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免税事業者への外注が多い会社の消費税|単価交渉と契約の見直し

財務設計

単価の見直しをお願いすること自体は、違反ではありません

「値下げを切り出したら、それだけで法律に触れるのではないか」。外注先の多くがインボイス(適格請求書)未登録という会社で、いちばんよく聞く誤解がこれです。職人や一人親方への外注が売上原価の中心を占め、控除できる割合が8割から7割へ下がる。負担は確実に増えるのに、単価の話だけが切り出せないまま残っている——そんな状態に心当たりはないでしょうか。

この心配は、半分あたっていて半分外れています。仕入先である免税事業者との取引条件を、インボイス制度を踏まえて見直すこと自体は、直ちに問題になるわけではありません。 問題になるかどうかは「見直しの進め方と中身」で決まります。

買手の都合だけで一方的に決めれば独占禁止法や取適法(2026年1月に下請法から名称と内容が改まった法律)に触れますが、双方が納得できる協議を経れば、結果的に価格が下がっても問題にはなりません。つまり避けるべきは「単価を下げること」そのものではなく、「一方的に押しつける進め方」です。この記事では、どこからが違反になるのかを公正取引委員会ほかの一次情報(条文番号つき)で線引きし、そのうえで「気をつけながら、ちゃんと交渉する」やり方を具体的に示します。

💡 この記事でわかること:

  • 外注先が免税事業者だと、自社の消費税に何が起きるのか
  • 単価交渉の「どこからが違反」か(取適法・独占禁止法・建設業法の6類型)
  • 「双方納得」を客観的に作る4つのステップと、記録の残し方
  • 下に押しつけず、上(売上先)に転嫁するという第三の道

そもそも、外注先が免税事業者だと自社の消費税はどうなるのか

免税事業者とは、消費税の納税義務が免除されている小規模な事業者のことです(多くは一人親方や個人の職人など)。この相手からの仕入れは、原則として仕入税額控除(払った消費税を差し引く仕組み)ができません(消費税法第30条第7項)。ただし経過措置があり、一定割合までは控除できます(平成28年改正法附則第52条・第53条)。

その割合が、令和8年(2026年)9月30日までは80%、令和8年10月1日から令和10年9月30日までは70%へと段階的に下がります。外注比率が高い会社ほど、この10ポイントの差が消費税の負担として効いてきます。段階ごとの数字と落とし穴はインボイス経過措置が70%へ|2026年10月からの負担増と対応で詳しく整理しているので、負担額の全体像はそちらを合わせてご覧ください。

✓ あわせて読みたいインボイス経過措置が70%へ|2026年10月からの負担増と対応インボイスの経過措置は2026年10月から控除割合が80%から70%へ下がります。4段階のスケジュール、上限の10億円から1億円への引き下げ…

ここで大事なのは、負担が増えたからといって、その分をそのまま外注先の単価に押しつけてよいわけではないという点です。免税事業者も、自らの材料や道具の仕入れでは消費税を払っています。「控除できない分を丸ごと相手に負担させる」という発想で進めると、次章のとおり法律に触れるおそれが出てきます。

参考(国税庁):インボイスQ&A(免税事業者等からの仕入れに係る経過措置・問113)インボイス制度特設サイト

単価を下げる前に|どこからが違反になるのか

まず押さえるべき大前提です。公正取引委員会ほかのQ&A(「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」/令和8年1月30日改正)のQ5・Q7は、取引条件の見直し自体は直ちに問題にならないとしつつ、その設定方法や内容によっては独占禁止法・取適法・建設業法により問題となりうる、と明記しています。免税事業者は情報量や交渉力で格差があり、条件が一方的に不利になりやすいためです。

適用関係も整理されています(Q7柱書)。取適法と独占禁止法の両方が使える行為には通常取適法が適用され、建設業を営む者が請け負う建設工事の請負契約には取適法ではなく建設業法が適用されます。取適法の対象は、①製造委託 ②修理委託 ③情報成果物作成委託 ④役務提供委託 ⑤特定運送委託(取適法第2条第1項〜第5項)に該当する取引です。

