Blog ブログ
採用計画の立て方|離職率で必要人数を逆算し採用単価で予算を決める
目次
「人が足りない気がする」で求人を出していませんか
現場から「手が回らない」という声が上がるたびに、とりあえず求人を出す。運よく採れても、今度は人件費が重くのしかかる——そんな採り方をしていないでしょうか。
採用がうまくいかない会社の多くは、応募が来ないこと自体より、その手前でつまずいています。何人採るのか、いくらまでかけていいのかを決めないまま動いているのです。人数の根拠がないから採りすぎたり採り足りなかったりし、予算の上限がないから媒体費だけがかさんでいきます。
採用計画とは、この「なんとなく」を数字に置き換える作業です。難しい理論は要りません。必要人数を事業計画から逆算し、1人採るのにかけてよい金額を決め、それを1枚の紙にまとめる。順番に手を動かせば、専任の人事がいない会社でも十分に組み立てられます。
この記事では、必要人数の出し方から採用予算の考え方、そして計画を1枚にまとめる項目までを、順を追って解説します。
💡 この記事でわかること:
- ●必要人数を「欠員補充」ではなく事業計画から逆算する考え方
- ●採用予算を「媒体費」ではなく「採用単価」で捉える理由
- ●欠員は自社の業種の離職率から概算できること(一般労働者の離職率11.5%)(年収・社内工数から)
- ●採用計画を1枚にまとめる項目と、進め方の4ステップ
そもそも採用計画とは
採用計画とは、「いつまでに・どの職種を・何人・いくらで・誰が動いて採るか」をあらかじめ決めておく設計図です。求人を出す前の準備であって、求人票そのものや面接の進め方とは別のものです。
ここで大事なのは、採用計画は「人が辞めたから埋める」ための欠員補充リストではないということです。欠員補充だけを繰り返していると、いつまでも今の事業規模に張り付いたままで、この先の成長に必要な人が計画に入ってきません。
採用計画は、事業をどこまで伸ばしたいか、そのために現場をどう回すかという事業計画の裏返しです。売上や生産量の目標があり、それを回すのに必要な人手があり、その差分が「採るべき人数」になります。人数と予算という2つの数字に落とし込むことで、はじめて「なんとなく足りない」が「あと2人、上限いくらで」に変わります。
必要人数は「離職率」から逆算できる
「あと何人必要か」を出すとき、増員する分だけを数えてしまいがちです。実際にはもう1つ、辞めた人の穴を埋める分があります。必要人数は次の足し算です。
必要人数=増員したい人数+1年で抜ける人数(欠員補充)
後ろの項は、自社の業種の離職率からおおよそ出せます。厚生労働省の令和6年雇用動向調査によると、一般労働者(フルタイム)の離職率は11.5%、パートタイム労働者は21.4%でした。
| 産業(一般労働者) | 入職率 | 離職率 |
|---|---|---|
| 産業計 | 11.8% | 11.5% |
| 建設業 | 11.7% | 9.1% |
| 製造業 | 8.3% | 9.7% |
| 情報通信業 | 11.0% | 7.8% |
| 運輸業、郵便業 | 8.9% | 9.8% |
| 卸売業、小売業 | 10.3% | 9.1% |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 21.2% | 18.1% |
| 医療、福祉 | 13.1% | 13.1% |
フルタイム20人の製造業なら、離職率9.7%で年に2人前後が抜ける計算です。ここに増員分を足したものが、その年に採るべき人数になります。「なんとなく足りない」が「あと3人」に変わるのは、この足し算をした瞬間です。
表をもう一度見てください。製造業と運輸業は、離職率が入職率を上回っています。業界全体で人が減っている状態で、何もしなければ自社も同じ方向へ流れます。「増員はしないから採用は要らない」とはならない、ということです。
もう1つ、パートタイムの離職率21.4%は一般労働者の約2倍です。パート中心の職場では、同じ人数を維持するだけでも採用の回数が倍近くになります。同じ「必要人数」でも、雇用形態によって計画の作り方が変わります。
参考(厚生労働省):令和6年雇用動向調査結果の概況
採用予算は「媒体費」ではなく「採用単価」で見る
採用計画でつまずきやすいのが予算の捉え方です。多くの会社が「求人媒体にいくら払うか」だけを予算と考えますが、それでは全体像を見誤ります。押さえるべきは、1人採るのにかかった総額=採用単価という考え方です。
採用にかかるお金は、目に見える費用と、見えにくい費用の2つに分かれます。
たとえば媒体費30万円で1人採れたとしても、その裏で社長や現場責任者が面接や調整に何十時間も使っていれば、実際の採用単価はもっと高くなっています。この「見えにくい費用」を無視すると、「安く採れた」と思っていた採用が、実は割高だったということが起こります。
