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業務効率化

優良な電子帳簿の要件チェックシート|エクセルや記帳代行でも使えるか

「うちは満たしているのか」——判定は、会計ソフトの中だけでは終わりません

会計ソフトを入れ替える必要はありません。優良な電子帳簿の要件は、ソフトの機能だけで決まるものではないからです。国税庁が公開している要件判定チェックシートを開くと、確かめる場所は「ソフトの機能」「社内に備え付けている書類とルール」「いつから使い始めたか」の3つに分かれています。このうち後ろの2つは、どんなに高機能なソフトを入れても自動では埋まりません。

だから、一部をエクセルで作っている会社や、記帳代行に出している会社が、それだけで対象外になるわけでもありません。国税庁の一問一答は、複数の会計ソフトを併用していても軽減措置が受けられなくなることはないと明記していますし、会計事務所や記帳代行業者への委託そのものも認めています。ただし、確かめる場所と、備え付けておくべき書類が変わります。

そのうえで、チェックシートには厳しい前提が1行だけ書かれています。「以下の項目がすべて『適』となる必要があります」。ほとんどの項目を満たしていても、残った1つが否のままなら軽減は受けられません。だから届出書を出す前に、自社がどこで否になるのかを先に見つけておく価値があります。

この記事は、そのチェックシートを基本項目4つと個別項目4分野に分けて、1つずつ判定していくための記事です。軽減の中身や対象になる帳簿の範囲そのものは、優良な電子帳簿とは?|過少申告加算税5%軽減の要件と対象の帳簿で整理しています。

この記事でわかること

  • 国税庁の要件判定チェックシートの構成と、「すべて適」という前提の意味
  • 個別項目4分野(システム関係書類/検索・表示・出力/訂正削除の履歴/帳簿間の関連性)の判定の勘所
  • 市販ソフト・複数ソフト併用・表計算ソフト・記帳代行という体制別に、どこを確かめるか
  • 順番と時期を間違えると「適」にならなくなる典型と、その避け方

そもそも要件チェックシートとは|届出書とセットで使う判定表

要件判定チェックシートは、優良な電子帳簿の要件を自社が満たしているかを、届出書の提出前に自分で確かめるための国税庁の様式です。国税庁の手続ページには「届出書の提出に当たっては、以下のチェックシートを活用し、優良な電子帳簿の要件をご確認ください」と書かれています。提出が義務づけられた添付書類ではなく、判定のための道具という位置づけです。

作りはA4で2ページ。冒頭に、届出書へ記載した「備付けを開始する日」と「使用するプログラム(ソフトウェア)の名称」を書き写す欄があり、そのうえで判定項目が並びます。届出書に書いた内容とチェックシートの判定が同じ土俵に乗る構成になっている、と理解しておくと迷いません。

判定項目は、大きく2階層です。まず基本項目が4つ、続いて個別項目が4分野。個別項目の4分野は「システム関係書類の備付け」「検索・表示・出力の機能」「訂正・削除および追加入力の履歴」「帳簿間の関連性」で、それぞれの中がさらに細目に分かれています。この記事もこの順番でたどります。

なお、チェックシートの冒頭にある「以下の項目がすべて『適』となる必要があります」という一文は、読み飛ばされがちですが判定の性格を決めています。項目ごとの点数制ではなく、全項目が通って初めて過少申告加算税の軽減(原則10%を5%へ)が使える、という作りです。

なお、この2階層をひと目で追いたいときは、国税庁が「優良な電子帳簿の要件」というページで判定の分岐図を公開しています。帳簿を作る義務があるか、最初の記録段階から一貫してコンピュータで作っているかと順に下りていき、最後に優良の要件(訂正削除の履歴・帳簿間の相互関連性・検索機能)へ分岐する形です。並びは施行規則のイロハ順で、チェックシートの並び(書類→検索→履歴→関連性)とは違うので、突き合わせるときは項目名で対応させてください。

