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手ぶら訪問していた弁当業が、チラシ1枚で法人受注を増やした方法

中小企業の新規開拓で「営業ツールの不在」が招く機会損失

企業に挨拶に行く機会があっても、渡せる資料が手元に何もない。
配達員に新しいメニューを案内してほしいと思っても、毎日の業務で手一杯の現場にそれを頼める雰囲気ではない。
この記事を読んでいる方の中にも、同じような状況に心当たりがある方はいるかもしれません。

専任の営業担当を置けるほどの規模でもなく、かといって社長が自ら毎日外回りをするには時間が足りない。
そのまま放置していると、高単価な商材の販路は広がらず、薄利多売から抜け出せないまま時間だけが経っていきます。

この記事では、日産1500食規模の弁当・仕出し業を営むY社様の事例をもとに解説します。
既存の配達ルートをそのままに、高単価商材の認知と受注を広げるための営業ツールをどう整備したか、その考え方と進め方を具体的にお伝えします。
営業担当がいなくても、現場に余計な仕事を増やさなくても、販路は整備次第で変えられます。

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この記事でわかること

  • なぜ弁当・仕出し業の法人開拓では「ツールなし」が機会損失を招くのか
  • 既存の配達ルートを活かして高単価商材の認知を広げる考え方
  • チラシ・パンフレット・LINEを連動させた仕組みの設計方法
  • 営業担当なしでも実践できる新規開拓の3ステップ

「手ぶらで来たの」——Y社様が直面した販路拡大の壁

Y社様は地域密着の弁当・仕出し業を営む企業で、30名のスタッフが日産1500食の生産体制を支えています。
地域の法人・施設・工場への配達ルートも安定して確立されており、長年かけて築いてきた信頼関係があります。

ただ、よく見ると課題は別のところにありました。
日配弁当の生産数はすでに上限に近く、これ以上の増産は物理的に難しい状態です。
スタッフを増やしたとしても、現在の設備と現場の動線を考えると、大幅に数を積み上げることは現実的ではありません。
そこで社長が目を向けたのが、単価の高いイベント弁当・仕出し、そして鰻という商材でした。

ただ、それらを受注するための「接点」がほとんど作られていませんでした。
企業の担当者に挨拶に行く機会はあっても、持参できる会社案内やメニュー資料が何一つない状態です。
社長自身も「手ぶらで行くのは失礼だとわかっているが、かといって資料を作る時間も余裕もない」と話していました。

配達員を通じた案内も、うまく機能していませんでした。
毎日の配達業務でいっぱいの現場に「新しいメニューも口頭で説明してきてほしい」と頼んでも、説明の内容は人によってばらつきがあり、継続もしません。
月に10〜20件あるイベント用弁当の配達機会でも、そこから追加注文につながる仕掛けは何もありません。
受け取った先の担当者には、チラシ一枚も届いていないわけです。

生産数が上限に近い中で、高単価な商材を知ってもらう手段もない。
この状態では、売上も利益率も動きようがありません。
問題は営業力ではなく、営業のインフラが整っていないことにあります。

配達ルートを「営業回路」に変える——根本原因と実務的アプローチ

生産キャパと利益率のズレを整理する

日配弁当は単価が低く、数をこなすことで売上を積み上げるモデルです。
ただ、生産設備やスタッフの数に上限がある以上、このモデルだけで利益を増やし続けるのには限界があります。

Y社様の場合、日産1500食という水準がすでにその限界に近いところです。
仮にさらに200食・300食と増やせたとしても、増える利益はわずかな一方、スタッフへの負荷は比例以上に大きくなります。
無理に増産を続けることで、品質の維持や人材の定着に新たなリスクが生まれる可能性もあります。

そこで有効になるのが、高単価な商材の受注比率を上げるという考え方です。
一般的に、イベント弁当・仕出しは日配弁当と比べて単価が数倍以上になるケースも多く、1件の受注で生まれる利益の厚みがまったく異なります。
鰻はさらに単価を高く設定できる商材で、少量でも収益に直結しやすい特性があります。

とはいえ、知ってもらう機会がなければ注文は来ません。
配達だけでは伝わらないし、手ぶらで訪問しても説明のしようがない。
受注を増やす前に営業のインフラを整えることが、利益改善への現実的な近道です。

配達員の負担を増やさない仕組みの設計

提案の方針はシンプルです。
毎日の配達に、弁当と一緒にチラシを同梱する。それだけです。
配達員が口頭で何かを説明する必要はなく、受け取った担当者が手元の紙を見るだけで、イベント弁当や鰻の存在を知ることができます。