採用単価で見る利点は、採用手段どうしを同じ物差しで比べられることです。媒体は安いが社内工数がかさむ、紹介は成功報酬が高いが手間は少ない——こうした違いを、1人あたりの総額でフラットに比較できます。「どの手段が自社にとって割に合うか」を判断する土台になるわけです。
採用にかかるお金は、媒体費だけではありません。1人採るのにいくらかかったか(採用単価)で見るために、次の費目を足し上げてください。
| 費目 | 具体例 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 募集にかかる費用 | 求人媒体の掲載料、人材紹介の成功報酬 | ここだけを「採用費」と考えてしまいがち |
| 選考にかかる費用 | 会場費、交通費の支給、適性検査 | 少額でも件数が多いと積み上がる |
| 社内の人件費 | 書類選考・面接・日程調整に使った時間 | 最も大きいのに計上されない。社長の時間はとくに |
| 入社時の費用 | 制服・工具・PC・健康診断 | 職種によっては1人あたり数万〜十数万円 |
| 育成にかかる費用 | 教育担当が付きっきりになる期間の工数 | 早期離職するとこれが丸ごと損失になる |
社長の面接1時間を金額に置き換えて足すと、採用単価の見え方が変わります。「媒体費が安いから得」という判断が、実は逆だったと分かることも珍しくありません。
進め方|4ステップ
必要人数と予算を決める作業は、次の4ステップで進めます。上から順に手を動かせば、採用計画の骨組みが出来上がります。
STEP1:事業計画から必要人数を逆算する
まず「欠員補充」の発想を一度脇に置き、事業計画から必要人数を割り出します。目安になるのは、売上や生産量あたりに何人必要かという比率です。「今の人数で回せる売上の上限」と「来期の目標」の差から、増やすべき人手が見えてきます。あわせて、毎年一定割合で人は辞めるものと考え、退職で抜ける分(退職率)も人数に織り込むのを忘れないでください。増員分と補充分を足したものが、採るべき人数の出発点です。
STEP2:職種と時期に分けて優先順位をつける
必要人数が出たら、それを「どの職種を・いつまでに」に分解します。全部を同時には採れませんし、採る必要もありません。事業へのインパクトが大きい職種、今すぐ抜けると現場が止まる職種から優先順位をつけます。育成に時間がかかる職種は前倒しで、すぐ戦力になる職種は後ろで、というように時期をずらして並べると、現場の受け入れ負荷も平準化できます。
STEP3:1人にかけてよい金額の上限を決める
次に予算です。1人あたりの採用単価の上限を、採る職種の想定年収を目安に置くのが分かりやすい方法です。「採用単価は年収の何割」といった相場をうたう説明を見かけますが、採用単価には公的な統計がありません。他社の相場ではなく、自社の直近3件の実績(媒体費・紹介手数料・社内工数を足した総額)を並べて、そこから上限を置いてください。ここで、STEP1で触れた社内工数も原価として上限に含めておきます。「この職種なら総額いくらまで」と天井を決めておくと、媒体費だけが際限なく膨らむのを防げます。
STEP4:採用計画を1枚にまとめる
最後に、ここまでの内容を1枚にまとめます。頭の中や複数のメモに散らばったままだと、現場と共有できず実行が止まります。「いつまでに・何人・どの職種・いくらで・誰が動くか」を1枚に落とし込むことで、はじめて計画は動き出します。この1枚が、進捗を振り返るときのものさしにもなります。中小企業の採用全体の進め方は中小企業の採用|何から始める?計画・募集・選考・受け入れの4段階でも解説しているので、あわせて確認してみてください。
いま何人採れるのか|有効求人倍率1.20倍の意味
計画に「いつまでに」を書くとき、採用市場の混み具合を無視すると絵に描いた餅になります。厚生労働省が令和8年4月に公表した一般職業紹介状況では、令和7年度平均の有効求人倍率は1.20倍でした。前年度の1.25倍から0.05ポイント下がっています。
| 指標 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 有効求人倍率(令和7年度平均) | 1.20倍 | 前年度1.25倍から0.05ポイント低下 |
| 正社員有効求人倍率(令和8年3月) | 0.99倍 | 正社員に限ると1倍を割る |
| 新規求人倍率(令和8年3月) | 2.15倍 | 新しく出た求人だけで見ると2倍超 |
| 都道府県別の最高(就業地別・令和8年3月) | 福井県 1.74倍 | — |
| 都道府県別の最低(就業地別・令和8年3月) | 大阪府 0.96倍 | — |
読み方が2つあります。1つは、正社員に限れば0.99倍で、求人より求職者のほうが多いということ。「正社員はまったく採れない」と決めてかかる必要はありません。
もう1つは、同じ国内でも福井県1.74倍と大阪府0.96倍という開きがあること。倍率は全国平均で語られがちですが、計画に使うなら自社の所在地の数字を見てください。都道府県別は毎月の公表資料に載っています。