参考(国税庁):優良な電子帳簿の要件判定チェックシート(PDF)優良な電子帳簿の要件(判定の分岐図)過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出(手続ページ)優良な電子帳簿のススメ!(令和6年9月・PDF)

基本項目|ここで否が出たら、機能の話に進む前に止まる

基本項目の4つは、システムの性能ではなく「範囲」と「時期」を問う項目です。ここが否のままだと、後の個別項目をどれだけ丁寧に満たしても軽減にはたどり着きません。まず自社がどう答えるかを、次の表で確認してください。

基本項目 何を問われているか 確かめる場所
過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書を提出している 届出そのものを出しているか 届出書の控え(提出前ならこれから出す)
課税期間の初日から、対象帳簿の全てを電子帳簿で備え付けている 一部の帳簿だけ、期の途中から、では通らない 対象帳簿の一覧と、それぞれの開始時期
最初の記録段階から一貫して電磁的記録(明細データ)で作成・保存している 紙や集計後のデータからの起こし直しになっていないか 入力の入り口(誰が最初にどこへ打つか)
青色申告者が備え付けるべき対象帳簿を電磁的に記録・保存している そもそも備え付けるべき帳簿がそろっているか 帳簿の種類と作成状況

この表で重いのは2つ目と3つ目です。「対象となる帳簿の全て」であって、一部の帳簿だけを優良な形にしても足りません。そして電子帳簿保存法取扱通達8-7は、備付け及び保存に代える日について、課税期間の定めのある国税に係る帳簿は原則として課税期間の初日である、としています。期の途中で思い立って整えても、その課税期間には間に合わない構造になっている、ということです。

3つ目の「最初の記録段階から一貫して」も、実務では見落としがちです。手書きのノートや別の表で受けてから、後で会計ソフトへまとめて入れ直す運用は、この項目の趣旨から外れます。この点は後の「適にならない典型」の章でもう一度扱います。

参考(国税庁):優良な電子帳簿の要件判定チェックシート(PDF)電子帳簿保存法取扱通達(令和7年6月27日付一部改正分まで・PDF)

個別項目①|システム関係書類は「書類の有無」の勝負

1つ目の分野は、システムそのものではなく、システムに関する書類を備え付けているかを問います。ここは機能の話ではないので、判定は速く終わります。チェックシートが挙げているのは次の4つです。

  • システムの概要、システム開発の関連書類を備え付けている(市販のプログラムを使用する場合を除く)
  • 記載項目を最初に入力したシステムから、全ての操作説明書を備え付けている(入力を他に委託している部分を除く)
  • システム処理を記帳代行業者等に委託している場合には、その委託契約書を備え付けている
  • 入出力処理(訂正・削除・追加のための入出力処理を含む)の手順、日程、担当部署、および電磁的記録の保存等の手順と担当部署を明らかにした書類を備え付けている

市販の会計ソフトを使っているなら、1つ目は対象外になります。ただし、除外の分かれ目は「市販かどうか」ではありません。施行規則が除いているのは「保存義務者が開発したプログラム以外のプログラムを使用する場合」で、通達4-5は「保存義務者が開発したプログラム」にはシステム開発業者に委託して開発したものも含まれるとしています。つまりベンダーに発注して作らせたシステムは「市販」ではなく自己開発の側に入り、概要書と開発関連書類が要ります。届出書の記載要領がソフト欄を「市販/自己開発/委託開発」の3区分で書かせているのも、この切り分けに対応しています。

見落とされやすいのは4つ目です。これは、電磁的記録の保存等に関する事務手続を明らかにした書類のことで、要は社内の運用ルールを文書にしたものを指します。そして後の履歴の章で出てくる「入力から1週間以内なら訂正削除の履歴を残さなくてよい」という取扱いの根拠になる内部規程も、この書類と同じものです。別々に2種類そろえる話ではありません。逆に言えば、この書類が無い会社は、履歴の分野で「7日以内なら残さなくてよい」という選択肢が使えなくなります。

