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オンボーディングと研修の違い|入社3か月の受け入れ設計と定着対策

採用戦略

「せっかく採ったのに3か月で辞めた」——問題は本人ではなく受け入れ側かもしれない

時間もお金もかけて、やっと採用が決まった。ところが3か月ももたずに辞めてしまう。あなたの会社でも、こんなことが起きていませんか。

多くの場合、現場は「見て覚えて」で回っています。受け入れの担当も決まっておらず、入ってきた人は誰に何を聞けばいいのか分からないまま、席で手持ち無沙汰にしている。悪気があるわけではなく、皆が自分の仕事で手一杯なだけです。ただ、入った本人からすると「歓迎されていない」「自分は必要とされていない」と感じるには十分な状況です。

ただし、早期離職の原因がすべて受け入れ側にあるわけではありません。厚生労働省の調査で若い人が前職を辞めた理由を見ると、上位に並ぶのは給料と労働時間です。これは受け入れの工夫だけでは動きません。それでも、会社側の設計で動かせる領域は確かにあります。次の章で、その切り分けを数字で見ていきます。

結論から言えば、必要なのは立派な研修制度ではありません。入社前から3か月までの流れを、あらかじめ決めておくこと。これがオンボーディングです。この記事では、人事部のない中小企業でも回せる最小限の形を、順を追って解説します。

💡 この記事でわかること:

  • オンボーディングとは何か(研修とどう違うのか)
  • 若い人が前職を辞めた理由の実数と、受け入れ設計で動かせる範囲
  • 入社前・初日・1週間・1か月・3か月で用意すること
  • 定着対策の実施率1位は「職場での意思疎通の向上」59.7%。担当1人・紙1枚で回す最小の形

そもそもオンボーディングとは

オンボーディングとは、入社した人が早く戦力になり、組織に馴染むまでを支える一連の受け入れのことです。「船(board)に乗せる」という言葉が語源で、新しく加わった人を一人前のメンバーとして迎え入れるまでの期間全体を指します。

ここで押さえたいのは、オンボーディングは単発の「新人研修」ではないということです。研修が知識やスキルを教える「点」だとすれば、オンボーディングは入社前から3か月ほどにわたる「線」の設計です。業務の教え方だけでなく、「誰に聞けばいいか」「何を期待されているか」「この会社でうまくやれそうか」といった、本人が安心して働き続けるための土台づくりまで含みます。

つまり、対象は業務スキルだけではありません。人間関係への橋渡し、期待役割のすり合わせ、最初の小さな成功体験までを、意図的に用意する取り組みです。ここが抜けると、スキルはあっても「居づらくて辞める」が起きます。

数字で見る|若い人は何を理由に辞めているのか

受け入れ設計の話に入る前に、実際のデータを見ておきます。厚生労働省の令和6年雇用動向調査から、20代が前職を辞めた理由を抜き出しました。「その他の個人的理由」のように中身の分からない区分は外しています。

前職を辞めた理由 男20〜24歳 男25〜29歳 女20〜24歳 女25〜29歳
給料等収入が少なかった 12.5% 16.9% 7.6% 7.9%
労働時間、休日等の労働条件が悪かった 11.3% 9.8% 13.6% 15.2%
職場の人間関係が好ましくなかった 7.6% 11.5% 9.8% 14.0%
仕事の内容に興味を持てなかった 6.3% 5.6% 3.2% 4.8%
会社の将来が不安だった 5.0% 8.1% 4.1% 5.0%

上位に来るのは給料と労働時間です。ここは受け入れの工夫では動きません。賃金の水準や休日の設計そのものを見直す話になります。オンボーディングを整えれば離職がゼロになる、という説明は正確ではありません。

そのうえで、どの層でも上位3つに入っているのが「職場の人間関係」です。女性の19歳以下では34.0%と突出しています。誰に聞けばいいか、何を期待されているか、居場所があるか——受け入れの設計で変えられるのは、この層です。

「うちは給料で勝ちにいけない」という会社ほど、人間関係の層を放置しないほうがいい、とも言えます。

参考(厚生労働省):令和6年雇用動向調査結果の概況

早期離職はなぜ起きるのか|4つの典型パターン

前の章で見たとおり、離職理由の上位には給料と労働時間が並びます。そのうえで、会社側の設計で潰せるのは「職場の人間関係」の層です。入社して数か月でのつまずきを、私たちが支援の現場で見てきた形に沿って整理すると、次の4つになります。

