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業務効率化・DX

優良な電子帳簿の届出書の書き方|いつまでに、どこへ、何を書くか

様式は1枚、期限は法定申告期限まで、書面でも出せます

「様式がいくつも並んでいて、どれを出せばいいのか分からない」——優良な電子帳簿を使うと決めたあと、ここで止まる会社は少なくありません。使う様式は法人も個人事業者もH4-1、提出先は納税地等の所轄税務署長、期限は適用を受けようとする国税の法定申告期限まで。国税庁の手続ページではe-Taxでの提出が案内されていますが、書面で作成して提出することもできます。

迷いどころは、様式そのものよりも順番のほうです。届出が期限に間に合っていても、課税期間の初日から要件を満たして帳簿を備え付けていなければ、その期は軽減を受けられません。届出書は「これから始めます」という予告ではなく、「初日から要件どおりに運用しています」という前提の上に置く書類だと考えてください。

もう一つが記載欄です。税法欄、名称等欄、備付け及び保存に代える日、ソフトの欄——どれも小さな欄ですが、書き方を誤ると対象の範囲がずれます。国税庁は届出書の記載要領と要件判定チェックシートを別に公開していますので、迷ったらこの2つを開くのが早道です。

この記事では、様式の選び方から各欄の埋め方、提出したあとにソフトを変えたときの扱いまで、届出まわりの手続きに絞って整理します。制度の当てはめは会社ごとに事情が異なりますので、最終的な判断は顧問税理士や所轄の税務署にご確認ください。

この記事でわかること

  • 使う様式はどれか(H4-1・H4-9と、令和9年から始まる様式の違い)
  • 「あらかじめ」とはいつまでか、どこへ・どうやって出すか
  • 届出書の各欄に何を書くか(税法・名称等・備付け開始日・ソフト)
  • 出したあとにソフトを変えた、法人成りしたときの扱い

そもそも優良な電子帳簿の届出とは|出さなければ軽減は受けられません

優良な電子帳簿の届出書とは、要件を満たした帳簿を保存していることを、あらかじめ税務署へ知らせておく書類です。許可や承認を求める手続きではありませんが、この届出書を出していない期は、要件を満たしていても過少申告加算税の軽減を受けられません

軽減の中身は、その帳簿に関連する過少申告があった場合に、過少申告加算税の割合が原則10%から5%に下がるというものです(国税庁「優良な電子帳簿のススメ!」令和6年9月)。ただし、税額の計算の基礎となるべき事実に隠蔽または仮装されたものがあるときは対象外です。あくまで、うっかりの入力誤りに備える制度という位置づけになります。

そもそも帳簿や書類のデータ保存に何が義務で何が任意なのか、という土台の部分が曖昧なままだと、この届出の位置づけもつかみにくくなります。制度全体の区分と、法人・個人事業者が対応を求められる電子取引データ保存については、電子帳簿保存法とは?|中小企業がやるべき対応をやさしく解説で解説していますので、そちらを先に読んでいただくと整理しやすくなります。

届出書について、最初に押さえておきたい条件が一つあります。国税庁の記載要領は、この届出書は「適用を受けようとする税目に係る全ての特例国税関係帳簿」を要件に従って保存する場合に提出することができる、と書いています。つまり、対象の帳簿のうち一部だけが優良な電子帳簿という状態では、そもそも届出書を出せる状態にありません。範囲の確定が、届出の前段にあたります。

なお、令和3年度の改正前に承認を受けていた場合でも、この届出書は別に提出する必要があります。以前の承認がそのまま引き継がれるわけではありません。

参考(国税庁):優良な電子帳簿のススメ!(令和6年9月)国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出(手続案内)

使う様式|法人も個人事業者もH4-1が基本です

国税庁の様式ページには、電子帳簿保存法関係の届出書が並んでいます。名前が長く似ているため、どれが優良な電子帳簿のものか見分けにくいので、下の表で用途ごとに整理します。