参考(国税庁):優良な電子帳簿の要件判定チェックシート(PDF)電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月・PDF)

個別項目②|検索・表示・出力は、帳簿の種類ごとに求められる項目が違う

2つ目の分野が、判定でいちばんズレやすいところです。チェックシートには「取引年月日、取引金額及び取引先名称を設定して検索できる」と簡略化して書かれていますが、通達8-14は「例えば」と断ったうえで、これを帳簿の区分ごとに具体化しています。全ての帳簿に3項目そろっている必要がある、と読むと判定を誤ります。

帳簿の区分 検索の条件に設定できる必要がある記録項目
仕訳帳 取引年月日/取引金額
総勘定元帳 記載年月日/取引金額
補助記入帳(売上帳・仕入帳など) 取引年月日/取引金額/取引先名称
補助元帳(売掛金元帳・買掛金元帳など) 記録または取引の年月日/取引金額/取引先名称
固定資産台帳、有価証券受払い簿(法人税のみ)、賃金台帳(所得税のみ)など、資産名や社員名で区分して記録している帳簿 資産名または社員名

この表から読み取れるのは、仕訳帳には取引先が挙がっておらず、総勘定元帳は「取引年月日」ではなく「記載年月日」だ、ということです。総勘定元帳の記載年月日について、令和8年7月版の一問一答(問33)は、仕訳帳から個々の取引を転記しているなら転記した取引の取引年月日、一定期間の合計金額を転記しているなら複式簿記の原則に従って処理される日や、簡易帳簿への記帳が行われる日(集計対象とした期間の末日など)が記載年月日になる、と説明しています。固定資産台帳のように資産名で区分している帳簿なら、資産名で探せることが求められます。

チェックシートはこのほかに、検索項目について記録事項のないデータ(Null値・空白)を対象にした検索ができること、そしてディスプレイとプリンタと操作説明書を備え付けて、整然とした形式・明瞭な状態ですみやかに出力できることを挙げています。前者は通達8-13が「検索項目について記録事項がない電磁的記録を検索できる機能を含む」としている点に対応します。

そのうえで、機能面には二者択一の逃げ道が用意されています。

検索機能は、AとBのどちらかを満たせばよい

A:ダウンロードの求めに応じる

税務調査等の際に、帳簿データのダウンロードの求めに応じられるようにしておく
この場合、範囲を指定する機能と組み合わせて条件設定する機能は不要になる

提出は通常出力できるファイル形式(CSV形式等)で
形式や並び順に決まりはないが、検索性等の劣る形は認められにくい

B:範囲指定と組合せ検索を備える

事業年度ごとに範囲を指定して条件設定ができる
課税期間ごとに日付または金額の任意の範囲を指定でき、探し出された記録事項のみが画面と書面に出力されること

二以上の任意の検索項目を組み合わせて条件設定ができる
取引年月日・取引金額・取引先から任意の二項目を選び、いずれの組合せでも設定できること

注意したいのは、二者択一になるのは範囲指定と組合せの2つだけだという点です。施行規則が除いているのは検索機能の要件のうち「(2)及び(3)に係る部分に限る」とされており、取引年月日・取引金額・取引先を検索の条件として設定できること自体は、どちらを選んでも必要です。上の帳簿区分ごとの表は、この常に必要な部分の話です。

Bを選ぶ場合の組合せについて、通達8-16は「少なくとも二の記録項目を任意に選択して」「いずれの二の記録項目の組合せによっても」条件設定できることを求めています。一問一答(問32)は、「AまたはB」という択一の組合せまでは必要ないとしたうえで、Aで検索した結果をさらにBで絞り込む段階的な検索でも要件を満たす、と説明しています。

Aを選ぶ場合に注意したいのが、その求めへの応じ方です。通達8-18は、ダウンロードの求めに一部でも応じない場合はこれらの規定の適用を受けられないとし、さらに一部でも応じず、かつ検索機能の確保に関する要件の全て、または優良な電子帳簿に関する要件が備わっていなかった場合には、その電磁的記録は国税関係帳簿とはみなされない、としています。提出は税務職員の求めた状態で行う必要があります。

