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パート・アルバイトの採用と定着|シフトと戦力化設計

採用戦略

「募集してもすぐ辞める」——その原因は、正社員と同じやり方で採っているからかもしれません

パート・アルバイトの採用がうまくいかない。募集をかけても応募が来ない、来ても数週間で辞めてしまう。気づけばシフトはいつも同じベテランの穴埋めで回っていて、その人が休むと現場が止まる。5〜50名規模の会社で、人手をパート・アルバイトに頼っているところなら、思い当たる光景ではないでしょうか。

その多くは「人が悪かった」わけではありません。正社員採用と同じ発想で募集し、同じ受け入れ方をしていることに原因があります。パートやアルバイトで働く人が仕事を選ぶとき、見ているポイントは正社員とはっきり違います。ここを外したまま「時給を上げれば来るはず」と考えると、コストだけかさんで定着しない、という悪循環に入ります。

結論から言えば、パートの採用と定着は「募集の書き方」と「入ってからの育て方」の2つを設計し直すことで大きく変わります。採るところだけ頑張っても、受け入れがなければ辞めます。逆に、任せ方と報い方を段階で組み立てておくと、シフトは埋まり、ベテラン一人への依存も自然に減っていきます。

この記事では、パートで働く人が実際に見ているポイントから、募集票の書き方、初日からの受け入れ、そして年収の壁への向き合い方までを、現場で回せる順番で整理します。

💡 この記事でわかること:

  • パート求職者が正社員とは違って見ている4つのポイント
  • 応募と定着につながる募集票の書き方
  • 初日から段階的に戦力化する定着設計の手順
  • ベテラン依存と「年収の壁」への実務的な向き合い方

そもそもパートの「採用と定着」とは

パートの採用と定着とは、必要な人数を集めることだけでなく、入った人が無理なく続けられて、少しずつ任せられる範囲が広がっていく状態をつくることを指します。採用(入口)と定着(継続)は別の作業に見えて、実は同じ設計思想でつながっています。

ここで大事なのは、これが「良い人を見つける運任せのゲーム」ではないということです。パートで働く人の多くは、生活の一部として働く時間を組み込んでいます。だからこそ、勤務の融通や職場の雰囲気といった条件が合えば長く続けてくれますし、そこがずれると時給が高くても辞めます。

つまり、定着は「本人のやる気」よりも「会社側が用意した働きやすさと任せ方の設計」で決まる部分が大きい、と考えるのが実務的です。募集の言葉、初日の迎え方、任せる範囲の広げ方——このどれもが会社側でコントロールできます。採用難を嘆く前に、この設計を見直せる余地はまだ残っているはずです。

パート求職者が「正社員と違って見ている」ポイント

パートで働く人が仕事を選ぶとき、給料の額よりも先に確認していることがあります。ここを募集や面接で押さえられているかどうかが、応募数と定着率を大きく分けます。中小企業の採用で見落とされがちな、正社員採用との違いを整理します。

正社員が「給与・やりがい・キャリア」を軸に見るのに対し、パート求職者は「自分の生活に、この仕事が無理なく収まるか」を軸に見ます。具体的には次の4つです。

  • 勤務時間・曜日の融通:週何日から入れるか、子どもの行事で休めるか、急なシフト変更にどこまで対応が必要か。生活のリズムを崩さずに働けるかを最も気にします。
  • 通勤距離:時給が多少高くても、遠ければ選ばれません。パートは「近さ」が強力な武器になります。
  • 職場の人間関係:短時間勤務だからこそ、居心地の悪い職場はすぐ辞める理由になります。「誰と働くか」の情報が意外なほど効きます。
  • 扶養の範囲(年収の壁):働き方の希望が「壁の手前に収めたい」なのか「気にせず働きたい」なのかで、望むシフトがまったく変わります。

この違いを踏まえると、募集で書くべきことが変わります。「アットホームな職場です」といった抽象的な言葉ではなく、シフトの実態(週2日・3時間からOKなど)、繁忙期がいつか、教育の有無を具体的に書く。良いことだけを並べず、忙しい時間帯や覚えることの多さも正直に伝えたほうが、入ってからの「聞いていた話と違う」を防げて、結果的に定着します。ミスマッチを入口で減らすことが、早期離職を防ぐ最初の一手です。

