ものづくり補助金は2026年どうなった?新補助金の全体像を解説
目次
ものづくり補助金は2026年どうなったのか
「今年もものづくり補助金に申請しよう」と考えていた経営者の方は、まず前提を更新してください。2026年、ものづくり補助金の枠組みは大きく変わりました。
結論を先に示します。
- 従来のものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、第23次公募(2026年4月3日〜5月8日)が直近の回でした
- 2026年6月に「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」という別の補助金が新設され、いま第1回公募が動いています
- 第1回の応募期間は2026年9月30日〜10月30日18:00、採択発表は2027年1月頃の予定です
検索すると「統合された」という解説を多く見かけますが、公式サイトの表現は違います。そこを含めて、公募要領の内容を経営者向けに整理します。
この記事でわかること
- ものづくり補助金と新しい補助金の関係(統合ではありません)
- 3つの申請枠と補助上限、応募スケジュール
- 3〜5年で必ず満たす達成要件と、未達だったときの返還リスク
- 加点項目14種と、口頭審査で社長本人が問われること
「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」とは
2026年6月29日に第1回公募が開始された補助金です。中小企業等が行う、技術的革新性のある製品・サービスの開発、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出、海外市場開拓に向けた国内の輸出体制の強化にかかる設備投資等を支援します。
ここが最も誤解されている点です。
ポイント
- 公式サイトの記載は「『中小企業新事業進出補助金』と『ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金』とは異なる補助金です」。統合されて1つになったのではなく、別の補助金として新設されたという整理が正確です。
つまり「2つが合体して1つになった」という説明は正確ではありません。従来の2つとは別の、新しい補助金が立ち上がったという理解が正しい形です。実務上の違いは大きく、たとえば過去にものづくり補助金や新事業進出補助金の交付決定を受けている場合、後述する減点や申請制限の対象になります。「同じ補助金の続き」と考えていると足をすくわれます。
対象となるのは中小企業者、小規模企業・小規模事業者、再生事業者です。個人事業主も申請できます(決算書は青色申告決算書等で提出します)。
参考(中小企業庁・中小機構):新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 / 第1回公募要領(PDF) / 補助金公募情報
3つの申請枠と補助額
申請枠は3つです。自社の取り組みがどれに当たるかで、上限額も審査の観点も変わります。
| 申請枠 | 何を支援するか | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 革新的な新製品・新サービスの開発 | 最大2,500万円(賃上げ特例で3,500万円) | 中小1/2(2/3)・小規模等2/3 |
| 新事業進出枠 | 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出 | 最大7,000万円(賃上げ特例で9,000万円) | 中小1/2(2/3) |
| グローバル枠 | 海外市場開拓に向けた国内の輸出体制強化 | 最大7,000万円(賃上げ特例で9,000万円) | 中小2/3 |
枠選びで最も多い誤解が「新規性」の解釈です。新事業進出枠について、公募要領は「ここでの新規性とは、補助事業に取り組む中小企業等にとっての新規性であり、世の中における新規性(日本初・世界初)ではありません」と定義しています。
「うちの技術は世界初ではないから無理だ」と諦める必要はありません。自社にとって新しい製品であり、自社にとって新しい市場であれば対象になります。ただし過去に製造していた製品を作り直すことは対象外です。ここは明確に線が引かれています。
一方で、革新的新製品・サービス枠は「単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないもの」は対象外とされています。設備を買うことが目的の計画は通りません。
補助対象経費は、機械装置・システム構築費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費、広告宣伝・販売促進費です。補助事業の実施期間は交付決定日から10か月以内(ただし採択発表日から12か月以内)とされています。
応募スケジュールと、逆算すべき期間
第1回公募のスケジュール