第一に「放置される」。歓迎されたのは初日だけで、あとは席で放っておかれる。第二に「何を期待されているか分からない」。自分がどこまでやればいいのか、どうなれば認められるのかが見えない。第三に「聞ける相手がいない」。忙しそうな先輩に、こんな初歩的なことを聞いていいのかとためらううちに孤立する。第四に「最初の成功体験がない」。小さくても「できた」「役に立てた」という実感がないまま、自信を失っていく。

裏を返せば、この4つを潰す設計をすれば、離職はかなり防げます

早期離職の4つの引き金と、受け入れ側の打ち手
放置される
初日以降ほったらかし → 受け入れ担当を1人決め、毎日声をかける
期待が不明
どこまでやればいいか不明 → 3か月後の期待役割を初日に言葉で伝える
聞けない
質問できず孤立 → 「何でも聞いていい相手」を明示する
成功体験なし
できた実感がない → 1週間以内に達成できる小さな仕事を渡す

なお、こうした早期離職を業務の見える化から防ぐ視点は、新入社員が辞める割合は?|規模別の離職率と業務可視化での防ぎ方で、規模別の離職率とあわせて詳しく解説しています。

✓ あわせて読みたい新入社員が辞める割合は?|規模別の離職率と業務可視化での防ぎ方新人が定着しない真の原因は、教育不足でも根性不足でもなく、業務フローが社内の誰にも言語化されていないことです。中小企業の実例をもとに、業務の…
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進め方|4ステップ

オンボーディングは、入社の「前」から始まっています。時系列に沿って、それぞれの局面で何を用意するかを整理します。特別な仕組みは要りません。順番に手を打つだけです。

入社3か月の受け入れ設計
1
入社前
初日の流れを連絡し「聞いていない」をゼロに
2
初日
受け入れ担当を紹介。相談先を伝える
3
1週間
達成できる小さな仕事を渡す
4
1か月
面談で3か月後の期待役割をすり合わせる
5
3か月
戦力化と、続けられそうかを確認する

STEP1:入社前と初日を設計する

内定から初日までの空白期間は、本人が最も不安になる時間です。入社前に、初日の集合時間・持ち物・当日の流れを一言連絡しておくだけで安心感が変わります。初日は、席・PC・備品をあらかじめ整え、「待っていた」と伝わる状態で迎える。歓迎の一声と社内の顔合わせを、この日のうちに済ませます。

STEP2:最初の1週間で「聞ける関係」をつくる

最初の1週間の目標は、業務の習得より孤立させないことです。受け入れ担当を1人決め、「分からないことは全部この人に聞いていい」と本人にはっきり伝えます。ランチや短い雑談の機会をつくり、「ここでやっていけそうだ」という感覚を持ってもらうことを優先します。

STEP3:1か月で期待役割をすり合わせる

1か月ほど経つと、仕事にも人にも少し慣れ、一方で「自分はこれでいいのか」という迷いも出てきます。ここで必ず面談を1回入れます。何ができるようになったか、何に困っているか、3か月後にどうなっていてほしいか。評価ではなく、期待のすり合わせの場として使います。

STEP4:3か月で戦力化と定着を確認する

3か月は、本人が「馴染めたか」を自分でも見極める節目です。任せられる仕事の範囲を少し広げ、小さな裁量を渡します。もう一度面談し、不安が残っていないか、ミスマッチが起きていないかを確認する。ここまで設計できていれば、多くの早期離職は入り口で防げます。

入社から3か月の設計を、時期ごとに整理するとこうなります。受け入れ担当が変わっても同じ形で回せるように、紙1枚にしておくのがおすすめです。

時期 会社がやること 見ておく状態
入社前 初日の持ち物・集合時間・当日の流れを連絡する 「聞いていない」がゼロで初日を迎えられるか
初日 受け入れ担当を紹介。職場を一周し、困ったときの相談先を伝える 誰に聞けばいいかを本人が言えるか
最初の1週間 1週間以内に達成できる小さな仕事を渡す 質問が出てきているか(無ければ聞けていない)
1か月 面談で3か月後の期待役割をすり合わせる 期待と本人の理解がずれていないか
3か月 戦力化の状況と、続けられそうかを確認する 本人から「この先」の話が出るか

よその会社は何をやっているのか|定着対策の実施率

ここまでの進め方が特別なものかどうかも、数字で見ておきます。厚生労働省の令和5年若年者雇用実態調査によると、若年正社員の定着のための対策を行っている事業所は73.7%です。実施している対策(複数回答)の内訳は次のとおりでした。