正社員向けの募集と、パート向けの募集では、応募者が最初に見る順番が違います。

見る順番 パート・アルバイト 正社員
1番目 勤務時間・曜日(自分の生活に収まるか) 仕事内容・キャリア
2番目 通勤のしやすさ(距離・駐車場の有無) 給与・賞与
3番目 時給 会社の安定性
4番目 職場の人間関係・教えてもらえるか 勤務地・転勤の有無
5番目 扶養の範囲に収まるか 休日・残業の実態

上2つが合わなければ、時給をいくら上げても応募は来ません。逆に、時間と通勤が合えば、時給が横並びでも選ばれます。募集票を書き直すときは、この順番で情報を並べてください。

なお、パート・有期雇用で働く人と正社員のあいだの待遇差については、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)に定めがあります。同じ仕事なのに説明できない差がないか、あわせて確認しておくと安心です。

参考(e-Gov法令検索・厚生労働省):短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律非正規雇用(有期・パート・派遣労働)

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進め方|4ステップ

パートの採用と定着は、「募集して終わり」ではなく、入ってからの受け入れと任せ方までを一続きで設計します。手を動かす順番で4ステップに整理します。

募集の前に決めておく4つのこと
働き方の希望を聞く欄扶養内か、たくさん入りたいか。採用時に聞き分ける
シフトの実態を書く「シフト制」で終わらせない。曜日・時間帯・繁忙期まで
初日の受け入れ担当誰が教えるかを決めてから募集する
任せる範囲の段階初日/1か月/繁忙期の3段階に分けておく

STEP1:募集前に「働き方の希望」を聞ける設計にする

募集票と面接の段階で、勤務可能な曜日・時間、通勤手段、そして扶養の範囲内で働きたいかどうかを、早めに確認できるようにしておきます。年収の壁を意識する人にいきなりフルに近いシフトを提示すると、応募辞退や早期離職につながります。金額の基準は改正されることがあるため断定せず、まず「本人がどう働きたいか」を丁寧に聞く。ここが後のシフト設計の土台になります。

年収の壁の金額そのものは、103万の壁はいつから廃止?2026年は扶養136万・税178万で2026年時点の5つのラインを一次情報つきで整理しています。募集や面談で数字を聞かれたときの下敷きにしてください。

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STEP2:シフトの実態を隠さず募集票に書く

「週2日・1日3時間から」「土日どちらか入れる方歓迎」「12月が繁忙期」など、実際の働き方が想像できる情報を具体的に書きます。教育があるのかも明記します。良い面だけでなく忙しさも正直に伝えることで、覚悟のある人が応募し、入ってからのギャップが減ります。

STEP3:初日の受け入れを決めておく

辞める人の多くは最初の数日でつまずきます。初日に誰が迎え、何を教え、どこまでできれば合格かを事前に決めておきます。放置して「見て覚えて」にすると、人間関係の不安と相まってすぐ離脱します。初日の受け入れ設計は、オンボーディングと研修の違い|入社3か月の受け入れ設計と定着対策で詳しく解説しています。

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STEP4:任せる範囲を段階で広げる

最初から全部を求めず、できることを一つずつ増やしていきます。「今日はここまでできた」が積み上がると本人の定着意欲が高まり、会社側もベテラン一人への依存を減らせます。この段階設計を、次のセクションのケースで具体的に見ていきます。

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活用事例|パート戦力化の進め方(ケース別)

具体的にどう組み立てるか、業種の異なる2つの想定でイメージを掴みます。いずれも「たとえばこういう規模・業種なら」という一般化した想定です。

ケース1|従業員20名ほどの製造業(工程を全部わかっているのはベテラン1人)

まずベテランの頭の中にある手順を「初日にできること/1か月でできること/繁忙期に任せられること」の3段階に書き出します。新人には初日の作業だけを教え、できたら次を渡す。手順を紙やスプレッドシートに残しておけば、ベテランが休んでも現場が止まりにくくなります。業務を洗い出して手順に落とす進め方は、業務の標準化・マニュアル化とは?|属人化を解消する進め方が参考になります。

