Blog ブログ

社会保険の適用拡大はうちの会社もいつから対象?|企業規模要件のスケジュール

労務・法務

「51人以上の会社の話でしょう」——その順番、いつうちに回ってくるか、知っておきませんか

社会保険の適用拡大というニュースを見て、「対象は51人以上の会社。うちは30人だからまだ関係ない」と思っていませんか。実際、いまの段階では多くの中小企業が対象外です。ただ、その前提が「いつまで」通用するのかは、意外と知られていません。

結論から言うと、企業規模要件(何人以上の会社が対象か、という人数の基準)は、2027年から2035年にかけて段階的に引き下げられ、最終的には撤廃されます。つまり、いまは対象外の会社にも、いずれ順番が回ってきます。慌てて動く必要はありませんが、「いつ自社の番が来るか」を知っておくと、社会保険料の負担増やパート従業員への説明を、余裕をもって準備できます。

この記事では、企業規模要件がいつ・どう変わるのかのスケジュールを整理し、そのうえで「自社は何人でカウントするのか」「いつから準備を始めればよいのか」を、5〜50名規模の会社の社長が押さえておきたい範囲でまとめます。

なお、制度の要件は改正されることがあり、人数判定の細かい取り扱いも定められています。自社が境界線上にある場合は、申請前に必ず日本年金機構の公式情報を確認するか、年金事務所・社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

💡 この記事でわかること:

  • 企業規模要件が撤廃されるまでの段階的スケジュール(2027〜2035年)
  • 2026年10月に撤廃予定なのは「賃金要件」で、企業規模要件とは別の話だということ
  • 自社の人数を数えるときの単位(法人番号ごとに合算)
  • いつから準備を始めればよいか、自社の順番の確認手順

そもそも社会保険の適用拡大・企業規模要件とは

社会保険の適用拡大とは、これまで社会保険(厚生年金・健康保険)の対象外だった短時間労働者(パート・アルバイト)を、順次、加入の対象に広げていく一連の制度改正のことです。対象を判断する条件はいくつかありますが、その一つが「企業規模要件」、つまり「従業員が何人以上の会社なら対象か」という人数の基準です。

現在の企業規模要件は「従業員51人以上」です。この人数を下回る会社は、いまの時点では短時間労働者を社会保険に加入させる義務の対象になっていません。「うちはまだ関係ない」という理解は、現時点では正しいわけです。

ただし注意したいのは、この「51人以上」という基準そのものが、これから段階的に下がり、最終的にはなくなる予定だという点です。企業規模要件が撤廃されれば、規模を問わずすべての企業が適用拡大の対象になります。「関係ない」が「関係ある」に変わる時期を、あらかじめ把握しておくことが大切です。

いつから対象?|企業規模要件のスケジュール

まず結論です。企業規模要件は、年金制度改正法(令和7年法律第74号)により、2027年10月1日から2035年10月1日までの間に段階的に撤廃されます。人数の基準が数年ごとに引き下げられ、最終的に基準そのものがなくなる、という流れです。

具体的には、現行の「51人以上」から、2027年10月に「36人以上」、2029年10月に「21人以上」、2032年10月に「11人以上」と段階的に下がり、2035年10月には企業規模要件が撤廃され、規模を問わず全企業が対象になります。冒頭の「従業員30名ほど」の会社であれば、2029年10月の「21人以上」の段階で対象に入る計算です。

自社の被保険者数から、順番を引き当てるとこうなります。

自社の被保険者数 対象になる時期 いつから準備を始めるか
51人以上 すでに対象 賃金要件の撤廃(2026年10月予定)が次の節目
36〜50人 2027年10月 2026年秋ごろから
21〜35人 2029年10月 2028年秋ごろから
11〜20人 2032年10月 2031年秋ごろから
10人以下 2035年10月(規模要件の撤廃) 2034年秋ごろから

ここで多くの人が混同しやすいのが、賃金要件との違いです。厚生労働省が「2026年10月に撤廃予定」と案内しているのは「賃金要件(月額8.8万円以上という給与の基準)」であって、企業規模要件はこの時点では変わりません。しかも賃金要件のほうは、法律上は「公布から3年以内の政令で定める日」とされていて、期日がまだ確定していません。日付まで決まっているのは、これから見る企業規模要件のほうです。「2026年に何か変わるらしい」という情報だけが先行して、自社の企業規模の順番と取り違えてしまうケースが目立ちます。賃金の基準と会社の人数の基準は別物、と切り分けて理解してください。賃金要件そのものの動きについては、「106万円の壁」はいつなくなる?|賃金要件の撤廃と週20時間の判定で詳しく取り上げています。

