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【2025年度版】第21次ものづくり補助金 – 経営者が押さえるべきポイント –

目次

はじめに

設備投資は経営判断の中でも特に慎重さが求められる決断です。投資額が大きく、回収までの期間も長期にわたるため、多くの経営者が二の足を踏んでしまうのも無理はありません。

そんな中小企業経営者の背中を押してくれるのが「ものづくり補助金」です。正式名称を「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といい、革新的な製品開発や生産性向上のための設備投資を国が支援する制度として、多くの企業に活用されています。

2025年度は制度に大きな転換点が訪れました。これまでネックとなっていた「収益納付」が廃止され、企業が成功の果実を存分に享受できるようになったのです。本記事では、経営者の視点から2025年度のものづくり補助金を徹底解説します。

2025年度の制度改革 – 3つの重要な転換点

2025年度の制度改革には、経営者が押さえておくべき3つの大きな変更点があります。

転換点1:収益納付の完全撤廃が意味するもの

最も大きな変化は、収益納付制度の廃止です。従来は補助事業で利益が出た場合、その一部を国に返納する義務がありました。これは補助金適正化法に基づく仕組みでしたが、企業側からは「せっかく成功しても利益を取られる」という声も少なくありませんでした。

2025年度からはこの義務がなくなり、補助金を活用して生み出した収益は全額企業のものとなります。これは中小企業の成長を本気で後押しする国の姿勢の表れといえるでしょう。

転換点2:賃上げへのコミットメントが必須に

一方で、従業員への還元も強く求められるようになりました。基本要件として、給与支給総額の年平均成長率が従来の+1.5%から+2.0%に引き上げられています。さらに、従業員21名以上の企業は「一般事業主行動計画」の策定・公表が新たに必要となりました。

これは単なる設備投資支援ではなく、「企業成長と従業員の待遇改善の両立」を目指す制度への転換を意味しています。

転換点3:支援の集中化と明確化

2024年度まで存在した「省力化(オーダーメイド)枠」が廃止され、申請枠は「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」の2つに整理されました。これにより、自社がどの枠で申請すべきか判断しやすくなっています。

申請前に知っておくべき基本要件

補助金を受けるには、すべての申請者が満たすべき4つの基本要件があります。ここでは、それぞれの要件について詳しく解説します。

第18次公募までは、「給与支給総額の年平均成長率を+1.5%以上にすること」が要件となっていましたが、第19次以降はこの基準が「+2.0%以上」に引き上げられています。そのため、より高い水準での賃上げが求められる点に注意が必要です。

① 付加価値額の年平均成長率が+3.0%以上増加

② 1人あたり給与支給総額の年平均成長率が事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上又は給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加

③ 事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準

④ 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等(従業員21名以上の場合のみ)

※最低賃金引上げ特例適用事業者の場合、基本要件は①、②、④のみとする。

要件1:付加価値額を年平均3.0%以上成長させる

付加価値額とは「営業利益+人件費+減価償却費」で算出される指標です。事業計画期間(3~5年)において、この数値を年平均で3.0%以上増やす計画が必要です。

要件2:給与の引き上げ計画を策定する

以下のいずれかを満たす必要があります:

① 給与支給総額の年平均成長率を2.0%以上増加させる

② または、1人あたり給与支給総額を、都道府県の最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上増加させる

要件3:事業所内最低賃金を地域最低賃金+30円以上に

単に法定最低賃金を守るだけでなく、それより30円以上高い水準を維持し、さらに引き上げていく計画が求められます。

要件4:従業員21名以上の企業は行動計画の公表を

次世代育成支援対策推進法に基づく「一般事業主行動計画」を策定し、「両立支援のひろば」で公表する必要があります。これは仕事と子育ての両立支援に関する企業の取り組み計画です。