加えて、画像ファイルやPDF形式に変換して保存しているものは、一問一答(問22)が「一般的には、検索性等の劣るもの」とし、CSV等も併せて保存しているなどの特段の事情がない限り、ダウンロードの求めに応じられるようにしているとは認められないとしています。

この問いは最低限の要件を満たす電子帳簿を念頭に置いたものですが、求められている機能は同じなので、優良のAを選ぶ場合にも同じ趣旨が及びます。紙の代わりにPDFで残している会社は、ここで否になります。

参考(国税庁):電子帳簿保存法取扱通達(令和7年6月27日付一部改正分まで・PDF)電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月・PDF)

この記事の内容を、社内で共有できる資料にまとめています。

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個別項目③|訂正・削除の履歴と、遅れて入力した事実の確認

3つ目の分野は2つの問いに分かれます。1つは「直した跡が残るか」、もう1つは「遅れて入れた事実が分かるか」です。順に見ます。

まず訂正・削除の履歴です。通達8-8は、ここでいう訂正または削除は直接データを変更することだけを指すのではなく、同じ効果を生じさせる新たな記録(いわゆる反対仕訳)を追加することも含む、としています。そのうえで通達8-9が履歴の残し方を2つ例示していて、チェックシートのA・Bはこれに対応します。

訂正・削除の履歴を確保する3つの形

A|自動的に記録される
直接に訂正・削除できるが、その事実と内容が自動的に記録されるシステムを使う
B|反対仕訳で行う
直接には訂正・削除できないシステムで、当初のデータを特定できる情報を付けた新しい記録を追加する
C|A・B以外の方法
上の2つに当てはまらない方法で、最初に入力した時点からの訂正削除の事実と内容が確認できるようにする

Bの反対仕訳について、一問一答(問26)は、直接に訂正・削除できないシステムを使っていて、その反対仕訳に当初の仕訳を特定できる情報が付加されていれば、貸借の勘定科目は同一のまま金額をマイナスで入力する方法も一類型として認められるとしています。総額方式か純額方式かといった仕訳の方法までは限定されていません。

そして実務でよく質問が出るのが、いわゆる7日ルールです。通達8-10は、訂正・削除を行うための期間が「入力した日から1週間を超えない」場合で、かつ電磁的記録の保存等に関する事務手続を明らかにした書類にその期間の定めがあるときは、その期間について履歴を残さないシステムでも要件を満たす、としています。

一問一答(問27)も、あらかじめ内部規程等に定められていることを条件に挙げ、システムの例として、当初の入力日から期間を自動判定して期間内の訂正削除は履歴を残さないもの、期間内は直接訂正でき期間経過後は反対仕訳でしか直せないものを挙げています。ルールと機能の両方がそろって初めて認められる、という点が肝心です。

なお問27の注は、履歴を残す必要があるのは各税法で定められている記載事項に係る電磁的記録だとしたうえで、固定資産台帳の期首帳簿価額や当期償却額は、事後検証の観点から記録することが望ましいものの法令上求められている記載事項には該当せず、それらの訂正削除履歴が記録されていないことをもって優良な電子帳簿に該当しないと判断されるものではない、としています。

もう1つの「遅れて入力した事実の確認」は、通常の入力期間を過ぎて入力したことが分かるかを問います。ここもA・B・Cの3つの形があります。

  • A:入力年月日の情報を自動的に付加する(付加した情報を訂正・削除できない)システムを使う
  • B:個々のデータを特定できる情報(一連番号・伝票番号など)を自動的に付加する(付加した情報を訂正・削除できない)
  • C:上記A・B以外の方法