そのうえで、Q7は「やってはいけない型」を6つ挙げています。特に山場は取引対価の引下げ(Q7の1)です。買手が仕入税額控除できない分を理由に引下げを求めること自体は禁じられていません。再交渉で、免税事業者側が仕入れや諸経費で払っている消費税も考慮したうえで、双方納得の上で価格を決めれば、結果的に下がっても独占禁止法上問題にはなりません。 逆に、再交渉が形式だけで、買手の都合のみで著しく低い価格を設定し、相手が仕入れ時に払った消費税額も払えないような価格にした場合は、優越的地位の濫用として問題になります。

取適法に当てはめると、責めに帰すべき理由がないのに発注時に定めた代金を減じれば第5条第1項第3号(代金の減額)、著しく低い代金を不当に定めれば第5条第1項第5号(買いたたき)。ここで、仕入先が免税事業者であることは「責めに帰すべき理由」には当たりません。 建設業では、元請が地位を不当に利用して下請と合意なく代金を一方的に減額し、通常必要な原価を下回れば、建設業法第19条の3第1項(不当に低い請負代金の禁止)に触れます。

単価の見直しで「やってはいけない4つの型」(Q7)
取引対価の引下げ
再交渉が形式的で、買手の都合のみで著しく低い価格を設定する/取適法第5条第1項第3号・第5号
受領拒否・返品
免税事業者であることを理由に成果物の受領を拒む・返品する/取適法第5条第1項第1号・第4号
協賛金等の負担要請
価格据置きの代わりに、協賛金や販売促進費の名目で金銭負担を求める/取適法第5条第2項第2号
購入・利用強制
価格据置きの代わりに、別の商品・役務を買わせる/取適法第5条第1項第6号・建設業法第19条の4

残りの類型も一言で。取引の停止(Q7の5)——一方的に著しく低い価格を設定して応じない相手との取引を停止すれば、独占禁止法上問題となるおそれ。登録の慫慂(しょうよう)等(Q7の6)——課税事業者になるよう促すこと自体はよいが、「ならなければ単価を下げる・取引を打ち切る」と一方的に通告すれば問題となるおそれ。特に、免税事業者が価格維持を求めたのに、引下げ理由を書面・電子メール等で回答せずに引き下げるケースが例示されています。

そして見落とされがちなのが、「登録してもらった後」がむしろ危ない点です(Q5・Q7の1)。要請に応じて相手が課税事業者になった場合、新たに必要になる消費税分について、①明示的に協議せず価格を据え置けば独占禁止法上の優越的地位の濫用または取適法上の買いたたき、②協議の要請に応じず一方的に据え置けば取適法上の「協議に応じない一方的な代金決定」として、それぞれ問題となるおそれがあります。「登録してもらったのだから単価は据え置きでいい」——これが最も危ない発想です。

据置きも「一方的な決定」に含まれるという考え方は、下請法から取適法への改正で明確になった点のひとつです。何が変わり、受注側としてどう使えるのかは、取適法で、5つの変更点と協議の求め方に分けてまとめています。

✓ あわせて読みたい取適法とは?|下請法から変わった5つのポイントと受注側の使い方下請法から名前が変わった「取適法」で何が変わったのか、受注する側の視点で5つのポイントを整理します。用語・対象の広がり・特定運送委託・価格協…

なお、以上はあくまで枠組みで、実際に問題になるかは個別の事実関係で変わります。判断に迷うときは、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口、弁護士に確認してください。

参考(公正取引委員会・財務省・経済産業省・中小企業庁・国土交通省):免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A(令和4年1月19日公表/令和8年1月30日改正) / 公正取引委員会 インボイス制度関連コーナー

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進め方|「双方納得」を客観的につくる4ステップ

前章の裏返しが、そのまま安全な進め方になります。鍵は「双方納得」を、感情論ではなく数字と記録で客観的に作ること。あなたの会社では、単価の話を口頭の空気だけで進めていませんか。次の4ステップで、交渉の中身を目に見える形にします。

単価を見直すときの4ステップ
自社の減少額を出すどの取引で控除がいくら減るのかを金額で把握する
相手の原価も置いて協議の場を設ける免税事業者も消費税を払っている前提で協議する
決めた金額と理由を書面で残す合意額とその根拠を書面・電子メールで交わす
売上先への転嫁を相談する減った分を自社の販売価格に乗せられないか相談する