様式 名称 どんなときに使うか
H4-1 国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書 優良な電子帳簿の適用を受けるときの基本の様式(法人を含む)
H4-9 国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る65万円の青色申告特別控除・過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書(個人事業者用) 個人事業者用。青色申告特別控除とあわせた様式
H4-3 変更届出書 届け出た内容(使用するシステムなど)を大きく変えたとき
H4-2 取りやめの届出書 優良な電子帳簿の適用をやめるとき
H4-10 取りやめの届出書(個人事業者用) 個人事業者が適用をやめるとき
H4-4 電子取引の取引情報に係る電磁的記録に係る重加算税の加重措置の不適用の特例及び75万円の青色申告特別控除(個人事業者)の適用を受ける旨の届出書 デジタルシームレス保存用(施行は令和9年1月1日)。優良な電子帳簿の届出とは別物

見分けるときに気をつけたいのは、いちばん下のH4-4です。様式名に「75万円の青色申告特別控除」と入っているため、個人事業者が思わず選びそうになりますが、これはデジタルシームレス保存によって重加算税の加重措置の不適用を受けようとする場合の届出書です。優良な電子帳簿の届出で使うのはH4-1のほうになります。

なお75万円の青色申告特別控除は、デジタルシームレス保存だけの効果ではありません。「優良な電子帳簿」または「デジタルシームレス保存」のいずれかの要件を満たしたうえで電子申告すれば適用されます(令和9年分以後の所得税)。国税庁は、優良な電子帳簿で65万円の青色申告特別控除を受けている個人事業者は、改めて届出書を提出しなくても75万円の適用が受けられるとしています。

個人事業者の方が迷いやすいのがH4-9です。これは「65万円の青色申告特別控除だけを受けたい」場合か、「65万円控除と過少申告加算税の特例を1枚でまとめて届け出たい」場合の様式です。H4-1を提出すれば、青色申告の承認を受けている個人事業者は65万円控除もあわせて適用でき、H4-9を出す必要はありません。取りやめるときも、H4-1を出していればH4-2を使います。

デジタルシームレス保存は、令和7年度税制改正で新設され、施行は令和9年1月1日です。請求書等の電子取引データを自動で保存し、帳簿に自動連携する仕組みを使うことで、重加算税の10%加重の適用対象から外れます。ここは施行日と適用の開始がずれる点に注意が要ります。加重措置の不適用は令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されるため、個人事業者は令和8年分の所得税・消費税から対象になります。青色申告特別控除の75万円のほうは、令和9年分以後の所得税からです。優良な電子帳簿とは要件も様式も別で、いま届出を検討している会社が混同する必要はありません。

参考(国税庁):H4 届出等の様式(電子帳簿保存法関係)電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?(令和8年6月)

いつまでに、どこへ、どうやって出すか

期限|「あらかじめ」は法定申告期限までと取り扱われます

条文上の期限は「あらかじめ」とだけ書かれていますが、実務上の締切ははっきりしています。国税庁の取扱通達と届出書の記載要領は、適用を受けようとする国税に係る法定申告期限までに提出した場合には、あらかじめ届出書を提出したものとして取り扱うとしています。

具体例で言うと、個人事業者が令和8年分から優良な電子帳簿の適用を受けたい場合、届出書の提出は令和9年3月15日までとなります(国税庁「電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?」令和8年6月)。1年分の帳簿を運用したあと、申告のタイミングまでに出せば間に合う、という時間の流れです。

ただし、この「間に合う」は届出書だけの話です。帳簿そのものは、その課税期間の初日から要件を満たして備え付けていなければなりません。時間軸にすると次のようになります。

届出までの時間軸

1課税期間の初日この日から、対象の帳簿すべてを要件どおりに備え付ける
2期中日々の取引をソフトに記録し続ける(後からまとめて作らない)
3課税期間の末日初日から通して要件を満たしていたかが問われる
4法定申告期限この日までに届出書を提出すれば「あらかじめ」の扱い

