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業務効率化・DX

優良な電子帳簿とは?|過少申告加算税5%軽減の要件と対象の帳簿

「会計ソフトを使っているから優良」ではありません

会計ソフトで仕訳を入れて、総勘定元帳もデータのまま保存している。それなら自社の帳簿はもう「優良な電子帳簿」なのではないか——そう考えている経営者の方に、先にお伝えしておきます。会計ソフトを使っているだけでは、優良な電子帳簿にはなりません。

分かれ目は3つあります。①ソフトに訂正・削除・追加の履歴が残り、帳簿どうしが突き合わせられ、日付・金額・相手方で検索できること。②その税目の帳簿を一部ではなく全部その形にすること。③あらかじめ税務署へ届出書を出しておくこと。この3つがそろって初めて、過少申告加算税が原則10%から5%に軽くなります(国税庁「優良な電子帳簿のススメ!」令和6年9月)。

つまずきやすいのは、①のソフトの機能ではなく、②の範囲と③の届出です。特に、優良な電子帳簿は課税期間の初日から備え付けている必要があるため、決算期の途中で気づいて切り替えても、その期は使えません。「来期の初日から」を狙って準備を始めるのが現実的な進め方になります。

この記事では、要件そのものよりも、実務でつまずく「どの帳簿まで対象か」「いつから備え付ければよいのか」を中心に整理します。届出の様式や提出先といった手続きの中身は、別の記事で扱います。制度の当てはめは会社ごとに事情が異なりますので、最終的な判断は顧問税理士や所轄の税務署にご確認ください。

この記事でわかること

  • 「その他の電子帳簿」と「優良な電子帳簿」の要件の違い
  • 軽減されるのはどの税目の、どの部分の加算税か
  • 対象になる帳簿の範囲(一部だけではなぜ使えないのか)
  • いつから備え付ける必要があるか(課税期間の初日という落とし穴)

そもそも優良な電子帳簿とは|「その他の電子帳簿」との違い

優良な電子帳簿とは、帳簿を電子データのまま保存するときの要件を、最低限のレベルより一段上まで満たした帳簿のことです。義務ではなく、満たした会社だけが税制上の優遇を受けられる、いわば上乗せの層にあたります。

電子帳簿等保存制度は、①電子帳簿等保存(希望者のみ)②スキャナ保存(希望者のみ)③電子取引データ保存(法人・個人事業者は対応が必要)の3区分に分かれています。このうち義務にあたるのは③だけで、多くの中小企業がまず対応したのもここでした。優良な電子帳簿は、①の中でさらに要件を積み上げたものにあたります(国税庁「電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?」令和8年6月)。

電子帳簿保存法そのものの全体像と、対応が必要な電子取引データ保存の進め方は、電子帳簿保存法とは?|中小企業がやるべき対応をやさしく解説で解説しています。義務の側をまだ整理できていない場合は、そちらを先に読んでいただくと、この記事の位置づけがつかみやすくなります。

下の表は、最低限の要件だけを満たした「その他の電子帳簿」と、「優良な電子帳簿」で何が違うのかを並べたものです。

要件 その他の電子帳簿 優良な電子帳簿
システムの説明書やディスプレイ等の備付け 必要 必要
訂正・削除・追加の履歴が残ること 不要 必要
帳簿の相互関連性(帳簿どうしを突き合わせられること) 不要 必要
取引の日付・金額・相手方での検索機能 不要 必要
日付・金額の範囲指定検索と、2つ以上の項目の組合せ検索 不要 必要(※)
税務職員からのデータの「ダウンロードの求め」に応じられること 必要 ※に代えてこちらでも可
税制上の優遇 なし あり(過少申告加算税の軽減など)

読み取っていただきたいのは、訂正・削除・追加の履歴、帳簿の相互関連性、検索機能の3つが乗るかどうかで分かれる、という構造です。最後の2行は、どちらか一方を満たせばよい関係にあります。裏を返すと、追加の3つはいずれもソフトの機能に依存します。手入力の履歴が残らない、帳簿間の突き合わせができない、といったソフトを使っている場合、運用の工夫では埋められません。

なお「追加の履歴」とは、通常の業務処理の期間を過ぎてから入力した場合に、その事実を確認できることを指します。後から静かに足せてしまう状態では要件を満たしません。

検索機能には二者択一があります。本来は「日付・金額・相手方で探せる」ことに加えて「日付や金額の範囲を指定して探せる」「2つ以上の項目を組み合わせて探せる」ことまで求められますが、税務職員のダウンロードの求めに応じられるようにしている場合は、範囲指定検索と組合せ検索は不要です。多くの会社にとっては、日付・金額・相手方の3項目で探せるようにしたうえで、求めがあればデータを提出できる状態にしておく、という形が現実的でしょう。