チェックシートを読むと、「付加した情報を訂正・削除できない」という条件が付いているのはAとBだけで、Cには付いていません。通達8-11も、入力時に個々の記録事項へ入力日または一連番号等が自動的に付され、それを訂正・削除できないシステムなら要件を満たす、としています。入力日をデータとして持たない場合でも、一問一答(問28)は、月次決算単位でファイルに保存し、その単位ごとに出力でき、入力月と取引年月日の関係から追加入力の事実が確認できるなら要件を満たす、としています。

では「通常の期間」はどこまでか。一問一答(問29)は、業務処理サイクルとしてデータの入出力を行う日次・週次・月次の期間だとしたうえで、1年間分がまとめて課税期間終了後に記録されるケースを予定したものではないが、外部委託やバッチ処理の場合などは最長2か月までの業務処理サイクルであれば通常の期間として取り扱う、としています。問30も、優良な電子帳簿の入力期間について同じく最長2か月と説明しています。

参考(国税庁):電子帳簿保存法取扱通達(令和7年6月27日付一部改正分まで・PDF)電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月・PDF)

個別項目④|帳簿間の関連性は、転記の仕方で確認の方法が変わる

4つ目の分野は、ある帳簿の記録と別の帳簿の記録が、同じ取引のものだと相互に確認できるかを問います。チェックシートは転記の仕方で2つに分けています。

  • 個別転記・合計転記による記帳の場合:一連番号、伝票番号等により相互に確認できること
  • 集計転記による記帳の場合:摘要欄等に集計対象項目および集計範囲が正確に記録されて確認できること

通達8-12も同じ考え方で、一方の帳簿の記録事項(個々の記録事項を合計したものを含む)が他方へ個別転記される場合は「相互の記録事項が同一の取引に係る記録事項であることを明確にするための一連番号等の情報」、一方の個々の記録事項が集計されて他方へ転記される場合(個別転記に当たる場合を除きます)は「どの記録事項を集計したかを明らかにする情報」が記録されるときは要件を満たすものとして取り扱う、と例示しています。一問一答(問31)にも、この確認方法が図で示されています。

ここで前の章とつながる点が1つあります。通達8-14の注は、一連番号等により帳簿間の関連性の要件を確保している場合には、その一連番号等で検索できるときも検索の要件を充足する、としています。関連性のために振った一連番号が、そのまま検索要件の答えにもなるという構造です。判定でこの分野が通っている会社は、検索の分野も見直す価値があります。

参考(国税庁):電子帳簿保存法取扱通達(令和7年6月27日付一部改正分まで・PDF)電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月・PDF)

進め方|チェックシートで判定する手順

4分野の内容が分かったら、あとは順番です。機能から見ると迷子になりやすいので、範囲と時期から確定させていきます。

チェックシートで判定する順番

対象帳簿と開始日を書き出す範囲と時期が先。ここが抜けると後の判定が無駄になる
帳簿・ソフト・担当を対応させる届出書に書くプログラム名もここで決まる
4分野を機能と書類の両面で判定する「たぶんできるはず」で適を付けない
否の項目に対処と時期を決める機能不足なら次の課税期間の初日が期限

STEP1:対象になる帳簿と、備付けを開始する日を書き出す

まず経理担当者が、青色申告のために備え付けている帳簿を種類ごとに書き出します。仕訳帳、総勘定元帳、補助記入帳、補助元帳、固定資産台帳といった単位で並べ、それぞれ「いつから電子で作っているか」を横に書き添えてください。完了条件は、対象帳簿の一覧と開始時期が1枚に収まっていることです。ここで抜けている帳簿があると、基本項目の「全て」で否になるため、後の判定がすべて無駄になります。

STEP2:どの帳簿を、どのソフトで、誰が作っているかを一覧にする

次に、帳簿ごとに使用しているソフト名と、入力している人(自社の担当者か、記帳代行か)を対応させます。届出書に書く「使用するプログラムの名称」もここから決まるため、正式名称で書いておくと後が楽です。完了条件は、すべての帳簿にソフト名と担当が埋まっていること。表計算ソフトや手元のノートが混ざっている行があれば、印を付けておいてください。次のSTEPで確認する場所が変わります。