裏を返すと、期首を過ぎてから制度を知った場合、その期の届出は間に合いません。次の課税期間の初日を切替の目標日に置き、そこから逆算して準備を進めることになります。

提出先|納税地等の所轄税務署長へ。便宜提出の枠はあります

提出先は、納税地等の所轄税務署長です。法人の場合は、本店(主たる事務所)の所轄税務署長へ、法人自体が提出します。各事業所の長は保存義務者に該当しないため、事業所ごとに出すことはできません。

ここで一つ、国税庁の一問一答がわざわざ取り上げている論点があります。納税地がA市にあり、会社の実体がB市にある場合に、B市を所轄する税務署長を経由して提出することはできません。同様に、グループ法人4社が親会社の開発したシステムで帳簿を作成している場合でも、子会社の届出書を親会社の納税地の所轄税務署長を経由して提出することはできません。窓口の近さやシステムの共通性は理由にならず、各社がそれぞれ自分の納税地の所轄税務署長へ出す、という原則です。

税務署長ではなく税関長が提出先になる場合もあります。消費税法第30条第7項に規定する帳簿(同条第8項第3号に掲げるものに限ります)と、同法第58条に規定する帳簿(課税貨物の保税地域からの引取りに関する事項の記録に係るものに限ります)については、納税地等を所轄する税関長が提出先です。輸入取引がある会社は確認してください。

提出方法|e-Taxが案内されていますが、書面でも提出できます

国税庁の手続ページは「パソコンからe-Taxソフトで届出書を作成の上、e-Taxにより提出してください」と案内しつつ、「書面で届出書を作成の上、提出することもできます」とも注記しています。e-Taxが必須ではありません。e-Taxを初めて利用する場合は、利用者識別番号の取得が必要になります。

同じ手続ページには、後述する要件判定チェックシートと、JIIMAサイトの「電子帳簿ソフト認証リスト」へのリンクが置かれています。「届出書の提出に当たっては、以下のチェックシートを活用し、優良な電子帳簿の要件をご確認ください」という案内も出ていますので、届出の前にこのページを一度開いておくと迷いが減ります。

参考(国税庁):電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月)電子帳簿保存法取扱通達

この記事の内容を、社内で共有できる資料にまとめています。

資料をダウンロード

届出書に何を書くか|欄ごとの要点

届出書はA4で1枚です。記入量は多くありませんが、欄の意味が分かりにくいところがあります。国税庁が公開している記載要領をもとに、欄ごとに何を書くのかと、つまずきやすい点を並べます。

書くこと つまずきやすい点
提出理由 所轄外税務署長を経由して提出する場合に、その理由 経由しない場合は記入不要
根拠税法 適用を受けようとする帳簿の保存義務等を規定している税法に「1」 帳簿の行ごとに記入する。法人税法と消費税法(又は所得税法と消費税法)など複数の税法にまたがる帳簿は、該当するそれぞれの税法に「1」を記入する
名称等 「総勘定元帳」「仕訳帳」以外の特例国税関係帳簿(補助帳簿等)の名称 適用を受けようとする税目に係る全ての帳簿について記載する。名称では書けない場合は、保存義務等を規定している税法の条項を書く
備付け及び保存に代える日 原則として課税期間の初日 初日以外の日にする場合は、その理由を「2⑵ その他参考となる事項」欄に記載する(記載例:「○年○月○日に開業する予定のため。」)
2⑴ プログラム(ソフトウェア)の概要 メーカー名・商品名 市販の場合はJIIMA認証を受けているかどうかの区分に応じて記載。自己開発ならその旨、委託開発ならその委託先を書く
2⑵ その他参考となる事項 備付け開始日が初日でない理由など 令和3年度改正前の承認済帳簿について改正後の要件で保存する場合は、取りやめようとする承認済国税関係帳簿の種類等を記載する(この場合、改めて承認取りやめの届出書を提出する必要はありません)