並行して、企業訪問時に持参できるA4サイズのパンフレットの作成も提案しました。
会社概要・提供メニューのラインナップ・イベント対応の実績・問い合わせ先をまとめた一枚で、「手ぶら」という状況をそのまま解消するためのツールです。
外部デザイナーとの打ち合わせの日程調整から、構成・文言の作成まで、タレントパートナーの側で進めることにしました。
社長は忙しい上に、こうした制作物をどう作ればいいかイメージしにくいことが多いためです。

ここで大切にしたのは、「配達員にも、社長にも、新たな仕事を増やさない」という設計の方向性です。
既存のオペレーションに自然に乗る形でなければ、どれだけ良いツールを作っても現場では使われません。
「仕組みを作ること」と「現場が実際に動き続けられること」は、別々の問題として丁寧に考える必要があります。

LINE登録から購買へつなぐ導線の設計

チラシやパンフレットで認知を取った後のステップとして設計したのが、LINE公式アカウントへの誘導です。
チラシにQRコードを掲載し、登録した顧客に限定情報を届ける流れを組み込みます。
一度接触しても関係が途切れてしまうのは、中小企業の営業活動でよく起きることですが、LINEを起点にするとその関係を続けやすくなります。

打ち合わせで具体的に挙がったのが、「鰻の限定販売」という企画です。
配送コストを抑えるために、注文者が店舗まで引き取りに来るピックアップ形式を採用します。
LINE登録者だけに告知し、数量限定で受け付ける形にすることで、特別感を演出できます。
「夜間配達は難しい」という制約を逆手に取り、引き取りに来てもらうことをプレミアム感に変えた設計です。

この仕組みのよいところは、販促のたびに広告費をかけなくても既存の登録者へ繰り返しアプローチできる点です。
一度登録してもらえれば、次のイベント告知も、季節限定メニューの案内も、追加コストなしで届けられます。
単発の営業施策で終わらせず、顧客との関係を継続させる「資産」として活用するのが、この仕組みの本質です。

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ポイント:
生産数に上限がある事業では、単価の高い商材の比率を上げることが利益改善につながります。
チラシの同梱は、既存の配達ルートに乗せるだけで営業接点を増やせる、現場負担ゼロの方法です。
LINEを起点にした仕組みは、単発の営業を継続的な関係性へと変えてくれます。

現場が自動的に動く営業ツールの作り方

ここで紹介したアプローチは、弁当・仕出し業に限らず、専任の営業担当を持たない中小企業全般に応用できます。
以下の3つのステップで、自社に合った仕組みを整えてみてください。

STEP1:高単価商材の「伝えるべきこと」を整理する

まず、自社の高単価商材について「誰に・何を・どう伝えるか」を言葉にするところから始めます。
Y社様であれば、「法人の担当者に・イベント弁当と鰻の存在を・視覚的にわかりやすく伝える」というゴールが明確でした。
この整理があるかどうかで、その後の制作物の完成度が変わります。

制作物に最低限盛り込む内容としては、「商品の特徴・対応できる人数や用途・注文の方法・問い合わせ先」の4点を押さえてください。
これ以上を詰め込もうとすると、受け取った側が読まなくなります。
「この一枚を見た人に、次にどんな行動を取ってもらいたいか」という行動ゴールを先に決めてから、デザインや文言の方向性を定めることが大切です。

整理の方法はシンプルで、A4一枚に「商品名・ターゲット・訴求ポイント・行動ゴール」を書き出すだけで十分です。
これをデザイナーや外部パートナーに渡せば、制作の方向性が共有され、修正のやり取りも減ります。
30分あれば完結する作業ですが、ここを省いて制作に入ると、デザイナーへの指示が曖昧になり、修正のやり取りに余計な時間とコストがかかります。
制作物の仕上がりは、デザイナーの腕よりも依頼前の「整理」の精度で変わることが多いです。

STEP2:同梱チラシとA4パンフレットで「接触を設計」する

チラシは「既存の配送・配達ルートに乗せる」ことを前提に設計します。
サイズはA5またはB5が扱いやすく、QRコード(LINE登録や問い合わせ先)・主力メニューの紹介・季節のおすすめの3点を必ず含めます。
文字量は少なめに抑え、受け取った担当者が3秒で内容を把握できるくらいがちょうどいいです。