なお「その他の電子帳簿」では、このダウンロードの求めに応じられることが必須です。優良な電子帳簿では、範囲指定検索と組合せ検索まで備えるか、ダウンロードの求めに応じられるようにするか、どちらかを選ぶことになります。

もう一点、前提として押さえておく条件があります。そもそも電子データのまま保存できる帳簿は、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)に従って作成されている帳簿に限られます。単式の簡易な記録では、この制度の土俵に乗りません。

参考(国税庁):優良な電子帳簿のススメ!(令和6年9月)はじめませんか、帳簿・書類のデータ保存(令和6年1月以降用)

この記事の内容を、社内で共有できる資料にまとめています。

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対象になる帳簿は「税目ごとに全部」|一部だけでは使えません

優遇の対象になる帳簿は「特例国税関係帳簿」と呼ばれ、仕訳帳、総勘定元帳その他必要な帳簿がこれにあたります。ここでいちばん誤解が多いのが範囲で、一部の帳簿だけを優良にしても、軽減措置は受けられません

国税庁の一問一答は、適用を受けようとする税目に係る全ての帳簿を要件どおりに保存し、かつ、あらかじめ届出書を提出する必要があると明記しています。さらに、一部の帳簿が優良な電子帳簿である場合にも軽減措置を受けられることを前提としているわけではない、と念を押しています。「まず総勘定元帳から」という段階的な進め方は、実務としては自然でも、この制度では途中の状態に効果がありません。

「その他必要な帳簿」の具体例として国税庁が挙げているのは、売上帳、仕入帳、経費帳、売掛帳、買掛帳、受取手形記入帳、支払手形記入帳、貸付帳、借入帳、未決済項目に係る帳簿、固定資産台帳、繰延資産台帳、賃金台帳(所得税のみ)、有価証券受払い簿(法人税のみ)です。ただし、この全部を新たに作る必要はありません。自社が作成している帳簿のうち、これらに該当するものを要件どおりにすれば足ります。手形を扱っていない会社が、この制度のために受取手形記入帳を作る必要はない、ということです。なお、この具体例は所得税・法人税の場合のもので、消費税については消費税法に規定する一定の帳簿が対象になります。

対象になる帳簿の考え方

作っている帳簿だけでよい
具体例を全部そろえる必要はなく、自社が作成している帳簿のうち該当するものを要件どおりにすれば足ります
税目ごとに判別する
賃金台帳は法人税では対象外ですが、通勤手当など課税仕入れを管理していれば消費税では対象になります
事業部・支店の帳簿も含む
事業所単位で備え付けている帳簿も、すべて要件を満たして保存する必要があります
商品有高帳は一般に対象外
表計算ソフトで作っていても軽減は受けられます。ただし他の帳簿の記載事項を商品有高帳で管理していない場合に限ります

税目ごとに判別する、という点は見落とされがちです。国税庁は具体例として、賃金台帳は法人税に関する特例国税関係帳簿には該当しないが、その中で通勤手当(消費税の課税仕入れに該当するもの)を管理している場合には、消費税に関する特例国税関係帳簿に該当する、と説明しています。法人税だけを見て「うちは対象外」と判断すると、消費税で漏れます。

事業部や支店ごとに帳簿を備え付けている会社は、その全てが対象です。本社の帳簿だけを優良にしても足りません。

逆に、商品有高帳は青色申告関係帳簿等には一般的には含まれないため、対象から外れます。表計算ソフトで管理していても、それを理由に軽減が受けられなくなることはありません。ただしこれは、取引に関する事項として他の帳簿の記載事項を商品有高帳のほうで記載・管理していない限り、という条件付きです。商品有高帳が実質的に仕入帳や売上帳の役割を兼ねているなら、話は変わります。

補助的に作成しているノート等も同様で、青色申告関係帳簿等の全てが要件を満たしていれば影響しません。これらは記載事項と同内容を書いた補助資料にすぎない、という整理です。

使う会計ソフトは1つに絞る必要もありません。基本はA社のソフト、Aでは作れない固定資産台帳はB社のソフト、という運用でも、それを理由に軽減が受けられなくなることはありません。ただし複数のソフトを使う場合も、各帳簿間の記録事項の関連性を確認できるようにしておく必要があります。ソフトをまたいだ突き合わせができない状態では、相互関連性の要件が崩れます。