STEP3:個別項目の4分野を、機能と書類の両面から判定する

STEP2の一覧を横に置いて、システム関係書類・検索・履歴・関連性の順に判定します。検索と履歴はソフトのマニュアルやベンダーの案内で確認し、システム関係書類と1週間ルールの内部規程は、社内のファイルを実際に開いて存在を確かめます。「たぶんできるはず」で適を付けないことが、この工程で唯一のコツです。完了条件は、チェックシートの各欄に適か否かが入り、否の欄には理由が一言添えられている状態です。

STEP4:否が残った項目を、いつから直すかまで決める

最後に、否の項目ごとに対処と時期を決めます。書類やルールの不足なら短期間で埋められますが、ソフトの機能が足りない場合は入れ替えの検討になり、その場合は次の課税期間の初日に間に合うかが判断の分かれ目になります。完了条件は、否の項目それぞれに「誰が・いつまでに・何をするか」が決まっていることです。ここまで来てから届出書に取りかかると、書きながら悩む時間がなくなります。届出書そのものの書き方は、優良な電子帳簿の届出書の書き方|いつまでに、どこへ、何を書くかにまとめています。

制度の当てはめから社内への落とし込みまで、右腕として伴走します。

相談してみる

「適」にならない典型|落とし穴は機能ではなく、運用と時期

要件を満たせない理由として多いのは、ソフトの性能不足よりも、始めた時期と日々の運用です。次の項目に心当たりがあれば、機能の判定より先にここを片付けてください。

順番と時期で「適」にならない典型

  • 課税期間の初日から備え付けていない
    課税期間の定めのある国税に係る帳簿は、原則として課税期間の初日が起点
  • 課税期間終了後に、まとめて帳簿を作り直した
    初日から要件を満たして備え付けていたことにはならない
  • 記帳代行へ、課税期間終了後にまとめて記帳することを委託している
    課税期間中に記帳しない委託の方法は認められない
  • 帳簿の保存場所を記帳代行業者の所在地にしている
    保存場所は各税法で定められており、業者の所在地にはできない
  • システム変更前のデータを、書面に出力して保存した
    軽減措置を受けようとする帳簿では、この取扱いによることはできない

いちばん上の2つは、同じ根の問題です。補助的にノート等を作り、それを基に課税期間終了後に別途、青色申告関係帳簿等を作成した場合について、一問一答(問42)の注は、それが優良な電子帳簿としての機能を備えた状態で保存等されていたとしても、課税期間の初日から要件を満たして備付けをしていたことにはならず、適用を受けることはできないとしています。期の途中で気づいたら、その課税期間ではなく次の課税期間の初日を狙う、というのが現実的な進め方です。

最後の1つは見落とされやすい落とし穴です。通達8-21は、システム変更を行った場合、変更前のシステムに係る電磁的記録も原則として要件に従って保存等をしなければならないとしたうえで、困難と認められる事情があるときは書面に出力して保存することを認めています。

ところがその注で、過少申告加算税の軽減措置の適用を受けようとする保存義務者の帳簿については、書面に出力し保存する取扱いによることはできないと明記されています。一般の電子帳簿では使える逃げ道が、優良では使えません。では旧データをどうするか。一問一答(問14)は、変更前のシステムを用いることなどで検索機能が確保されているのであれば、いま使っているシステムで検索できなくても差し支えないとしています。

乗り換えの答えは「旧システムを消さずに残す」です。ただし、検索に使う電磁的記録が、適用を受けて保存している電磁的記録と同一のものであることを確認できるようにしておく必要があります。

なお例外もあります。一問一答(問44)は、不動産所得・事業所得・山林所得のいずれの業務も行っていない個人が年の中途に業務を開始した場合、課税期間の中途の日が備付け開始日になるため、その業務開始の日から要件を満たしていればその年から適用を受けられるとしています。この場合の届出書の提出期限は、その年分の所得税の法定申告期限までです。

