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試用期間とは?|本採用拒否の可否と延長の注意点
目次
「試用期間中だから、合わなければ辞めてもらえる」——その前提、実は危ういかもしれません
採用してみたら、面接での印象と現場での働きぶりがずいぶん違った。指示の受け止め方も、周りとの噛み合い方も、思っていたのと違う。そんなとき、「まだ試用期間中だから、合わなければ辞めてもらえばいい」と考えていませんか。
結論から言うと、試用期間中であっても、会社が一方的に「本採用しない(本採用拒否)」と決めるには、客観的に合理的な理由と、社会通念上そうするのが相当だと言える事情が必要だと解されています。通常の解雇よりは広く認められる余地があるものの、「試用期間中なら自由」というわけではありません。ここを誤解したまま進めると、あとから「不当解雇だ」と争われるリスクが残ります。
この記事では、試用期間とは何か、本採用拒否はどこまでできるのか、期間の長さや延長はどう考えればよいのかを、5〜50名規模の会社の社長が押さえておきたい範囲で整理します。専任の人事部がいなくても、つまずかない進め方が分かるはずです。
なお、実際の解雇・本採用拒否の可否は個別の事情で大きく変わります。最終的な判断は必ず社会保険労務士(社労士)や弁護士に確認してください。
💡 この記事でわかること:
- ●試用期間の正しい意味(労働契約はすでに成立している)
- ●「試用期間中なら自由に辞めさせられる」がなぜ誤解なのか
- ●期間の長さと延長の可否をどう考えるか
- ●トラブルを防ぐために、社長がいまからやっておくべきこと
そもそも試用期間とは
試用期間とは、正式に本採用する前に、その人が自社の仕事や職場に適しているかを一定期間見きわめるために設ける期間のことです。多くの会社が就業規則で「入社後◯か月を試用期間とする」と定めています。
ここで最も大切なのは、試用期間中であっても、労働契約はすでに成立しているという点です。「お試し期間だから、まだ正式な契約ではない」というイメージは正確ではありません。裁判例では、試用期間は「うまくいかなければ会社が採用をやめられる権利(解約権)を残したうえで結ばれた労働契約」と解されています。むずかしく言えば「解約権留保付(かいやくけんりゅうほつき)の労働契約」ですが、要はすでに雇っている状態で、辞めてもらうハードルが本採用後より少し下がっているだけ、と捉えるのが実態に近い理解です。
「試用期間中なら自由に辞めさせられる」は誤解
まず押さえたいのは、本採用拒否も、法的には「解雇」の一種として扱われるということです。だからこそ、会社の都合だけで自由にできるものではありません。
試用期間中に会社が本採用を見送るには、採用時には分からなかった事実が判明し、それが「本採用を見送っても仕方がない」と言える程度のものである必要があります。たとえば、経歴に重大な偽りがあった、指導しても改善が見られず業務に明らかな支障が出ている、といったケースです。「なんとなく合わない」「思ったより大人しい」といった主観的な印象だけでは、正当な理由として認められにくいと考えておくべきです。
一方で、覚えておくと役立つ実務上のルールもあります。労働基準法第21条は、解雇予告の規定(第20条)を「試の使用期間中の者」には適用しないと定めたうえで、ただし書きで「十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない」としています。つまり、入社後14日以内であれば、30日前の解雇予告や予告手当が不要です。ただしこれは「予告の手続きが省ける」という話であって、「解雇そのものが自由にできる」という意味ではありません。ここを混同すると危険です。手続きが省けても、辞めてもらうこと自体に合理的な理由が要る、という点は変わりません。
整理すると、試用期間で「できること」と「変わらないこと」は次のように分かれます。
| 論点 | 試用期間中はどうか | 根拠・注意点 |
|---|---|---|
| 労働契約は成立しているか | 成立している | 「まだ正式ではない」は誤解。すでに雇っている状態 |
| 本採用を見送れるか | 見送れるが、合理的な理由と相当性が必要 | 本採用後の解雇よりやや広く認められる余地はある |
| 入社14日以内の解雇予告 | 予告・予告手当は不要 | 労働基準法第21条第4号。ただし理由は必要 |
| 入社15日目以降の解雇予告 | 必要(30日前の予告または予告手当) | 14日を超えて引き続き使用された場合 |
| 試用期間の延長 | 就業規則の定めがあれば可 | 無期限・繰り返しの延長は認められにくい |
| 判断の根拠 | 記録と面談が要る | 口頭のやり取りだけでは後から説明できない |
参考(e-Gov法令検索):労働基準法 第21条(解雇予告の適用除外) / 労働契約法 第16条(解雇)
進め方|4ステップ
試用期間を「なんとなく」ではなく、あとで争いにならない形で運用するための手順を、実際に手を動かす順番で整理します。採用のたびに使える型として押さえておくと安心です。
STEP1:就業規則に試用期間のルールを明記する
まず、試用期間の長さ・目的・本採用拒否がありうること・延長の可能性を就業規則に書いておきます。就業規則に定めがなければ、そもそも試用期間を設けている根拠が弱くなります。10人未満で就業規則を作っていない会社は、この機会に整備するのがおすすめです。就業規則そのものの作り方は〈就業規則の作り方|中小企業が最低限そろえる項目と届出の手順〉で詳しく解説しています。