✓ あわせて読みたい「106万円の壁」はいつなくなる?|賃金要件の撤廃と週20時間の判定106万円の壁の撤廃は2026年10月から。賃金要件がなくなる理由と、週20時間の判定への変わり方を中小企業の社長向けに整理します。130万…
企業規模要件が撤廃されるまでのスケジュール
1
2026年10月(予定)
賃金要件(月8.8万円)を撤廃予定。企業規模要件はこの時点では変わらない
2
~2027年9月
現行は従業員51人以上が対象
3
2027年10月
36人以上に引き下げ
4
2029年10月
21人以上に引き下げ
5
2032年10月
11人以上に引き下げ
6
2035年10月
企業規模要件を撤廃し、規模を問わず全企業が対象

参考(厚生労働省):年金制度改正法の法律説明資料(概要版・PDF)(企業規模要件の段階的撤廃スケジュール) / 年金制度改正法が成立しました

💬 無料相談を受け付けています「自社の場合はどうなるか」を、御社の状況に当てはめて一緒に整理します。無料相談はこちら

進め方|4ステップ

「いつから対象か」が分かったら、次は自社に当てはめて確認する番です。実際に手を動かす順番で整理します。

STEP1:自社の被保険者数を法人番号単位で数える

まず、自社の従業員数を数えます。ここで大切なのは、法人の場合は事業所ごとではなく「同一の法人番号に属するすべての適用事業所の被保険者数の合計」で判定するという点です。支店や営業所が分かれていても、同じ法人番号なら合算します。個人事業所の場合は、適用事業所ごとの単位で考えます。数え方の細部は日本年金機構の基準に従うため、迷ったら年金事務所に確認するのが確実です。

STEP2:自社の順番(対象になる時期)を確認する

STEP1で数えた人数を、前章のスケジュールに当てはめます。たとえば現在の被保険者数が30人前後なら、2029年10月の「21人以上」の段階が一つの目安になります。ただし、カウント対象は原則としてフルタイムなどの現在の被保険者で、短時間労働者本人は含めない考え方になります。人数が基準のちょうど境目にある会社は、判定を誤りやすいので特に注意が必要です。

STEP3:対象になる時期の約1年前から準備を始める

自社の順番が見えたら、その該当年月のおおむね1年前から準備に入ると余裕をもって動けます。準備の中心は、新たに加入対象となるパート従業員の把握、会社と本人それぞれの社会保険料負担がどれくらい増えるかの試算、そして本人への説明です。適用拡大の全体像と準備の流れは社会保険の適用拡大とは?|今後どう変わるかと自社への影響で整理しています。直前になって慌てると、従業員の不安や誤解を招きやすくなります。

✓ あわせて読みたい社会保険の適用拡大とは?|今後どう変わるかと自社への影響社会保険の適用拡大では、先に撤廃されるのが賃金要件(月8.8万円)で、企業規模要件(51人以上)はそれとは別のタイミングで段階的になくなりま…

STEP4:届出のタイミングと手続きを押さえる

対象になると、「特定適用事業所該当届」などの届出が必要になります。手続きの様式や提出時期は定められているため、自己流で進めず、日本年金機構の公式情報を確認するか、社労士・年金事務所に相談しながら進めます。人数が増減する会社は、判定のタイミングによって対象・非対象が変わることもあるため、この点も含めて確認しておくと安心です。

💬 実行まで一緒に動きます制度の当てはめから社内への落とし込みまで、右腕として伴走します。相談してみる

活用事例|自社の順番の確認の進め方(ケース別)

考え方を具体的にするために、一般化した想定を4つ挙げます。いずれも「たとえば、こういう会社ならこう考える」という例で、実在の特定企業の話ではありません。

ケース1|従業員30名ほどの金属加工業(本社工場と小さな営業所)

両方が同じ法人番号なら人数を合算して判定するため、「工場だけで見れば少ないから対象外」とは考えません。合算して30人前後であれば、2029年10月の「21人以上」の段階が自社の順番の目安になります。その1年ほど前から、パート従業員の社会保険加入と負担増を見込んで動き出すイメージです。

ケース2|従業員15名ほどの飲食サービス業(個人事業所)

企業規模要件のスケジュールに加えて、常時5人以上の個人事業所については、これまで社会保険が適用されていなかった業種(農林漁業・宿泊・飲食サービス業など)の扱いが2029年10月1日に解消される点も関係します。既存の事業所には経過措置として当分の間は適用しない形が予定されていますが、自社がどの扱いになるかは業態や事業所の形態で変わるため、早めに年金事務所へ確認しておくと安心です。