この表のなかで取りこぼしが出やすいのは「名称等」欄です。総勘定元帳と仕訳帳以外の補助帳簿を、適用を受けようとする税目に係る全部について書く必要があるためです。売上帳、仕入帳、経費帳、売掛帳、買掛帳、受取手形記入帳、支払手形記入帳、貸付帳、借入帳、未決済項目に係る帳簿、固定資産台帳、繰延資産台帳といったものが該当します。所得税では賃金台帳、法人税では有価証券受払い簿も具体例として挙げられています。

ここで安心していただきたいのは、この具体例を全部作らなければならないわけではない点です。国税庁も「ご自身が作成されている帳簿のうち、上記の具体例に該当するものについて、要件を満たしていただければ大丈夫です」と明記しています。手形を扱っていない会社が、届出のために受取手形記入帳を新しく作る必要はありません。自社が実際に作っている帳簿を漏らさず書く、という趣旨です。

「備付け及び保存に代える日」も、意味を取り違えやすい欄です。ここは届出書を出す日ではなく、帳簿を電子データでの備付け・保存に切り替える日を書きます。原則は課税期間の初日ですので、多くの会社は次の期首の日付を記入することになります。

参考(国税庁):H4-1 届出書の記載要領優良な電子帳簿のススメ!(令和6年9月)

出す前に確認する|国税庁の要件判定チェックシート

届出書を出す前に、要件を満たしているかを自分で確かめられる資料が用意されています。国税庁の「優良な電子帳簿の要件判定チェックシート」で、H4-1の手続ページからダウンロードできます。国税庁も「届出書の提出に当たっては、以下のチェックシートを活用し、優良な電子帳簿の要件をご確認ください」と案内しています。要件そのものの意味——訂正・削除の履歴とは何か、帳簿の相互関連性とは何かは、優良な電子帳簿とは?|過少申告加算税5%軽減の要件と対象の帳簿で整理しています。

構成は、基本項目4つ(届出書の提出/課税期間の初日から対象帳簿の全てを電子帳簿で備え付けている/最初の記録段階から一貫して明細データで作成・保存している/青色申告者が備え付けるべき対象帳簿を電磁的に記録・保存している)と、個別項目4分野(システム関係書類の備付け/帳簿データの検索・表示・出力機能/訂正・削除および追加入力の履歴/帳簿間の関連性)です。すべての項目が「適」になる必要があります。

それぞれの分野には、市販ソフトなら不要になる書類、空欄(Null値)を対象とした検索、訂正削除の履歴を残す3つの方式、転記の仕方で変わる関連性の確認方法など、実際に手を動かすと迷う点がいくつもあります。1項目ずつの判定は、優良な電子帳簿の要件チェックシート|エクセルや記帳代行でも使えるかで整理しました。一部をエクセルで作っている場合や、記帳代行に出している場合にどこを確かめるかも、そちらにまとめています。

参考(国税庁):優良な電子帳簿の要件判定チェックシートH4-1 届出手続のページ

進め方|実行手順

届出までの手順を5つの段階に分けます。先にソフトを選ぶのではなく、先に帳簿を棚卸しする順番にすると、手戻りが少なくなります。

STEP1:適用を受ける税目を決め、対象になる帳簿を洗い出す

経理担当者が、法人税と消費税(個人事業者なら所得税と消費税)のどの税目で適用を受けるかを先に決め、その税目に係る帳簿を一覧にします。総勘定元帳・仕訳帳のほか、売上帳・仕入帳・経費帳・売掛帳・買掛帳・固定資産台帳など、自社が実際に作っているものを漏れなく拾ってください。完了の目安は、届出書の「名称等」欄にそのまま書き写せる帳簿名の一覧ができていることです。注意点は、支店や現場事務所で別に付けている帳簿を数え落とさないこと。事業所単位で作成しているものも対象に含まれます。