A4パンフレットは企業訪問専用のツールとして位置づけます。
会社概要・衛生管理や品質への取り組み・イベント対応の実績・問い合わせ先を一枚に収め、担当者が上司に見せやすい「社内で回覧できる資料」として設計するのがポイントです。
外部デザイナーに制作を依頼する場合は、文章の骨格(構成・見出し・本文の概要)を自社側で先に用意してから渡すと、修正回数が減り、完成までの時間が短縮されます。

制作ツールは高価なものを使う必要はありません。
CanvaやGoogleスライドのテンプレートを活用すれば、デザインの専門知識がなくても一定のクオリティに仕上げることができます。
大切なのはデザインの完成度よりも、「読んだ人が次の行動を取れるか」という設計の精度です。
まずは低コストで試作し、実際の反応を見ながら改善を重ねていく進め方が、中小企業には合っています。

STEP3:LINE公式アカウントで「関係を継続」する

LINE公式アカウントで最も大切なのは、登録直後の「最初のメッセージ」です。
登録してくれた方への第一報で「登録してよかった」と感じてもらえる特典や限定情報を届けることで、その後の配信も読まれやすくなります。
最初の一報が「よろしくお願いします」だけでは、次第に忘れられてしまいます。

運用の目安は「月2〜3回の配信、1回あたり2〜3文」で十分です。
季節の商品案内・限定企画の告知・イベント対応のお知らせなど、読んでいて損のない情報に絞ることで、LINE登録者が配信を受信拒否(ブロック)する割合を低く抑えられます。
最初から複雑な配信シナリオを作ろうとすると運用が続かないため、まずはシンプルな手動配信からスタートするのがおすすめです。
慣れてきたら、段階的に自動応答や、属性・行動履歴によって送り先を絞り込む配信方法(セグメント配信)を組み込んでいけば十分です。

運用を続けるうえで意識したいのは、「完璧な配信」よりも「途切れない配信」です。
月1回しか連絡のない店より、月3回こまめに役立つ情報を届ける店の方が、顧客の記憶に残ります。
最初から高品質な配信を目指す必要はなく、まずは「忘れられない頻度」で接触することを目標にしてみてください。
LINE登録者が100人を超えてきた段階で、初めて配信内容の精度を上げることを検討すれば十分です。

まとめ:「営業力」より先に「仕組み」を整える

Y社様の事例から見えてくるのは、「営業力がない」のではなく「営業のインフラが整っていなかった」ということです。
配達員に口頭説明を頼めなかったのも、手ぶらで企業訪問するしかなかったのも、どちらも仕組みの不在が原因でした。

チラシ・パンフレット・LINEの3つを連動させることで、既存の配達ルートが営業の回路として機能し始めます。
配達員のやり方を変える必要もなく、社長が毎日外回りをする必要もありません。
今あるリソースをそのまま使いながら、高単価な商材への接点を作れる点が、この仕組みのよいところです。

財務の視点から見ると、高単価商材の受注比率が上がることは、生産数を増やさずに利益率を改善できることを意味します。
採用や設備投資をせずに、今ある資源で利益の構造を変えていける点は、中小企業にとって取り組む価値のある方向性です。
「人の採用」「設備の拡充」「資金調達」といった手を打つ前に、まず現場にある接点をどう活かすかを考えることが、経営改善の入り口になります。

また、今回紹介した仕組みは「作ったら終わり」ではありません。
チラシの差し替えやLINEの配信内容を定期的に更新することで、季節や状況に合わせた接触が実現します。
一度作って動かし続けられる仕組みになると、営業にかかるコストは下がりながら顧客との接触頻度は高まっていきます。
規模の小さな企業ほど、維持コストが低い仕組みであることは、続けられる理由にもなります。

最後に

「営業担当を雇う余裕はないが、このまま日配弁当だけに頼り続けるのも限界だ」と感じている経営者にとって、まず取り組むべきは採用ではなく仕組みを整えることです。
既存の配達ルートや顧客との接点をそのまま活かしながら、高単価な商材の販路を広げる方法はあります。
何から手をつければいいかわからないという段階からのご相談も、お気軽にどうぞ。

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この記事を書いた人

金井 春樹(株式会社TRAVEL LIKE Talent Partner事業部 取締役COO / TAM)

前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。

現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。

【運営会社 取得認証・認定】ISO27001 / 健康経営優良法人2026 / DX認定 / 経営革新計画(※兵庫県のコンサルティングサービスで唯一) / 事業継続力強化計画


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