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先端設備等導入計画とは?|固定資産税が軽くなる設備投資の制度
目次
設備投資の固定資産税、実は「軽くできる」制度がある
機械や器具・備品といった設備を買うと、その後は毎年固定資産税(償却資産)がかかります。金額は1つずつは小さくても、設備が増えるほど地味に効いてくる固定費です。この負担を、一定期間軽くできる制度が先端設備等導入計画です。
さらに近年は、賃上げを表明することで軽減の幅と期間が大きくなる仕組みになっています。設備投資と賃上げを同じタイミングで考えている会社にとっては、使わない手はない制度です。
この記事では、先端設備等導入計画とは何か、固定資産税の特例の中身、対象と要件、そして申請の進め方を、中小企業庁の情報をもとに整理します。押さえるべきは次の4点です。
💡 この記事でわかること:
- ●先端設備等導入計画は、設備投資で労働生産性を上げる計画を、市区町村が認定する制度
- ●認定を受けて対象設備を導入すると、固定資産税(償却資産)が一定期間軽くなる
- ●賃上げの表明で軽減が拡大:1.5%以上で3年間1/2、3%以上で5年間1/4(2027年3月末までの措置)
- ●重要:認定経営革新等支援機関の確認と、設備取得“前”の認定が必要
そもそも先端設備等導入計画とは
先端設備等導入計画とは、中小企業が設備投資を通じて労働生産性の向上を図る計画で、中小企業等経営強化法にもとづき市区町村が認定します。国の「導入促進基本計画」に同意している市区町村で認定を受けることで、税制・金融の支援を活用できます。
ポイントは、認定するのが市区町村だという点です。国や都道府県が認定する経営革新計画・経営力向上計画とは窓口が異なり、自社の設備が置かれる市区町村がその制度を実施しているか(導入促進基本計画に同意しているか)が前提になります。
💡 労働生産性の目標
計画では、導入する設備によって労働生産性を年平均3%以上向上させることを見込む必要があります。労働生産性は、ざっくり「一人あたり(または一時間あたり)でどれだけ稼げるか」を表す指標で、設備投資でこれを高める、というのが計画の骨子です。
メリット|固定資産税の特例(賃上げ表明で拡大)
最大のメリットは、対象設備にかかる固定資産税(償却資産)の特例です。2023年4月から、賃上げに取り組む会社ほど手厚くなる仕組みに見直され、適用期限は2027年3月31日までとされています。
| 賃上げ方針の表明 | 固定資産税の特例(課税標準) | 期間 |
|---|---|---|
| 賃上げ方針の表明なし | 特例の対象になりません(表明が対象設備の要件) | — |
| 賃上げ率1.5%以上を表明 | 1/2に軽減 | 3年間 |
| 賃上げ率3%以上を表明 | 1/4に軽減 | 5年間 |
表のとおり、賃上げ率3%以上を表明すれば、5年間にわたり課税標準が1/4まで軽くなります。設備投資と賃上げをセットで進める会社にとっては、投資後の固定費を大きく抑えられる強力な措置です。赤字の会社でも、固定資産税の軽減は利益に関係なく効くのがポイントです。逆にいえば、賃上げ方針を表明しないままでは、計画の認定を受けても固定資産税の特例は使えません。表明は「あると有利な加点」ではなく、対象設備の要件そのものです。
⚠️ 注意
特例の対象・軽減率・期間・適用期限は、年度の税制改正や市区町村の運用によって変わります。自社の設備が対象になるか、賃上げ表明の要件がどうなっているかは、必ず設備の所在地の市区町村と中小企業庁の最新資料で確認してください。この記事は制度の全体像をつかむための参考です。
対象と要件|「市区町村が実施しているか」と「順番」
まず前提として、自社の設備を置く市区町村が、この制度を実施している(導入促進基本計画に国の同意を得ている)ことが必要です。実施していない市区町村では、そもそも認定を受けられません。
そのうえで、対象となる設備の種類や最低取得価額などの要件を満たし、さらに認定経営革新等支援機関(商工会議所・金融機関・士業など)の確認を受けた計画であることが求められます。そして経営力向上計画と同様に、設備を取得する前に計画の認定を受けるのが原則です。順番を守ることが、ここでも重要になります。
つまずくのはここ|対象設備と規模要件が「二重」になっている
この制度がややこしいのは、計画そのものの条件と、固定資産税の特例の条件が別々に置かれていることです。計画は認定されたのに特例は使えなかった、という事故は、たいていこの二重構造の見落としから起きます。
