新事業進出補助金の全4回の採択率|要件と後継制度のスケジュール
目次
新事業進出補助金は、全4回の公募で終わりました
「新事業進出補助金を使って、新しい市場に挑戦したい」——そう考えて調べ始めた方が、最初に知っておく必要のあることがあります。この補助金の公募は、すでに終了しています。
新事業進出補助金(正式名称は中小企業新事業進出促進補助金)は、2025年4月に第1回の公募が始まり、2026年6月19日18:00に締め切られた第4回をもって新規の受付を終えました。事務局である中小企業基盤整備機構のサイトにも「中小企業新事業進出補助金の公募は終了しました」と掲示されています。
では、これから新市場への進出に補助金を使いたい会社はどこへ向かえばいいのか。受け皿になるのが、2026年6月29日に公募が始まった「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」です。ただし事務局は、この新しい補助金について「『中小企業新事業進出補助金』と『ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金』とは異なる補助金です」と明記しています。名前は似ていますが、制度がそのまま引き継がれたわけではありません。
この記事では、終わった制度の実績を振り返ったうえで、後継制度で何が変わり何が変わらなかったのかを、両方の公募要領の原文で確かめて整理します。旧制度で申請を検討していた方が、当時の感覚のまま準備を進めると要件を外します。
この記事でわかること
- 新事業進出補助金の全4回の採択率(公式の採択結果にもとづく実数)
- 旧制度の補助額・補助率・対象経費と、求められた6つの要件
- 後継制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」のスケジュールと3つの申請枠
- 旧制度から変わった3つの要件——ここを見落とすと申請そのものができません
- 申請前に整えるもの(GビズIDと一般事業主行動計画は、着手から公表まで日数がかかります)
全4回の採択率は37.2%から34.9%へ
事務局が公表している応募者数と採択者数から、各回の採択率を並べるとこうなります。
| 公募回 | 応募締切 | 応募者数 | 採択者数 | 採択率 |
|---|---|---|---|---|
| 第1回 | 2025年7月15日 | 3,006者 | 1,118者 | 37.2% |
| 第2回 | 2025年12月19日 | 2,350者 | 832者 | 35.4% |
| 第3回 | (2026年7月1日採択発表) | 1,212者 | 423者 | 34.9% |
| 第4回 | 2026年6月19日 | 2026年9月末頃に発表予定 | — | — |
応募者数は3,006者から1,212者へと回を追うごとに減りました。にもかかわらず、採択率は37.2%→35.4%→34.9%とわずかに下がっています。
補助金の解説では「早い回のほうが予算に余裕があるから通りやすい」という説明をよく見かけます。ただ、この制度の実績で見るかぎり、第1回と第3回の差は2.3ポイントです。公募回のタイミングを読むより、事業計画の中身で決まると考えたほうが実態に合います。
なお第1回は、当初2025年7月10日だった締切が7月15日に延長されました。締切日は公募要領の公開後に動くことがあります。
参考(中小企業基盤整備機構):中小企業新事業進出補助金「採択結果」 / 「スケジュール」
どんな制度だったのか——補助額・補助率・対象経費
旧制度の枠組みを、第2回の公募要領で確認します。補助額は従業員数で4段階に分かれていました。
| 従業員数 | 補助金額(下限〜上限) | 賃上げ特例の適用時 |
|---|---|---|
| 20人以下 | 750万円〜2,500万円 | 3,000万円 |
| 21〜50人 | 750万円〜4,000万円 | 5,000万円 |
| 51〜100人 | 750万円〜5,500万円 | 7,000万円 |
| 101人以上 | 750万円〜7,000万円 | 9,000万円 |
補助率は1/2、補助事業の実施期間は交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内)です。下限が750万円に設定されていたため、投資額が1,500万円に届かない計画はそもそも対象外でした。ここは小規模な設備更新を考えていた会社がつまずきやすい点です。
補助対象経費は9区分でした。
機械装置・システム構築費/建物費/運搬費/技術導入費/知的財産権等関連経費/外注費/専門家経費/クラウドサービス利用費/広告宣伝・販売促進費
このうち機械装置・システム構築費か建物費のどちらかを必ず含める必要がありました。設備や建物を伴わない、ソフト面だけの取り組みは通りません。一方で、設備投資の補助金では対象外になりがちな広告宣伝・販売促進費が対象に入っていたのがこの制度の特徴です。新しい市場に出るには、作るだけでなく知ってもらう費用がかかる——その実態に合わせた設計といえます。
参考(中小企業基盤整備機構):中小企業新事業進出促進補助金 公募要領(第2回)
旧制度が求めた6つの要件
公募要領の「5.補助対象事業の要件」には、要件が6つ並んでいます。
| # | 要件 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 新事業進出要件 | 製品等の新規性・市場の新規性・新事業売上高の3つをすべて満たすこと |
| 2 | 付加価値額要件 | 事業計画期間に付加価値額の年平均成長率4.0%以上 |