STEP2:使っている会計ソフトがJIIMA認証を受けているか確認する

自社のソフトが要件を満たすか分からない場合は、まず取扱説明書等を確認します。JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)が認証したソフトウェア等は、優良な電子帳簿の機能要件を満たしているといえます。

認証されたソフトはパッケージ等に認証ロゴが印字され、JIIMAのホームページの認証製品一覧表に掲載されており、取扱説明書等に認証番号が記載されています。完了の目安は、メーカー名・商品名・認証の有無をメモできていること。

届出書のソフト欄にそのまま使います。ただし国税庁も注記しているとおり、認証ソフトが自社の作成している帳簿に対応しているかは別途確認が必要で、機能要件のほかにシステムの説明書やディスプレイの備付け等の要件も満たす必要があります。

STEP3:要件判定チェックシートで全項目が「適」になるか確かめる

経理担当者と、会計ソフトの操作を分かっている人の2人で、チェックシートの基本項目4つと個別項目4分野を上から埋めていきます。判断できない項目は、ソフトのサポート窓口や導入業者へ確認してください。完了の目安は、すべての項目が「適」になること。1つでも「否」が残る状態で届出書を出しても軽減は受けられませんので、ここは飛ばさずに通してください。記帳を会計事務所へ委託している場合は、この段階で委託契約書の有無も確認します。

STEP4:課税期間の初日から要件どおりの運用を始める

切替の目標日を、次の課税期間の初日に置きます。期の途中から始めても、その期は適用を受けられないためです。日々の取引がソフト上に積み上がっている状態を期首から作ることが目的で、決算作業でまとめて入力する運用のままでは要件を満たしません。完了の目安は、初日以降、対象帳簿のすべてがソフト上で動いていること。紙の伝票が残っている場合は、いつソフトへ入力するかまで含めて社内の手順を決めておきます。

STEP5:届出書を作成し、法定申告期限までに所轄税務署長へ提出する

H4-1を、e-Taxソフトまたは書面で作成します。法人は本店(主たる事務所)の所轄税務署長へ、法人自体の名義で提出します。書面で出す場合の送付先は業務センターで、税務署の窓口や時間外収受箱へ提出することもできますが、業務センターへ直接持ち込むことはできません。完了の目安は、提出が済んでいること。e-Taxなら受信通知、書面なら控えを保管しておきます。注意点は、納税地と会社の実体が別の市にあるだけの場合や、グループ各社が親会社の納税地を経由する場合は、便宜提出に当たらない点です。各社が自分の納税地の所轄税務署長へ出します。

帳簿の電子化まで手が届いた会社は、次に請求や経費精算といった隣の業務が気になり始めます。どの業務から順に手を付けるかの全体像は、中小企業の業務効率化で整理していますので、社内の優先順位を決めるときにご覧ください。

参考(国税庁):電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月)電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?(令和8年6月)

制度の当てはめから社内への落とし込みまで、右腕として伴走します。

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落とし穴|届出だけ間に合っても使えないケース

届出まわりでつまずくのは、書き方そのものよりも前提条件のほうです。届出書を法定申告期限までに出しても、帳簿が課税期間の初日から要件を満たしていなければ、その期は適用を受けられません。取扱通達は、課税期間を通じて要件を満たして保存等を行っていなければ、その課税期間について軽減措置の適用はないと明記しています。自社で判定できるように、よくある4つの状況を整理します。

つまずき 何が起きるか どうするか
期の途中で制度を知り、そこから切り替えた 課税期間の初日から要件を満たしていないため、その期は適用を受けられない 次の課税期間の初日を切替日に定め、届出書の「備付け及び保存に代える日」にその日を書く
対象帳簿の一部だけを優良な電子帳簿にした 適用を受けようとする税目に係る全ての帳簿が対象のため、届出書を提出できる状態にない STEP1の棚卸しに戻り、支店・現場事務所の帳簿も含めて範囲を確定させる
補助的なノート等をもとに、期末後にまとめて帳簿を作成した 優良な電子帳簿の機能を備えた状態で保存されていても、課税期間の初日から備付けをしていたことにはならない 日々の記録がソフト上に積み上がる運用へ改め、次の期首から始める
実体のある市の税務署やグループの親会社を経由して提出した 便宜提出は「一の納税者が複数の納税地等を有している場合」を想定したもので、この2つは当たらない 各社が自分の納税地等の所轄税務署長へ、それぞれ提出する