ソフトウエアは計画に書けても、固定資産税は軽くならない
先端設備等導入計画に書ける設備は5種類です。機械装置、測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備、そしてソフトウエアです。
ところが固定資産税の特例の対象になるのは、このうち4種類だけです。
| 減価償却資産の種類 | 計画に書けるか | 固定資産税の特例 | 最低取得価額 |
|---|---|---|---|
| 機械装置 | ○ | ○ | 160万円以上 |
| 測定工具及び検査工具 | ○ | ○ | 30万円以上 |
| 器具備品 | ○ | ○ | 30万円以上 |
| 建物附属設備 | ○ | ○ | 60万円以上 |
| ソフトウエア | ○ | × | - |
ソフトウエアは計画には位置づけられますが、固定資産税の特例からは外れます。そもそも償却資産の課税対象ではないためですが、「計画に入れたから税金も軽くなる」と思い込むとズレます。生産管理システムの導入がねらいなら、即時償却や税額控除が使える経営力向上計画のほうを軸に考えるほうが噛み合います。
建物附属設備は、家屋と一体となって効用を果たすものが除かれます。中古資産も対象外です。
「中小企業者」の線引きが、計画と税制で違う
もうひとつが規模要件です。中小企業庁の資料にも「税制支援は対象となる規模要件が異なりますので、ご注意ください」と注記があります。
| 計画の認定を受けられる中小企業者 | 固定資産税の特例を受けられる者 | |
|---|---|---|
| 法人 | 製造業その他は資本金3億円以下 又は 従業員300人以下(業種別に別基準あり) | 資本金1億円以下 |
| 個人事業主等 | 同上の従業員基準 | 従業員1,000人以下 |
| 除外 | - | 大企業の子会社等 |
資本金1億円超の会社は、計画の認定は受けられても固定資産税の特例は使えません。大企業の子会社等も同じです。増資を検討している会社は、このラインを踏むかどうかを先に見ておく価値があります。
参考(中小企業庁):「先端設備等導入計画」等の概要について(令和7年4月・PDF)
認定支援機関に確認してもらうのは、実は2つある
「認定経営革新等支援機関の確認を受ける」と一口に言いますが、固定資産税の特例まで使うなら、確認してもらう内容は2つになります。ここも見落としやすいところです。
| 確認の内容 | 何を見るか | いつ必要か |
|---|---|---|
| 先端設備等導入計画の事前確認 | 労働生産性が年平均3%以上向上する見込みか | 計画の認定に必須 |
| 投資計画に関する確認 | 年平均の投資利益率が5%以上になる見込みか | 固定資産税の特例に必須 |
計画の認定だけなら前者で足りますが、税制の軽減を取りにいくなら後者の書類も要ります。支援機関に依頼するときは、どちらの確認書が必要かを最初に伝えておくと二度手間になりません。
それぞれの計算式は次のとおりです。
- ●労働生産性 =(営業利益+人件費+減価償却費)÷ 労働投入量(労働者数、又は 労働者数×1人当たり年間就業時間)
- ●年平均の投資利益率 =(営業利益+減価償却費)の増加額 ÷ 設備投資額
投資利益率の分子は、設備を取得する翌年度以降3年度の平均額で見ます。分母は取得年度の設備取得価額の合計です。「その設備で営業利益と減価償却費がどれだけ増えるか」を3年分ならして、投資額で割る、という考え方です。
賃上げ方針の表明は、書面で残す
賃上げ表明は口頭では足りません。従業員へ賃上げ方針を表明したことを証する書面を作り、認定申請書に「表明した旨」を記載したうえで添付します。様式は中小企業庁のページからダウンロードできます。
比べるのは、雇用者給与等支給額の次の2つです。
- ●【A】計画認定の申請日が属する事業年度、又はその翌事業年度の雇用者給与等支給額
- ●【B】申請日が属する事業年度の直前の事業年度の雇用者給与等支給額
この(A−B)÷B が1.5%以上、または3%以上になる方針を表明します。なお表明の相手は従業員で、代表者のみの会社でも表明は可能です。
支援措置は税制だけではない|信用保証の「別枠」が付く
ここまで固定資産税の話を続けてきましたが、この計画の支援措置はもうひとつあります。中小企業信用保険法の特例による金融支援です。手引きでも税制支援とは別の章立てになっています。