ケース3|従業員35名前後の運送業(繁忙期に人数が動く)

人数が基準の境目を行き来する会社です。判定のタイミングによって対象になったりならなかったりするため、「今は35人だから2029年10月」と固定して考えるのは危険です。年間で人数がどう動くかを一覧にし、境目をまたぐ月がどれくらいあるかを見たうえで、年金事務所に判定の考え方を確認してください。

ケース4|従業員12名ほどのIT・サービス業(採用力を上げたい)

自社の順番は2032年10月と、まだ先のタイプです。ただし規模要件を満たさない会社でも、労使の合意により自主的に社会保険の適用対象になる「任意特定適用事業所」という制度があり、採用力や定着を高める狙いで先行して加入を選ぶ会社もあります。求人票に「社会保険加入」と書ける効果と、増える人件費を並べて判断してください。

どのケースでも、出発点は同じです。まず法人番号単位で正確に数えること。ここを間違えると、そのあとの日程がすべてずれます。

自社の順番を確認する手順
法人番号単位で人数を数える事業所ごとではなく、同一法人番号のすべての適用事業所の被保険者数を合計して判定する
境界線上なら年金事務所へ確認人数が基準のちょうど付近なら、年金事務所や社労士に判定を確認する
該当年月の約1年前から準備対象になる時期の1年ほど前から、負担増の試算と従業員への説明を始める
人数が増減する会社は注意人数が変動する会社は境界をまたぐことがあるため、判定のタイミングと届出を押さえる

まとめ

社会保険の適用拡大について、社長が押さえておきたい要点を3つに整理します。

①企業規模要件は2027年10月から2035年10月にかけて段階的に引き下げられ(51人→36人→21人→11人→撤廃)、最終的には規模を問わず全企業が対象になります。いま対象外でも、いずれ順番が来ます。②2026年10月に撤廃「予定」なのは賃金要件(月8.8万円)で、企業規模要件はこの時点では変わりません。しかも賃金要件の期日は政令待ちで未確定です。ここは切り分けて理解してください。③自社の人数は法人番号単位で合算して判定し、対象になる時期の約1年前から準備を始めると余裕をもって動けます。人数判定や届出の細部は改正・基準変更もあるため、境界線上の会社は必ず年金事務所・社労士に確認してください。

最後に

「うちはまだ51人未満だから関係ない」——その理解は、いまは正しくても、数年後には変わります。適用拡大が近づいてから慌てて対応すると、社会保険料の負担増だけでなく、「なぜ急に加入することになったのか」というパート従業員への説明にも追われ、社長の時間と気力が想像以上に削られてしまいます。

こうした制度変更への備えは、「いつ・誰が対象になり・負担はいくら増えるか」を先に見える化しておくことで、かなりの部分が落ち着いて進められるようになります。とはいえ、日々の経営と並行して、改正のたびに最新情報を追い、自社の人数を正しく判定し、負担を試算し、従業員に説明する——この一連を社長一人で抱えるのは、決して簡単ではありません。何から手をつけるべきかの優先順位づけ自体が、悩みどころだと思います。

私たちTalent Partner(社長の経営参謀®)は、こうした場面で「制度が変わりますよ」と伝えて終わりにはしません。自社が対象になる時期の確認から、負担増の試算、パート従業員への説明資料づくり、そして専門家の判断が要る局面での社労士・年金事務所との橋渡しまで、隣で手を動かしながら伴走します。人・お金・組織の裏側を横断して支えてきた150社超の支援経験から、御社の規模と現場に「ちょうどいい」進め方をご提案します。適用拡大そのものの全体像や中小企業の準備の考え方は、別記事「社会保険の適用拡大とは?|いつから何が変わるのかと中小企業の準備」もあわせてご覧ください。

自社がいつから対象になるのか、負担はどれくらい増えそうか——「そろそろ調べておきたい」と感じているなら、対応に追われる前に、一度お気軽にご相談ください。無料相談で、御社の状況に合わせた準備の進め方を一緒に整理します。

無料相談・お問い合わせはこちら

この記事を書いた人

金井 春樹(株式会社TRAVEL LIKE Talent Partner事業部 取締役COO / TAM)

前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。

現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。

【運営会社 取得認証・認定】ISO27001 / 健康経営優良法人2026 / DX認定 / 経営革新計画(※兵庫県のコンサルティングサービスで唯一) / 事業継続力強化計画

CONTACT お問い合わせ

日々全力で事業に取り組む経営者の想いに寄り添い、目標に向かって伴走させていただきます。
まずはお気軽にご連絡ください。