STEP1:自社の減少額を数字で出す

まず、外注先ごとの支払額を棚卸しし、「どの取引で、控除できる分がいくら減るのか」を金額で出します。ここが交渉の土台です。相手にとっても、感覚ではなく具体的な金額で示されるほうが話は前に進みます。「なんとなく厳しいので下げてほしい」ではなく、「この取引で自社の負担がこれだけ増える」と言える状態を作ります。

STEP2:相手の原価も置いて協議の場を設ける

免税事業者も、自らの仕入れで消費税を払っています。控除できない分を丸ごと転嫁できる前提で計算してはいけません(Q7の1)。相手の材料費や諸経費にかかる消費税も机の上に置いたうえで、双方が納得できる着地点を探します。大切なのは、形式ではなく実質的に協議すること。相手が価格維持を求めているなら、その声にきちんと向き合う必要があります。

STEP3:決めた金額とその理由を書面で残す

合意した金額と、そこに至った理由を、書面か電子メールで交わします。Q7の6は「価格維持を求められたのに、引下げ理由を書面・電子メール等で回答することなく引き下げる」ことを問題としています。裏を返せば、理由を書いて渡すことが、そのまま防御になります。 契約書・発注書では、後述のとおり税抜・税別の扱いも明記しておきます。

STEP4:減った分を売上先に転嫁できないか相談する

下に押しつけて終わりにせず、減った分を自社の売上先に乗せられないかを検討します。もし外注先に登録(課税転換)を求めるなら、登録後の単価を先に協議して決めておくことも忘れないでください。「登録してから考える」は、STEP3までの積み上げを台無しにします。

契約面の補足を一つ。免税事業者に「税抜」「税別」で価格を設定する場合、消費税相当額を支払うのか否かで認識がずれやすいので、書面で明確にしておきます(Q6)。見積書や請求書に消費税相当額が書かれていても、免税事業者は支払総額を踏まえて値決めしていることがあり、総額から逆算した本体価格が通常より低く見えることもあります(Q5注)。「税別と書いてあるから上乗せ済みのはず」という思い込みは、後のトラブルの元です。

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下に押しつけるより、上に転嫁する

実は、Q&Aには「そもそも外注先に押しつけない道」も示されています(Q5)。免税事業者との取引条件を見直すことが適当でない場合には、控除できる額が減る分を、免税事業者への支払いを減らして吸収するのではなく、原材料費や諸経費と合わせて販売価格に転嫁できないか、自社の売上先と相談することも考えられる、とされています。下に押しつけるのではなく、上に転嫁する。 これを結論に据えます。

増えた負担を、どちらに向けるか
下に押しつける
外注先の単価を下げて吸収する一方的に決めれば取適法・独占禁止法上の問題になりうる。職人が離れれば人手の確保が難しくなり、結局は自社の受注力が落ちる
上に転嫁する
諸経費と合わせて販売価格に反映するQ5が示す道。外注先との関係を保ったまま、増えた負担を本来の受け手に返す。根拠資料をそろえれば協議のテーブルにのせられる

さらにQ5は、課税転換した事業者に対しては、発注側から価格交渉を積極的に申し出るよう求めています。免税事業者は取引関係上、値上げが本来必要でも自分から言い出しにくい立場だからです。「言ってこないから据え置き」ではなく、こちらから声をかける——これが問題を避けるうえでも、関係を続けるうえでも効いてきます。

売上先への価格転嫁は、それ自体が交渉です。根拠資料の作り方や、「協議に応じない」がなぜ取適法違反になるのかは、価格転嫁の交渉資料の作り方|「協議に応じない」は取適法違反ですで具体的に解説しています。外注先との協議と、売上先への転嫁は、同じ「協議の作法」でつながっています。

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活用事例|外注先が免税事業者のときの進め方(ケース別)

具体的な進め方を、一般化した4つの想定で見ていきます(金額は事情で変わるため、ここでは進め方だけを描きます)。

ケース1|専門工事業(従業員20名・一人親方への外注が多い)