注意していただきたいのは、電子申請システムでのみ受け付ける点です。公募要領も「一般的に、電子申請の入力には数時間程度を要します」と注意を促しています。締切間際は申請が集中するため、時間に余裕を持ってください。
もうひとつ、後述する口頭審査の予約が先着順です。早く申請を完了した事業者から順に案内が届き、優先的に受験日時を選べます。締切ぎりぎりに出すと、審査日時の選択肢がほとんど残りません。この一点だけでも、早めに申請を終える理由になります。
この記事の内容を、社内で共有できる資料にまとめています。
3〜5年で必ず満たす達成要件と、未達なら返還のリスク
ここは補助金の中で最も重い部分です。採択されて終わりではなく、補助事業終了後3〜5年の事業計画で、以下のすべてを満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 付加価値額 | 年平均成長率 +4.0%以上の増加 |
| 1人あたり給与支給総額 | 年平均成長率 +3.5%以上の増加 |
| 事業場内最低賃金 | 地域別最低賃金より +30円以上高い水準 |
ポイント
- 公式サイトは「目標未達の場合は補助金の一部または全額の返還義務が生じる場合がありますのでご注意ください」と明記しています。
ここを軽く見ないでください。補助金は「もらえるお金」ではなく、「約束した成長を達成する前提で預かるお金」です。給与支給総額を年平均3.5%ずつ増やし続ける計画は、決して緩い水準ではありません。設備を入れた結果として売上と利益がどう動き、それを人件費にどう配分するのか。この筋道が描けないなら、申請そのものを見送る判断も経営判断としては正しいと考えます。
逆に言えば、この要件は「3〜5年の数値計画を作る」こととほぼ同義です。計画づくりの進め方は中期経営計画の作り方で解説しています。補助金のためだけに作るのではなく、自社の経営計画として持っておくのが本来の順序です。
加点項目は14種類ある
公募要領は「以下の項目を満たす事業者については、審査で一定程度の加点を実施します」として、14項目を挙げています。そして「加点項目は申請締切日時点で満たしている必要があります」と明記されています。
| # | 加点項目 | 要点 |
|---|---|---|
| ① | パートナーシップ構築宣言 | 令和8年1月1日に更新されたひな形で宣言を公表していること |
| ② | くるみん | トライくるみん・くるみん・プラチナくるみんのいずれか |
| ③ | えるぼし | えるぼし1〜3段階・プラチナえるぼしのいずれか |
| ④ | 健康経営優良法人 | 健康経営優良法人2026に認定されていること |
| ⑤ | 再生事業者 | 中小企業活性化協議会等の支援を受け、再生計画が策定中または3年以内に成立 |
| ⑥ | 経営革新計画 | 申請締切日時点で有効な承認 |
| ⑦ | 事業継続力強化計画 | 申請締切日時点で有効な(連携)計画 |
| ⑧ | DX認定 | 申請締切日時点で有効な認定 |
| ⑨ | J-Startup | J-Startup、J-Startup地域版に選定 |
| ⑩ | 新規輸出1万者支援プログラム | グローバル枠のみ。ポータルサイトで登録完了 |
| ⑪ | 日本の食輸出1万者支援プログラム | グローバル枠のみ。ポータルサイトで登録完了 |
| ⑫ | 研究開発費・試験研究費 | 申請締切の前期までに計上し、研究開発を推進 |
| ⑬ | 地域別最低賃金引上げ | 2024年10月〜2025年9月に一定の賃金水準の従業員が30%以上の月が3か月以上 |
| ⑭ | 事業場内最低賃金引上げ | 2025年7月と直近月を比較し、全国目安(63円以上)の賃上げ |
見落としが起きやすいのは①と④です。パートナーシップ構築宣言は「ひな形のバージョン」まで指定されています。以前に宣言していても、古いひな形のままなら加点されません。健康経営優良法人も「2026」と年次が指定されています。過去に取ったから大丈夫、は通用しません。
宣言の登録手順はパートナーシップ構築宣言のひな形|補助金加点になる書き方と手順、加点項目を取得期間の順に整理した全体像は補助金の加点項目とは?2026年に取れる項目を一覧で解説をご覧ください。
制度の当てはめから社内への落とし込みまで、右腕として伴走します。
申請できないケース・減点されるケース
加点よりも先に確認すべきなのがこちらです。そもそも申請できない場合があります。
公募要領は、申請締切日を起点にして16か月以内に、指定された補助金の交付候補者として採択された事業者(採択辞退を除く)、または締切日時点でそれらの交付決定を受けて補助事業を実施中の事業者について、申請を認めていません。
減点についても具体的に定められています。
- 補助金複数回利用者:申請締切日時点を起点に、過去3年間にものづくり補助金または新事業進出補助金で交付決定を1回受けている
- 他の補助事業の事業化が進展していない:新事業進出補助金・事業再構築補助金・ものづくり補助金の直近の事業化状況報告で、事業化段階が3段階以下
- 加点項目要件未達:賃上げに関する加点を受けて採択されたのに未達だった場合、未達が報告されてから18か月間、大幅に減点(災害等の正当な理由がある場合を除く)