⚠️ 重要:
これらの要件を事業計画期間終了後に達成できなかった場合、補助金の返還義務が生じる可能性があります。無理な計画は禁物です。

どちらの枠で申請すべきか – 2つの申請枠を比較

自社の事業計画に最適な枠を選択するために、2つの申請枠の目的と対象を詳しく見ていきましょう。

製品・サービス高付加価値化枠

この枠は、革新的な新製品・新サービスの開発を通じて、事業の付加価値を高めることを目的とする企業が対象です。従業員数に応じて補助上限額が異なります:

従業員規模 補助上限 補助率(中小企業) 補助率(小規模・再生)
5名以下 750万円 1/2 2/3
6~20名 1,000万円 1/2 2/3
21~50名 1,500万円 1/2 2/3
51名以上 2,500万円 1/2 2/3
補助対象経費 機械装置・システム構築費(必須、単価50万円以上)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費

💡 注意:
単なる設備の入れ替えや、同業他社(特に同一地域)で既に一般化している取り組みは対象外です。「自社ならではの革新性」が求められます。

グローバル枠

海外市場への展開を通じて、国内事業の生産性向上も実現する取り組みを支援します。

補助上限 3,000万円
補助率 中小企業1/2、小規模事業者2/3
補助対象経費 高付加価値化枠の経費に加えて、海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費、海外市場調査費、現地規制調査費も対象
補助対象事業 海外への直接投資、海外市場開拓(輸出)、インバウンド需要への対応、海外企業との協業

さらに上乗せ可能 – 大幅賃上げ特例を活用する

従業員への大幅な賃上げを実施する企業には、補助上限額を引き上げる特例措置があります。以下の2つを同時に達成する必要があります:

  1. 給与支給総額を年平均+6.0%以上増加(通常+2.0%に+4.0%上乗せ)
  2. 事業所内最低賃金を+50円以上引上げ(通常+30円に+20円上乗せ)

これらの目標は交付申請前に従業員へ明示し、計画期間を通じて達成する必要があります。

従業員規模 上乗せ額
5名以下 +100万円
6~20名 +250万円
21~50名 +1,000万円
51名以上 +1,000万円

例えば、従業員30名の企業が製品・サービス高付加価値化枠(通常上限1,500万円)で申請し、大幅賃上げ特例を適用すれば、最大2,500万円まで補助を受けられます。

⚠️ 注意:
目標未達の場合は補助金返還のリスクがあるため、確実に達成可能な計画を立てることが重要です。

最低賃金引上げに取り組む企業への支援強化

最低賃金近傍で従業員を雇用している企業には、補助率を引き上げる特例もあります。2025年9月の要件緩和により、改定後の地域別最低賃金未満の賃金で雇用している従業員(3か月以上)が、全従業員の30%以上を占める企業が対象となりました。

この要件を満たせば、補助率が1/2から2/3に引き上げられます。ただし、この特例と「大幅賃上げ特例」の併用はできません。

2025年度公募スケジュールと採択の見通し

ここでは、直近の公募日程と、過去の採択率から見える最新の傾向を解説します。

直近の公募スケジュール

次数 申請開始 申請締切 採択発表(予定)
20次 2025年7月1日 2025年7月25日 2025年10月下旬
21次 2025年10月3日 2025年10月24日 2026年1月下旬
22次 未定 未定 未定

採択率の推移から見える傾向

19次公募(2025年7月28日発表)の結果は、以下の通りとなりました。

  1. 製品・サービス高付加価値化枠:32.3%(5,025件申請、1,623件採択)
  2. グローバル枠:24.1%(311件申請、75件採択)

初回公募(1次)では62.4%だった採択率が、近年は30~50%台で推移しています。特に直近の19次は厳しい結果となっており、「申請すれば通る」という時代は終わったといえます。採択を勝ち取るには、事業計画の質が何より重要です。

申請から交付までの7ステップ

ものづくり補助金の申請は、アカウント取得から補助金受領後の報告まで、大きく7つのステップで進みます。

ステップ1:GビズIDプライムアカウントの取得

電子申請システム(jGrants)を利用するために必須です。通常取得は申請から2~3週間、マイナンバーカード利用なら即日取得可能です。締切間際では間に合わないため、早めの取得を強く推奨します。