まず外注先ごとに年間の支払額を棚卸しし、控除減少額を出します。そのうえで各職人と個別に協議の場を設け、相手の道具・材料の負担も踏まえて着地点を探り、合意内容を発注書に反映します。ここで一方的に「7割しか引けないから3割分下げて」と通告すれば、取適法第5条第1項第3号・第5号のリスクが生じます。

ケース2|製造業(従業員15名・個人の職人に加工を委託)

加工委託は取適法の製造委託に当たり得ます。単価表を一律に書き換える前に、職人ごとに協議し、決めた理由を電子メールで残します。「登録すれば単価維持、しなければ引下げ」という二者択一の通告は、Q7の6が問題視する形なので避けます。

ケース3|元請から仕事を受けている会社(取適法・建設業法の両面)

自社は外注先に対して「発注側」であると同時に、元請に対しては「受注側」です。外注コストの増加を自社だけで抱え込むのではなく、元請との協議で適正な請負代金に反映できないかを、同時に動かします。建設工事の請負なら建設業法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)が、上流にも下流にも効いてきます。

ケース4|外注先に課税事業者への転換をお願いした会社

相手が登録に応じてくれた場合こそ注意が必要です。新たに納税が必要になる消費税分について、明示的に協議しないまま単価を据え置けば、優越的地位の濫用または取適法上の買いたたきとして問題になるおそれがあります。登録をお願いするなら、登録後の単価を先に協議して決めておくのが順序です。

いずれのケースでも、やることは同じです。数字で示し、協議し、記録に残し、上流にも相談する。この順番を守れば、単価の見直しは「危ない交渉」ではなくなります。

まとめ

外注先が免税事業者のときの消費税は、①控除は経過措置で段階的に縮小し、令和8年10月からは70%。負担増を外注先に丸ごと押しつける発想が入口の間違い。②単価の見直し自体は問題ないが、進め方で決まる。買手の都合だけの一方的な決定は取適法第5条・独占禁止法・建設業法に触れるおそれがあり、登録後の据え置きが最も危ない。③「双方納得」は数字と書面で客観的に作る。減少額を出し、相手の原価も置いて協議し、理由を書面に残し、減った分は売上先への転嫁も相談する。下に押しつけるより、上に乗せられないかをまず考える——これが、法律に触れずに交渉する筋道です。

最後に

外注先が免税事業者ばかりで、単価の話を切り出したいのに動けない。この足踏みの正体は、多くの場合「何をどう言えば安全なのか」の線引きが手元にないことです。線引きさえ見えれば、交渉はむやみに怖いものではなくなります。

私たちTalent Partner(社長の経営参謀®)は、この線引きを引くところから、実際に相手と向き合うところまで一緒に動きます。まず外注先ごとの支払額を棚卸しし、どの取引で控除がいくら減るのかを金額にする。次に、相手の原価も踏まえた協議資料を用意し、決めた金額と理由を書面で残す形を整える。そして、減った分を自社の売上先に転嫁できないか、その交渉資料づくりまで踏み込む——「人・お金・組織」を横断して支える戦略総務の立場だからこそ、外注先との協議と売上先への転嫁を、切り離さずに一続きの動きとして設計できます。綺麗な提案書を置いて帰るのではなく、数字づくりも協議の場も、隣に座って手を動かします。

もちろん、個別の当てはめは事実関係で変わります。取適法に関する相談は公正取引委員会や中小企業庁、建設業法は国土交通省の窓口があり、兵庫県の会社なら公正取引委員会 近畿中国四国事務所や近畿経済産業局が窓口になります。制度は改正されることがあるため、申請や交渉の前には必ず公式情報または専門家にご確認ください。そのうえで、「自社の場合はどこから手をつければいいのか」を一緒に整理したい——そう感じたら、まずは無料相談でお聞かせください。単価の切り出し方に迷ったまま負担だけが増えていく状態から、一歩抜け出すお手伝いをします。

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この記事を書いた人

金井 春樹(株式会社TRAVEL LIKE Talent Partner事業部 取締役COO / TAM)

前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。

現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。

【運営会社 取得認証・認定】ISO27001 / 健康経営優良法人2026 / DX認定 / 経営革新計画(※兵庫県のコンサルティングサービスで唯一) / 事業継続力強化計画

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