参考(国税庁):電子帳簿保存法取扱通達(令和7年6月27日付一部改正分まで・PDF)電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月・PDF)

活用事例|体制別に見た、確かめる場所(ケース別)

同じチェックシートでも、経理の体制によって重点が変わります。自社に近いケースから読んでください。

ケース1|市販の会計ソフト1本で完結している

チェックシートは、システムの概要や開発の関連書類について「市販のプログラムを使用する場合を除く」としているため、この欄は対象外になります。判定の重心は、検索・履歴・関連性の機能がそのソフトで実際に働いているかと、1週間ルールを使うなら内部規程が文書としてあるかの2点に移ります。機能の確認は、国税庁の手続ページからたどれる電子帳簿ソフト認証リストで、使っているソフトが該当するかを見るのが早道です。ただし国税庁は、JIIMAが認証した電子帳簿ソフトは「優良な電子帳簿」の機能要件を満たしたものだとしたうえで、事務手続関係書類の備付けなど機能以外の要件も満たす必要があること、認証ソフトが自社の作っている帳簿に対応しているかも別途確認することを求めています。認証マークは機能の証明であって、判定の合格証ではありません。

ケース2|帳簿ごとに会計ソフトを使い分けている

基本のソフトでは作れない固定資産台帳だけ別のソフト、という形は珍しくありません。一問一答(問41)は、保存等について特に一つの会計ソフトで行うことまでは求められておらず、複数の会計ソフトを使用していてもそれを理由に軽減措置が受けられなくなることはない、としています。ただし同じ問のなお書きで、各帳簿間の記録事項の関連性を確認できるようにしておく必要があるとされているため、ソフトをまたいだときに一連番号等でつながるかを重点的に見てください。気をつけたいのは、業務システムと会計システムを連携させていて、会計システム側には集計データしか入っていない形です。一問一答(問19)は、この場合に会計システムのデータだけでは訂正削除の履歴が確保できず、帳簿間の相互関連性も明確にならないため、優良な電子帳簿の要件が満たされないとしています。個別取引データが入っている業務システムのデータも合わせて保存してください。

ケース3|一部を表計算ソフトで作っている

まず、その表が青色申告関係帳簿そのものなのか、補助資料なのかで扱いが分かれます。一問一答(問42)は、商品有高帳について、対象となる帳簿には一般的には含まれないため、それが要件を満たしていないことを理由に軽減措置が受けられなくなることはないとしています。ただし解説には、取引に関する事項として他の帳簿の記載事項をその商品有高帳において記載・管理していない限り、という限定が付いています。青色申告関係帳簿そのものを表計算ソフトで作る場合は、表計算ソフト自体は市販のプログラムなので、原則として概要書や開発関連書類までは求められません。ただし要件の側で、訂正削除の事実と内容が確認できること、通常の入力期間を過ぎて入力した事実が確認できることが必要です。通達8-9・8-11はその満たし方を例示したもので、チェックシートにもA・B以外の方法(C)が用意されていますが、行を上書きすれば痕跡が残らない作り方では、どの方法でも確認できず否になります。

ケース4|記帳代行業者・会計事務所に委託している

一問一答(問20)は、会計事務所や記帳代行業者に委託することは認められるとしたうえで、課税期間中に記帳せず期間終了後にまとめて記帳することを委託する方法は認められないとし、保存場所を記帳代行業者の所在地にすることも認められないとしています。委託中も、通常の入出力サイクルで定期的にデータの還元を受け、自社の保存場所で出力できる状態にしておく必要があります。チェックシートの側では、委託契約書の備付けが求められる一方、操作説明書は入力を他に委託している部分が除かれます。ただし施行規則は、委託先が保存義務者の開発したプログラムを使って処理している場合を除外の対象から外しているので、自社で作らせたシステムを委託先に使わせているなら操作説明書は必要です。還元されるデータの形式にも注意が必要で、問22のなお書きは、PDF形式に変換したデータの提供が禁止されているわけではないとしつつ、検索性等を備えたCSV形式に出力したデータも併せて提供しておく対応を挙げています。