この4つに共通しているのは、いずれも「届出書の書き方」では取り返せない点です。届出は最後の手続きであって、勝負がつくのはその前の範囲と時期の決め方にあります。

なお、開業初年度の個人事業者には例外があります。不動産所得・事業所得・山林所得のいずれの業務も行っていなかった個人が年の中途に業務を開始した場合は、例外的に課税期間の中途の日が備付け開始日になるため、その業務開始の日から要件を満たして備付けを始めていれば、その年から適用を受けられます。この場合は届出書の「備付け及び保存に代える日」に開業日を書き、「その他参考となる事項」欄に理由を記載することになります。

また、実際に修正申告や更正が起きた場面で軽減を受けるには、その課税期間の初日から引き続き要件を満たしている必要があります。何か起きてからさかのぼって整えることはできませんので、平時のうちに済ませておく制度だと考えてください。

参考(国税庁):電子帳簿保存法取扱通達電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月)

出したあとに変わったとき|変更・承継・取りやめ

届出は一度出したら終わり、というわけではありません。会計ソフトを乗り換えた、法人成りした、といった出来事があったときに手続きが要るかどうかを、下の表にまとめます。

出来事 手続き
市販の会計ソフトを別の製品に変えた 変更届出書が必要(例示。ただし現金出納帳など特例国税関係帳簿に該当しない帳簿だけに関わる変更なら不要)
同じソフトのバージョンアップ 変更届出書は不要
訂正・削除の履歴の確保、帳簿間の相互関連性の確保、検索機能の確保に係るシステムの大幅な変更 変更届出書が必要
令和5年度税制改正で対象帳簿の範囲が変わり、旧要件で届出済みだった帳簿の一部が対象外になった 変更届出書は不要
有限会社から株式会社への組織変更 届出書の効力はそのまま引き継がれる
個人事業から法人成りした 効力は承継されないため、法人として改めて届出書を提出する
合併または営業譲渡があった 届出書の効力は承継されない
優良な電子帳簿の適用をやめる 取りやめの届出書を提出する
取りやめたあと、再び適用を受けたい 改めて特例適用届出書を提出する

この表で押さえておきたいのは、上の2行の違いです。いわゆる同一ソフトのヴァージョンアップは、変更届出書が必要な「システムの大幅な変更」には含まれません。一方で、使用していた市販の会計ソフトそのものを変更した場合は含まれます。ソフトの入れ替えを検討するときは、変更届出書のことも合わせて予定に入れておいてください。

法人成りの扱いも見落としやすいところです。同じ事業を、同じ会計ソフトで、同じ担当者が続けていても、個人時代に提出した届出書の効力は法人に承継されません。改めて法人として提出する必要があります。

なお、取りやめの届出書を出した後も、電子帳簿としての保存要件を満たしていれば、電磁的記録のまま保存を続けて構いません。満たせない場合は、書面(紙)に出力して保存することになります。

参考(国税庁):電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月)H4 届出等の様式(電子帳簿保存法関係)

活用事例|届出の場面別(ケース別)

同じ「届出書を出したい」でも、税目のまたがり方や記帳の体制によって、先に確認すべきところが変わります。以下は、制度の当てはめ方を理解していただくための想定例で、実在の会社ではありません。

ケース1|法人税と消費税の両方で適用を受けたい従業員20名ほどの製造業(想定例)