| 3 | 賃上げ要件 | 一人当たり給与支給総額を最低賃金の5年間の年平均成長率以上、または給与支給総額を年平均2.5%以上 |
| 4 | 事業場内最賃水準要件 | 事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準 |
| 5 | ワークライフバランス要件 | 次世代法にもとづく一般事業主行動計画を公表していること |
| 6 | 金融機関要件 | 金融機関等から資金提供を受ける場合、確認書の提出 |
中心にあるのが1番目の新事業進出要件です。「新規性」といっても日本初・世界初である必要はなく、その会社にとって新しいかどうかで判断されます。ただし、既存製品の増産、過去に作っていた製品の再開、単なる製造方法の変更は該当しません。市場についても、既存商品の商圏を広げただけでは「新たな市場」と認められません。
3番目の新事業売上高要件も見落とされがちです。事業計画期間の最終年度に、新しく製造・提供する製品等の売上高が応募申請時の総売上高の10%、または付加価値額が総付加価値額の15%を占める見込みが必要でした。新事業が会社の中で一定の規模になる計画でなければ通らないということです。
参考(中小企業基盤整備機構):中小企業新事業進出促進補助金 公募要領(第2回)
この記事の内容を、社内で共有できる資料にまとめています。
賃上げ特例で補助上限を引き上げる仕組み
先ほどの補助額の表にある「賃上げ特例の適用時」の列は、通常より高い賃上げに取り組む会社の補助上限を引き上げる仕組みです。旧制度では、次の2つをどちらも満たすことが条件でした。
- 給与支給総額の年平均成長率を、基準の2.5%にさらに3.5%上乗せして、合計6.0%以上
- 事業場内最低賃金を、基準の30円にさらに20円上乗せして、地域別最低賃金より50円以上高い水準
補助上限が500万円から2,000万円上がるため魅力的に見えますが、注意すべきはその裏側です。どちらか一方でも達成できなかった場合、引き上げ分の補助金は全額返還を求められます。3〜5年にわたって賃上げを続けられるかを、業績の見通しと合わせて判断する必要があります。
賃上げ要件そのものについても、目標値を従業員全員または従業員代表に表明していなかった場合は交付決定が取り消され、補助金は全額返還です。社内に伝えていなければ、要件を満たしたことになりません。
いま申請できるのは後継の別制度です
ここからが、これから申請を考えている方に関わる話です。2026年6月29日に「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の第1回公募が始まりました。
まず日程を確認します。この日程は2026年7月17日に変更されています。変更前の情報を見ている場合は、締切を1か月早く誤解している可能性があります。
| 項目 | 変更前 | 現在の日程 |
|---|---|---|
| 公募開始 | — | 2026年6月29日 |
| 申請受付 | 2026年8月31日 | 2026年9月30日 |
| 申請締切 | 2026年9月30日 18:00 | 2026年10月30日(金)18:00 厳守 |
| 採択発表 | 2026年12月 | 2027年1月(予定) |
申請枠は3つに分かれ、旧制度の後継にあたるのが「新事業進出枠」です。
| 申請枠 | 対象となる取り組み | 補助上限(賃上げ特例時) | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 革新的な新製品・新サービスの開発 | 2,500万円(3,500万円) | 1/2(小規模・再生事業者は2/3) |
| 新事業進出枠 | 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出 | 7,000万円(9,000万円) | 1/2 |
| グローバル枠 | 海外市場開拓に向けた国内の輸出体制強化 | 7,000万円(9,000万円) | 2/3 |
新事業進出枠の補助上限と下限(750万円)は、旧制度と同じ水準です。対象経費には原材料費が加わって10区分になりました。
新設された補助金の全体像や、3つの枠の選び分けはものづくり補助金は2026年どうなった?新補助金の全体像を解説で整理していますので、あわせてご覧ください。
参考(中小企業基盤整備機構):新事業進出・ものづくり商業サービス補助金「公募スケジュール」 / 公募要領(第1回)1.1版
旧制度から変わった3つのこと
後継制度の基本要件も6つですが、中身が入れ替わっています。旧制度の感覚のまま準備すると外すのは、次の3点です。
基本要件は数だけ同じで、中身が入れ替わっている
新事業進出要件が基本要件の1番目
賃上げは「最賃の5年成長率」か「給与総額2.5%」の選択制
子育て関連の要件なし
対象経費は9区分
新事業進出要件は「新事業進出枠」の枠定義へ移動
一人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上に一本化
子育て等に関する職場環境整備の取り組みが新設
対象経費は10区分(原材料費を追加)
1つ目は、新事業進出要件の位置です。旧制度では全申請者に課される基本要件の1番目でしたが、後継制度では基本要件から外れ、「新事業進出枠」という枠そのものの定義に移りました。革新的新製品・サービス枠やグローバル枠を選ぶなら、新規性の考え方はその枠の定義に従います。
2つ目は、賃上げ要件が一本化されたことです。旧制度は2つの基準から選べましたが、後継制度は一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上に統一されました。選択肢が消えたぶん、自社にとって達成しやすいほうを選ぶという逃げ道はありません。賃上げ特例を使う場合の上乗せは+2.5%で、合計6.0%という水準は旧制度と同じです。