実施している対策 若年正社員 正社員以外
職場での意思疎通の向上 59.7% 57.7%
採用前の詳細な説明・情報提供 58.4% 54.5%
本人の能力・適性にあった配置 55.6% 50.0%
労働時間の短縮・有給休暇の積極的な取得奨励 52.9% 44.9%
教育訓練の実施・援助 48.5% 36.7%
職場環境の充実・福利厚生の充実 41.2% 33.0%
仕事の成果に見合った賃金 39.1% 35.1%
仕事と家庭の両立支援 36.3% 37.6%
昇格・昇任基準の明確化 30.5% 20.6%

1位の「職場での意思疎通の向上」と2位の「採用前の詳細な説明・情報提供」は、この記事のSTEP2とSTEP1そのものです。受け入れ担当を決めて聞ける関係をつくること、入社前に初日の流れを伝えること。立派な制度ではなく、多くの会社が実際に手をつけているのはこの2つだ、ということです。

前回(平成30年)調査と比べていちばん伸びたのは「労働時間の短縮・有給休暇の積極的な取得奨励」で、15.1ポイント増でした。前の章で労働時間が離職理由の上位に並んでいたことと符合します。

中途入社の人ほど、育成が薄くなっている

同じ調査で育成状況を見ると、若年正社員を育成している事業所は77.9%、方法はOJTが69.8%、OFF-JTが35.2%です。ただし採用区分で分けると差が出ます。

育成方法 新規学卒で採用された者 中途で採用された者
OJT 65.9% 63.5%
OFF-JT 37.5% 27.8%
自己啓発への支援 33.2% 29.7%
ジョブローテーション 23.8% 19.2%

中途で採用された人は、どの方法でも新卒より低く、とくにOFF-JTは約10ポイントの差があります。「経験者だから説明しなくても分かるだろう」で受け入れを省いてしまう構図が、数字にも出ています。この記事の4ステップは、中途入社にもそのまま使えます。

参考(厚生労働省):令和5年若年者雇用実態調査の概況

「やった方がいい」ではなく、国の指針に定めがある

オンボーディングは会社の善意でやるもの、と思われがちですが、若者を雇う事業主が講ずるよう努めるべき措置として国の指針に書かれています。青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)にもとづく事業主等指針(厚生労働省告示第406号)の第三が「事業主が青少年の職場への定着促進のために講ずべき措置」です。

指針が求めている措置 この記事のどこに当たるか
採用後の職場の実態と入職前の情報に格差を感じることのないよう、職場で求められる能力・資質、キャリア形成等についての情報を明示すること STEP1(入社前の連絡)とSTEP3(期待役割のすり合わせ)
新入社員研修の機会等を捉え、労働法制の基礎的な内容の周知を図ること(望ましいこと) STEP1・STEP2の最初の説明
OJT及びOFF-JTを計画的に実施すること STEP2からSTEP4までの育成の設計
キャリアパス等についての情報提供、キャリアコンサルティングを受ける機会の確保 STEP4(3か月面談で先の話をする)

いずれも「講ずるよう努めること」=努力義務で、罰則はありません。ただ、指針が「青少年について、早期に離職する者の割合が高いことを踏まえ」と前置きしていることは、知っておいて損がありません。やるかどうかを迷う場面で、判断の後ろ盾になります。

受け入れ設計を整えると、認定にもつながる

若者雇用促進法には、若者の採用・育成に積極的で雇用管理の状況が優良な中小企業を厚生労働大臣が認定する、ユースエール認定という制度もあります。認定基準には直近3事業年度の新卒者などの離職率が20%以下、前事業年度の正社員の有給休暇の年平均取得日数が10日以上または取得率70%以上といった項目があり、2024年9月末現在で1,329社が認定されています。

認定を受けると、ハローワークなどで重点的にPRされ、認定企業限定の就職面接会等に参加でき、認定マークを自社の商品や広告に使えます。受け入れ設計は離職率という形で基準に直結するので、採用に困っている会社ほど、順番として先に整える価値があります。

参考(厚生労働省):事業主等指針(厚生労働省告示第406号・抄)若者雇用促進総合サイト 認定制度とは

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活用事例|オンボーディングの進め方(ケース別)

同じ「受け入れ設計」でも、業種や仕事の性質によって重点は変わります。自社に近い方を参考にしてください。以下はいずれも、特定の会社ではなく一般化した想定です。

ケース1|従業員20名ほどの製造業(「見て覚えて」の職人文化)