4つのケースに共通する判断軸は同じです。確かめるのは「ソフトの機能」「備え付けている書類」「いつから、どの周期で記録しているか」の3つで、体制が変わると、そのうちのどれが自社の外にあるかが変わるだけです。外にあるものほど、契約書やデータの受け取り方といった形で自社に引き寄せておく必要があります。

もう1つ、判定が自社だけでは決まらない場合の出口も用意されています。国税庁は、企業で受託開発されるシステムや自社開発のシステムを対象に、要件適合性に関する事前相談の窓口を設けています。税務署所管の法人・個人事業者なら、所轄税務署の法人課税部門または個人課税部門が窓口です。市販ソフト1本で完結していない会社ほど、判定を抱え込まずに使う価値があります。

参考(国税庁):優良な電子帳簿の要件判定チェックシート(PDF)電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月・PDF)JIIMA認証情報リスト要件適合性に関する事前相談窓口

まとめ

  • 国税庁の要件判定チェックシートは「すべて『適』となる必要があります」という作り
  • 基本項目4つと個別項目4分野のうち1つでも否が残れば軽減は受けられない。判定は、機能ではなく範囲と時期から始める
  • 個別項目で判定を誤りやすいのは検索の分野。求められる検索項目は帳簿の種類ごとに違う
  • 範囲指定・組合せ検索を備えるか、ダウンロードの求めに応じられるようにするかは二者択一
  • PDFや画像に変換したものは、CSV等を併せて保存しているなどの事情がない限り、後者の答えにはならない
  • 履歴と関連性は、ソフトの機能と社内のルールの合わせ技。入力日から1週間を超えない訂正削除の履歴を残さない運用は、事務手続を明らかにした書類に期間の定めがあることが前提
  • 「適」にならない典型は、機能不足よりも運用と時期。備付けは原則として課税期間の初日からで、期間終了後に作り直しても間に合わない
  • 気づいた時点で次の課税期間を狙うほうが確実

帳簿の電子化は、経理まわりの手間を減らす取り組みの入り口でもあります。どこから手を付けるかで迷っているなら、中小企業の業務効率化の進め方も合わせて確認してみてください。

最後に

チェックシートを開いて手が止まるのは、たいてい「うちのソフトはこの機能を持っているのか」ではなく、「持っているかどうかを誰が確かめるのか」で止まっているときです。専任の経理部門がない会社では、判定そのものが社長や1人の担当者に乗ってしまい、それが後回しになって、また1年が過ぎていきます。

私たちTalent Partner(社長の経営参謀®)は、こうした場面で資料を渡して終わりにはしません。対象帳簿の洗い出しからソフトの分担の整理、内部規程の文書化、そして届出書の作成まで、実際に手を動かす順番に沿って一緒に進めます。電子化は経理だけの話に見えて、締め日や承認の流れ、誰がいつ入力するかという業務の設計に直結します。そこまで含めて整えるのが、右腕としての仕事だと考えています。

なお、制度の当てはめは会社ごとの帳簿の作り方によって変わります。最終的な判断は、顧問税理士や所轄の税務署にご確認ください。そのうえで「何を確認すればいいのか」から一緒に整理したいときは、無料相談をご利用ください。

「自社の場合はどうなるか」を、御社の状況に当てはめて一緒に整理します。

ご相談は無料です。その場で売り込みはいたしません。

この記事を書いた人

金井 春樹株式会社TRAVEL LIKE Talent Partner事業部 取締役COO / TAM

前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。

現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。

【運営会社 取得認証・認定】
ISO27001 / 健康経営優良法人2026 / DX認定 / 経営革新計画(※兵庫県のコンサルティングサービスで唯一) / 事業継続力強化計画

経営の悩みを、
一人で抱え込まないでください。

相談内容がまとまっていなくても問題ありません。社長が手放したい仕事の整理から、進め方を一緒に検討します。兵庫の中小企業の未来を、ともに創ります。