3つ目は、子育て等に関する職場環境整備の要件が新設されたことです。ライフデザインサービスの活用、家事代行・ベビーシッターサービスの活用、子育て関連制度の社内周知——この3つから1つを選んで取り組み、事業計画に記載します。一般事業主行動計画に留まらない追加的な取り組みであることの説明も求められます。ただし、くるみん・トライくるみん・プラチナくるみんのいずれかを取得済みの会社は免除されます。
参考(中小企業基盤整備機構):新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.1版
制度の当てはめから社内への落とし込みまで、右腕として伴走します。
申請前に整えるもの——日数がかかる順に
補助金の準備というと事業計画書の執筆を思い浮かべますが、実際に締切に間に合わなくなる原因は、書類よりも手続きに要する日数です。公募要領は、次の2つについて所要期間をはっきり書いています。
締切から逆算して着手する順番
- ✓GビズIDプライムアカウント
発行に1週間程度。遅れによる申請期限の延長は一切認められない - ✓一般事業主行動計画の策定・公表
「両立支援のひろば」への掲載に1〜2週間程度。公募要領は2週間以上の余裕を求めている - ✓子育て等に関する職場環境整備の取り組み
ア〜ウから1つ選び、事業計画に具体的な内容を記載する - ✓金融機関による確認書
融資を受けて実施する場合のみ。自己資金だけなら提出不要 - ✓事業計画書
申請者自身が作成する。3〜5年の数値目標を伴う
申請は電子申請システムでのみ受け付けます。GビズIDプライムアカウントがなければ、そもそも入口に立てません。一般事業主行動計画も、公表申請の審査過程で不備が見つかることがあるため、締切間際の着手では間に合わない可能性があります。
この2つは、公募が始まってから動くのではなく、申請を検討し始めた時点で並行して進めるのが現実的です。
つまずきやすい落とし穴
公募要領の注意事項から、実務でつまずきやすい点を挙げます。
知らずに進めると、採択後でも取り消される
とくに1つ目は、外部に相談する場面で直接効いてきます。公募要領は「検討やブラッシュアップのために認定経営革新等支援機関を含む外部支援者等の助言を受けることは差し支えございませんが、必ず申請者自身で作成してください」と書いています。作成自体を代行させたことが発覚すると、採択後であっても取り消されます。
あわせて、提供するサービスの内容とかけ離れた高額な成功報酬の請求や、経費の水増しを提案する業者への注意も明記されています。事務局は通報窓口を設けており、認定支援機関が関与していた場合は認定取消に至る可能性まで示しています。
補助金は採択されて終わりではなく、実績報告と事業化状況報告が続きます。採択後の流れは補助金は採択後が本番|実績報告・返還・圧縮記帳の手順にまとめています。加点項目の取り方は補助金の加点項目とは?2026年に取れる項目を一覧で解説をご覧ください。
参考(中小企業基盤整備機構):新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.1版
まとめ
- 新事業進出補助金は全4回で公募を終えた
- 採択率は第1回37.2%、第2回35.4%、第3回34.9%。応募が減っても採択率は上がっていない
- いま申請できるのは後継の「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」
- 応募締切は2026年10月30日(金)18:00。この日程は2026年7月17日に変更されているため、それ以前の情報は使えない
- 基本要件は旧制度も後継制度も6つ
- 新事業進出要件が枠の定義へ移り、賃上げ要件が一人当たり給与支給総額3.5%に一本化された
- 子育て等に関する職場環境整備の要件が新設された
補助金の要件・申請枠・スケジュールは公募回ごとに変わります。申請前には必ず最新の公募要領をご確認いただくか、認定経営革新等支援機関にご相談ください。
最後に
ここまで読んで、「制度が変わったのはわかった。でも、うちの計画がどの枠に当てはまるのか、3〜5年の賃上げを約束して大丈夫なのかがわからない」と感じた方もいるかもしれません。それは自然なことです。補助金の要件は、資金の話に見えて、実際には賃金制度をどう設計するか、子育て中の従業員が働き続けられる環境をどう整えるかという、人と組織の話に踏み込んでいます。日々現場を回しながら、公募回ごとに入れ替わる要件を追い続けるのは現実的ではありません。
私たちTalent Partner(社長の経営参謀®)は、こうした場面で「隣に座る右腕」として動きます。きれいな提案書を置いて帰るのではなく、どの枠で申請するかの見極めから、3〜5年の賃上げ計画が資金繰りに耐えるかの検証、一般事業主行動計画の策定と公表、そして事業計画書への落とし込みまで、実際に手を動かすところまで一緒に伴走します。ただし事業計画書そのものは、公募要領が定めるとおり申請者ご自身に書いていただきます。私たちがするのは、書けるように材料と数字を整えることです。
まずは「うちの計画は新事業進出枠で通るのか」「賃上げ3.5%を3年続けられるのか」を一緒に確かめるだけでも、次の一手は見えやすくなります。締切が近づいてから慌てるより、GビズIDと一般事業主行動計画の準備を始めながら考えるほうが、選べる道は広く残ります。
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