ケース2|従業員10名ほどの飲食・小売(学生と主婦が混在している)

扶養を気にする人と、たくさん入りたい学生が混在します。採用時に働き方の希望を聞き分けておき、「壁の手前に収めたい人」には時間を抑えたシフト、「たくさん入りたい人」には繁忙時間帯を厚く割り当てる。時給以外に、シフト希望を通しやすくする、頑張りを言葉で認めるといった報い方を用意すると、定着が変わります。

ケース3|従業員30名ほどの介護・福祉(募集しても応募が来ない)

時給を上げる前に見直したいのがシフトの刻み方です。「週3日・1日8時間」でしか募集していないと、応募できる人が限られます。同じ人手を「週5日・1日4〜5時間」で募集し直すと、送り迎えの時間に合わせて働きたい層に届きます。求人票の条件を変えるだけで、母集団がまるごと入れ替わることがあります。

ケース4|パートが正社員と同じ仕事をしている会社

待遇差の説明が求められる場面が出てきます。同じ仕事なら同じ扱い、違うなら何がどう違うから待遇が違うのかを説明できる状態にしておく必要があります。ここを曖昧にしたまま人数だけ増やすと、あとから一括で見直す羽目になります。仕事の範囲と責任の違いを、先に言葉にしておいてください。

パートを段階で戦力化する3ステップ
初日受け入れ担当を決め、その日にできる作業を1つ教える
1か月任せる範囲を一つずつ広げ、できたことを言葉で認める
繁忙期手順を紙・スプレッドシートに残し、ベテラン依存を減らす

まとめ

パートの採用と定着は、次の3点で大きく変わります。①正社員とは違う視点——勤務の融通・通勤距離・人間関係・扶養の範囲を、募集と面接で押さえる。②募集票は実態を正直に——シフトの実態・繁忙期・教育の有無を具体的に書き、入ってからのギャップを減らす。③入ってからを設計する——初日の受け入れを決め、任せる範囲を段階で広げ、手順を残してベテラン一人への依存を減らす。採るところだけでなく、続けられる仕組みまで組んでこそ、シフトは安定します。

正社員も含めた採用全体を同じ考え方で組むなら、中小企業の採用で、計画・募集・選考・受け入れの4段階に分けてまとめています。

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最後に

ここまで読んで、「やることはわかったが、日々の現場を回しながらこれを設計する時間がない」と感じた経営者の方は多いと思います。実際、パートの採用と定着は、募集票の言葉選びから初日の受け入れ、シフトの組み方、ベテランが抱えている手順の書き出しまで、地味で手間のかかる作業の積み重ねです。忙しい社長が片手間でやろうとすると、どうしても後回しになります。

私たちTalent Partner(社長の経営参謀®)は、こうした課題に対して「こうするといいですよ」と提案書を置いて帰るのではなく、隣に座って一緒に手を動かす立場で関わります。募集票を一緒に書き直し、ベテランの頭の中にある手順を段階のマニュアルに落とし、シフトの組み方や年収の壁への配慮まで、現場が本当に回せる形に整える。高価なシステムを無理に入れるのではなく、スプレッドシートや紙も織り交ぜて、その会社に合う「ちょうどいい仕組み」をつくることを大事にしています。

採用は人材の問題に見えて、実はシフト設計(労務)や、時給を上げられるだけの利益が出ているか(財務)とも地続きです。人・お金・組織を横断して見る参謀だからこそ、目の前の「人が辞める」の奥にある本当の原因まで一緒に探せます。

なお、年収の壁など具体的な制度は改正されることがあり、労務・税務の最終判断は専門家の確認が必要です。自社の場合はどう設計すればいいか、まずは気軽にお聞かせください。無料相談で、御社の現場に合った採用と定着の一手を一緒に考えます。

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この記事を書いた人

金井 春樹(株式会社TRAVEL LIKE Talent Partner事業部 取締役COO / TAM)

前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。

現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。

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