参考(国税庁):電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月)優良な電子帳簿のススメ!(令和6年9月)

効果|過少申告加算税が原則10%から5%へ

優良な電子帳簿にするメリットは、対象の帳簿に関連する過少申告があったときに、過少申告加算税の割合が原則10%から5%に軽減されることです。修正申告や更正が起きた場面で効いてくる、いわば保険のような優遇にあたります。

ただし範囲があります。隠蔽・仮装があった部分には適用されません。税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されたものがあるときは軽減しない、と条文にただし書きが置かれています。対象になるのは、入力誤りのような「うっかり」の側だけです。

軽減される税額の範囲は、税目によって考え方が変わります。

税目 軽減の対象になる範囲
法人税・地方法人税 過少申告加算税の基礎となるべき税額の全て
消費税(地方消費税を含む) 過少申告加算税の基礎となるべき税額の全て
所得税(復興特別所得税を含む) 事業所得・不動産所得・山林所得など、帳簿の保存義務がある所得に係る過少申告は全て

法人と個人で扱いが分かれるのが、この表の要点です。法人税・地方法人税・消費税は、一般的には全ての事項が対象帳簿に記録されていると考えられるため、基礎となるべき税額の全てが軽減の対象になります。一方、所得税は帳簿の保存義務がある所得に紐づく部分に限られます。

具体的に、所得税で対象外になるのは次の2つです。

  • 帳簿の保存義務がない一時所得や配当所得に係る過少申告
  • 保険料控除・扶養控除などの所得控除等の適用誤りに起因する過少申告

ただし、ここには例外の例外があります。帳簿の保存義務がある所得に関連する税額控除の適用誤りと、その所得の過少申告に伴って生じた配偶者控除・基礎控除等の適用誤りは、対象外から除かれます。つまりこの2つは軽減されます。事業所得の申告漏れが原因で基礎控除の額がずれた、というような場面が該当します。

適用が始まっている時期も確認しておきます。令和5年度税制改正後のこの規定は、令和6年(2024年)1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されます。具体的には、個人事業者なら令和5年分の所得税から、法人なら令和5年10月決算期分の法人税からです。すでに動いている制度ですので、これから始める会社にとっては「いつから使えるか」ではなく「いつの課税期間から要件を満たせるか」が論点になります。

参考(国税庁):電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月)優良な電子帳簿のススメ!(令和6年9月)

個人事業者はもう一つ|令和9年分から青色申告特別控除が75万円に

個人事業者(個人事業主)の場合、優良な電子帳簿には加算税の軽減とは別の効果があります。令和9年(2027年)分以後の所得税について、青色申告特別控除が65万円に代えて75万円になります。

前提として、事業所得または不動産所得を生ずべき事業の帳簿書類を備え付け、日々の取引を正規の簿記の原則に従って記録し、作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して、提出期限までに提出することが必要です。そのうえで、確定申告書・貸借対照表・損益計算書等を提出期限までにe-Taxで送信すること(電子申告)が必要です。この電子申告は令和9年分以後の65万円の適用要件でもあり、外すと75万円どころか65万円も使えません。そのうえで、優良な電子帳簿の要件を満たしていれば、上乗せの10万円が乗るという構造になっています。

★ ここで、必要な帳簿の範囲が加算税の軽減とは違う点に注意してください。過少申告加算税の5%軽減は、適用を受けようとする税目に係る帳簿を全部そろえる必要がありました。これに対して青色申告特別控除の上乗せで求められるのは、その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳です。つまり「加算税の軽減までは手が回らないが、仕訳帳と総勘定元帳だけは要件を満たせる」という個人事業者でも、控除の上乗せは狙えることになります。

すでに優良な電子帳簿として65万円の適用を受けている個人事業者は、改めて届出書を提出しなくても75万円の適用を受けられます。ここは手続きが増えない部分です。ただし、75万円の適用を受ける場合には所得税の青色申告承認申請手続も必要になりますので、青色申告そのものの手続きは別途確認してください。

もう一段上の優遇として、令和9年(2027年)1月1日から「デジタルシームレス保存」が始まります。これは令和7年度税制改正で新設されたもので(青色申告特別控除を65万円から75万円へ引き上げたのは、その次の令和8年度税制改正です)、請求書等の電子取引データを自動で保存し、帳簿に自動連携する仕組みを指します。効果は2つで、重加算税の10%加重の適用対象から除外されること(令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用)と、個人事業者の青色申告特別控除75万円です。75万円は、優良な電子帳簿とデジタルシームレス保存のいずれかを満たせば適用されます。