なお令和7年度の有効求人は前年度に比べ4.1%減でした。求人側が減っている局面では、条件を大きく変えなくても応募が戻ることがあります。「去年だめだったから今年も無理」と決め打ちせず、市場の向きを確認してから計画の時期を置くほうが実際的です。
参考(厚生労働省):一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)
活用事例|採用計画の進め方(ケース別)
考え方は分かっても、自社に当てはめるとイメージがつかみにくいものです。ここでは一般化した4つの想定で、計画の立て方を追ってみます。
来期の増産目標から「その生産量を回すのに何人必要か」を割り出します。技能職は一人前になるまで時間がかかるため、必要になる時期の半年〜1年前から採り始める計画にします。ここで退職率を織り込んでおかないと、増員したつもりが退職で相殺され、いつまでも人手が足りないままになります。製造業では給与設計が採用の成否を左右しやすいため、製造業の採用は給与設計で決まる|賃金相場と求人票の分け方もあわせて参考にしてください。
拠点や店舗を増やす時期から逆算します。開店に合わせて人が揃っていないと機会損失になるため、時期を起点に「いつまでに何人」を固めます。繁忙期の離職も見込んで、必要数より少し多めに計画しておくと安全です。
増員ではなく維持が主題になるタイプです。年齢構成を並べ、いつ誰が抜けるかを先に一覧にしてください。技能の引き継ぎには年単位かかるため、「抜ける年に採る」では間に合いません。退職予定の2〜3年前から重ねて採り、育成期間を確保する計画に組み替えます。
採用計画の前に、来期の売上目標と、それを回すのに必要な体制を粗くでも決める必要があります。ここを飛ばすと「なんとなく足りない」から抜け出せません。精緻な事業計画は要りません。売上目標・主要な仕事の量・1人が回せる量の3つだけ決めれば、必要人数は逆算できます。
4つのケースを、「いつ必要か」と「育つのにどれだけかかるか」で並べると、採り始める順番が決まります。
見落とされやすいのは左上(q1)です。まだ先だからと後回しにすると、必要になった年には手遅れになります。育成に時間がかかる職種ほど、早く採り始めてください。
まとめ
採用計画の立て方を、3つの要点で振り返ります。
① 必要人数は事業計画から逆算する。 「欠員が出たから埋める」ではなく、目標を回すのに何人要るかを起点にし、退職で抜ける分も織り込みます。
② 予算は採用単価(1人あたりの総額)で捉える。 媒体費だけでなく、面接や調整にかかる社内工数も原価に含め、職種ごとに上限を決めておきます。
③ 計画は1枚にまとめる。 「いつまでに・何人・どの職種・いくらで・誰が動くか」を1枚に落とし込むことで、はじめて現場と共有でき、実行が進みます。
最後に
採用計画は、作ること自体はそれほど難しくありません。難しいのは、忙しい日々の中で立ち止まって数字と向き合い、それを実行し続けることです。多くの中小企業では、社長がプレイヤーを兼ねているため、腰を据えて計画を組む時間そのものが取れません。結局また「人が足りない気がする」で求人を出す——この繰り返しから抜け出せない会社は少なくありません。
私たちTalent Partner(社長の経営参謀®)は、こうした場面で「もう一人の総務」として隣に座る立場です。採用計画を一緒に組むときも、きれいな計画書を置いて帰るのではなく、事業計画から必要人数を割り出すところ、予算の上限を決めるところ、そして立てた計画を現場に落として回すところまで、一緒に手を動かします。
採用は、人材の話だけで完結しません。人件費が資金繰りに与える影響(財務)、採った人を定着させる評価や労務の仕組み、育成にかかる時間の設計——これらが絡み合って初めて「採ってよかった」になります。人・お金・組織を横断して全体で見られることが、単一領域の専門家との違いです。実際の判断では、労務や税務など専門家の確認が必要な場面も出てきますが、そこも含めて窓口をひとつにまとめ、社長の調整負荷を減らします。
「何人採ればいいのか、いくらまでかけていいのか、いまいち自信が持てない」——そう感じたら、まずは現状を一度整理するところからで構いません。無料相談では、御社の事業計画をもとに、必要人数と採用予算の考え方を一緒に見立てるところからお手伝いします。採用計画づくりの入り口として、気軽にご活用ください。
この記事を書いた人
前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。
現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。
CONTACT お問い合わせ
日々全力で事業に取り組む経営者の想いに寄り添い、目標に向かって伴走させていただきます。
まずはお気軽にご連絡ください。