教える時間が取りにくいのが実情です。作業手順を口伝えに頼らず、頻度の高い作業だけでも紙やスマホで見られる形にしておくと、受け入れ担当の負担が一気に下がります。初日に工場を一周し、危険箇所と「困ったら誰に言うか」を先に伝えるだけでも、初期のつまずきは減ります。

ケース2|従業員10名ほどのサービス業(早く一人前になってほしい焦りがある)

いきなり全部を任せず、1週間以内に達成できる小さな仕事を最初に渡すのが有効です。「できた」という手応えが自信になり、質問もしやすくなります。仕事の型を整理する進め方は、マニュアル化とは?標準化・手順書との違いと属人化をなくす進め方も参考になります。

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ケース3|従業員15名ほどの建設・工事業(配属先が現場で、社内に人がいない)

受け入れ担当が毎日そばにいない前提で設計する必要があります。この場合、その日の終わりに5分だけ電話やチャットで話す時間を固定してください。現場で聞けなかったことを、その日のうちに拾える経路が1本あるかどうかで、最初の1か月の定着はまるで変わります。

ケース4|従業員30名ほどの会社(受け入れ担当が毎回変わる)

「今回は手が空いている人」で決めていると、教える内容も熱量も毎回変わり、うまくいったやり方が蓄積しません。担当を固定するか、それが無理なら手順だけでも固定する。初日に伝えること、1週間で渡す仕事、1か月で話すこと——この3つを紙1枚にしておけば、誰が担当しても最低限の質は保てます。

受け入れ設計のあり/なしで、入社後はこう変わる
Before
設計なし初日だけ歓迎/担当が曖昧/聞けず孤立/期待が不明のまま3か月で離職
After
設計あり入社前から連絡/担当1人が明確/小さな成功体験/1か月面談で定着

まとめ

オンボーディングは、入社した人が戦力になり組織に馴染むまでを支える受け入れ設計です。最後に要点を整理します。

①早期離職の多くは本人ではなく受け入れ側の設計で起きる——放置・期待の不明確・聞ける相手の不在・成功体験の欠如が典型です。②入社前から3か月までを時系列で設計する——初日の準備、1週間の関係づくり、1か月と3か月の面談を、あらかじめ流れとして決めておきます。③中小企業は最小限でいい——受け入れ担当を1人決め、初日の流れを紙1枚にまとめ、1か月後に必ず面談する。まずはこの3つから始めれば十分です。

受け入れは4段階の最後にあたります。その前の計画・募集・選考がどうつながっているかは、中小企業の採用でまとめています。入口の設計がずれていると、受け入れだけを整えても定着しません。

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最後に

「受け入れ設計が大事なのは分かった。でも、誰がそれをやるのか」——ここが中小企業の一番の悩みどころだと思います。社長も現場も自分の仕事で手一杯で、専任の人事担当を置く余裕はない。だからこそ、採用のたびに同じことが繰り返されてしまいます。

私たちTalent Partner(社長の経営参謀®)は、こうした場面で「仕組みを提案して終わり」にはしません。受け入れ担当を誰にするか、初日の流れをどう紙1枚に落とすか、面談で何を聞くか。その一つひとつを、御社の人員と現場の実情に合わせて一緒に組み立て、実際に回り始めるところまで伴走します。高価なシステムを入れる必要はありません。今いる人と、Excelや紙で回せる「ちょうどいい形」を、現場と一緒につくっていきます。

採用・定着の問題は、労務や評価制度、業務の属人化といった別の課題と絡み合っていることも少なくありません。人・組織まわりを横断して見られる立場だからこそ、「どこに本当の原因があるか」から一緒に整理できます。

「また辞められたらどうしよう」という不安を、設計に変えていく。その第一歩として、まずは自社の受け入れの現状を棚卸しするところからでも構いません。何から手をつければいいか分からない段階でも大丈夫です。人材の定着や受け入れの仕組みづくりでお悩みでしたら、無料相談でお気軽にご相談ください。御社の状況をうかがいながら、次の一手を一緒に考えます。

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この記事を書いた人

金井 春樹(株式会社TRAVEL LIKE Talent Partner事業部 取締役COO / TAM)

前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。

現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。

【運営会社 取得認証・認定】ISO27001 / 健康経営優良法人2026 / DX認定 / 経営革新計画(※兵庫県のコンサルティングサービスで唯一) / 事業継続力強化計画

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