STEP2:本採用の判断基準を先に決めておく
「何ができれば本採用か」を、採用前に言葉にしておきます。求める行動・スキル・勤務態度を、できるだけ具体的な項目に落とし込みます。基準が社長の感覚だけだと、あとで「なぜダメだったのか」を説明できず、本人も納得しません。基準を先に決めることが、公平さと説明力の土台になります。
STEP3:期間中の様子を記録に残す
遅刻・指示の受け止め方・ミスとその後の改善状況などを、日付とともに簡単でよいので記録します。特別なシステムは不要で、スプレッドシートやノートで十分です。本採用を見送る場合、この記録が「客観的な理由」を裏づける材料になります。記録がなければ、正当な判断であっても後から証明できません。
STEP4:面談で改善の機会を伝える
気になる点があれば、期間の途中で面談を行い、「どこを、どう直してほしいか」を具体的に伝えます。会社が改善のチャンスを与えたという事実は、仮に本採用を見送る場合にも「手を尽くした」という重要な根拠になります。いきなり期間満了で通告するのではなく、途中の対話を挟むことが、双方にとって納得感につながります。
活用事例|試用期間の進め方(ケース別)
考え方を具体的にするために、一般化した想定を2つ挙げます。いずれも「たとえば、こういう会社ならこう進める」という例で、実在の特定企業の話ではありません。
いきなり「試用期間だから」と満了で通告するのではなく、記録(いつ・どんな不良が・何回)と面談(改善してほしい点の明示)を積み重ねます。それでも改善が見られなければ、本採用を見送る判断の根拠が客観的に説明できる状態になります。順番が逆だと、同じ結論でも通りません。
就業規則に延長の定めがあることを前提に、試用期間の延長を検討できます。ただし延長は本人にとって不安定な状態が続くことでもあるため、理由と期間を本人に説明し、何を確認したいのかを明確にすることが大切です。無期限・繰り返しの延長は認められにくい、と考えておきましょう。
そもそもの土台が抜けているタイプです。試用期間を設けるなら、期間・延長の有無と上限・本採用の判断基準を就業規則に書いておく必要があります。定めがないまま「試用期間中だから」と扱うのは、根拠のない運用です。次の採用の前に、この3点だけでも整えてください。
14日以内なので予告手当は不要ですが、辞めてもらうこと自体に合理的な理由が要る点は変わりません。しかも10日では、改善の機会を与えたとは言いにくいのが実情です。急ぐ気持ちは分かりますが、この段階でも面談と記録を挟んでください。手続きが省ける話と、理由が要らない話は別です。
まとめ
試用期間について、社長が押さえておきたい要点を3つに整理します。
①試用期間中であっても労働契約はすでに成立しており、「試用期間中なら自由に辞めさせられる」は誤解です。本採用拒否にも、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要と解されています。②期間の長さや延長は、就業規則の定めが前提です。延長を無制限に繰り返すことはできません。③トラブルを防ぐ鍵は、判断基準を先に決め、期間中の様子を記録し、面談で改善の機会を伝えること。この積み重ねが、いざというときの説明力になります。
試用期間でつまずくケースの多くは、選考の段階で見極めが足りていません。計画・募集・選考・受け入れの4段階は、中小企業の採用でまとめています。
なお、実際の本採用拒否や延長の可否は個別の事情で結論が変わります。最終的な判断は必ず社労士や弁護士に確認してください。
最後に
「試用期間中だから大丈夫」という思い込みで進めた結果、退職をめぐってこじれ、時間も気力も大きく削られてしまう——中小企業ではよくある展開です。本来、採用は会社を前に進めるための一歩のはずが、こじれると社長がその対応に追われ、本業に集中できなくなってしまいます。
こうした問題の多くは、就業規則の整備・評価基準づくり・記録の残し方・面談の進め方といった、地味だけれど効く「土台」を先に整えておくことで、かなりの部分を防げます。とはいえ、これらを社長一人で、日々の経営と並行して仕上げるのは簡単ではありません。何から手をつけるべきかの優先順位づけ自体が、悩みどころだと思います。
私たちTalent Partner(社長の経営参謀®)は、こうした場面で「提案書を置いて帰るだけ」の関わり方はしません。就業規則の見直しや評価基準の設計を一緒に組み立て、必要なら面談の場に同席し、いざ専門家の判断が要る局面では社労士・弁護士とつなぐところまで、隣で手を動かしながら伴走します。人・お金・組織の裏側を横断して支えてきた150社超の支援経験から、御社の規模と現場に「ちょうどいい」仕組みをご提案します。問題社員への対応をより具体的に検討したい場合は、〈問題社員の退職勧奨|解雇との違いと記録で進める実務3ステップ〉もあわせてご覧ください。
採用や労務のことで「これは大丈夫だろうか」と少しでも引っかかっているなら、判断を急ぐ前に、一度お気軽にご相談ください。無料相談で、御社の状況に合わせた進め方を一緒に整理します。
この記事を書いた人
前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。
現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。
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