ステップ2:事業計画書の作成

採択を左右する最重要ステップです。技術面(技術的課題が明確で、解決方法が妥当か)、事業化面(市場ニーズがあり、事業化の実現可能性が高いか)、政策面(地域経済への貢献度や、国の政策との整合性)からの審査が行われます。

ステップ3:電子申請

jGrantsから必要事項を入力し、書類をアップロードします。締切直前は申請が集中してシステムが重くなる可能性があるため、余裕を持った申請が重要です。

ステップ4:採択発表と交付申請

採択後、2か月以内に交付申請を行う必要があります。

ステップ5:交付決定と事業開始

事務局の審査(標準約1か月)を経て交付決定されます。交付決定前に購入した設備は補助対象外となるため注意が必要です。

ステップ6:実績報告と確定検査

事業完了後、実績報告を提出し、事務局の検査を受けます。

ステップ7:補助金の受取と事業化状況報告

補助金を受け取った後も、3~5年間は毎年「事業化状況報告」の提出義務があります。

21次公募で特に注意すべき3つの変更点

21次公募以降、特に注意が必要な3つのルール変更点について解説します。

変更1:従業員ゼロの企業は申請不可に

これまで曖昧だった基準が明確化され、常時雇用している従業員が1人もいない企業は申請できません。補助上限額の判定も申請時点の従業員数で行われるため、雇用状況の正確な把握が必要です。

変更2:他補助金との併願ルールの明確化

IT導入補助金や事業再構築補助金など、他の補助金との同時応募は可能です。ただし、交付決定前にいずれか1つを選択する必要があります。複数の補助金を同時受給すると不正とみなされます。

変更3:賃上げ目標未達時の返還義務を明文化

賃上げ加算などの特例措置を受けた企業が目標を達成できなかった場合、補助金の一部または全額を返還する必要があることが明確化されました。無理な目標設定は避け、確実に達成可能な計画を立てましょう。

📋 その他の細かな変更点:
PDF添付資料の上限ページ数が3ページ→5ページに拡大、重複申請のペナルティ強化(次回のみ→次回・次々回の申請不可に)、「Go-Tech事業」も減点対象に追加されました。

採択率を高める5つの実践ポイント

事業計画の質が重視される今、採択を勝ち取るためにはいくつかの重要なポイントがあります。

ポイント1:革新性を具体的に示す

「新しい機械を入れる」だけでは不十分です。その機械で何が変わり、顧客にどんな新しい価値を提供できるのかを明確に示しましょう。

ポイント2:数値目標は実現可能性重視で

売上や利益の目標は、過去の実績や市場調査に基づいた現実的な数字を設定してください。審査員は「絵に描いた餅」を見抜きます。

ポイント3:地域経済への波及効果をアピール

自社の成長が、取引先や地域経済にどのようなプラスの影響をもたらすかを説明できると評価が高まります。

ポイント4:実施体制とスケジュールの具体性

誰が、いつ、何を担当するのか。設備導入後の運用体制はどうなるのか。具体的であればあるほど実現可能性が伝わります。

ポイント5:専門家のサポートも検討を

初めての申請や、採択率を確実に高めたい場合は、補助金申請の専門家(認定支援機関など)のサポートを受けることも有効な選択肢です。

まとめ

2025年度のものづくり補助金は、収益納付の撤廃という大きな転換点を迎えました。企業が成功の果実を存分に享受できる一方、賃上げへのコミットメントも強く求められる制度設計となっています。

申請枠は2つに整理され、それぞれの目的が明確化されました。自社の事業戦略に合った枠を選び、実現可能性の高い事業計画を立てることが採択への近道です。

21次公募の申請期限は2025年10月24日17時です。GビズIDの取得には時間がかかるため、今すぐ準備を始めることをお勧めします。

ものづくり補助金を上手に活用し、自社の成長と従業員の待遇改善を同時に実現していきましょう。

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