最初に決めるのは税法欄です。法人税法と消費税法の両方で保存義務が規定されているため、届出書では該当するそれぞれの税法に「1」を記入することになります。あわせて注意したいのが名称等欄で、税目ごとに対象になる帳簿が変わる点です。賃金台帳は法人税では対象外でも、通勤手当のように消費税の課税仕入れに該当するものを管理していれば、消費税に関する対象帳簿になります。棚卸しは税目ごとに行ってください。

ケース2|記帳を会計事務所へ委託している会社(想定例)

確認の起点はチェックシートの個別項目1です。システム処理を記帳代行業者等に委託している場合、その委託契約書を備え付けていることが求められます。あわせて、操作説明書の備付けは「入力を他に委託している部分を除く」とされているため、どこまでが自社の入力でどこからが委託かを整理しておくと判定が進みます。届出書のソフト欄には、実際に使われているソフトのメーカー名と商品名を書くことになりますので、事務所側へ確認が必要です。

ケース3|3月決算で、秋になってから制度を知った会社(想定例)

この期の適用は諦め、次の4月1日を切替日に置くのが現実的です。届出書の「備付け及び保存に代える日」に翌期の初日を書き、そこまでの半年間で帳簿の棚卸しとソフトの確認、要件判定チェックシートの通し確認を済ませます。届出書自体は翌期の法定申告期限までに出せばよいため、慌てて先に提出する必要はありません。準備の順番としては、範囲の確定を最優先にしてください。

3つに共通する判断軸は、届出書を書き始める前に「税目」と「範囲」を確定させることです。税法欄も名称等欄も、この2つが決まっていれば機械的に埋まります。逆に、ここが曖昧なまま様式を眺めても手が止まります。

まとめ

  • 使う様式は、法人も個人事業者もH4-1
  • 青色申告の承認を受けている個人事業者がH4-1を出せば、65万円の青色申告特別控除もあわせて適用でき、H4-9は不要になる
  • H4-4はデジタルシームレス保存によって重加算税の加重措置の不適用を受けようとする場合の様式で、優良な電子帳簿の届出とは別物
  • 期限は「あらかじめ」とされているが、適用を受けようとする国税の法定申告期限までに提出すれば、あらかじめ提出したものとして取り扱われる
  • 提出先は納税地等の所轄税務署長。法人は本店の所轄税務署長へ法人自体が提出する
  • 所轄外税務署長を経由する枠は、一の納税者が複数の納税地等を有している場合を想定したもの。納税地と実体が別の市にあるだけの場合やグループ各社は当たらない
  • 記載欄で取りこぼしが出るのは「名称等」と「備付け及び保存に代える日」。前者は適用を受ける税目に係る全ての帳簿を書き、後者は原則として課税期間の初日を書く
  • 書き始める前に国税庁の要件判定チェックシートですべての項目が「適」になるかを確認する。出したあとも、市販ソフトの乗り換えには変更届出書が必要になる

最後に

届出書そのものは1枚で、書く分量も多くありません。それでも実際に手を動かすと、「うちの帳簿はどこまでが対象か」「この運用は期首から要件を満たしていると言えるのか」「記帳を任せている事務所とどう分担するか」といった判断が次々に出てきます。ここは会計ソフトのマニュアルにも国税庁のパンフレットにも書かれていない、その会社固有の話です。

私たちTalent Partner(社長の経営参謀®)は、こうした場面で、帳簿の棚卸しから要件判定チェックシートの通し確認、届出書の準備、経理担当者の日々の運用の組み替えまで、隣に座って一緒に進めます。制度の解説をお渡しして終わりにせず、次の期首に間に合うスケジュールを引き、顧問税理士や記帳を委託している会計事務所との役割分担まで整えるところが仕事だと考えています。

帳簿を電子で持つという話は、突き詰めると、請求から入金・支払までの流れを誰がどこで記録するかという話です。届出の要否をまだ決めかねている段階でも構いません。無料相談で、御社の状況をお聞かせください。

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この記事を書いた人

金井 春樹株式会社TRAVEL LIKE Talent Partner事業部 取締役COO / TAM

前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。

現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。

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