- 過剰投資の抑制:類似のテーマ・設備等に関する申請が特定の期間に集中している場合、別途審査があり、過剰投資と判断されると大幅に減点
最後の「過剰投資の抑制」は、あまり知られていない重要な項目です。流行のテーマに横並びで乗った計画は、それだけで不利になり得るということです。他社と似た設備を似た理由で導入する計画ではなく、自社固有の事情から出発した計画かどうかが問われます。
口頭審査は社長本人が受ける
この補助金には口頭審査があります。そして、ここが多くの経営者にとって最も重要な情報です。公募要領の記載はこうです。「事業計画作成支援者、経営コンサルタント、社外顧問等の申請事業者以外の方の対応や同席は一切認めません。申請事業者以外の対応や同席を確認した場合は不採択となる場合があります」。
対応できるのは、個人事業主本人、法人代表者、株式会社取締役(社外取締役を除く)、応募時の労働者名簿に記載されている担当者もしくは経理担当者(勤務実態がない者を除く)に限られます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方法 | オンライン(Zoom等)。会議用URLは事務局が発行 |
| 所要時間 | 1事業者あたり15分程度 |
| 進め方 | カメラをオンにし、顔・耳・肩が明瞭に判別できる状態で受験。音声は録音される |
| 審査の観点 | 事業の適格性、優位性、実現可能性、継続可能性等 |
| 予約 | 先着順。申請完了が早いほど日時を選べる |
| 欠席 | 対象になったのに受験しなかった場合は不採択 |
つまり、書類は誰かに手伝ってもらえても、最後は社長が15分間、自分の言葉で事業を説明しなければなりません。書いた本人でない計画は、この15分で見抜かれます。
裏を返せば、準備の仕方が決まります。申請書を「書いてもらう」のではなく、「社長が語れる状態」まで一緒に作る。これが唯一の対策です。自社の数字、市場の見立て、なぜこの投資なのか。この3点を、資料を見ずに説明できるかを事前に確認してください。
何から着手するか
申請前に確認すること
- ✓過去16か月以内に対象補助金の採択・交付決定を受けていないか
- ✓3〜5年で付加価値額+4.0%・給与総額+3.5%を達成する計画が描けるか
- ✓加点項目は申請締切日時点で有効か(ひな形バージョン・認定年次まで)
- ✓口頭審査で社長本人が15分説明できる状態か
- ✓補助金は後払い。事業実施期間中の資金を用意できるか
優先順位は明確です。まず「申請できるか」を確認し、次に「達成要件を満たす計画が描けるか」を判断し、最後に加点を積む。この順序を飛ばして加点集めから始めると、そもそも申請できないと後で分かる事故が起きます。
見落としやすいのが最後の資金の問題です。補助金は原則として後払いです。設備の支払いは先に発生し、補助金が入金されるのはその後になります。実施期間は交付決定日から10か月以内。この間の資金をどう手当てするかは、採択の前に決めておくべきことです。設備投資の資金調達|補助金・融資・出資を組み合わせる順番で、補助金と融資の組み合わせ方を整理しています。
参考(中小機構):第1回公募要領(PDF)
まとめ
- ものづくり補助金は第23次が直近。2026年6月に「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」が別の補助金として新設された
- 第1回の応募期間は2026年9月30日〜10月30日18:00、採択発表は2027年1月頃
- 申請枠は革新的新製品・サービス枠/新事業進出枠/グローバル枠の3つ。上限は2,500万〜7,000万円(賃上げ特例で3,500万〜9,000万円)
- 新規性は「自社にとっての新規性」でよい。日本初・世界初である必要はない
- 3〜5年で付加価値額+4.0%、1人あたり給与支給総額+3.5%、事業場内最低賃金+30円以上。未達なら返還義務が生じる場合がある
- 加点は14種類。申請締切日時点で有効であることが必要
- 過去16か月以内に対象補助金の採択を受けていると申請できない
- 口頭審査は社長本人が受ける。コンサルの同席は一切認められず、欠席すれば不採択
最後に
この補助金は、金額が大きいぶん要求も重くなっています。3〜5年の成長と賃上げを約束し、それを社長自身が15分の口頭審査で語る。ここまでできる会社にだけ、7,000万円規模の投資機会が開かれるという設計です。
だからこそ、申請の準備は「書類を整える作業」ではなく「経営計画をつくり直す作業」になります。私たちTalent Partner(社長の経営参謀®)は、計画の数値設計から加点項目の取得、口頭審査に向けた説明の組み立てまで、社長が自分の言葉で語れる状態を目標に伴走しています。「自社は申請できるのか」「達成要件は現実的か」の見極めからご相談いただけます。
補助金の要件・加点項目・スケジュールは公募回次ごとに変わります。申請前に必ず最新の公募要領をご確認いただくか、認定経営革新等支援機関にご相談ください。