優遇が使えるようになる時期

1令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税過少申告加算税の軽減措置(10%→5%)が適用。個人は令和5年分の所得税、法人は令和5年10月決算期分の法人税から
2令和9年1月1日デジタルシームレス保存が開始。同日以後に法定申告期限が到来する国税について、重加算税の10%加重の対象から除外される
3令和9年分以後の所得税個人事業者の青色申告特別控除が、65万円に代えて75万円に

デジタルシームレス保存は、デジタルインボイスや預貯金口座の決済データを前提とした仕組みで、いまの中小企業の実務からはまだ距離があります。当面は「令和9年1月から、もう一段上の優遇が始まる」という位置づけだけ押さえておけば十分で、まず取りにいくべきは優良な電子帳簿のほうです。

参考(国税庁):電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?(令和8年6月) / 参考(財務省):令和7年度税制改正の大綱令和8年度税制改正の大綱 / 参考(e-Gov):租税特別措置法 第25条の2(青色申告特別控除)

制度の当てはめから社内への落とし込みまで、右腕として伴走します。

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進め方の全体像|先に帳簿の棚卸し、そのあとソフト

準備の順番は、ソフトの検討から入らないほうがうまくいきます。先に自社が作っている帳簿を税目ごとに一覧にして対象の範囲を確定させ、そのあとで、それを扱えるソフトかどうかを見るのが手戻りの少ない順序です。会計ソフトがJIIMA認証を受けているかを確認し、システムの説明書とディスプレイ等の備付けを整え、切り替えの目標日を課税期間の初日に置きます。最後に、届出書を法定申告期限までに所轄税務署へ提出します。

届出の様式や提出先、「あらかじめ」の期限の考え方、システムを変えたときに変更届出書が要るかどうかは、実務でいちばん落としやすい部分です。これらは優良な電子帳簿の届出書の書き方|いつまでに、どこへ、何を書くかで整理しています。実際に届出書を書く段になったら、そちらを開いてください。

帳簿の電子化は、それ単体で完結する話ではなく、経理や請求まわりの業務をどう組み替えるかという流れの一部です。どの業務から手を付けるかの全体像は、中小企業の業務効率化で整理しています。

落とし穴|順番を間違えると、その期は使えません

この制度で最も多いつまずきは、要件そのものではなく順番です。期の途中から始めても、その期は適用を受けられません。国税庁の取扱通達は、課税期間を通じて要件を満たして保存等を行っていなければ、その課税期間について軽減措置の適用はない、と明記しています。

例外は、不動産所得・事業所得・山林所得のいずれの業務も行っていなかった個人が、年の中途に業務を開始した場合です。この場合は例外的に課税期間の中途の日が備付け開始日になるため、その業務開始の日から要件を満たして備付けを始めていれば、その業務開始の年から適用を受けられます。開業初年度の個人事業者だけの話であって、既存の会社には当てはまりません。

もう一つ、後追いでの作成は認められません。補助的に作成しているノート等を基に、課税期間が終わってから別途、青色申告関係帳簿等を作成した場合、それが優良な電子帳簿としての機能を備えた状態で保存されていたとしても、課税期間の初日から備付けをしていたことにはならず、軽減措置の適用を受けることはできません。決算作業でまとめて会計ソフトに入力する運用をしている会社は、ここで引っかかります。日々の記録がソフト上に積み上がっている状態を、期首から作っておく必要があります。

適用を受ける前に、次の6点を確認してください。

適用前に確認する6つの条件

  • 対象の税目に係る帳簿を、一部ではなく全部要件どおりにしているか
  • 課税期間の初日から要件を満たして備え付けているか
  • 補助的なノートを基に、期末後にまとめて帳簿を作り直していないか
  • 複数の会計ソフトを使う場合、帳簿間の関連性を確認できるようにしているか
  • 法定申告期限までに届出書を提出しているか(法人成りは出し直しが必要か)
  • 事業部や支店ごとの帳簿も、対象に含めて確認したか

修正申告や更正が起きた場面で実際に軽減を受けるには、その課税期間の初日から引き続き優良な電子帳簿の要件を満たしていることが必要です。過去にさかのぼって整えることはできませんので、「まだ何も起きていないうち」に準備しておく制度だと考えてください。