認定を受けた事業者が計画の実行のために民間金融機関から融資を受けるとき、信用保証協会の保証について、通常枠とは別枠で追加の保証が受けられます。
| 保証の種類 | 通常枠 | 別枠(追加) |
|---|---|---|
| 普通保険 | 2億円(組合4億円) | 2億円(組合4億円) |
| 無担保保険 | 8,000万円 | 8,000万円 |
| 特別小口保険 | 2,000万円 | 2,000万円 |
設備投資は金額が大きくなりがちで、既存の借入で保証枠を使い切っている会社ほど、この別枠が効きます。固定資産税の軽減だけを見て「うちは設備が小さいから関係ない」と判断する前に、資金調達の側からも見る価値があります。
ただし「認定=融資が下りる」ではない
手引きには、はっきりこう書かれています。金融機関及び信用保証協会の融資・保証の審査は、市区町村による認定審査とは別に行われ、認定を取得しても融資・保証を受けられない場合がある——認定はあくまで別枠を使える資格であって、審査に通ることの保証ではありません。
そのため手引きは、金融支援を使うつもりなら計画を提出する前に関係機関へ相談するよう促しています。窓口は各都道府県の信用保証協会、または一般社団法人全国信用保証協会連合会です。計画を出してから相談すると、資金の目処が立たないまま設備の取得時期だけが迫ることになります。
参考(中小企業庁):先端設備等導入計画策定の手引き(令和7年4月版・PDF)
参考(中小企業庁):先端設備等導入計画策定の手引き(令和7年4月版・PDF)
申請の進め方|4ステップ
STEP1:市区町村が制度を実施しているか、対象設備を確認する
最初に、設備を置く予定の市区町村がこの制度を実施しているか、そして自社が導入したい設備が対象になるか(種類・取得価額など)を確認します。市区町村のホームページや窓口で「導入促進基本計画」の有無と要件をチェックします。実施していない場合は、この制度は使えないため、経営力向上計画など別の支援を検討します。
なお、どの市区町村が軽減措置を講じているかは、中小企業庁が一覧(PDF)を公表しています。市区町村のページを一つずつ当たる前に、まずこの一覧で自社の所在地があるかを確かめると早く済みます。ただし対象設備や対象地域は市区町村ごとに異なる場合があるため、一覧で見つけたあとに窓口で条件を確認する順番になります。
あわせて、賃上げを表明するかどうかをこの段階で方針として持っておきます。賃上げ表明の有無で軽減の幅と期間が変わるため、投資計画と人件費の見通しをセットで考えます。
STEP2:認定経営革新等支援機関の確認を受ける
先端設備等導入計画には、認定経営革新等支援機関による事前の確認が必要です。商工会議所・商工会、金融機関、税理士・中小企業診断士などの支援機関に、計画の内容(労働生産性の向上が見込めるか等)を確認してもらいます。ここで計画の実現性を第三者の目でチェックすることが、認定のスムーズさにつながります。
STEP3:先端設備等導入計画を作成する
市区町村の様式に沿って、企業概要、導入する設備、労働生産性の向上の見込み、賃上げの方針(表明する場合)などを記入します。数値は「この設備を入れることで、一人あたりの生産性がこう上がる」という根拠とともに示します。支援機関の確認書を添えて、申請の準備を整えます。
計画そのものに書く項目は、6つに決まっています。①名称等(資本金・従業員数・主たる業種など)②計画期間 ③現状認識(自社の事業概要と経営状況)④先端設備等導入の内容(事業の内容と実施時期、労働生産性向上の目標、設備の種類・単価・数量・金額)⑤先端設備等導入に必要な資金の額及びその調達方法 ⑥雇用に関する事項(賃上げ方針を表明する場合はその内容)です。
見落としやすいのが⑤で、設備をどう買うか(自己資金か借入か)まで書かせる様式になっています。前の章で触れた信用保証の別枠を使うなら、ここと資金調達の相談が噛み合っていることが大事です。なお計画期間は3年間・4年間・5年間のいずれかから選びます。
STEP4:市区町村へ申請し、認定を受けてから設備を取得する
完成した計画を、設備の所在地の市区町村へ申請します。認定を受けた後に対象設備を取得するのが原則の流れです。認定後に設備を取得し、償却資産の申告の際に固定資産税の特例を適用します。賃上げを表明した場合は、その方針にそって実際に賃上げを進めることが前提になります。
認定後に設備を追加したくなったら|変更申請
計画が認定された後で「もう1台入れることにした」となる場面は珍しくありません。このとき必要になるのが変更認定です。認定を受けた計画を変更しようとするときは、認定した市区町村の変更認定を受けなければなりません。
