのは、こういう例えです。フレンチを食べに行こうと思ったら、多くの人はまず食べログを開きます。写真が載っているか、星の数はどうか、口コミはどうか。人は情報を食べている生き物で、情報をたくさん食べられるほど安心して選べます。採用も同じで、候補者が食べられる情報を会社側が用意していなければ、どんなに良い媒体を使っても反応は返ってこない。気づいてもらうためのアピールが足りていないだけ、というケースが本当に多いのです。
だからこそ、まず動かすべきは媒体ではなく、候補者が必ず見るホームページの採用ページでした。今まさに制作を依頼しているホームページ担当者に、求職者へ向けて魅力が伝わるページを作ってもらうよう働きかける。ここが出発点になります。
応募が集まったあと、面接で見極める設計は、採用面接で見抜けない落とし穴|見極めの設計で解説していますので、そちらもご覧ください。
福利厚生を”採用の武器”に変える、数字の見せ方
K社には、実は候補者に響く材料がすでにありました。使えていなかっただけです。
この会社には、お弁当の半額補助、コーヒー無料、血圧測定といった福利厚生が整っていました。ところが、それが求人情報のどこにも書かれていない。実在する強みが、候補者からは”何もない会社”に見えている——これは非常にもったいない状態です。
福利厚生は「ある」と書くだけでは伝わりません。給料に上乗せして、いくら得なのかを数字で見せると、途端に意味が変わります。私たちがOさんに提案したのは、こういう見せ方でした。
| 昼食にかかるお金 | 補助がない場合 | K社(半額補助) |
|---|---|---|
| 1食あたり | コンビニ800円 | お弁当250円 |
| 月20日換算 | 1万6000円 | 5000円 |
| 差額 | — | 月1万1000円お得 |
コーヒーも同じです。1缶150円のコーヒーが無料なら、30日で4500円分。「給料に加えて、これだけ生活費の節約ができる会社だ」と数字で言い切れば、待遇の受け取られ方はまったく変わります。しかも若い社員が多い職場です。その空気感を、社員が主役になった写真やビジュアルで見せられれば、なお伝わりやすくなる。
こうした発信は、求人票にもホームページにもそのまま転用できます。中小企業の採用の土台づくりは、こうして手元にある材料を「候補者に伝わる形」に翻訳するところから始まります。
一つの媒体に頼らない——少額で分散するリスクヘッジ
もう一つ、K社が抱えていたのが「一本足打法」のリスクでした。
年間70万円の有料サービスは、AIが候補者と企業をマッチングする仕組みです。この手のサービスの難しいところは、良さも弱点も同じ「AI任せ」という点にあります。うまくハマれば効率的ですが、「こういう人が欲しい」という意図と違う人ばかり呼んでくる、ということも往々にして起こります。そこに採用の全額を賭けてしまうと、AIの精度の当たり外れに結果が丸ごと左右されてしまう。
だから私たちは、複数の媒体に薄く分散することをおすすめしています。
ポイントは、分散にそれほど大きなお金は要らないということです。IndeedやEngageのようなサービスは、月に1万円、あるいは数千円からでも運用できます。メインの入り口を一つに絞らず、複数の小さな入り口を並べておく。これだけで、どこか一つが空振りしても採用活動が止まらなくなります。
さらに長期の仕掛けとして、会社ブログを定期的に更新して検索からの流入を増やす方法もあります。ここで一つ、Oさんに実際にお見せしたことがあります。旅行先で撮った写真を3枚と、「妻と大分・別府の地獄巡りをしてきました」という一言だけを渡すと、AIが数分で5000字ほどの読める記事を書き上げる。この手軽さなら、忙しい会社でも情報発信を続けられます。発信量が増えれば、候補者が食べられる情報も自然と増えていく、というわけです。
「無駄だった」が「順番が逆だった」に変わった日
面談を終えるころ、Oさんの表情は最初とは変わっていました。
「お金をかけても無駄」だと思っていた70万円の投資は、無駄ではなく「順番が逆だった」だけだと腑に落ちたからです。候補者が必ず見る採用ページを整え、福利厚生を数字で見せ、媒体を分散させる。この土台を先に作っておけば、70万円の媒体はようやく本来の力を発揮できます。
実際に、いくつかは面談の場で前に進みました。私たちがK社の求人テキストを直接レビューする合意ができ、そのためにサービスのログイン情報を共有いただくことになりました。ホームページ担当者へ「採用ページに何を載せてほしいか」という依頼内容も、一緒に整理しました。社員が主役になる採用ポスターの制作会社も紹介し、求人票とホームページの両方に使えるビジュアルを持つ道筋も見えました。
原資の面でも追い風があります。並行して進めていた保険の見直しで、年間およそ100万円の削減が固まりつつありました。これまで漠然と「採用にいくらかけるべきか」と迷っていたお金に、はっきりした出どころができた。採用は行き当たりばったりの出費ではなく、原資と打ち手がつながった一つの計画に変わったのです。
これまで「媒体を変えれば何とかなる」と一人で抱えていた採用の悩みが、この日はじめて「どこから手をつければいいか」が見える形に整理されました。
まとめ
求人に応募が来ない中小企業がまず取り組むべきことを、3点に整理します。
① 媒体の前に「候補者が必ず見る採用ページ」を整える
候補者は求人票を見たあと、必ず会社のホームページを確認します。ここが空っぽなら、どれだけ良い媒体を使っても応募にはつながりません。情報の量が、候補者の安心感と志望度を決めます。
② 既にある福利厚生を「数字」に翻訳して見せる
お弁当補助やコーヒー無料といった強みは、「ある」と書くだけでは伝わりません。月いくら得なのかを数字で言い切れば、待遇の受け取られ方が大きく変わります。手元の材料を、候補者に伝わる形に変えるだけです。
③ 一つの媒体に賭けず、少額で分散する
有料マッチングは精度に波があります。月数千円から使えるサービスを並行させ、入り口を複数持つことで、どこか一つが空振りしても採用が止まらない体制を作れます。
採用は、突き詰めれば情報量の勝負です。会社側が発信する情報が多いほど、候補者は安心して応募を決められます。媒体にお金をかける前に、まずこの土台を整える。順番を正すだけで、同じ投資の効き方はまるで変わります。
最後に
もし今、「求人媒体にお金をかけているのに応募が来ない」「何が悪いのか分からないまま次の媒体を探している」といった状態でお困りなら、いちど立ち止まって採用の土台を点検する価値があります。
私たちは、アドバイスをして資料を置いて帰るのではなく、求人テキストのレビューやホームページ担当者への依頼整理まで、現場の中に入って一緒に手を動かします。採用にかけるお金を「無駄な出費」で終わらせないために、まずは一度ご相談ください。御社にすでにある強みの棚卸しから、ご一緒します。
この記事を書いた人
前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。
現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。
CONTACT お問い合わせ
日々全力で事業に取り組む経営者の想いに寄り添い、目標に向かって伴走させていただきます。
まずはお気軽にご連絡ください。