参考(国税庁):電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月)電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?(令和8年6月)

活用事例|自社はどこから手を付けるか(ケース別)

同じ「優良な電子帳簿を検討したい」でも、法人か個人か、支店があるか、直近で法人成りしたかによって、最初の一手が変わります。よくある3つの状況で、どこを最初に確認すべきかを整理します。

以下は、制度の当てはめ方を理解していただくための想定例です。実在の会社ではありません。

ケース1|従業員15名・3月決算の法人(本社と現場事務所が別)(想定例)

最初に確認すべきは、対象を法人税だけで見ていないかという点です。賃金台帳は法人税では対象になりませんが、通勤手当のように消費税の課税仕入れに該当するものを管理していれば、消費税の対象帳簿になります。あわせて、現場事務所で別に付けている帳簿がないかを洗い出してください。事業所単位で作成しているものも含めて全部が要件を満たす必要があるためです。届出書は本店の所轄税務署長へ、法人自体の名義で提出します。

ケース2|一人で運営している個人事業者(青色申告・65万円控除を適用中)(想定例)

すでに優良な電子帳簿として65万円の適用を受けている場合、令和9年分以後の75万円については、改めて届出書を提出しなくても適用を受けられます。まだ優良な電子帳簿になっていないなら、H4-9の届出書と、次の1月1日からの備付け開始をセットで準備することになります。あわせて、青色申告承認申請の手続きが済んでいるかも確認しておいてください。

ケース3|昨年、個人事業から法人成りした会社(想定例)

見落としやすいのが届出の効力です。個人時代に提出した届出書の効力は法人に承継されないため、改めて法人として届出書(H4-1)を提出する必要があります。同じ会計ソフトを引き続き使っていても、届出は別物として扱われます。設立後の最初の事業年度から適用したい場合は、事業年度の初日から要件を満たしているかを先に確認してください。

3つに共通する判断軸は、「機能」ではなく「範囲と時期」です。ソフトの機能はJIIMA認証の一覧で比較的すぐ確認できますが、どの帳簿までが対象かの棚卸しと、いつの課税期間の初日から始めるかの決定は、社内でしか決められません。この2つを先に固めてから、ソフトと届出の話に進んでください。

まとめ

  • 要件は、システムの説明書やディスプレイ等の備付けに加えて、訂正・削除・追加の履歴、帳簿の相互関連性、日付・金額・相手方の検索機能
  • 検索は、範囲指定検索と組合せ検索まで備えるか、税務職員のダウンロードの求めに応じられるようにするかの、どちらかを選ぶ
  • 効果は過少申告加算税が原則10%から5%へ。ただし隠蔽・仮装があった部分には適用されない
  • 法人税・地方法人税・消費税は基礎となるべき税額の全てが対象で、所得税は帳簿の保存義務がある所得に限られる
  • 個人事業者はこれに加えて、令和9年分以後の青色申告特別控除が65万円に代えて75万円になる
  • つまずくのは範囲と時期。対象の税目に係る帳簿は一部ではなく全部、事業部や支店の分も含めて要件を満たす必要がある
  • 課税期間の初日から備え付けていなければ、その期は使えない。届出書は法定申告期限までに、法人なら本店の所轄税務署長へ提出する

最後に

優良な電子帳簿は、うまく使えば加算税の負担を確実に軽くできる制度ですが、実際に手を動かすと「どの帳簿までが対象か」「うちの運用は期首から要件を満たしていると言えるのか」という判断が次々に出てきます。ここは会計ソフトのマニュアルにも税務署のパンフレットにも書いていない、その会社固有の話です。

私たちTalent Partner(社長の経営参謀®)は、こうした場面で、帳簿の棚卸しから届出書の準備、経理担当者の運用フローの組み替えまで、隣に座って一緒に進めます。制度の解説をお渡しして終わりにせず、次の期首に間に合うスケジュールを引き、顧問税理士との役割分担も含めて整えるところまでが仕事だと考えています。

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この記事を書いた人

金井 春樹株式会社TRAVEL LIKE Talent Partner事業部 取締役COO / TAM

前職の上場コンサルティングファームにて10年間、年間200社超(累計1,000社超)の中小企業に対するバックオフィス支援・経営改善に従事。

現在は「Talent Partner」の取締役COOとして、認定ターンアラウンドマネージャー(TAM)の知見を活かし、財務・労務・組織の多角的な視点から中小企業のV字回復と成長をハンズオンで牽引する「社長の右腕」として活動している。

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