ここで効いてくるのが、追加する設備についても順番の原則は変わらないという点です。変更申請により設備を追加する場合も、認定経営革新等支援機関が発行する投資計画に関する確認書を同時に提出する必要があります。「もともとの計画は認定済みだから」と先に発注してしまうと、追加分だけ特例を受けられません。
賃上げ方針を1.5%以上で認定を受けたあとに3%以上へ引き上げる場合も、変更の対象です。このときは従業員へ賃上げ方針を表明したことを証する書面を改めて提出します。方針の内容を変えない場合でも書面の提出を求められる可能性があるため、市区町村の案内を確認してください。
一方で、すべての変更に手続きが要るわけではありません。設備の取得金額や資金調達額の若干の変更、法人の代表者の交代など、認定の基準に照らして計画の趣旨を変えない軽微な変更であれば、変更申請は不要とされています。何が軽微に当たるかは市区町村の判断になるので、迷ったら申請先へ確認するのが早道です。
参考(中小企業庁):先端設備等導入計画策定の手引き(令和7年4月版・PDF)
活用事例|先端設備等導入計画、どう使うか(ケース別)
「人手不足で賃上げもしたいが、設備も古い」という会社にとって、両方を同じ計画で前に進められるのが強みです。賃上げ率3%以上を表明できれば、5年間・課税標準1/4という大きな軽減に。投資後の固定費を抑えながら、採用・定着にも効く賃上げを実現します。
固定資産税の軽減は利益に関係なく効くため、まだ黒字が安定しない会社にも意味があります。将来に向けた設備投資の負担を抑えられるので、「今は余裕がないが、先を見て投資したい」という局面で活きます。市区町村が制度を実施しているかの確認が第一歩です。
設備投資では、先端設備等導入計画(固定資産税)と経営力向上計画(即時償却・税額控除)を併せて検討することがあります。どちらが自社に有利か、併用できるかは要件次第。認定支援機関や税理士と、投資のスケジュールに合わせて設計します。
設備投資で使える制度は、この計画だけではありません。経営力向上計画・事業継続力強化計画との違いや、どれを先に押さえるかは、中小企業の認定・計画制度を一覧比較|使い分けと補助金加点の取り方で早見表にしています。期限が重なっている制度もあるので、投資の時期が決まっているなら先に全体を見ておくと選びやすくなります。
参考(中小企業庁):先端設備等導入制度による支援 / 「先端設備等導入計画」等の概要について(令和7年4月・PDF)
まとめ
先端設備等導入計画は、設備投資で労働生産性を上げる計画を市区町村が認定し、固定資産税(償却資産)の特例を受けられる制度です。賃上げを表明すると軽減が拡大し、1.5%以上で3年間1/2、3%以上で5年間1/4となります(2027年3月末までの措置)。
認定するのは市区町村なので、まず自社の設備を置く市区町村が制度を実施しているかの確認が出発点です。そして、認定経営革新等支援機関の確認を受け、設備を取得する前に認定を受ける——この順番を守ることが欠かせません。
同じ「取得前に認定」という順番は、即時償却や税額控除を狙う制度でも同じです。経営力向上計画とは?|即時償却・税額控除が使える認定制度の申請とあわせて、どちらを先に押さえるかを決められます。
固定資産税の軽減は利益に関係なく効くため、赤字企業を含め、前向きな設備投資を後押しする制度です。設備投資と賃上げを考えているなら、早い段階で押さえておきたい選択肢です。
設備投資に補助金を使うなら、加点の積み上げも同時に考えると採択率が変わります。取れる項目は補助金の加点項目で一覧にまとめています。
最後に
設備投資は、買った後の固定費まで含めて「いくらかかるか」を見て判断したいもの。先端設備等導入計画は、その固定費を軽くしながら、賃上げという前向きな一手も後押しする制度です。
私たちは、認定経営革新等支援機関として、市区町村の制度確認から、支援機関の確認、計画づくり、認定後の運用までをハンズオンで支援します。「うちの市区町村で使えるのか」という確認からで大丈夫です。まずはお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。
現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。
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